清楽月琴WS@亀戸 2019年12月!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2019.12.14 月琴WS@亀戸! 12月場所の巻



 

 

*こくちというもの-月琴WS@亀戸 12月 のお知らせ-*




 

 …では,おにょおにょがた,
   討ち入りでごじゃる。

  どーんどんどんどどん(山鹿流陣太鼓)

 2019年ラスト,師走の清楽月琴ワークショップは,兵庫県のほうの方々が本所に突撃なさった12月14日・土曜日の開催予定!


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費は無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。

 美味しい飲み物・お酒におつまみ,ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 


 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。

  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)



 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 
 現在,お嫁入り先募集中の楽器は60号「碧空(あおぞら)」。


 古い月琴欲しいというお方も,試奏がてらにぜひどうぞ~。
 楽器は実際に弾いてみてなんぼ----
 触って弾いて,相性を確認するのがいちばんです。

 

 

 

楽器製作・名前はまだない(4)

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斗酒庵ひさびさの製作 の巻2019.10~ 楽器製作・名前はまだない(4)

STEP4 裏(板)に命を賭ける男

 そもそも,唐代の古い「阮咸」は,四川省の墓地から出土した青銅で出来た楽器を木で作り直したもの,とされています----

 もちろん晋の時代の音楽家である阮咸が弾いていた楽器というのはこじつけですし,だいたいが四川省に阮咸さんが行って弾いていたわけも証拠もありません。それ以前にあった「秦漢子」という似た楽器がこれと同じものだ,という説もずいぶんと見るのですが,肝心の「秦漢子」という楽器自体がどういうものであったのか,の部分が,たいへんアヤフヤで話にもなりません。

 中国の西南地方などで阮咸に似た,長い棹で丸い胴で4本弦の楽器が古い壁画になっていたり,古いお墓の装飾レンガに刻まれているのが見つかったりしていますから,四川省をふくむそうした地方にそういう楽器が古くから存在していたことは確かだろうとは思いますが,いまのところそうした古い楽器の実物そのものが,スッポンと遺跡から出土してきてもいませんし,絵や模様からだけではもちろん,その詳細は分かっていません。

 たとえばそれが琵琶や阮咸のように 「4単弦」 の楽器であったのか。
 あるいは清楽月琴や八角胴の「阮咸」(双清)のように 「4弦2コース」 の複弦楽器であったのかさえもです。

 いまたとえば,唐の時代にあったように,どこかのお墓から大昔の楽器を模した祭器が出てきたとしましょう。

 史書には「青銅で出来た楽器」というようには書かれていますが,それが演奏可能なものであったとか,誰かが弾いてみた,とは書かれていません。
 そもそもお墓にお供えされた副葬品ですからね----しょせんは装飾品です。 細かな形状も弦やフレットの配置も,どこまで正確であったかは疑問です。

 実際に演奏可能な楽器を,そういうモノから復元製作するとしたら。

 そうした 「分からない部分」 は,自分たちの身近にある少しでも似たような楽器を参考にするしかないでしょう。

 『唐書』などにあるように,墓地から出た祭器を木で作り直した,というお話しが本当なら,同時代に流行っていた同じ4弦の楽器である琵琶や,まだ当時はどこかに残っていたかもしれない「秦琵琶」「秦漢子」に倣った弦やフレット,そしてチューニングが参考にされただろうと思います。

 以前あげた「月琴の起源について」のシリーズで庵主は,この壁画やレンガ,そして唐の時代にお墓から出てきたものの 「モデルとなった古い楽器」 を 「原阮(げんげん)」 と名付け,それを唐宋の阮咸や短い棹の月琴の共通の祖先としました。

 「原阮」 は,西アジア起源のリュート属の楽器とは別に,いまも東南アジアから中国西南部にかけて広く分布している,原始的な弦楽器の一つだったと思われます。2本の糸を間4度もしくは5度に張って,かき鳴らす----弓の弦を弾いたり擦ったりして音を出す「楽弓」の,ちょっと先くらいのものですね。音数は少なく,それ自体単体で音楽をなす,というよりは,歌に合わせたり複数で合奏したりするのに使う伴奏楽器だったと思いますね。

 そうした「原阮」を青銅で模した祭器をモデルに,分からない部分を琵琶の構造や調弦で補したのが唐宋の(正倉院の)「阮咸」という楽器だということです。
 いまある円胴で長い棹の「月琴」は,唐宋の「阮咸」よりはむしろ,そのモデルとなったであろう「原阮」の仲間に近く,短い棹の月琴はそれがおそらく中国の西南地方あたりでショートスケール化したものと思われます。
 いうなれば,現行の長い棹・短い棹の「月琴」の祖先は正倉院にある「阮咸」ではなく,その 「元となった楽器」 である----すなわち,先祖が同じという意味では親戚の関係にはあるものの,阮咸=月琴はあくまでもその外形をのみ真似たもので,現行の長い棹・短い棹の「月琴」と楽器としての直接的な因果関係はない,ということですな。


 さて製作です。

 最初のウサ琴を作った時もそうだったんですが,この楽器をエレキ化する上でのネックの一つが,表裏板が「桐」であることでした。
 月琴の表裏板の厚みは3~5ミリ。
 軽くて柔らかい桐でも,これだけ厚みがあるとまあ,赤ちゃんパンチで穴があくことはないですが,表面がいささか柔らかすぎるんですね。
 通常はクギやネジが使えない材料で,ノブやジャック部分のように動かしたり抜き差ししたりと言う動作にもあまり強くはありません----穴が広がって,すぐ取付けがユルくなっちゃったりしますね。

 カメ琴2号ではスピーカーやスイッチ等の取付け部分の裏に黒檀の薄い板を貼り,実質この板に取付けることで表面の桐板には力がかからないよにしましたし,カメ琴1号にスピーカーユニットを増設した時には,板の裏がわにブナのツキ板を貼り回して強化しました。

 今回はまた違う方法を験してみましょう。

 取付け孔のふちとその板裏の周縁を中心に,エタノールで緩めたエポキを塗布します。

 桐は多孔質なので滲みこみがいい----という性質を逆手にとって,この部分を樹脂浸透の強化木化してしまおうというわけです。

 この夏,江別の博物館で,戦中に作ってた 木製戦闘機キー106 の展示見てて思いついたんですな。

 キー106と言っても,主翼の一部とか増槽,骨組みに刻む前の強化木の板材とかタイヤしか残ってないんですが,男の子なのと初期航空マニアなので,それだけでもずいぶん血沸き肉躍りましたわあ。

----まあそれはともかく(w)

 この方法なら強度の必要な部分だけピンポイントで補強できますし,板自体は材として完全に連続している上に,余計な板を貼りつけるわけでもないので,音への影響をかなり軽減できるかとも思います。

 さてお次です。

 修理もメンテナンスもしないつもりなら,回路を組み込んでから裏板でフタしちゃえばいいんですが,楽器と言うものは常にメンテナンスの必要な道具です。エレキ楽器というもの,しょっちゅう開けたり閉めたりすることはないものの,なにかあったときのために,いつでも内部にアクセスできる環境がないといけません。
 表板は共鳴板ですので,こちらはなるべく一枚板であってほしいわけですから,当然メンテ孔は裏板がわにするのがふつうでしょう。

 この後の作業の便で,八角形に切った裏板の一部を切りぬいて,蓋になる部分を作ります。

 前回書いたように,この蓋の部分に電源となる9V電池と,アンプの回路が取付けられます。回路のほうは楽器自体がもうちょっと組み上がらないと正確な位置が決まらないんですが,電池のほうはもうだいたい決まってますので,裏蓋の一部に四角い穴を切って,先に電池ボックスを作っておきます。

 表裏板の端材を刻んで組んでっと…あとで組み付けながら切り刻むので,ちょっと大きめに作りました。
 最終的には縦横半分ぐらいになっちゃいましたね(w)

 この電池穴の表面周縁には後で薄板を一枚貼り回すことにしています。電池のお尻部分が2~3ミリ隠れるくらいの感じですね。電池は指で少し押し上げ,頭のほうを楽器内部がわに傾けると,お尻のほうが上ってきてつまめるようになります。

 通常,箱電池1本で2~3時間は保ちますから,オールナイトライブでもない限り,そんなにしょっちゅう交換することはないとは思いますがね。

 ウサ琴1号の時,ちょっと苦労したのがこの裏蓋でした。

 ウサ琴1号も今回の楽器と同じく,胴体が箱のフルアコエレキ楽器でしたが,弦を鳴らすと裏蓋のあたりから強烈なビビリ音が……原因は裏蓋と裏板の接合部の工作でした。
 裏板と裏蓋の間にスキマがあると,それは裏板にヒビが入ってるのと同じ状態になり,それを中心として変な振動が発生しちゃうんですね。

 裏板と裏蓋の接合は,スキマなくピッタリキッチリ,これ理想----

 宮大工級の腕前ならまあそういう工作も可能でしょうが,こちとら凡夫の身(w)でごぜえやす。さらにこの裏板と裏蓋の接合部である木口の部分は,脱着する部分であるゆえに補強もしなくちゃなりません。さっきも書いたとおり,しょっちゅう開けたり閉めたりする部分ではありませんが,動作には必ず危険が伴います。木材の木口部分というのは縦方向の圧力に関してはでえらー強いのですが,その他の方向からだとけっこう容易く欠けたり割れたりしちゃうとこですからね。

 カメ2号の時には,木口の接触する部分に突板を貼って補強しました。洋楽器の製作者なら,唐木かプラスティックの薄板を貼り回してバインディングで保護するところかな?
 さて,凡夫は凡夫なりに,さらなる最善の方法を模索することとしましょう。
 目的は板木口の補強と,その接合の精度をあげること----この二つをまとめて一度でやれれば,ムフフのワハハですわな。(これをこれ不捕狸算用皮といふ)

 まずは蓋部分の板の木口にラップをかけます。
 次に裏板本体を板に固定----台板も表面をラップで覆っておきますね。
 続いて,裏板の裏蓋と接触する部分に,木粉をエポキで溶いたパテを盛りつけ。
 木口をラップでマスキングした裏板を当てがって,ギュギュっとな----

 一晩おくと…何ということでしょう!

 裏板の木口が薄い樹脂の層でキレイにコーティングされているではないですか!
 さてさて,パテがじゅうぶんに固まったところでハミ出した部分を削り落とし,こんどは裏板がわの木口をラッピング。

 裏蓋のほうの木口にパテを盛って,もう一回ギュギュッと----

 あらかじめ木口にエタノールを滲ませてからやってるので,樹脂の層は一部木口にしみこみ,ほぼ一体化しております。これならプラのバインディング材みたいにハガれることもありませんし,合わせ目のスキマを充填しているようなものなので,接合部はまさしく「寸分の狂いもなく」ピッタリキッチリ合わさっておりまする。

 今回は木粉でやりましたが,この方法。
 骨材をたとえば胡粉(貝殻の粉)とか砥粉(石の粉)にするとか,アクリル絵の具を混ぜるとか工夫すれば,さまざまな素材や色にすることが可能ですねえ。
 新しいバインディングの方法としては,ちょっと興味深い。

 難点と言えば,今回はもともと合わさるようになってる裏板と裏蓋という関係ですし,作業範囲もそれほど大きくないからいいんですが。たとえばこれをギターなどに応用したいと思うなら,胴やネックに合わせた外枠か,最低でも部分枠のようなものが必要になるわけですね----ふむ,それはそれでけっこうタイヘンですな。

 裏蓋の問題が片付きましたので,裏板を接着します。
 ----と,その前に。

 これは仕込んでおきましょう。

 唐宋の阮咸はもちろん,台湾やベトナムの長棹月琴にも付いてませんが,日本の清楽器の阮咸には付いてますね----

 響き線をつけます。

 胴の片がわに回路やスピーカーが入りますので,直線や曲線では長さが限られ,効果が期待できません。そこで今回の響き線は渦巻型,直径約75ミリ。
 「目指せ,カルマン渦!」 を合言葉に,指にマメを作りながら3時間ほどかけてみっちり巻き上げました。まあ,けっきょく焼き入れで少し歪んじゃいましたけどね。

 取付け部を中央にしたところ,そこまでのアーム部分がちょいと長すぎて振れ幅が大きくなり,反応はきわめて良いものの,線が胴内に触れてのノイズ(胴鳴り)がヒドくなってしまったので,急遽,桁の音孔の中央に支えを作りました----うむ,最初からここを基部にすれば良かったか。(泣)

 改造後の反応は上々。
 胴鳴りはかなり抑制されましたし,板をタップした時の余韻の雑味も薄れました。

 響き線が片付いたところで裏板を接着,いよいよ胴体が箱になります!

 といったあたりで,次回をごろうじろ!!----

(つづく)


楽器製作・名前はまだない(3)

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斗酒庵ひさびさの製作 の巻2019.10~ 楽器製作・名前はまだない(3)

STEP3 長いアナタと短いワタシ

 長い棹の月琴と短い棹の月琴の関係は良く分かっていません。

 また棹の長い「月琴」と呼ばれるよく似た構造の楽器同士の関係についても,前回述べたように,今のところきちんとした資料に基づいた研究は出されていないようです。
 まあ棹の長い連中(w)は,古代に「月琴」と呼ばれていた「阮咸」にカタチが近いのは自分たちの楽器だからこちらのほうが古く,現代の短い棹の月琴は,うちらの楽器が縮んだモノだろう----てなことを言いたがる,とは思いますが。

 事態はそう簡単に問屋がおろし金。

 そもそも,弦楽器が小さくなる理由は古今,高音が必要か,携帯の便のためかのいづれでしかありません。以前から書いてるように,一部の資料でもっともらしく書かれている 「月琴は清代に音楽の変化に伴い,速弾きする必要から縮んだ」 なんてことはありないわけです。

 台湾にもベトナムにも,長い棹の月琴のほかに,わたしたちの清楽月琴や中国の現代月琴と同様の,棹の短い円形胴の楽器が存在しています。台湾ではとくに名前を違えず,どちらも「月琴」と呼ばれています。分ける必要のある時は長い棹のほうを「南月琴」とか「丐仔琴」と呼んだり,短い棹のほうに「大陸の」とか「北の」とか「小さいほうの」みたいに言ったりするようですね。使用される音楽分野が異なるらしく,伝統的な音楽の演奏ではこの大小の月琴が合奏しているような例をあまり見たことがない。

 台湾の短い棹の月琴は,外見上4弦2コースの中国月琴--古い型の--とよく似ています。大陸の楽器がそのまま使われてたりすることもありますが。台湾製のものでは響き線がなく,胴側が木片の組み合わせではなく,ギターとかと同様に薄い板を曲げたもので出来てる,きわめて軽量な楽器をよく見かけますね。(上画像の楽器などがそう)
 細かいところを言うなら,胴がぶ厚く,棹が大陸で一般的なものよりやや長くなってますね。大陸の月琴では棹上のフレットは2枚が一般的ですが,台湾のは3枚----日本の清楽月琴の関西型に近いでしょうか(関東型,とくに渓派の月琴は,棹が長く棹上のフレットは4枚ある)

 ベトナムでは短い棹の月琴は 「ダン・ドァン」 と呼ばれています。
 前にも書いたように 「ダン」 は弦楽器につく冠詞ですが,「ドァン」 は数の 「4」 のことですので 「四弦」 とか 「四本弦の楽器」 と言った意味になります。
 中国の西南少数民族にも,自分たちの弾く短い棹の月琴の類の楽器を 「四弦」 と言っている例がありますから,地域的にもそちらと同じと考えています。
 これも作りは古型の中国月琴とほぼ同じですが,フレットの形状胴の厚みにやや違いがあります。長い棹の月琴「ダン・ングイット」と同様に,全体にインレイ装飾が入っている美しい楽器をよく見ますね。
 最近はうちのウサ琴みたいにエレキになっているものもあるようです----ううん,興味深い。

 さて,前回も述べたように,唐宋代の阮咸と「月琴」という楽器との関係は,文献上の名称のみの符合で。弦制や楽器としての構造を考えると,長い棹の月琴と古代の阮咸の間の共通項は「棹が長くて胴が丸い」というごく浅い外見上の部分でしかありません。さらに,長い棹の月琴には,短い棹の月琴にも増して文献上での裏付けがない。
 これらの楽器が短い棹の月琴より前から存在していたかどうか,そしてそれが短くなって今の月琴となったということを証明するだけの根拠となるような資料は今のところ見つかっておらず。今ある資料からはどちらの楽器の存在も,それほど大昔までさかのぼることはできません。

 基本的に,庵主は 「阮咸が(長い棹の)月琴」 になったという説をちゃんちゃらアホらしく,可笑しなものとしてしか捉えていません。

 その大きな理由の一つが 「弦の数」 です。

 唐宋の阮咸は4単弦,琵琶と同じく4本の弦がそれぞれ違う音階に調弦された楽器です。
 清楽月琴の弦も4本ですが,2本づつ同じ音に揃えられており,実質,弦が2本しかない楽器と同じです。
 有効弦長が同じだったとしても,4単弦の楽器と4弦2コースの楽器では,出せる音の数がまったく異なります----そうですねフレットの数が同じだとしたら,複弦楽器のほうは単弦楽器の半分ぐらいでしょうか。

 4弦2コースの楽器が4単弦の楽器になることがあるとすれば,その理由はまさにその 「出せる音の数」 です。実際,現代中国月琴は「改良」の結果,4単弦もしくは3単弦で弾くことのできる楽器となっていますね。逆に,4単弦の楽器が4弦2コースの複弦楽器になったとしたならば,演奏家としては,出せる音の数が半分以下になることを許容しなければならないわけです。
 まあ,ふつうに考えるなら……音楽が幼児退行レベルで単純化されたような状況----たとえば 北斗の拳の世界レベルで文明が崩壊した とかぐらいしか原因が思いつきませんね。

 弦を複弦にするのは,同じ弦長でより大きな音を出すためか,音に深みを与えるためか。どちらにせよ演奏上影響の大きな音の数には関係なく,むしろ音色表現の上での必要からで,基本的には4単弦の楽器が複弦化するなら,通常8弦の楽器になるはずです。複弦と同じような効果は,アルペジョーネとかシタールみたいにもっそい共鳴弦を仕込むとか,ドブロみたいにリゾネーターを付けるといった構造によっても得られるので,それ自体は演奏家にとって,楽器の音の数を半分に削ってまで追求するようなものではないと考えられます。

 これ以外にも推論上はいろんな理由で否定できますが,それでも 「4単弦の楽器が音数を半分以下に減らしてまで4弦2コースに変った」 というなら,そこには音の数が半分に減っても問題がないくらいのメリットか,あるいは互換性のようなものが存在している必要が出てくるのですが,残念ながら既存の研究でそれらのことを実験により調査した例は見つかりません。

 ないならば,いっちょうやってみようではないですか。(w)


 さて製作です。
 今回はまず糸倉の孔あけから。

 孔の数は8コ----4本ぶんですね。
 半月の孔は4単弦なら等間隔,4弦2コースなら2本づつ寄せてあけなけばなりませんが,糸巻のほうは基本的に同じ間隔でいいわけですね。

 毎度のことですが,糸巻の孔は単に左右にぶッ通せばよいのじゃなく,使い勝手を考えて微妙に角度をつけます。
 糸巻は,糸倉に対して垂直に出てるよりは,わずかに上下に開き,楽器前面方向に傾いでいるのが,人間工学的に正解です。

 で,糸巻と反対がわ,テールピースのほうですが。

 前回書いたように,台湾月琴のテールピースはベトナム月琴や唐琵琶と同じ凸形のものと,清楽月琴などと同様の半円半月形の2種類があります。正倉院の阮咸のテールピースは楕円形ですが,弦を止める部分は基本的に現代の薩摩や筑前琵琶の覆手と同じような構造になっています。『皇朝礼器図式』の「丐弾双韻」と韓国のウォルグンは凸型ですね。

 今回は資金難からくる材料上の制限(w)もあり,全長800ほどのなかに651の有効弦長を確保しなければならないため,テールピースの取付け位置も胴体のかなり端っこのほうにせざるを得なくなっております。
 円形胴の端っこのせまいスペースなため,横幅もさほど広げられません。こうなると凸型の場合,接着面がせまくなり,安定に若干不安が出ないでもない。
 弦を替えていろいろと実験する関係上からも,より接着面を広くとれ,安定の良い半月形にします----まあそのほうが,ウサ琴や月琴の修理で作り慣れてるのもありますしね。

 さて素材をどうするか----と端材箱をひっくり返してましたが,どうもいいものに当らない。
 それでふと手周りを見渡してましたら,大きさがちょうど手ごろだったため,切削の時の定規としてずっと使っていた紫檀の板材が目に留まりました。

 幅は35ミリ。
 月琴のテールピースとしてはやや小さめですが,現在のベトナム月琴のテールピースとほぼ同じ大きさですね----これでいきましょう。
 横幅は月琴の普通サイズの半月と同じ10センチ,やや縦長の半分に切った木の葉に近い半円形に切りだし,下縁部を整形。

 上面の直線になった上端部から5ミリほど下がったところに,5ミリ幅の溝を一本彫り込んでおきます。
 ひっくり返して,ポケットになる部分も刳っておきましょう。
 糸鋸や回し切りで切れ目を入れて,鑿でほじくり,ヤスリで整えます。

 上面に彫った溝の中心に,2ミリ幅でもう一段溝を彫り込み,底を丸く整形しておきます。
 今回はここにピックアップを仕込みます----そう,基本的に実験とは関係ないんですが,今回の製作楽器はエレキ仕様なのですよ,ハイ。

 え,聞いてない?
 はい,いまハジメテ言いましたから。(www)

 今回使うピックアップはワイヤータイプのピエゾで,本来はギターやウクレレのブリッジのサドルの下に仕込むやつです。
 ギターだとブリッジのところでサドルの上に弦が乗っかって,その下にあるピエゾ----すなわち圧電素子が圧迫され,振動が電気信号に変わるわけですが,月琴のテールピースにはその形式でピエゾに圧をかけれるような場所がありません。

 そこで今回は,糸孔の位置をふつうより若干下げ,この溝に上面よりわずかに高い板を渡して,その下にピエゾを仕込みます。
 半月に弦を結わえると糸の輪がこの板の上にかかり,それが締まってピエゾが圧迫固定されるわけですね。

 ウサ琴1号やカメ琴シリーズでは,共鳴板である表板の裏がわに板型のピエゾを貼りつけていたのですが,それだと胴体が小さいせいもあって,楽器に手が触れたり服が擦れたりするような音までけっこう大きく拾ってしまうんですね。
 こちらとしてはより「弦の音」だけを拾ってもらいたいので,今回このような工作にしてみたわけで----
 まあはじめての工作なので上手くゆくかどうかはお楽しみですが,上手くいったら今使ってるカメ琴なんかも同じ形式に改造しようかと思っております。

 さまざまな実験に対応するため,糸孔は7つ。

 孔の裏がわは,前方向に軽く溝を刻んでおくと,糸を通す時に糸先が半月の外に出やすくなります。関西の松音斎なんかがやってる細かい気遣いの一つですね。

 半月での間隔は4弦2コースの時が外弦間27,内21,内外3ミリ。
 4単弦の時で8~9.5(現の太さが違ってくるため)。
 棹が細いので,山口のほうでの間隔は4弦2コースと4単弦の時でほとんど変わりません。4単弦の時に内弦が糸1本分中心がわにズレるくらいかな?

 もとよりマルチな楽器にするつもりはなく,実験後はこの楽器に最も合った弦制のものに調整し直すつもりですので,不要な糸孔・糸溝はその折埋めてしまってもいいでしょう。


 エレキにするのは既定路線なわけですが。

 もちろん生音の検証も実験項目に入ってますので,カメ琴のようなシースルーのサイレント楽器ではなく,胴体がちゃんと箱になったエレアコ・スタイルでまいります。

 まずはレイアウト。
 なにをどこに置くかを決めます。
 表板上に取付けられる部品は,電源スイッチ,スピーカー,ボリューム抵抗,外部出力のジャックとスピーカー or Line-OUT の切り替えスイッチ。

 こういう時は,紙をそれぞれの部品の大きさに切って,福笑い式でやるのがいちばん分かりやすいですね。
 電源となる9Vの箱型電池とアンプの回路は裏板のほうにつける予定ですので,表板の部品が干渉しないように,軽く検証もしておきます。
 ピエゾからのワイヤーは,表板に専用の小孔をあけるとか,半月内の陰月なりから内部に取り込むことも考えたのですが,後でピエゾ自体をより良いものに交換することも考えて,ゾロっとそのまま出しておくことにしました。胴側,スピーカーとボリュームポッドの中間くらいにミニプラグを通す孔をあけて,ここに挿しこみます。
 楽器をアコでしか使わないようなときは,ワイヤーごとピエゾを取り外してしまってもいいでしょう。

 各部品の位置が決まったところで穴あけです。
 いちばんデカい,スピーカーの穴からまいりましょう。

 まずは中心位置に小径のドリルをブスリと通し,それを目印に板の裏がわにコンパスで,表に開ける穴より2ミリほど大きな円を描きます。
 つぎにその円の内がわに溝を彫り,表から所定の大きさですっぽんとくり貫き,周縁を軽く整形。

 んで,表板の端材を円形に刻んで取手をつけ紙ヤスリを貼ったものを,段になった板裏にハメこんでグリグリグリ……っと。
 ----ホイ,キレイなクボミができました。
 ここにスピーカーがはまるわけですね。

 電源スイッチは最後に表がわからハメこむだけなので,孔はただの穴でいい。
 ボリュームのノブと Line-OUT のジャックのところは,動かしたり抜き差ししたりするんで,補強しとかなきゃなりませんね----両方とも,スピーカーの板裏と同様に一段彫り下げて底を均し,薄く削った黒檀の板を貼っておきます。
 切り替えスイッチはポッチが少し出るくらいでいいので,小さな長方形の孔を穿ち,操作しやすいように長辺の左右をすこし丸く抉りました。

 まだぜんぜんですが----ここまでの作業の確認とモチベ向上のため,ちょっと仮組みしてみましょう。

 といったあたりで,今回はここまで----


(つづく)


楽器製作・名前はまだない(2)

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斗酒庵ひさびさの製作 の巻2019.10~ 楽器製作・名前はまだない(2)

STEP2 月琴長いか短いか

 「月琴」 と名づく楽器の中で,韓国の月琴(ウォルグム),ベトナムのダン・ングイット,そして台湾の月琴(丐仔琴)は,庵主のやってる清楽月琴や現代中国月琴とはちがって,棹のながーい楽器です。

 韓国の月琴(ウォルグン・ノルグム) は唐宋代の円胴の「阮咸」を,宮廷音楽用の楽器としてとりこんだもの,とされています。
 「阮咸」でなく「月琴」というのも,お手本とした唐宋代の史書や音楽書に「阮咸は "月琴" とも呼ばれた」という記録があるところから持ってきたものでしょう。
 とはいえ唐代の実物である正倉院の阮咸に比べるとかなり棹が太く,幅もあります。資料では「郷琵琶」*と同類の楽器とされており,演奏上の用途も近かったようですので,ネックの形の差異は,より琵琶に近い四単弦の奏法を可能にするための変化であったか,あるいは彼らがもともと継承していた直頸円胴の琵琶類にあたる民族楽器を,唐宋の楽器に付解したものだったのかもしれません。

*郷琵琶:ヒャンピパ,5弦直頸で梨型胴,宮廷音楽で朝鮮固有の音楽を奏でるための楽器として使われた。

 この2種の楽器は,名称上また外見的には以下に紹介する長棹の「月琴」との共通項がありますが,弦制や構造は異なります。
 特に,台湾やベトナムの「月琴」は,円形の胴体に着脱可能な状態で棹を挿している「スパイク・リュート」----清楽月琴や日本の三味線などと同じ構造になっていますが,唐宋の阮咸や韓国の月琴の棹は,ギターなどと同じく,胴体に接合固定されており基本的に着脱はできません。

 ベトナムの月琴(ダン・ングイット) と 台湾の月琴(丐仔琴) はともに2弦の弦楽器。

 外見上も良く似ていますが,ベトナム月琴のほうが一回り大きく,台湾の月琴が80センチほどなのに対して,全長は1メートルを超えます。
 弦高も高く,フレットは最大で3センチほどの高さがあり。また棹がきわめて細いので(幅2センチほど),フレットの頭は日本の筑前や薩摩琵琶のように左右が広がっています。

 糸倉から弦を受けるトップナットも,筑前や薩摩の乗絃に似た鳥の頭のような大きな塊になってますね。

 台湾の月琴の山口(トップナット)は清楽月琴や中国月琴と同様の形状です。弦高もベトナム月琴ほど高くはありません。
 1~4フレットまでが中国琵琶と同じ断面オニギリ型のブロック状----「相(シャン)」----になっています。
 参考画像の楽器のテールピースはベトナム月琴と同じになっていますが,清楽月琴と同じ半円形のものもありますね。

 どちらも調弦は清楽月琴と同じ4度あるいは5度ですが,ベトナム月琴が低音を響かせその余韻を楽しむ----薩摩琵琶みたいな用法がメインなのに対して,台湾月琴は三味線に近い弾き方で,軽快に歌に合わせる伴奏楽器として使われています。
 地域的な交流からもその外見や構造からも,この二つの楽器に何らかの関係性があるだろうことは間違いありませんが,いまのところまだそれを詳細に追及・解明した研究は出てきていません。

 台湾の月琴の古いものに関しては資料が少ないので,この楽器がむかしからこうだったかどうかについては分からないのですが。
 ベトナム月琴はかつて4弦2コース……清楽月琴と同じ複弦楽器であったようです。いまもベトナム国内のどこかには,そうした古い形式のままのものが残っているのかもしれませんが,正月に貼られる年画に出てくる月琴はいまでも4弦の楽器として描かれていますし,実際,戦前に収集された古い楽器には,外見上今のベトナム月琴とほぼ同じながら,糸巻が4本ささっているものが見受けられます。
 また現在もその糸倉には糸巻4本分の孔が開けられていることが多いようですね。実際に使われるのはそのうちの2組で,残りは実用性のない装飾として開けてあるだけですが。

 清朝の宮廷音楽に関する資料である『皇朝礼器図式』には,そうした古いタイプのベトナム月琴のご先祖様だろうと推測される 「丐弾双韻(かいだんそういん)」 という,円胴長棹4弦2コースの楽器が紹介されています。
 ベトナム月琴を現地の言葉でダン・ングィットといいますが,この「ダン」は弦楽器にかかる冠詞,「ングィット」がお月様のことです。「丐弾双韻」の「丐弾」も「ダン」と同じく弦楽器につく冠詞ですが,「双韻」のほうは音訳語なのかあるいは複弦楽器であるという意味の漢語をくっつけただけなのかは分かりません。
 ちなみに文中で 「月琴に似ている」 と書いてありますが,ここでいう「月琴」は短棹円胴の現在の月琴でも,唐宋の阮咸の異名としての「月琴」でもなく,当時の清朝宮廷楽で「月琴」として使われていた,次に紹介する長棹八角胴の楽器を指します。どちらも「4弦2コースのフレット楽器」なので「似ている」と言っているだけですね。

 日本の 明清楽でいうところの「阮咸」は,正倉院の「阮咸」等とは違って,長棹八角胴,上の『皇朝礼器図式』に見える清朝の「月琴」に近い楽器です。現代中国でこの類の楽器は 「双清(シュワンチン)」 と呼ばれています。
 この楽器は清朝の宮廷楽では蒙古楽(モンゴル由来の音楽)を奏でるための楽器として使われていました。阮咸にしろほかの「月琴」にしろ,だいたいは南方に起源がある楽器ですが,これだけは北から来たものなのかもしれませんね。

 月琴と同じく4弦2コースの複弦楽器ですが,月琴がE/Bなら阮咸はB/E,C/GならG/Cという具合に,調弦は清楽月琴の調弦の高低をひっくりかえした間4度とされています。

 日本の清楽家の間では,わたしたちが使っている短棹円胴4弦2コースの「月琴」は,「阮咸から派生した楽器である」 ということになっていますが,ここでいう「阮咸」が,丸い胴体に長い棹をつけた唐宋代の「阮咸」なのか,上にある八角胴の「阮咸」のことなのかについては,誰もはっきりと書いておりません。そもそも今のところ大陸のほうの資料では,この長棹八角胴の楽器が「阮咸」とも呼ばれていた,という記述は見つかりません。
 日本の清楽家がこれを「阮咸」と呼び始めたのは,清楽の前に流行っていた「明楽」で「月琴」と呼ばれていたのがこの長棹八角胴の楽器であったことから,短棹円胴の「月琴」の前に「月琴」だった楽器,と言う意味で(史書などに見られる記述を逆にとって)呼び始めたのではないか,と庵主は考えています。

 『清風雅譜』などの口絵から見ると,清楽家のイメージしていた 「月琴の先祖の "阮咸"」 というのは,中国の絵画などにも出てくる正倉院タイプの----円胴長棹の楽器であったろうとは考えられますが,この史書でいう唐宋代に流行した「月琴」とも呼ばれた「阮咸」というのはあくまでも 「4単弦(もしくは5弦)の変形琵琶」 でしかない楽器です。

 4弦13~15柱で,その構造上も,音階や奏法上も,短棹円胴4弦2コースの複弦楽器である「(短い棹で円形胴の)月琴」とは ほとんど共通項がありません。
 そもそも,多くの記事の引く「(短い棹の)月琴の古名は阮咸である」というのは,たいていこうした史書・古資料の記述をムリヤリ短くちょん切って,都合の良い部分だけ引用したもので,それぞれの原典の述べる内容からは短棹円胴の「月琴」と,これら古代の楽器との接点は微塵も見出せません。


 ----というところで庵主の真面目容量が尽きましたので,実作業の報告に戻らせていただきます。(w)

 今回の製作でもっともはずせない部分は,「有効弦長651ミリ」 という一点になります。

 正直なところこれさえ合っていれば,角材に糸を張っただけの棒楽器でも良いのですが,ついでにいくつか解決しておきたい疑問・問題がありますので,いちおう「月琴」と名づく楽器の領域内のカタチにいろいろと詰め込ませていただく。
 結果,出来上がる楽器は,ネコミミ・メイド服に白のニーソにランドセルと,いささか属性詰め込み過ぎのシロモノになってしまうとは思いますが,はてさて,どうなることやら。

 棹に延長材を接着する前に,棹と胴体の一次的なフィッティングは行っていますが,延長材が接着されたところで実際に棹を抜き挿ししながら基部や接合面をさらに加工,棹の基部が胴体により密着するように調整してゆきます。
 棹の基部は切り出された段階では直線・平面ですので,これを丸い胴体にぴったりフィットするように曲面に削ってゆくわけですね。
 棹基部の密着具合と同時に棹自体の傾き加減も3Dで確かめながらの作業。けっこう精密で時間がかかります。修理でもいちばん手間と時間をかける部分のひとつですね。

 つぎに内桁を接着します。

 ここまでは棹の調整の関係で接着していませんでした。棹の加工の具合によっては,大きく変更を加えたり,最悪作り直してもいいくらいの部品ですんで,フィッティングが一段落ついて,ようやく固定できますね。
 内桁そのものは安価な針葉樹材の部品ですし,その加工----たとえば表面処理,あるいは音孔の有無とか大きさ----も実のところ楽器の音にあまり影響はないのですが,これが胴体の各部としっかり接着されているかどうかについては,音にも楽器の強度にも大きな影響がありますので,接着面の調整やニカワの塗りは,けっこう慎重に行います。
 両端にクランプをかけ,中央部分に重しをのせて一晩。

 重しをはずしてもう一日ばかり,用心のため接着後の養生をかましたところで。
 製作前半戦の第一難関 「表板の削り落とし」 に突入です!

 表裏の桐板は厚6ミリ。
 これを全面1ミリ落として,厚さ5ミリ程度におさえたいと思います。
 電動サンダーとかあればものの数秒で終わる作業でしょうし,最低でもグラインダーがあればさして苦労もないことなのですが,庵主の古代貧乏工房(w)にそのようなものがあろうはずもなく(w)いつものとおり,恐怖の手工具・全手作業で行います。

 音もたちますホコリもスゴい----さすがに,四畳半一間でできる作業ではないので,ご近所さんに配慮しつつお外で作業いたしましょう。
 板の表面に半丸ヤスリでキズをつけ,そのキズの直角の方向から削りカンナやペーパーで削り落としてゆきます。
 ある程度削れたら,ペーパーを一枚丸ごと貼りつけた擦り板の上でこすって均し,曲尺で水平を見ながらさらにザリザリと……

 ひぃ…ひぃぃ…うぷぷ。

 たちのぼるホコリで息も出来ない。
 汗かいたところにシャツの隙間から入り込んだ細かいオガクズがはりついてムズかゆい。
 けっこうな拷問ですよ。

 仕上げに削っては棹挿して確認を数度----胴板の端が棹の指板の端とほとんど同じ高さになるところまで削ってゆきます。
 この後の棹と胴体のさらなるフィッティングである程度は調整できるんで,この時点では完璧を目指さなくてもよかでしょう。

 ----というところで次回へと続く!!


(つづく)


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楽器製作・名前はまだない(1)

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斗酒庵ひさびさの製作 の巻2019.10~ 楽器製作・名前はまだない(1)

STEP1  楽器はステキな実験場

 ひさびさの 「楽器製作」 となります。

 いつぶりだったかな~,とあらためて調べてみますと。
 カメ琴2号「ルナ」を作ったのが2013年……うむ,もう6年もやっておらなんだか。

 もちろん庵主,ものづくりはけしてキライ,ではありませんが----そもそも庵主の楽器作りは,月琴の構造だとか工程だとか材質による差異だとかを調べるための実験が主目的。紙資料や既存楽器の修理からでは得ることの出来ない部分を補完するための作業です。
 2006年から4年ばかりの間に,ウサ琴シリーズを20面近くも作りまくり,そちら方面での主要な問題はだいたい片付いてますので,またなんにゃら新たな問題や疑問が生じてこない限り,再開する必要があまりないのですよね,ハイ。

 まあそれでも,いつでも製作にとりかかれるように,棹や胴体の素体は複数面ぶんこさえたりはしてたのですが----作り置きの棹なんか,何本か首ナシ月琴の修理に使っちゃったりしましたね。

 今回の製作は,このところの研究から生じてきた新しい疑問への挑戦。

 とりあえず小難しいことは,これからの製作報告の中で明らかにしてゆきましょう。


 さて,では6年ぶりの製作,作業開始です。


 まずは棹です。

 上にも書いたように,ウサ琴用に作っておいた棹の作り置きもまだ何本か残ってるんですが,今回は使いません。

 今回の楽器の棹の材料はこちら----

 長いのは米栂(べいつが 針葉樹)の角材,25ミリ角で長40センチ。

 糸倉はカリン(ブビンガ)で,以前八角胴の阮咸をもう1面作ろうと考えて,切り出してあったもの。
 厚さ1センチ。
 かたーい材なんで切り取るのにエラい難儀したキオクがありますね。そのせいでしょうか。片方の下端,少しだけですが欠けちゃってます。ここはあとで継いでおきましょう。

 指板はむかし銘木屋さんからもらってきた3ミリ厚の黒檀を使用。
 赤太(黒檀になりきれなかった部分)が混じってたため切り落とされた部分ですが,ほとんど最高級のマグロ黒檀ですよコレ。
 大きさや厚みがちょうどよかったんで,ずっと定規がわりや板を接着するときの当て木に使って重宝してました。
 赤太の部分に少し虫食いがありますので,唐木粉をエポキで練ったパテで軽く埋めておきましょう。

 あとてっぺんの間木として,端材袋から見つけたメイプルの欠片を少々使います。
 ちょいと予算がこころもとないので(w),なるべく材料箱に入ってたモノでこさえます。

 まずは米栂の角材の先端を凸に削り,さらに左右の角を三角形にえぐって,糸倉左右の板を挿しこむように組み込みます。
 糸倉の幅はおよそ3センチ。
 棹本体より5ミリほど太くなったこの糸倉と棹との接合部分が,山口(トップナット・乗絃)の乗る 「ふくら」 となります。

 この「ふくら」のところから,胴体に挿しこむ基部の手前まで,棹の上面に指板として黒檀の板を貼りましょう。
 糸倉の材は,もともとほかの楽器を作るためのものだったので少し大き目になってます。
 少し余分に切り欠いて,指板の先端が少し糸倉に埋まりこむ感じになるよう接合しますね。

 糸倉左右の接着に一晩,指板に一晩。

 さあ,ただの角材になにやかやへっつけただけのシロモノを 「弦楽器の棹」 にしてゆきましょう。
 指板左右の余分をざっと切り取り,糸倉も切り削ってカタチをととのえてゆきます。

 棹の本体部部分はまだ四角いですが,だんだん楽器の部品っぽくなってきました。
 棹裏を角材の四角から船底U字型に,半分から上(糸倉がわ)はそこからさらにシェイプして,V字に近いU字型に削ります。

 角材がだんだん楽器の棹になってゆく----庵主の知る限り,このあたりの作業が嫌いな楽器職はいないと思いますね。(w)

 棹背全体を整形する前に,胴体に挿しこむ基部に近いところに小さな部材を足します
 今回の棹材は25ミリ角と細いので,そのまま全体を均一にU字なりV字に削っちゃうと基部の部分もいっしょに細くなります。
 そうするとまあ,そこから削り出すホゾの部分はさらに小さく細くなってしまうので,接合部の強度や安定に不安が出てしまいます。
 そこで基部に近い部分を少しだけ厚くして,棹裏の整形加工によりこの部分が細くなってしまうのを防止しようというわけです。
 格好としては,ギターでいうところのネック基部の 「ヒール」 ってやつみたいになりますね。
 高さ1センチほどの端材ですが,この付け足された余裕のおかげで,棹背の峰部分をよりせまく,握りやすく滑らせやすい棹に削ることができます。

 それやれ削れ!ショコショコショコ………

 ……まあ,まだちょっと太めちゃんですが(w)

 棹の整形がだいたいできたところで,基部を刻んで胴体への差し込み部をこさえましょう。
 指板面から10ミリ,棹背がわと左右を3ミリくらいづつ落として四角い凸のカタチにととのえます。
 幅2センチ,長3センチ,厚さ1.2センチ----ヒール追加のおかげで,なんとか実用に耐えうる太さですね。

 胴体はウサ琴・カメ琴でもおなじみのエコウッド。

 厚さ5ミリほどのスプルースの板をほぼ円形に加工したもので,直径は清楽月琴の一般的なものからすると5センチほど小さい31センチ。
 もとは5センチほどの幅があるのですが,これを横半分に切り分けたものを1面ぶんとして使い。接ぎ目のところにエンドブロック,その反対がわにネックブロックとして2センチほどの厚さのカツラ材を貼りつけて補強してあります。
 これに内桁を入れて表裏に桐板を貼れば,月琴の胴体としてほぼ完成ですが,今回はまず表板だけを貼っておきます。

 このあたりからふだん通りのニカワ作業になります。
 やや薄めに溶いたニカワを,お湯をふくませた接着面にじゅうぶんにしませ,クランプをかけて一晩。

 余分を切り落とし,さらに削って整形します。
 本格的な整形は裏板接着後にやるんで,とりあえずは棹の入るネックブロックの周辺だけしっかり削ってあれば良いかと。

 棹孔を貫きます。

 まずはそこらのものを組み合わせて作業台を……見栄えは悪いですが,これでじゅうぶん。
 胴体がしっかり固定できてりゃなんの問題ありません。
 ドリルで貫き,彫刻刀やヤスリ,回し挽き鋸などで整形します。

 ちょっと棹挿してみましょう。

 表板がわで指板の間に1ミリほどの段差が付いてますが,後で表板を削る予定なのでこれは問題ナシ。
 裏板のほうには削らないそのままの厚さの板を貼りますので,とりあえず余った板を当て,ヒールの高さを調整しておきましょう。

 うむ,5ミリほど高かったみたいですね。

 つぎは内桁と延長材です。

 内桁はヒノキ,今回は1枚桁です。
 真ん中に棹の受け孔・左右に音孔をあけます。
 取付け位置は中央よりすこし上になります。そこにぴったりおさまるように,両端を胴の内面に合わせて少し削っておきましょう。

 延長材には端材箱から出てきたイチイを使いました。
 針葉樹の中でもトップクラスの硬さとしなやかさを持つ材----切るのがタイヘンでしたあ。
 棹の接合部にV字の切れ目を入れて,きっちりハマるように加工した延長材を接着します。


 延長材が接着されたところで,ちょっと組んでみましょうかね。
 このあと,棹と胴体のフィッティングをするので,内桁はまだ接着していません。

 ここまでのところ,製作中の楽器の全長は820。
 棹上の指板相当部分の長さは400,胴体はすでに書いたよう310ですから,指板の先っぽから楽器のお尻までの寸法は710ミリ。

 ここに今回は651の有効弦長をつめこむ予定。

 そうすると,半月(テールピース)と山口(トップナット)に使える余裕は,合わせて5センチくらいしかないわけですね----山口にだいたい1センチ,あとは半月を楽器のお尻がわにギリギリに下げて……さて,どうしたものか。

 ----と,いったあたりで次回に続く。


(つづく)


清楽月琴WS@亀戸 2019年11月!!

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斗酒庵 WS告知 の巻2019.11.23 月琴WS@亀戸! 11月場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 11月 のお知らせ-*


 2019年,11月の清楽月琴ワークショップは,連休初日11月23日・土曜日の開催予定!

 もうあと2回で今年も終わる………
   令和元年の〆に,月琴でも弾きにきませんか?
     (上目づかい)


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費は無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。

 美味しい飲み物・お酒におつまみ,ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)


 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 
 現在,お嫁入り先募集中の楽器は60号「碧空(あおぞら)」。


 古い月琴欲しいというお方も,試奏がてらにぜひどうぞ~。
 楽器は実際に弾いてみてなんぼ----
 触って弾いて,相性を確認するのがいちばんです。

清楽月琴WS@亀戸 2019年10月!!

20191019.txt
斗酒庵 WS告知 の巻2019.10.19 月琴WS@亀戸! 10月場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 10月 のお知らせ-*


 2019年,10月の清楽月琴ワークショップは,10月19日・土曜日の開催予定!

 はやいもので今年の月琴WSも
       残るところあと3回……
    秋の一日,古い楽器でも触りながら,一杯……
            う~ん,ひたぶるにものがなし。


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費は無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。

 美味しい飲み物・お酒におつまみ,ランチのついでに,月琴弾きにどうぞ~。

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもお気軽にご参加ください!

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)


 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 
 現在,お嫁入り先募集中の楽器は60号「碧空(あおぞら)」。


 古い月琴欲しいというお方も,試奏がてらにぜひどうぞ~。
 楽器は手のもの----
 やっぱり,実際に触って弾いて,相性を確認するのがいちばんですからなあ。

明笛について(25) 明笛38号(3)

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛38号(3)

STEP3 唄口の中心は愛をうたう

 さて,問題の明笛38号。

 貫きなおした唄口にはいまだ調整の要がありそうですが,とりあえず音は出る状態となりました。まだ「完全」とは言えませんが, 「鳴らない筒」 から何とか 「笛」 といえるモノにまでは戻ってくれたかと(w)

 もともと,管体は新品のように綺麗な保存状態でしたが,唄口の修理調整のため,その周辺を中心にけっこう傷をつけてしまいました。
 また,古いタイプの明笛としては珍しく,材料として表層の皮が付いたままの竹が用いられていますので,このまま使用を続けると,46号のように温度湿度の差によってヒビ割れの生じる懸念があるため,管全体に薄く保護塗りをほどこしておきたいと思います。

 月琴でもそうですが,楽器の修理では,切った貼った削った組んだの作業より時間と手間のかかるのは,染めや塗りの工程です。
 いちど塗ったら次は三日後とか,けっこうなインターバルが空きますので,その合間になくなっている管尻のお飾りを作っておきましょう。

 材料はブナパイプ。

 実のところ,入手直後に素体の状態まで加工してあったのですが,その後,笛本体と同じくずっと放置しちゃってましたね。


 まずは整形。
 作りかけのお飾りは,ラッパの広がりが少しキツめでした。管頭のお飾りも笛全体も,どちらかといえばスマートな感じですので,それに合わせて少しすぼめます。

 つづいてスオウで赤染め。
 ブナパイプは,このところ使ってる¥100均めん棒にくらべると,若干染まりにくいですね。
 塗っては乾かしで,三日ぐらいかけて染め上げ,下地完成。


 いちど磨いて,黒ベンガラとオハグロで二次染めします。
 頭飾りと色合いが近くなるまで染めを調整し,乾いたところでカシューで塗り固めました。
 赤っぽい部分は,実のとこ磨きの時にちょっとガリッっとやっちゃった(w)箇所なんですが。何か意図せずしてイイ感じになりましたのでそのままにしときます。

 あちこち削り直しているうちに,取付が多少ユルくなってしまいましたので,例によって管の取付け部にニカワで和紙を巻いて調整します。

 メイン作業の管体の保護塗りでちょっと失敗して,ほぼ完了していた塗りをいちどハガして塗り直すというトホホがあり,予定よりかなり時間がかかってしまい,ワークショップでのお披露目もできませんでしたが,帰省前ギリギリの七月末になってなんとか完成しました。

 さあて,駆け込み試奏とまいりましょう!

 音階は----

 ○ ■ ●●● ●●●:合 4B+30
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5C#+34
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5Eb
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5E+35
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5E-5F
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5F#+25
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺  〃
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5G#+10
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5G#+25
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5Bb+35
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5Bb+25
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5Bb+30

 西洋音階の +30 のあたりでかなりきっちりとまとまっていますね。
 清楽の音階は最低音をドとするとミにあたる音,3番目の音が 20~30%低めというのが定番なんですが,これも 5Eb プラマイ0でちゃんと体現しています。

 ちなみに月琴の場合,最低音は なので3つめの が20~30%低めとなりますが, と同じフレットの高音弦がわの音は ですから,当然これも同じように低くなります。つまりは7音階の3・7番目が西洋音階のそれよりやや低い,というのが清楽音階の特徴。この笛の場合,上述のとおり はバッチリ。 は右手全開放の指遣いだとやや高めになりますが,中指をおろしたほう (右手が○●○のほう) だと誤差の範囲----教則本でもこちらの表記のほうがやや多いようですね。

 唄口の工作はめちゃくちゃでしたが,孔の配置に使用されたたスケールもしくはテンプレートの精度が良かったんでしょう。かなり正確な清楽音階になっているかと思われます。

 管体が細めな割りには音量もそこそこ出ますし,勘所が合えば笛全体が震えるような状態にもなりますのでピッチも合っているようです。
 ただし,唄口の小さな古いタイプの笛なので,篠笛などにくらべると多少癖があり,慣れないと吹き始め,全閉鎖からの低音が少し出しくい傾向があります。
 まあ曲前の音出しで,出しやすい右手開放の高音からはじめ,低音域での息の方向や笛の角度を少し確認しておけばいいことですし,いちど身体がこの笛に最適の構えさえつかんでしまえばさほどの問題もなかろうかと思われます。


(おわり)

明笛について(25) 明笛47/48号(3)

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斗酒庵 ひさびさにまたまた明笛を買う(W) の巻明笛について(25) 明笛47/48号(3)

STEP3 彩湖ぱす

 7月もおしませってきましたので。

 仕事先から一日おヒマをもらい,朝から近所の公園へ。
 修理の終わった笛の試奏と,音階の計測に行ってまいりました。

 これに合わせて新しい計測表も作成。

 ふつうだと考えられない----というか,ふつうの人は考えない変態的な運指も含め,「可能性」として吹いてみます。

 金属やプラスティックの笛と違い,竹笛の場合はほんの小さな管の状態・加工の差が原因となって,通常のピタゴラスさんでは考えられないような現象が生じちゃってることもなきにしもあらず……というか,そういう結果をもとに管に異常がないか,あらためて確かめるのも目的の一つです。

 まずは47号タマネギ----

 ○ ■ ●●● ●●●:合 5C-5C#
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5D-5Eb
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5E+30
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5F#-25
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5F#
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5G#+5
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺 5G#-15
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5Bb-10
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5Bb
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 6C-30
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 6C-35
 ○ ■ ○●● ○●●:凡 5B+40

 「上」 から 「工」 には2種類,「凡」 には3種類の指遣いがあります。
 おもに教則本による違いですね。このほかに長原春田らの提唱した,全閉鎖を 「凡」 とする音階法がありますが,清楽の音階とは関係がないので,ここでは用いません。

 う…うむ,波瀾な音階ですな。
 全閉鎖と1孔開は音の安定がイマイチ。「上」 以降は比較的安定してます。
 「工」b なことから,筒音を # としての配置だったと思われますがさて。
 次にいろんな指遣いを呂音の息遣い(ふつうに吹いた場合)で試してみます。
 やはり筒音が # だと,半開きをしないと は出せませんでしたが,

  ○ ■ ●●○ ●●●

 の運指で,+20 ほどで安定した音が出ました。 

  ○ ■ ●○● ●●○

 もしくは

  ○ ■ ●○● ●○○

 という変態的運指で比較的安定した音が得られます。
 呂音の最高は----

  ○ ■ ○●● ●●●

 で,6C#-35 ,やはり # のちょっと高めなあたりが基音となってるみたいです。




 続いて48号。これは吹きやすい笛ですね。

 47号と比べると管自体がやや太めなのもあり,比較的軽めの息で安定した音が出せます。
 長さからして,もしかすると全閉鎖BかBbの清楽笛かも----と思ってたんですが,全閉鎖Cのドレミ笛でした。

 ○ ■ ●●● ●●●:合 5C
 ○ ■ ●●● ●●○:四 5D+30
 ○ ■ ●●● ●○○:乙 5E
 ○ ■ ●●● ○●○:上 5F+35
 ○ ■ ●●● ○○○:上 5F-5F#
 ○ ■ ●●○ ○●○:尺 5G+20
 ○ ■ ●●○ ○○○:尺  〃
 ○ ■ ●○○ ○●○:工 5A+25
 ○ ■ ●○○ ○○○:工 5A(やや不安定)
 ○ ■ ○●○ ○●○:凡 5B+15
 ○ ■ ○●● ○●○:凡 5B-30
 ○ ■ ○●● ○●●:凡  〃

 呂音の最高は----

  ○ ■ ○●● ●●●

 で,6C ピッタリくらいが出せました。
 高音域が少々安定しない時がありますな,あと,ちょっと甲音が出しにくい。
 吹きはじめはほとんど出ませんで,10分ほどやってたら出るようにはなりましたが多少安定が悪い。
 大甲音(2オクターブ上)は無理っぽいなあ。


STEP4 調整湖の調整

 ----修理は終わっても,「調整」は続きます。
 楽器の場合,外見上また機構的に問題がなくなったとしても,「音」との関係はまた別物。そこからまた,最適な音を出すための細かな調整を経ていなければ,音を出す道具としての復活はあり得ません。

 前回修理の46号も,修理後の試奏の結果を踏まえて唄口の向こう岸や反射壁のへりを小整形したら,かなり吹きやすくなりました。庵主はこの「調整」というのを「穴を埋める」とか「ヒビ割れを継ぐ」といった修理工作とは,まったく別次元の作業だと思っています。時には「音のため」にせっかく修理した箇所を,自分自身を呪いながら(w)破壊したりしなければならないこともありますしね。

 47号は試奏の結果,音階等にさほど問題はない(全閉鎖が から # の中間である事を「問題」としないなら)ものの。呂音で吹いている時,響孔の効果とは関係なく倍音のノイズが混じることがありました。
 この手の異常の原因はたいてい唄口にあるため,あらためて調べてみますと,ちょうど向こう岸の真ん中あたりの縁に,小さなキズが見つかりました。
 おそらくここで息が乱れて,出る音にノイズをかぶせちゃってたんでしょうねえ。

 エポキを盛って補修します。

 見た感じ,ひっかき傷程度の浅いものだろうと思ってたんですが,削って整形してみるとこれが意外と深く,底が頂点であるV字型の谷間のようになってました。
 おそらくは何か四角くて硬い物体……たとえば机の角のようなものにぶつけた痕かと愚考いたします。

 唄口の周辺は笛で最も大事なところなので,ふだんこんなキズがつかないようにいちばん注意する箇所だと思うんですが……この笛の状態や状況をいろいろと考えてみますと,この事故の原因はおそらく----タマネギでしょうねえ。
 前回も書きましたが,アレ,ちょっと重すぎるんすよ。
 演奏姿勢で構えてる時はまだいいんですが,ふつうに持って歩く時とか少しバランスが悪い。
 それで取り落とした時にはアタマのほうから行きますわな,その結果かと。




 48号は保護塗りをした唄口内壁の塗膜に浮きがあり,すこし凸凹していましたので,下地になっているオリジナルの塗料層までいちど削り落とし,均してから再度塗り直しました。

 あとは唄口向こう岸の縁にあった微小なキズを補修。
 47号と同じく,このあたりのキズは微細なものでも,ノイズや不調の原因になることがありますので,ちょっと丁寧にやっておきます。
 これもまた小さい割に意外と深かったため,エポキで充填。練ったエポキをキズの上に盛り,少し固まってきたところで,上からクリアフォルダの切れ端をかぶせて指で押さえつけ,キズの奥まで確実に押し込みます。
 一晩置いて整形----せっかくの黒々ツヤツヤにキズつけたくないので,きわめて精密に加工(w)。

 キズの補修後,47・48号ともに作業部分を塗り直し,磨きなおしました。


STEP5 調整池の伝説


 Web記事でときどき見かける笛子の伝説に,

 管尾の「飾り孔」は紙を貼って笛の調子を変えるためのもの

 ----というアホゥなものがあります。

 実物の笛を見て,ちょーっと考えていただければ分かると思うのですが。
 笛子・明笛の筒音すなわち笛の音の高低は「裏孔」の位置で決まります。一般の笛では,唄口から管尻の先端までの長さでその音の高さが決まりますが,笛子や明笛の場合にはそれより手前に空気の漏れる孔があいてるわけですから,そこで音が決まっちゃうわけですね。
 そして問題の2コの「飾り孔」は,たいてい「裏孔」より管尾がわにありますので,ピタゴラスさんから言ってここを塞ぐことで大きくナニカが変わることはふつうありえません。

 しかしながら,庵主とて。左腕に邪龍が封印されている人もおり,右目を解放すると世界が滅ぶという人のいることくらいは知っており,そのていどにはロマンを信じております。過去の笛でも何かの原因で,ピタゴラスさんに対し叛乱を起していた例がないではないので,いちおう確認してみることにします。

 47号で実験してみましょう。

 まず管表の「飾り孔」だけをふさいだ場合ですが
 ----ピタゴラスさんは偉大なり(w)

 計測結果は何も変わりません。

 次に飾り孔と裏孔をぜんぶふさぎます。
 あたりまえですが全閉鎖の音が低くなります……4B+35 くらいになりましたね。
 おお,これは確かに調子が…と一瞬思い,第1孔をあけてみます。

 従前と変わらず D の音が出ました (物理学的にはwあたりまえ)

 あたりまえのハナシ,「調子が変わる」というなら,全閉鎖が になれば第2音も なり # になってなきゃならんのです。このままだと,第1音と2音の間が長2度あいちゃってるわけですね----どこの超古代音階ですか?

 ほかいろいろなパターンでやってみましたが,まあマトモな音階になることはなく。
 Webの記述とそのコピペ虫どもが,こういう簡単な実験もせずにテキトウたれ流し,拡散してるのが判明したわけですが。

 ただ,この47号の場合。

 マステで裏孔を半あけ状態にすると全閉鎖が のプラマイ10くらいで安定します。その状態で使うと,最低音がCの比較的マトモなドレミ音階になりました。(デフォルトのあまり嬉しくない最低音wは上記事参照)

 ----これがまあ今回の実験のケガの功名,みたいなもので(w)

 この「裏孔」には通常,飾り紐が通されます----ということはですな。
 紐が少し太めのものなら,紐をかけることでマスキングテープと同様の効果があるかもしれないわけ……まあ作りから見て,原作者がそこまで考えてたとは思えませんが

 また,最初のほうの記事でも書いたように,47・48号の前所有者は管尾の飾り孔や裏孔を絶縁テープでふさいでいたようですが,これが「調子を変える」という目的のものでなかったことは,上の実験からも明らかで。さらに47号の場合,テープによる日焼け痕の痕跡は,裏孔のほか管尻と管頭のギリギリにあるので,おそらくは47号のともまた違って,取付がユルユルだった頭尾のお飾りを固定しようとしたものであろうと思われ,そこにWeb記事や庵主の実験のように「管の調子を変えよう」という意図はなかったものと考えられます。



(おわり)

清楽月琴WS@亀戸 2019年9月!!

20190921.txt
斗酒庵 WS告知 の巻2019.9.21 月琴WS@亀戸! 九月場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 9月 のお知らせ-*


 2019年,9月,ジャングル草刈りから帰省直後(w)の清楽月琴ワークショップは,9月21日,土曜日の開催予定!

 Run throgh the Jungle.
  クマも出るベトナムかアマゾンばりの草刈りより帰ってまいりましたあ!


 会場は亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費は無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願いいたします。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。

 美味しい飲み物・お酒におつまみ,ランチのついでに,月琴弾きにきませんか?

 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。


 うちは基本,楽器はお触り自由。
 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 
 現在,お嫁入り先募集中の楽器は60号「碧空(あおぞら)」。

 興味あります方も,試奏がてらにどうぞ~。

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