連山派 『声光詞譜』 復元楽曲改訂!

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斗酒庵 告知 の巻2019.5.15 連山派 『声光詞譜』 復元楽曲改訂!


 東京を中心に勢力があったため「東京派」とも呼ばれた渓派(渓菴派)の基本的な楽曲に関しては,去年までの研究で長編の歌曲いくつかをのぞき,だいたいのものについて,あるていど標準的な曲調を確定する作業が終わっております。
 なんといっても庵主,関東在住ですので,やはり手に入る資料は渓派のもののほうが多かったためもありますね。

 今年に入ってからは,清楽のもう一つの大派閥,関西を中心に覇をなした連山派(大阪派)の基本楽曲のほうに取り組んでおりました。
 ちょっと前も,2~3記事を書きましたもんね。
 ご存知の方も多かったかと。

 ちなみに庵主のやり方でいうところの「楽曲の標準化」とか「標準的な曲調」っていうのは,複数の資料を参考に,演奏者や付点者による楽曲のブレ----たとえば演奏者の個人的な追加演出や筆記者による誤写・誤謬----をなるべく排し,「この曲のメロディはだいたいこういう感じ」という,可もなければ不可もないような曲調を模索するところにあります。当時の誰が聞いても「○○○」に聞こえただろう,というくらいの平均的なメロディ。それらはあくまでも「標準」や「平均」であって,別に「正しい」ものを規定しよう,というわけではありません。博物学の標本みたいなものものですね。その種の中で平均的な個体,基準となる標本が決まってなければ,亜種やら変異という個体別の差異は論じられませんもの。

 でまあ,いままで入手できた「連山派」およびその東京における分派・「梅園派」(連山の妹・長原梅園による流派。こちらも東京を中心に活躍したため大阪の連山派に対し「東京派」と呼ばれることがある)の資料をかき集め,あーでもないこーでもないと校合をはじめていたんですが,そんなさ中ふとこんな資料が手に入ってしまいました----

 写本の『声光詞譜』。
 薄くて丈夫な用紙を横綴じにし,こまかーい文字でぎっちり書き込んだ,手書きの譜本です。
 「和泉」という印が捺してあります,巻末にも「明治三十年七月/和泉蔵」とあるものの書写者は不明。『声光詞譜』と題してはいますが,中身には『声光詞譜』刊本に含まれていない楽曲も入っています。
 残念ながら,付点があって,曲調を解読できるのは巻首からの58曲だけですが,一部は歌詞対照,かなりレアな曲譜も収録されています。

 いままで庵主の手元にある『声光詞譜』の付点本は加藤先生からいただいた刊本3冊本しか資料がありませんでした。曲譜の比較自体は沖野勝芳の『清楽曲譜』の近世譜とか柚木友月の『明清楽譜』などでいままでもある程度することはできてたんですが,今回この資料が手に入ったおかげといいますかせいといいますか。
 基本第一楽譜である『声光詞譜』の楽曲の全面的な見直しをすることとなりました----基本資料の根っこみたいなところに新資料が加わったわけで,「標準化」とか何とか言ってる場合じゃない。まずは資料の整理整頓,棚卸の必要が出てきたわけですね。

 新資料のテキスト化と,もともとあった『声光詞譜』の楽曲の見直し。「見直し」といっても,前のを修整した,というよりは入力のところから全面的にやり直した感じですね。うん,入力間違いもいくつかあったし,付点の解釈なんかいっぱい間違ってました。

 先に公開したコンテンツでは,今回の見直しを経て新たに組み直したMIDIと,各楽曲の譜についての解説が見られます。連山派の付点法における基本的な問題もあって,「標準化」への道はまだかなり遠いものの,前より少しマトモな再現になってるとは思われます。

 同じページで見られる,渓派の同じタイトルの曲と聞き比べてみたりするのも面白いかと。

 「明清楽復元曲一覧」リンクはこちら----

http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html


エレキ月琴 "Luna" 修理(1)

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娘が…娘が帰ってきよたあああっ! の巻2019.4~ エレキ月琴 "Luna" 修理(1)

STEP1 【ふっかつ の きょうかい(ただしアクシズ教)】

Luna大破!
おお ゆうしゃ ルナ よ。
しんでしまうと
は なさけない。

 庵主作のエレキ月琴としては3面め,スルーボディのカメ琴シリーズとしては2面めにあたる自作楽器,カメ2Lunaがかえってまえりました。

 ……うわあ,バッキリいったね。

 月琴というのは構造的にも単純で,基本的にこの手の弦楽器のなかでは比較的丈夫なほうであるんですが,この楽器のアキレス筋,いちばん弱いところがこの糸倉周辺。1号ちゃんも黒猫に糸倉ふッとばされて帰ってきたことがあったねえ。まあふつうはそう壊れませんがなんせ弱点,軽い衝撃でも「当たり所」が悪ければ----

かいしん の いちげき

 で,こうなることがママございます。
破断部(1) 破断部(2)
 糸倉の背の曲りのちょうど真ん中あたりにその原因とみられるヘコミがありました。おそらくここに何かがぶつかったはずみで,うまい具合にパキャっと逝っちゃったのじゃないかと。
打撃痕?
 ではサクっと修理。
 そしてさらに補強し,殴っても逝かないくらいの強度にしてさしあげましょう……ふふふ,コワくない。コワくないよぉ。ちょっとだけ……ちょっと先っちョ(糸倉)をアレ(修理)するだけだから。
合わせてみた
 まずは割れ目を継ぎます。
 こうした「かいしんのいちげき」系の破損では,破断面がパックリと,木目にそってキレイに分かれていることが多く,バキバキひびが入ってたり,欠片が散ってたり,断面がボサボサになってるようなことはまず滅多にありません。
 基本的には割れ目を合わせれば,きっちり噛合う状態になってます----今回の場合もそう。
ダボ埋(1) ダボ埋(2)
 まずは破断面にタボを通す小孔を穿ちます。
 挿しこむタボは竹串を直径2ミリくらいに削ったもの。これはあくまで破断部が接着時にズレないよう止めておくための補助・ガイドみたいなもので,この工作自体に補強的な意味合いはあまりありませんね。
ダボ埋(3) 接着後
 破断面をエタノールできれいにしてから,これまたエタノを加えて少し緩めたエポキを塗布。
 ちょっと置いて,少し染ませてから接合します。
 エポキはもともとあまり浸透性のない接着剤ですが,こうしてやるとわずかながら表層に染みこんで,接着剤の層の薄い,面同士の強固な接着が可能です。

 断面をキッチリ合わせたら,ズレないようにラップで巻き,その上からゴムテープをかけて保定します。こういう曲面の部品をくっつけるときたいへんなのが,どうやって保定し,正しい方向に圧をかけるかなんですが。接着物をまとめてラップで軽く固定してから,ゴムテープをギュッっとひっぱりながら巻きかけると,どんな曲面の部品でも比較的うまく,思う方向に圧をかけながらの接着保定が可能ですね。
 最近,靴屋さんの靴底修理法見て思いついたやりかたなんですが,いちいち治具に頼らない,使い捨ての保定法としてはこれ,なかなか使えます。

 二日ばかり放置してからほどきます。
 ふむ----まあスキマもなくうまくへっつきましたが,もちろんこれだけでは 「カタチを元通りにした」 だけのこと。強度的に不安がないわけではないので,ここから補強をしてゆきます。
チギリ加工(1) チギリ加工(2)
 まずは割れ目を中心にして輪鼓(りゅうご)型の孔を彫る。
 そう,お馴染みの「チギリ」を埋め込みます。
 チギリの埋め木は,細かな細工調整が出来るのでツゲ。

 ただ,この楽器の糸倉の材はカツラ。月琴という楽器の材料としてはじゅうぶんな強度と耐久性を持っていますが,木材としてはさほどカタくも頑丈なほうでもありません。また今回の場合,割れた場所と糸倉のデザインの関係で,チギリを一面1箇所しか埋めこめませんでした。まあさほど弦圧の強い楽器ではないので,エポキによる破断面の強固な接着とこのチギリによる補強なら,通常の使用にさほどの支障は出ないくらいにはなってると思うのですが----なんとなく不安なので,さらにもう一策練りましょう。
チギリ加工(3)
 次の日に,チギリの余分を切り落とし,整形するのといっしょに,糸倉左右の塗装を完全に剥がしてしまいます。
 そしてここに----唐木の板。
 大洗の4号戦車なみにシェルツェン(増加装甲)を施すこととしましょう,パンツァー・フォーッ!!
補強板接着(1) 補強板接着(2)
 糸巻の孔があるので,片面づつの作業となります。
 なぜって?----両方いっしょにやっちゃったらどうなるか…ちょっと想像してみてくださいってばよ(w)
 貼りつけたのは本紫檀の板,厚4ミリ……あ,これ銘木屋のおっちゃんが惜しそうにしてたやつだ(w)白太が混じってるんで泣く泣く切り捨てた部分ですね。貼る前に,ちょっと濡らして木色を見てみましたがひゃっはー,実にうつくすぃ。まあ自作の楽器の修理に使うのがもったいなくないかと言えば,若干思うところもないではありませんが,板の大きさ的にイマイチ中途半端なので,こういうときに使ってしまわないとただの死蔵になっちゃいますからね。
 だいたいのカタチに切り抜いたものを,製材時の鋸目の残ってる部分を表にして貼りつけ,クランプで固定・圧着します。
補強板接着(3) 補強板接着(4)
 片面を貼ったら,反対がわの糸巻の孔からドリルや錐を通して孔をあけ,リーマーでほじくって拡張。最後に両面貼ってからも一度調整するつもりなので,この時点ではだいたいでいいです。
 バッチリへっついててくれないと困る箇所ですからね。確実に接着するため一日一作業として,硬化時間を長めにとります。
補強板接着(5) 補強板接着(6)
 接着の養生もふくめ,両面でつごう三日ほどかけました。
補強板接着(7) 補強板接着(8)
 糸巻の孔をちゃんと通し,貼りつけた板の周縁を整形。表面の鋸目を落として磨いたら……ううむ,びゅーてほー,ですね!!
仕上げ(1) 仕上げ(2)
 カツラは白っぽい木なので,このままだともちろん逆シベリア。(w)
 増加装甲の部分がやたらと目立っちゃいます。
仕上げ(3) 仕上げ(4)
 まずは塗装を剥いだ糸倉のカツラの部分と,増加装甲部分の整形時に削れた棹の一部をスオウで赤染め,木口の向いている糸倉の表と背がわは特にベンガラやオハグロで黒染めにして,貼りつけた紫檀の板と色を合わせます。

 仕上げはカシュー。
 いつものように下塗段階での塗装と乾燥をじっくり。

 塗りこんで完成です!!
仕上げ(5) 仕上げ(6)
 木口方向はやや厚めに,紫檀板を貼った左右面は拭き漆くらいの感じで。うむ---

 一見,総唐木作りみたいな高級感。

 中身がベニヤ板の某国製唐木家具なんかでも良く使われてる手法ですね。(ww)

 今回の修理,欠損部品はありませんが,糸倉の幅が変っちゃったので,前の山口が使えません。
 これだけは新らしく作んなきゃね。
新作山口(1) 新作山口(2)
 増加装甲の紫檀板同様,こちらもある意味庵主の秘蔵品。
 国産木の宝石・薩摩ツゲでこさえましょう!
 糸倉の色が前よりずっと濃くなったので,この材のまっ黄色が映えるでしょうしね。
 唐物月琴に多い左右のエグれた富士山型にします。
 指板が山口の手前で切れるスタイルにしてあるので,高さ15ミリ……月琴の山口としてはかなり背の高く大き目なモノとなりました。
山口(3) 山口(4)
 高さ調整でちょっと底面を削りすぎちゃって,指板との間に少し段差ができちゃったのはナイショだ----すんません,さすがにもう一個削る余裕がないんで,これでイかせていただきます!(泣)
完成!(1) 完成!(2)
 Lunaは唐物月琴をコンセプトに作った楽器なので,棹の指板と糸倉の幅が同じですが,今回その糸倉に増加装甲を貼ったので,山口(トップナット)のところにふくらみのある国産月琴に近いフォルムとなりました。
完成!(3)
 この場合,本来なら国産月琴と同じように,棹の左右を削って山口方向に少し幅のせばまったカタチにするのが自然なのですが,棹と糸倉を構成する3ピースの左右の板がもともと少し薄めなのと,唐物をなぞった原コンセプトの部分を残しておきたかったので,今回はこのままとします。
 ほんとはついでに仕込み刀とか自爆装置なんかも取付けたかったんですが,オーナーさんに拒絶されました。
 次に大破してきたら変えてあげましょう(w)

 従前のLunaはその棹と糸倉のコンセプトもあって,スラっとした印象のある女性的な楽器だったんですが,ま四角な指板にすこし厚く,太くなった糸倉。これはこれで武骨モダンな感じもしないではない。。
 なにかちょっと「漢前」感が増したような気がします。


 さあ,これでちょっとそこらの何か殴っても2~3発は大丈夫(たぶん)
 またバリバ~リと使ってやってください。


(つづく)


古楽譜PDF公開のお知らせ

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斗酒庵 告知 の巻2019.5.09 古楽譜PDF公開のお知らせ


 これまでもどっかの共有ファイルサーバーにあげたり,ウィキにあげたりはしてきたんですが,次から次へと潰れたり消えたりしちゃうので,あきらめて今回はHPにうpりました。
 『清風雅譜』各版6種,『声光詞譜』2種に『小蘇女史清楽譜(仮)』。『声光詞譜』の3冊本はZIPにまとめましたが,ほかはPDFそのままで公開しています。
 商用でない限り,使用・引用・複製・再配布は自由とします。

http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html#PDFS

 まあ古楽譜は持ってても読み解きが大変なので,ふつうそのままでは演奏できませんし,研究者でもない限りさして役に立つものでもありません(w)が,自分がどういうものを使ってそれをホザいているのか,モトとなってる資料が公開されてなければ意味がありませんからね。また,こういう古い資料は公開して色んな立場のヒトの目に触れることで,はじめて意味を成すものでしょうし。

 同じページでは亀戸のワークショップで使ってる楽譜集も配布してますので,楽譜見て弾きたいかたは,そちらもどうぞご覧アレ。

http://charlie-zhang.music.coocan.jp/MIDI/MINSIN.html#PDF

清楽月琴WS@亀戸 2019年五月場所!

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斗酒庵 WS告知 の巻2019.5.18 月琴WS@亀戸! 五月場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 5月 のお知らせ-*


 2019年,5月の清楽月琴ワークショップは,5月18日土曜日の開催予定です!

 「令和」初の月琴WS----
   初物は縁起がエエそうですので,
  どうぞお験しお越しあれ。(w)

 会場はいつもの亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願い。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。
 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。うちは基本,楽器はお触り自由です。

 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 現在,お嫁入り先募集中の楽器は57号時不知と60号。
 かなりタイプの違う楽器同士ですが,どちらも音はバツグンです。
 興味ありますれば,試奏がてらにでもどうぞ~。

清楽月琴WS@亀戸 2019年四月場所!

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斗酒庵 WS告知 の巻2019.4.13 月琴WS@亀戸! 四月場所の巻


 

 

*こくちというもの-月琴WS@亀戸 4月 のお知らせ-*


 2019年,4月の清楽月琴ワークショップは,4月13日土曜日の開催予定です!
 あや,来週か(^_^;)……告知からちょっと近くて申し訳ない。
 会場はいつもの亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願い。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。
 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。うちは基本,楽器はお触り自由です。

 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 


 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。

  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 現在,お嫁入り先募集中の楽器は57号時不知と60号。
 かなりタイプの違う楽器同士ですが,どちらも音はバツグンです。
 興味ありますれば,試奏がてらにでもどうぞ~。

 

 

 

連山派・梅園派の「哈々調」について

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斗酒庵 贅六の清楽に挑む! の巻2019.1~ 連山派・梅園派の「哈々調」について

 さてまた現在進行中のまとめより。
 そういえばWSではあまりやらない曲ですねえ。
 「哈々調」は別名を「鉄馬行」と言います。これは歌の最初の段に----

  紗窓紗窓外呀。鉄馬児响叮噹。
  姐児聞声睡呀。隔壁王大娘。
  軽移細歩。倒高楼上呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

 と,出てくるところから採ったものですね。この「鉄馬」っていうのを田中従吾軒さんは「風鈴」と訳してます(『清楽詞譜和解』)が,これは「鉄馬兒(ティエマール)」という,満州族の女性の履く靴のこと。
 清楽に伝わっているのは物語のほんのトバ口,導入部のところなんですが,これのもとになっているのは大陸で「紗窓外」もしくは「王大娘探病」と称される俗曲だと思われます。全体の内容としては世話焼きのおばちゃんが,世間知らずのお嬢様の恋患いに首をつっこむお話。性別は逆転しますが落語の「崇徳院」みたいなお話ですね。
 古い楽譜の付点はだいたいこんな感じ----


 中井新六『月琴楽譜』および鈴木孝道『月琴独習自在』は「ハハチヤウ」と中国語読み。平井明『月琴胡琴明笛独案内』には「ほうほうちやう/ハハチヤウ」と二種類の読み方が併記されてますが「ほうほうちやう」っていう読み方はほかで見たことがない。
 たぶん「ハハチョウ」と呼んでいたんだと思います。歌の後半に「哈哈㕽哈㕽哈々々」という繰り返しがあります。ここから出た名前ですね。おそらくはここを女性の高音で,コロラチュオのようにコロコロと転がるように唱えたのでしょう。
 亀齢軒斗遠『花月琴譜』(天保3)ですでに紹介されている清楽のなかでも古い曲です。譜を比較してみると,清楽初期は野郎が多くて声が出なくかったせいか,全体に低音で唱えてたみたいですが,のちに女性が増えてきたおかげで,後半の部分が高音に戻って行ってるようです。
 たとえば,柚木友月の『明清楽譜』の譜(YNK014)は第一楽譜『声光詞譜』と符字順列が一致してますが,その付点からはこんな近世譜が再現できます----

[四--合|四-仩-|工-四仩|工--○|
 工-合四|合-工-|尺---|尺---|]
 上-上-|尺--○|四-四仩|合○工-|
 工-六-|工-尺-|尺工尺-|上-上-|
 尺工上-|四-工-|四仩合-|合-工-|
 合-合-|仩-四仩|四仩合-|合-工-|
 合-合-|仩-四-|工-尺-|--尺-|
 --|
 再現曲

 同じ連山派系なんですが『清楽曲譜』(OKINO_A014)では----

[四--合|四-仩-|工-四仩|工--○|
 工-合四|合-工-|尺--○|尺--○|]
 上-上-|尺--○|四-四-|仩-合-|
 仜-仜-|𠆾-仜-|伬-仜伬|伬-仩-|
 仩-伬仜|仩-四-|工-四仩|合-合-|
 工-合-|合-仩-|四仩四仩|合-合-|
 工-合-|合-仩-|四-工-|尺--○|
 尺--○|
 再現曲

 と,後半の符が1オクターブ高いニンベン付になってますね。

 加藤先生からいただいた『声光詞譜』と長崎歴文の『弄月余音』の付点は,どちらも符音の長さが柚木の例の半分,すなわち無印を半拍としているようです。どちらの資料も付点が完全ではないため単独での読解は不可能ですが,まあどこが長いか短いかくらいの判断材料,参考にはなります。柚木の譜と『清楽曲譜』の譜では1箇所だけ音長が違う(3行の1・2符め)のですが,これはどちらの資料でも長音を示す付点の類は付されていない。平井明の『月琴胡琴明笛独案内』でも符の横に短音を示す傍線が引かれてますので,連山派の伝統的な弾き方では,この部分は柚木の譜と同様になっていただろうと思われます。
 ちなみに渓派の類例では当該の「四仩」部分が『清楽曲譜』のように2分2分になってます。もしかすると『清楽曲譜』が2分2分にしたのは,こうした他派の演奏の影響だったかもしれませんね。

[四-合-|四-仩-|工-四仩|工--○|
 工-四仩|合-工六|尺---|---○|]
 上-上-|尺---|四-四-仩-合○|
 仜-仜-|六-仜-|伬-仜六|伬-仩○|
 仩-伬仜|仩-四-|工-四仩|合-合○|
 工-合-|合四仩-|四仩四仩|合-合-|
 工-合-|合四仩-|五六工六|尺---|
 ---○|(『清風雅譜』SG017「哈々調」)

 連山派の譜で「尺」の4拍が2音となっているところが8拍1音の長音になっているところが特徴的ですね。ただ『清風雅譜』の解説でも述べてるよう,こんな長い音はありますが,これはけっしてこの曲が緩やかなテンポの曲であるためではなく,通常の付点では符音の長短関係が分かりにくかったり拍子がとりにくいような場合などに,曲全体の符音を拡大し教授上「分かりやすい」カタチにしたもの。実際の演奏ではそこそこ軽快に弾かれたものと考えられます。

 さて歌では,高柳『洋峨楽譜 坤』鷲塚『月琴歌譜』中井新六『月琴楽譜』3冊,歌詞対照譜での発音位置は一致しています。鈴木孝道『月琴独習自在』のは例によって発音位置が部分的に異なってますね。下表赤が中井・高柳の版,緑が鈴木の歌詞対照譜によるもの。

 
 
-間-
-間-
-間奏-
-間奏-
 
-間-

 中井らの版が,連山派における標準的なかたちに近いものと考えられますので,これをもとに歌唱を再現してみましょう。

再現曲

1)紗窓紗窓外呀。鉄馬児响叮噹。
  姐児聞声呀。隔壁王大娘。
  軽移細歩。倒高楼上呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

2)飄開錦紗帳呀。一陳噴花香。
  撥開紅陵被呀。小小二姑娘。
  面黄肌痩。不像姑娘呀病呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)二姑娘。你是什麽病呀

3)我也病児是呀。飯也不想吃。
  茶也不想量呀。昏昏又沈々。
  昏々沈々。到了如今呀哈呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)請個医生来。看々病麽

4)請個医生到呀。我也不要他。
  請了医生来呀。迷迷模々
  迷々模々。我也不要呀他呀哈
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)請個和尚来。超度超度罷

5)請個和尚到呀。我也不要他。
  請了和尚来呀。乒々又乓々。
  乒々乓々。奴奴心中呀怕呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)請個老娘来。伏侍伏侍罷

6)請個老娘到呀。我也不要他。
  請了老娘来呀。喞々又咤々。
  喞々咤々。我也不要呀他呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)二姑娘你這個病。従何児起的呢

7)要問我的病呀。三月是清明。
  楊柳緑茸々呀。桃花紅噴々。
  王孫公子。出外的遊春呀景呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)王孫公子遊春景。与你什麽相干

8)我愛他呀。白面小書生。
  他愛我呀。紅粉小佳人。
  両人喜愛。到了如今呀哈呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)不怕你。爹々娘々的麽

9)我家爹々爹呀。耳目有昏章。
  我家媽々。耳目也昏呀章呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)不怕你。哥々嫂々的麽

10)我家哥々哥呀。常々不在家。
  我家嫂々。去往娘娘呀家呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

(白)不怕你姊々妹々的麽

11)我家姊々姊呀。早去出嫁。
  我家妹々同我。一様的話話呀哈呀哈。
  哈㕽哈㕽哈々々

1)サア チヤン サア チヤン ワイ ヤ テ マア ルウ ヒヤン テン タン 
  ツヲ ルウ ウエン シン ジユン ヤア ケ ピ ワン ダア ニヤン 
  キン イ スエイ フウ タウ カウ レウ ジヤン ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

2)ピヤウ カイ キン サア チヤン ヤア イ チン ヘン フハア ヒヤン 
  ホ カイ ホン リン ピイ ヤア スヤウ スヤウ ルウ クウ ニヤン 
  メン ワン キイ セエウ ポ スヤン クウ ニヤン ヤア ピン ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ルウ クウ ニヤン ニイ ズウ シ モ ピン ヤア 

3)ゴウ エヽ ピン ルウ ズウ ヤア ワン エヽ ポ スヤン キ 
  サア エヽ ポ スヤン リヤン ヤア ホン ホン ユウ チン チン 
  ホン ホン チン チン タウ リヤウ ジユイ キン ヤア ハ ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ツイン コ イヽ スエン ライ カン カン ピン モ 

4)ツイン コ イヽ スエン タウ ヤア ゴウ エヽ ポ ヤウ タア 
  ツイン リヤウ イヽ スエン ライ ヤア ミイ ミイ ユウ モウ モウ 
  ミイ ミイ モウ モウ ゴウ エヽ ポ ヤウ ヤア タア ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ツイン コ ホウ シヤン ライ シヤウ ト シヤウ ト パア 

5)ツイン コ ホウ シヤン タウ ヤア ゴウ エヽ ポ ヤウ タア 
  ツイン リヤウ ホウ シヤン ライ ヤア ピン ピン ユウ パン パン 
  ピン ピン パン パン ヌウ ヌウ スイン チヨン ヤア パウ ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ツイン コ ラウ ニヤン ライ ホ ズウ ホ ズウ パア 

6)ツイン コ ラウ ニヤン タウ ヤア ゴウ エヽ ポ ヤウ タア 
  ツイン リヤウ ラウ ニヤン ライ ヤア ツエ ツエ ユウ ツアウ ツアウ 
  ツエ ツエ ツアウ ツアウ ゴウ エヽ ポ ヤウ ヤア タア ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ルウ クウ ニヤン ニイ チエ コ ピン  ツヲン ホウ ルウ キイ テ ニイ 

7)ヤウ ウエン ゴウ テ ピン ヤア サン エ ズウ ツイン ミン 
  ヤン リウ ロ シヨン シヨン ヤア タウ フハア ホン ヘン ヘン
  ワン ソヲン コン ツウ チユ ワイ テ ユウ チユン ヤア キン ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ワン ソン コン ツウ ユウ チユン キン イユイ ニイ シ モ スヤン カン 

8)ゴウ アイ タア ヤア ペ メン スヤウ シユイ スエン 
  タア アイ ゴウ ヤア ホン フン スヤウ キヤア ジン 
  リヤン ジン ヒイ アイ タウ リヤウ ジユイ キン ヤア ハ ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白) ポ パウ ニイ テイ テイ ニヤン ニヤン テ モ 

9)ゴウ キヤア テイ テイ テイ ヤア ルウ モ ユウ ホン チヤン 
  ゴウ キヤア マア マア ルウ モ エヽ ホン ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ポ パア ニイ コヲ コヲ シヤウ シヤウ テ モ 

10)ゴウ キヤア コヲ コヲ ヤア シヤン シヤン ポ ヅアイ キヤア 
  ゴウ キヤア シヤウ シヤウ キユイ ワン ニヤン ニヤン ヤア キヤア ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

(白)ポ パア ニイ ツイ ツイ ムイ ムイ テ モ 

11)ゴウ キヤア ツイ ツイ ヤア ツアウ キユイ チユ キヤア 
  ゴウ キヤア ムイ ムイ ドン ゴウ イ ヤン テ ワア ワア ヤア ハ ヤア ハ 
  ハ イ ハ イ ハ ハ ハ

1)睡:渓派の版では「姐兒床上睡(嬢やはベットでおねむ)」となっているので「睡」で良いが,こちらの「姐児聞声睡呀」だと状況が異なる。田中従吾軒は『清楽詞譜和解』でこの前の節からを「風鈴ノ声叮々タルヲ,女子聴キナガラ睡リ居リタリシニ」などと解しているが,「鉄馬兒」は冒頭にも書いたように満州族の女性の履きもの,ポックリ下駄のような靴である。大陸の類例から見てもここは,下駄の音響くのを姐兒が聞いて「誰?」と尋ねるのに「隣の王おばちゃんだよ」と王大娘が答える場面である。ゆえに「姐兒問声 "誰" 呀」が正しい。「聞」(wen2)「問」(wen4),「睡」(shui4)「誰」(shui2)ともに近音である。ただし「誰」「睡」の両語とも方音を含め「-n」もしくは「-ng」の音はないので,「ジュン」は「ジュイ」もしくは「シュイ」の間違いと思われる。再現では修整。
2)一陳:風・香りの量詞は「陣(zhen4)」である。陳(chen2)だと音も意味も合わないが,大陸の唱本でもよく「陳」で書かれている。 紅陵被:「紅綾被」の間違い。赤い掛布団。
4)迷迷模々:正しくは「迷迷摸摸」だが正確には文字のない語なので,これでもよい。
4白)超度:ここではお経を読んで平癒祈願やお祓いをしてもらうこと。
5白)伏侍:=服事もしくは服侍で世話をする,ここでは看病してもらう。
6)喞々咤々:おしゃべりな様子,小鳥のさえずりかわす擬音にも使われる。ピーチクパーチク。

 中井の版では9番以降,歌詞が2フレーズ足りなくなってるので,再現は8番までとします。
 ほかの資料でもこの8番以降は歌詞がグダグダです。
 可能性としては,構成上この7番なり8番以降から曲が短くなってるとか,あるいは時間短縮のためセリフと不完全な唱(メロディの一部をなぞる程度の)との組み合わせになってるなんてことも想像はされます。
 しかし大陸の唱本における類例などから考えるに,これはそもそも物語のトバ口。しかもその出だしの1曲の途中にしかなってないんですよ。雑劇や民間の唱え物においては,この問答を繰り返したところで,お嬢の患いを「恋の病」と見切った王大娘が最後に「おばちゃんにまかせな!」と啖呵を切って終わり,物語が本格的にはじまるのでありますから,長すぎて後ろのほう,口伝がついてゆかなかったとかのほうが分かりやすそうですね。


(つづく)


清楽月琴WS@亀戸 2019年弥生場所!

20190323.txt
斗酒庵 WS告知 の巻2019.3.23 月琴WS@亀戸! 弥生場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 3月 のお知らせ-*


 はるはあけぼの,ようよう広くなりゆく生えぎわすこしあかりて。
 むらさきだちたる養毛剤の濃くもたなびきたる。
 すべてが萌え生たつ春このごろ。
 …みなさん,あきらめずにがんばりましょう!(何をだ?)

 2019年,3月の清楽月琴ワークショップは,3月23日土曜日の開催予定です!

 会場はいつもの亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願い。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。
 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。うちは基本,楽器はお触り自由です。

 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 現在,お嫁入り先募集中の楽器は57号時不知と60号。
 かなりタイプの違う楽器同士ですが,どちらも音はバツグンです。
 興味ありますれば,試奏がてらにでもどうぞ~。

連山派・梅園派の「紗窓」について

RB010.txt
斗酒庵 贅六の清楽に挑む! の巻2019.1~ 連山派・梅園派の「紗窓」について

 さて,九連環・茉莉花と並んでWSでよく演奏される「紗窓(サアチャン/しゃそう)」についてです。

 工尺譜の詳しい読み解きなんかは,HPのほうに本うpするのを待ってもらいまして,今回は連山派の「紗窓」と,あと渓派の「紗窓」の違いなんかを中心にお話ししましょう。

 「紗窓」という曲は連山派では第一楽譜の『声光詞譜』にはもう載ってますし,よく演奏されたらしいので同派内ではメジャーな曲でした。
 山本有所の『雅俗必携月琴自在』では「紗窓」ではなく「七言絶句」と題されてるとおり,清楽家の間では「漢詩の七言絶句を歌う時の曲」と認識されていたようです。文人趣味に偏ったところのある渓派の清楽家連中がいかにも好みそうなものですが,渓派のほうだと譜は渓蓮斎のお弟子さんたちが編集した『清風雅唱 外編』くらいにならないと出てきません。長崎派の譜集には入ってますんで,それ以前から伝わっていたとはおもうのですが,花井信『清楽指南』(M.25)なんかでも「新曲」の分類に入ってますので,渓派の清楽家にとっては「あまり馴染みのない曲」だったのかもしれません。
 「紗窓」は薄絹のかかった窓,現代中国語だと「網戸」の意味になります。障子紙のかわりに薄い絹布が張ってある,と思えばよろしい。そういう薄布をカーテンみたいに垂らしてある窓もそう呼ばれたようです。
 ほか「砂窓」「沙窓」と書いている例もあります。こちらだと「砂窓」が最近の中国で「すりガラス」みたいなのを表すことがありますが,基本的にイミフですね。「紗窓」というのは,俗曲では女の子もしくは女性の部屋の暗喩で,なかにいるのはたいてい美人です。艶歌めいた曲題なわけですが,歌詞がお堅い七言絶句というあたりになにやら違和感は感じますね。あんがい「紗窓」なんて題で広まっちゃった後,そういうあたりに気が付いて,慌てて字面を変えやがったんじゃないかとも思います。(w)
 連山派の「紗窓」はこんな感じ----

 六--○|六--○|工-上-|尺-工-|
 尺--○|四-仩-|伬-四仩|合--四|
 合--○|工-工-|六--○|工-尺-|
 上-工-|尺--○|四-仩-|伬-四仩|
 合--四|合--○|四--○|四--○|
 四-仩-|四合工合|四-仩四|合--○|
 上-工-|尺-四-|上-工-|尺-四仩|
 合--四|合--○|

 歌詞は基本的に七言絶句ならなんでもあてはまるようになってるんですが,李白の「春夜洛城聞笛」とか張継の「楓橋夜泊」になってることが多いですね。連山派系では2種類の歌いかたがあったようです。

 
(中井)
(鈴木)
 
(中井) 
(鈴木) 
 
(中井)
(鈴木)
 
(中井) 
(鈴木) 
 
(中井) 
(鈴木) 
 
(中井)
(鈴木)
 
(中井)
(鈴木) 
 
(中井)
(鈴木)

 (中井)は中井新六『月琴楽譜』(M.11),(鈴木)は鈴木孝道『月琴独習自在』に基づいたもの。歌詞のかかってない真っ黒な部分は楽器の演奏だけになるわけですが,2行目と5行目で発音のタイミングが異なるのと,最期のほう,シメにかかる直前,鈴木のほうに3音1小節半の「溜め」があるのが特徴的です。

 WSではよくこれと裏曲を合奏する,ということをやっています。清楽で「裏曲」「伴奏曲」と呼ばれるものは,オーケストラのパート分けのようなものではなく,ある曲のために作られたものでありながら,それぞれいちおう基本的には独立した曲として扱われます。同時に演奏した時に「アラ不思議,なぜかぴったり合っちゃうわ!」みたいな感じなんですね。

 「紗窓」には「弄月(ろうげつ)」「露月(ろげつ)」という裏曲があります。「弄月」のほうが少し古く,「露月」のがちょっと新しい曲みたいですね。まずは「弄月」の譜----

 合四仩四|合-工-|○合工尺|上-尺上|
 四-合-|凡合凡合|四-四合|仩伬仩四|
 合--○|工合四-|合-工-|○合工尺|
 上-尺上|四-合-|凡合凡合|四-四合|
 仩伬仩四|合-四-|○乙乙四|乙伬乙四|
 合-四合|工-尺-|上尺工-|尺上四合|
 凡合凡合|四-上合|仩-仩伬|仜-上伬|
 仩-四仩|合--○|

 「露月」のほうはこんな感じです。

 合-合凡|合四仩伬|仜仜𠆾-|伬-仜𠆾|
 伬-伬仩|五凡六六|尺上尺凡|合-五仩|
 合--○|仜𠆾仜仜|𠆾-五-|仜𠆾伬仜|
 仩伬四仩|伬-伬仩|五凡六六|尺上尺凡|
 合-五仩|合--○|四四仩仩|四-仩-|
 四仩四仩|四合工尺|工-合四|上--○|
 仩合仜合|伬仩四合|仩合仜𠆾|伬-四仩|
 合凡合四|合--○|

 「茉莉花」にも「秋風香」と「秋籬香」という似たような名前の裏曲があることを,前回の記事で話題に挙げましたな。あちらには「三曲伴奏スル,尤妙ナリ。」と3曲同時弾きするとキレイ,みたいなことが書かれてましたが,こちらにはそういう注釈は見つかりませんね。
 歌いかたの異なるもの2種類と,裏曲2種類----それぞれを組み合わせて歌付きのファイルにしてみました。聞き比べてみてください。

 再現曲(弄月+中井)
 再現曲(弄月+鈴木)
 再現曲(露月+中井)
 再現曲(露月+鈴木)

 ちなみに渓派の「紗窓」。
 歌詞対照譜が少なく,結局『清風雅唱 外編』くらいしか見つからなかったんですが,こちらのはこんな感じです。

 再現曲(渓派)

間 奏
間 奏
間 奏
 
 

 連山派で全符の長さだった出だしの2音が,半分の2分になっています。あとは3行4小節の「上-工-」が「上-工六」になってますが,歌は「上-工-」で「六」はおそらく楽器で出す音なんだと思います。そして曲尾まで歌詞がかからず,最後の「四合」もまた楽器だけになります。裏曲がないんでテンポは少し遅くしてあります,連山派のにくらべると,ちょっとおとなしい感じがしますね。


(つづく)


連山派・梅園派の「茉梨花」について(1)

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斗酒庵 贅六の清楽に挑む! の巻2019.1~ 連山派・梅園派の「茉梨花」について(1)

 小人閑居シテ不善ヲナス,冬の雪かき帰省の間庵主はずっと,清楽流行期,関西を中心に活躍した連山派とその分派で東京に拠点を置いた梅園派の曲譜にとりくんでおりました。
 いづれまとめてHPのほうにうpりまうが,今回はその成果の一端を少々。


 弄月RY02_003は「茉䔧花」,柚木YNK062は「抹梨花」と表記する。
 また「含艶曲」という呼び方がある。基本的に「茉梨花」は曲牌(汎用的な定型メロディとしての名称)の名で,「含艶曲」はそれで『西廂記』を内容とする歌唱としての名称である。
 弄月RY02_003は付点不備のため単独での解読は不能。朱の読点はおそらく,句点より短い小息継ぎ・小休符の挿入箇所を指すものであろう。
 なお柚木YNK062は冒頭の繰り返し部分を,清曲OKINO_A005は後半の繰り返し部分を展開している。比較対照を容易にするため,上画像と以下の近世譜ではそれらを声光・弄月の例に合わせて繰り返し表記に戻して,譜の形をそろえることとする。
 柚木YNK062の付点からは以下のような近世譜が再現できる。

[工-工六|五-仩五|六--五|六--○|]
 工-合-|工合四-|仩四合--○工-|
 尺-工六|工尺上-|-尺上-|-○[工-|
 上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
 六-尺六|工尺上-|上--○|四仩伬-
 --伬仜四合-|-四合-|--]
 再現曲

 この譜には符字がほかの2例と異なっているところが8箇所あるが,すべてオクターブの高低関係である。月琴は最低音が「上」で,低音の「合四」と高音「六五」を同じ高さで弾くため関係がないが,明笛は最低音が「合」であるので吹き分けることができる。ここでこうした差異が生じている理由については後に詳しく述べたい。付点がほぼ一致し,再現される各符の音長関係には変化がないので,この柚木の譜の音長関係を参考に,声光SK01_05を読み解いてみよう。この場合,無印を1符1拍とすると----

[工-工六|五-仩五|六--五|六---|]
 工-合-|工合五-|仩五六-|-○工-|
 尺-工六|工尺上-|-尺上-|--[工-|
 上-尺-|尺工六○|五-○六五|六工尺工|
 六○尺六|工尺上-|上--○|四上尺-|
 -○
尺工|上四合-|-四合-|--]
 再現曲

 と,なると考えられる。こちらの2行8符め「六。」は3拍だが,柚木の当該箇所は4拍になっている。そのままだと1拍ズレとなるのでこれは間違いとして修正しておく。5行末「尺。」も同前。もしかするとこの2件に関しては,句点「。」を1拍に含めているのかもしれない。
 符字下の朱の読点は句点よりも短い区切り,また3拍1拍の間に入っている返し線はおそらく「返しバチ」の指示と思われる。また,付線はここでは短音を表すものではなく,2音を抑揚をつけず平均に弾けという指示であろう。4行4・5間の挿入線はこの先1符1拍の連弾となることから,「五」2拍のところで少し息継ぎを入れろということだろう。再現では8分休符を挿入して表現してみた。
 
 再現された曲調は北條芳三郎『音楽初歩』に見える五線譜による採譜ともほぼ一致する。

 清曲OKINO_A005の近世譜は以下の通り。

[工-工六|五-仩五|六--五|六--○|]
 工-合-|工合四-|仩四合-|○四合-|
 ○○
工-|尺-工六|工尺上-|○尺上-|
 ○○[工-|上-尺-|尺工六-|五-六五|
 六工尺工|六-尺六|工尺上-|上--○|
 四仩伬-|○○伬仜|仩四合-|○四:合-|]
 合-○○
 再現曲

 曲尾「合」は1度目が2分,2度目が2分+休符2拍である。ほかの3例と比べるとオレンジで強調した部分が1小節ぶん多いが,そのほかの部分の符字と音長は柚木の例とほぼ一致する。

 梅園派の「茉梨花」は,「秋籬香」「茉梨花裏」「秋風香」などという裏曲と合奏される。『清楽曲譜』などでは「伴奏」と称されているが,現在の「伴奏」とはいささか概念が異なり。これらの譜は「茉梨花」の一部ではなく,あくまで単独でも演奏される独立した曲譜として扱われている。渓派にも「厦門流水」「如意串」という表裏となる曲が伝承されているが,これらを同時に弾くという解説は見たことがなく,連山・梅園派において広く行われていたことのようである。
 『清楽曲譜』に収録されている「茉梨花」は,同書にある裏曲「秋風香」(OKINO_A030)とそのままでは合わせることができない。上で述べたよう,同書の「茉梨花」は柚木等の譜よりも2音多く,その部分が妨げとなるためである。上掲の譜からその余分な2音を含む2行4小節めを丸々削り,曲尾の「合」を休符合わせて4拍の長さで統一,すでに述べた2例の譜各符の音長関係を同じにすると,以下のように合奏が成立する。

(茉)工-工六|五-仩五|六--五|六--○|
(秋)仜-仜伬|仜仜𠆾-|仩伬仩四|合-合四|
  工-工六|五-仩五|六--五|六--○|
  仜-仜伬|仜仜𠆾-|仩伬仩四|合-仩伬|
  工-合-|工合四-|仩四合-|○○工-|
  仜仜伬仩|四合工合四|仩四合-|仩伬仜-|
  尺-工六|工尺上-|○尺上-|○○工-|
  𠆾-仜伬|仜四仩-|-伬仩-|○○仜伬|
  上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
  仩合伬合|伬仜合-|五-仩五|六-伬仜|
  六-尺六|工尺上-|上--○|四仩伬-|
  𠆾仜伬仩|四合仩-|○伬仩-|四上尺-|
  ○○伬仜|仩四合-|○四合-|○○工-|
  尺上尺工|上四合-|○四合-|○○仜伬|
  上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
  仩合伬合|伬仜合-|五-仩五|六-伬仜|
  六-尺六|工尺上-|上--○|四仩伬-|
  𠆾仜伬仩|四合仩-|○伬仩-|四上尺-|
  ○○伬仜|仩四合-|○四合-|○○  |
  尺上尺工|上四合-|○四合-|-○  |
  再現曲

 「秋風香」の譜は未加工であることからも,柚木の譜の付点から再現される曲調が,やはりこの曲の標準に近いものであろうことが分かる。
 ワークショップでも常連と度々演奏しているが,この2曲の合奏は,双方がうまく流れた時には実に美しい。
 「秋風香」は柚木YNK073としても収録されている。清曲OKINO_A030との違いは,17小節目の「仜」が「仩」になっていることだけで,ほかは符字順列,音長ともに一致する。
 『清楽曲譜』の注に「秋風香ハ茉梨花ト秋籬香ト両曲ヨリ組織シタル曲ナル故ニ,三曲伴奏スル,尤妙ナリ。」とあるので,同様に伴奏曲としてとりあげられる「秋籬香」よりは後発の伴奏曲ということになる。『清楽曲譜』に「秋籬香」は収録されていないが,同じ編者の『洋峨楽譜』に近世譜(OKINO_A030)が見える。

 仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
 仩伬仜-|伬仜仩伬|仩四合-|尺工六-|
 五工六-|工六工上|尺工上四|合-仩伬|
 仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩--○|
[仩-四合|工尺上-|仩-合-|合仩合伬|
 合-𠆾仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩-四仩|
 四合仜伬|仩伬仩四|合-四仩|合--○|]

 ただしこのままでは小節数が標準譜の「茉梨花」と合わないため,合奏は不能である。
 音長のわかる「秋籬香」の譜はほかに『音楽雑誌』41号の渡辺岱山による近世譜がある。

(茉)工-工六|五-仩五|六--五|六--○|
(籬)仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合---|
  工-工六|五-仩五|六--五|六--○|
  仩伬仜-|伬仩仩伬|仩四合-|尺-工六|
  工-合-|工合五-|仩五六-|-○工-|
  五工六工|六工上尺|工上四合|--仩伬|
  尺-工六|工尺上-|-尺上-|-○工-|
  仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩-仩-|
  上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
  四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
  六-尺工|工尺上-|上--○|四仩伬-|
  𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
  --伬仜|仩四合-|-四合-|-○工-|
  仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|--仩-|
  上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
  四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
  六-尺六|工尺上-|上--○|四仩伬-|
  𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
  --伬仜|仩四合-|-四合-|-○  |
  仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|-○  |
  再現曲

 雑誌での掲載のため,印刷が悪く,原記事では拍点がどの符に付したものなのか判別のしにくい箇所がある。「茉梨花」3行1小節目の「合」が1拍4分,3小節目の「六」が休符を含め5拍となっているように見えるが,再現するとここだけ不自然に合わなくなるため他譜の例を参考に訂正した。「茉梨花」2行2~3小節のフレーズが「工合四-|仩四合-|-○」ではなく「工合五-|仩五六-|-○」と『声光詞譜』などの例と同じになっているのをのぞけば,後半の符字順列は柚木や沖野の例とほぼ同じである。
 柚木の集には「秋香」(YNK048)という曲が収録されている。この「雛」はおそらく「籬」の誤植で,内容からも「秋籬香」で間違いはない。

(茉)工-工六|五-仩五|六--五|六--○|
(籬)仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
  工-工六|五-仩五|六--五|六--○|
  仩伬-仜|伬仜仩伬|仩四合-|尺工六-|
  工-合-|工合四-|仩四合-|-○工-|
  五工六-|工六工上|尺工上四|合-仩伬|
  尺-工六|工尺上-|-尺上-|-○工-|
  仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩○仩-|
  上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
  四合工尺○|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
  六-尺六|工尺上-|上--○|四仩伬-|
  𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
  --伬仜|仩四合-|-四合-|--工-|
  仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|--仩-|
  上-尺-|尺工六-|五-六五|六工尺工|
  四合工尺○|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
  六-尺六|工尺上-|上--○|四仩伬-|
  𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
  --伬仜|仩四合-|-四合-|--  |
  仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|--  |

 この2例も実際に合奏として再現してみると,どこかしらに小問題があるようで,先に掲げた「茉梨花」と「秋風香」の合奏ほどの一体感や自然さは感じられない。それぞれの符の異同を確認するため,3例の近世譜を並べて表示してみよう。

洋峨楽譜(繰り返し部分を展開)柚木(同前)音楽雑誌
 仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
 仩伬仜-|伬仜仩伬|仩四合-|尺工六-|
 五工六-|工六工上|尺工上四|合-仩伬|
 仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩--○
 仩-四合|工尺上-|仩-合-|合仩合伬|
 合-𠆾仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩-四仩|
 四合仜伬|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
 仩-四合|工尺上-|仩-合-|合仩合伬|
 合-𠆾仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩-四仩|
 四合仜伬|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
 仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
 仩伬-仜|伬仜仩伬|仩四合-|尺工六-|
 五工六-|工六工上|尺工上四|合-仩伬|
 仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩○仩-|
 四合工尺○|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
 𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
 仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|--仩-|
 四合工尺○|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
 𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
 仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|-- |
 仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合---|
 仩伬仜-|伬仩仩伬|仩四合-|尺-工六|
 五工六工|六工上尺|工上四合|--仩伬|
 仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩-仩-|
 四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
 𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
 仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|--仩-|
 四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
 𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
 仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|-○ |

 2行1小節,柚木のみが「仩伬-仜」と真ん中を2拍とするが,ほかは「仩伬仜-」となっているので,こちらのほうが正しいだろう。3行目,音楽雑誌の版は1小節目の「六」を1拍,3小節目の「合」を3拍とするがこれは不自然である。拍の総数は合っているので,おそらくは当時の印刷技術上の問題からくる誤植であろう。「六」「合」をともに2拍とすれば,ほかの2例と同じになる。最後に『洋峨楽譜』4行4小節目の「仩」を4分+休符に切り詰め,以降を前送りにすると----

 仜-伬-|仩伬仩四|合-四仩|合--○|
 仩伬仜-|伬仜仩伬|仩四合-|尺工六-|
 五工六-|工六工上|尺工上四|合-仩伬|
 仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩○仩-|
 四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
 𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
 仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|-○仩-|
 四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合-|
 𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩-|四仩四合|
 仜伬仩伬|仩四合-|四仩合-|-○  |

 とそろう。この譜はもちろん「茉梨花」の標準譜と合奏が可能である。上記の校訂を加えたこの版が,おそらくこの曲の標準的な曲調にもっとも近かろう。沖野の注によれば「三曲伴奏スル,尤妙ナリ。」という話なので,これがある意味,連山派系の「茉梨花」の演奏における究極であろうと考えやってはみたが,筆者の耳ではいささか複雑にすぎて,「茉梨花/秋風香」だけのほうがまだ良いような気はする。
 なお弄月RY03_016に「茉梨花裏」として収録されている曲も,符字順列の一致からこの「秋籬香」と同一のものであることが分かっている。下画像の無印を1拍,1朱点の符字を2拍長音,2朱点を1拍+休符,返し線を4拍全符とすると,上掲の標準譜とほぼ一致する曲調(下右上段(A)の譜)が得られる。

(A)仜-伬-|仩伬仩四|合○四仩|合--○|
  仩伬仜-|伬仜仩伬|仩四合○|尺工六○|
  五工六○|工六工上|尺工上四|合○仩伬|
  仜-伬仜|𠆾-仜伬|仩-合四|仩[仩-|
  四合工尺|上-仩-|合-合仩|合伬合○|
  𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩|四仩四合|
  仜伬仩伬|仩四合○|四仩合-|--] |


(B)仜-伬-|仩伬仩四|合○四仩|合--○|
  仩伬仜-|伬仜仩伬|仩四合○|尺工六○|
  五工六○|工六工上|尺工上四|合○仩伬|
  仜---|𠆾-仜伬|仩-合四|仩○[仩-|
  四合工尺|上---|合-合仩|合伬合○|
  𠆾仜𠆾-|仜伬仩-|合四仩○|四仩四合|
  仜伬仩伬|仩四合○|四仩合-|--] |

 2箇所朱点のない句点箇所があるが,扱いは2朱点のものと同じとした。原譜では2箇所の句点に朱で消し線が入り,3符が胡粉で消されている(上画像グレーで表現)。前者に関しては長音の位置が実際の演奏と異なるための訂正と見られる。後者はこの譜の所有者の弾いていた「茉梨花」(同書収録の「茉梨花」ではない)と合わせるための加工か,あるいは上右下段(B)の近世譜のように,合奏時の難所と見られる部分の音数を減らして,演奏を容易にするためだったのではないかと考えられる。

 最初のほうで述べたように,初期の譜である『声光詞譜』と柚木や沖野の譜の間で見られる符字の高低の差異は,こうした裏曲との合奏上の兼ね合いからの改訂ではないかと筆者は考えている。「秋風香」のような独立した裏曲が伴奏されない場合,曲の深みやはなやかさは,月琴と明笛もしくは人声といったものとのオクターブユニゾンによってのみ表現せられる。冒頭の繰り返し直後,近世譜2行めで古い譜は「工合」の部分でのみ限定してその手法を用い,そこから先は完全なユニゾンになっている。ここで一度高音にそろえておいたほうが,高低の分かれる次のフレーズとの間にメリハリをつけることができるからである。これに対して柚木の譜などではこの行ほぼまるまる,明笛は呂音で吹き月琴は高音を鳴らし続ける。演奏としてはそれぞれに平坦であるが,これに裏曲がかぶさることを前提に考えるなら,このほうが都合が良いのであろう。
 後半5行末から6行目にかけては逆に古い『声光詞譜』の版のほうが低音でそろえられ,器楽による演奏は平坦である。これは歌唱が高音にあがってゆくため,同じフレーズを楽器で伴奏するよりは,そちらを低音に抑えて「歌唱(高)・月琴(中)・明笛(低)」という三段階のオクターブユニゾンにより深みを増すほうがよいと考えられたためであろう。
 清楽の曲の多くはもともと大陸のごく通俗な民謡や流行歌,民間演劇の類に由来する。初期の清楽の担い手であった知識層にとっては,それこそが求めていた「大陸の生の情報」であったのだが,それが金銭を媒介して教授される芸能となる過程で,都合の悪い条件となっていったため,流行の後期,多くの曲が歌唱を伴わない大人数の器楽合奏となっていた。『声光詞譜』より後発の柚木や沖野の版で,歌唱と同じ高音のフレーズが楽器で演奏されるようになったのは,その歌唱の代わりに月琴を同じパートにあげて,楽器のみでのより複雑な音の絡み合いを演出しようとしたものだろうと筆者は考える。

 中井『月琴楽譜』の歌詞対照譜の工尺譜は声光SK01_05と符字順列が一致する。これは全13段に渡るけっこうな長曲で,同じく全段の歌詞を収録しているものは少なく,中井のほかは村上復雄『明楽花月琴詩譜』(M.11)の例(歌詞・譜別掲),そのほか歌詞の全文は渓派の譜本に2・3見られる程度である。筆者のDBにある資料で連山・梅園派と見られる歌詞対照譜には,高柳精一『洋峨楽譜・坤』(M.17),鈴木孝道『月琴独習自在』(M.26)『月琴哥譜備忘録』(写・筆者所蔵 2番に添符)『清楽』(写・笛道山人,長崎歴文所蔵),鷲塚俊諦『清楽歌譜』(M.14)がある。これらから比較可能なものを声光SK01_05の近世譜と対照させて,まずは歌詞の発音位置とその範囲を検討しよう。

(中井)          
(高柳)          
(鈴木)        
(笛道)          
(鷲塚)  
 
(中井)       
(高柳)       
(鈴木)     
(笛道)       
(鷲塚)     
 [工
(中井)           
(高柳)           
(鈴木)        
(笛道)           
(鷲塚)           
 
(中井)         
(高柳)         
(鈴木)  
(笛道) 
(鷲塚)         
 
(中井) 
(高柳) 
(鈴木) 
(笛道)  
(鷲塚)
 
(中井)   
(高柳)   
(鈴木)  
(笛道)   
(鷲塚)   
 
 縦書きの刊本の場合,歌詞の文字間が広くとられていないと,どの文字にどの文字の符が何文字あてられているのか判別しにくい場合が多い。上の表の基となっているのは,あくまでも筆者の読み解きである。
 1行目,繰り返し句は問題がない。鈴木・鷲塚に変異が見られるがほかの3例は一致している。2行目は「的」がどこからはじまりどこまでかかるかが問題である。高柳・笛道が一致しているが,発音開始の位置はその1符前「工」ほうが多い。「花」の開始位置は3例が一致しているので,「的」を「工合」2音とするか「合」1音とするかの違いである。歌いやすいのは前者で,後者の1音のズレには多少の三味線楽臭さが感じられる。ここは演出の違いでどちらでもかまわないとは思うが,中井の例が中間的で妥当であろう。3行目,鈴木以外は一致しており,問題はない。4行目,「一枝」の発音位置に差異がある。3例は一致して「五○六」までが「一」,「枝」が「五六工」である。「一」の開始位置については問題がないが,これに対し2音3拍をあてるのは多少不自然さが感じられなくもない。笛道の「一」を「五○」,「枝」に「六五六工」をあてるのがもっとも歌いやすく自然なのだが,ここは一致する3例に倣っておくのがよさそうだ。5行目「恐怕」の扱いが問題である。中井・鷲塚は「六○」1音2拍にこの2字をあてている。演奏上は器楽が「六○」歌唱は「六」2拍2分を分割すると考えて「六六」で唱えればよいが,見た感じ,納得できないのは分からないでもない。この部分の変異がもっとも顕著である。鷲塚と中井が一致しているほか,渓派でも同様になっているのでこの2例に従う。「罵」の位置にも変異があるが,開始位置は3例が一致する「尺」のところ。次の「卟」の発音位置は多少微妙であるが高柳と笛道の一致する「合」からというのが,実際に歌ってみても納得はゆく。
 発音位置の差異については,あまりにも顕著なものを除いて1音2音の前後は一句の長短の影響や演出の範囲ていどに考えてよいとは思うが,いちおうあるていどの基準・平均となる標準的な対照譜を組むなら,以下のようになろう。

 
 
 
 [工
  本
 
 
 
 
  
  

 これを基本として,各段の歌詞に合わせ多少の修整を施しつつ,全段を再現したものが以下のmp3ファイルとなる。主となるメロディに古いタイプを用いたので,伴奏曲も「秋籬香」のみを用いた。通しで聞くと17分ほどとなるが,実際の演奏ではもう少しテンポをあげてもよかろう。

 再現曲

1)好一個抹梨花。好一個抹梨花。
  満園的花児開。賽也不過他。
 [本待要採一枝又。恐怕栽花。人罵卟
2)好一朶杜鮮花。好一朶杜鮮花。
  有朝的有日。落在我家。
 [本待早出門又。恐怕看鮮花。児落卟
3)八月裡花香。九月裡菊花黄。
  勾引的張生。跳過粉墻。
 [好一個崔鴬鴬花。剌剌門関。児上卟
4)求紅娘姐。求紅娘姐。
  可憐的小生。跪到半夜。
 [你是不開門。跪到東方。日亮卟
5)慌忙把門開。慌忙把門開。
  開了的門開児。不見人来。
 [你那里是何人。敢則是賊。強来盗呀
6)今日又来明日又来
  来的去。哥你知道了。
 [你那里去懸梁。奴這里無梁。去吊呀
7)我的愛哥々。我的愛哥々。
  哥々的那門前。隔了一條河。脚踏着。
 [独木橋叫奴家。如此何得過呀

8)我也没奈何。我也没奈何。
  攝緊着花鞋。走将過河。
 [好一個有情郎急。忙々午児来。扶呀
9)我的心肝為。我的心肝為。
  着我心肝走。過几重山。
 [本待要会情郎又。恐怕爹娘卟。来到呀
10)雪花児被風飄。雪花児被風飄。
  飄了的飄了。去三尺余高飄。
 [好一個雪美人。怎比我寃家。俊臉呀
11)錦児光上。錦児光上。
  写着的好詩句。到有両三行。
 [本待要送情郎又。恐怕傍辺人。取笑呀
12)我的嬌姑娘。我的嬌姑娘。
  你会手弾琵琶。我会吹簫児。
 [簫児在口中吹。琵琶在膝児。上抱弾呀
13)吹呀吹得好。吹呀吹得好。
  吹弾得唱歌。好人都知道了。
 [本待要再吹弾又。恐怕知音。贅来呀
 ハウ イ コ メ リイ フハア ハウ イ コ メ リイ フハア 
 マン エン テ フハア ルウ カイ サイ エヽ ポ コウ タア 
 [ペン タイ ヤウ ツアイ イ ツウ ユウ コン パ サイ フハア ジン マア ヤ
 ハウ イ ト ド セン フハア ハウ イ ト ド セン フハア 
 ユウ チャウ テ ユウ ジ ロウ ザイ ゴウ キヤア 
 [ペン タイ ツアウ チユ メン ユウ コン パア セン フハア ルウ ロ ヤ 
 パ エ リイ キン フハア ヒヤン キウ エ リイ キヨ フハア ワン 
 ケウ イン テ チヤン スエン テヤウ コウ フン シヤン 
 [ハウ イ コ ツイン イン イン フハア ラン ラン メン クワン ルウ ジヤンヤ 
 アイ キウ ホン ニヤン ツヲ アイ キウ ホン ニヤン ツヲ 
 コウ レン テ スヤン スエン クイ タウ パン エヽ 
 [ニイ ヂヤ ズウ ポ カイ メン クイ タウ トン フハン ジ リャン ヤ 
 フハン マン パア メン カイ フハン マン パア メン カイ 
 カイ リヤウ テ メン ルウ ポ ケン ジン ライ 
 [ニイ ナ リイ ズウ ホウ ジン カン ツエ ズウ ツエ キヤン ライ タウ ヤア 
 キン ジ ユウ ライ ツヤウ ミン ジ ユウ ライ ツヤウ 
 ツヤウ ライ テ ツヤウ キユイ コウ ニイ ツウ ダウ リヤウ 
 [ニイ ナア リイ キユイ ケン リヤン ヌ チエ リイ ウヽ リヤン キユイ テヤウ ヤア 
 ゴウ テ アイ コヲ コヲ ゴウ テ アイ コヲ コヲ 
 コヲ コヲ テ ナア メン ヅエン ケ リヤウ イ テヤウ ホウ キヤア ダ ヂヤ
 [ド モ キヤウ キヤウ ヌ キヤア ジユイ ツウ ホウ テ コウ ヤア 
 ゴ エヽ モ ナイ ホウ ゴ エヽ モ ナイ ホウ 
 ゼ キン ヂヤ フハア ヒヤイ ツエウ ツヤン コウ ホウ 
 [ハウ イ コ ユウ ジン ラン キイ マン マン ウヽ ルウ ライ ホヲ ヤア 
 ゴウ テ スイン カン ヲイ ゴウ テ スイン カン ヲイ 
 ヂヤ ゴウ スイン カン ツエウ コウ キイ ジョン サン 
 [ペン タイ ヤウ ホイ ジン ラン ユウ コン パア テイ ニヤン ヤ ライ タウ ヤア 
 シ フハア ルウ ピイ フヲン ピヤウ シ フハア ルウ ピイ フヲン ピヤウ 
 ピヤウ リヤウ テ ピヤウ リヤウ キユイ サン チエ イユイ カウ ピヤウ 
 [ハウ イ コ シ ムイ ジン ツエン ピ ゴウ エン キヤア ツイン レン ヤア 
 キン ツエン ルウ クワン ジヤン キン ツエン ルウ クワン ジヤン 
 ス ジヤ テ ハウ ス コウ タウ ユウ リヤン サン イン 
 [ペン ダイ ヤウ ソン ジン ラン ユウ コン パア パン ペン ジン ツユイ シヤウ ヤア 
 ゴウ テ キヤウ クウ ニヤン ゴウ テ キヤウ クウ ニヤン 
 ニイ ホイ シユ ダン ピイ パア ゴウ ホイ チユイ スヤウ ルウ 
 [スヤウ ルウ ヅアイ ケウ チヨン チユイ ピイ パア ヅアイ スエ ルウ ジャン パア ダン ヤア 
 チユイ ヤア チユイ テ ハウ チユイ ヤア チユイ テ ハウ 
 チユイ ダン テ チヤン コヲ ハウ ジン トウ ツウ ダウ リヤウ 
 [ペン タイ ヤウ サイ チユイ ダン ユウ コン パア ツウ イン ツイ ライ ヤア 

 *1)又。恐怕:他譜「又」の前で句切る。
 *2)又。恐怕:同上。
 *3)「桂」の読みが「キン」:他譜では「クイ」,現代中国語で gui4 で方音でも「キン」に近い音はない。おそらく誤記誤写。「花。剌剌門関。」:句切りに疑問。「花剌剌」は「咲く花のように美しく」で前の「崔鴬鴬」にかかる。字数からみても「花。」の句点は「花」の前がふさわしい。 張生:他譜では「張先生(チャンスヘンスエン=張さん)」,「張生」でも通じなくはないが,このフレーズほかの段より1文字少ないため欠字の可能性あり。
 *4)「愛」は他書「哀」とする。現代中国語では ai4 と ai1 の違い。意味から考えて「哀」が正しい。「小」の読みを「スヤン」とする。おそらくは「スヤウ」の誤植。また他書では「小生」ではなく「小生(スヤオシュイスヤン)」となっている。あるいは3)の「張生」に合わせたか? 你着:他譜「着」を「若」とする。「あなたがもし-」なので「若」が正しい。おそらく誤写。跪到東方:他譜では「我就跪到東方」。「あなたがもし-したら,わたしはすぐに-」なので「我就」がないとここまでが「你(あなた)」の仕業になる。内容的にはおかしいが,省略できないこともない。
 *5)敢則是賊。強来盗呀:「敢則是賊」のほうはともかく「強来盗」は意味不明。他譜では「敢則是強賊来。来盗呀」
 *6)樵:「瞧」(ちら見する)の誤写で間違いない。長崎歴文『清楽』(写・笛道山人)などでは目偏が「扌」のように略書されている。俗間の唱本などでも「土」のわずかに縦棒が下に突き出たかたちに書かれることがある。それを「木」の略書と思ったのだろう。もちろん「樵」では意味不明である。 3フレーズめ「樵来的樵去」,他譜では「樵来的樵去」と1文字多い。
 *7)脚踏着。:原書ではここまでが繰り返し部の外であるが,この段までのパターンから考えると,この3文字は繰り返し部分に入るはずである。渓派・太田連『清楽雅唱』の歌詞対照譜でもそのようになっている。[脚踏着独木橋。叫奴家如此何。得過呀 がおそらく正しい。
 *8)急。忙々午児来。扶呀:まず句切り位置に疑問。他譜では「急」の前に句点。「忙々午児」,ここでどうして「ウマ」が出てくるのか意味不明。読みも「ウー」になっているが他譜では「午」が「手(ショウ)」になっている。おそらく誤写。「来。」の句点位置も他譜では「来」の手前である。
 *9)又。恐怕:1)2)と同じ。爹娘卟:村上は「爹娘」で渓派の諸譜もだいたいこれと同じ。笛道は「爹呀」とする。
 *11)扇:中井は読みを「ツエン」とする。現代中国語 shan1 ,類似の読み例なく「ェン」の誤植と思われる。 又。恐怕:同上。
 *12)児。上抱弾呀:他譜での句切りは「児上。抱弾呀」。
 *13)又。恐怕:2)9)11)と同じ。

 早稲田風陵文庫所蔵の唱本『花鼓子』(腰にくくりつけた太鼓を叩きながら歌い踊る民間芸能の歌詞)に,ほぼ同じような内容の歌詞が見られるほか,大陸の古い唱本中にも「鮮花調」の名で類歌は多い。
 現在の中国童謡としての「茉莉花」は単純に花の美しさを歌ったもので,『西廂記』とは関係ないが,地方で採集された類歌にはまだその内容を残したものが数多く認められる。


補:演奏スタイルとしては古い型を踏襲している渓派の「茉梨花」の後半が,『声光詞譜』とほぼ同様に低音で構成されていることもこれらの証左となろうか。『清風雅譜』における「茉梨花」の近世譜は以下----

 [工-工合|四-仩四|合--四|合--○|]
  工-合合|工合四-|仩四合-|-○工-|
  尺-工六|工尺上-|-尺上-|-○[工-|
  上-尺-|尺工六-|五-仩五|六○尺工|
  六-五六|工尺上-|上--○|四上尺-|
  尺工上尺 |上四合-|-四合-|-○]




(つづく)


清楽月琴WS@亀戸 2018年如月場所!

20190223.txt
斗酒庵 WS告知 の巻2019.2.23 月琴WS@亀戸! 如月場所の巻


*こくちというもの-月琴WS@亀戸 2月 のお知らせ-*



 無心………無心じゃよ。
 嘆いても,喜んでも,いかん。
 …雪は,降るものなのじゃ。
 たとえ,ほんの20分前に雪かきした玄関先が,
 雪かきする前と同じになってたとしても…………

 ふっ…この世のすべてがむなしい。
 このはかない雪のように,な。

 1月は,庵主雪かき帰省のためお休みとさせていただきまあす。
 2019年,最初の清楽月琴ワークショップは,2月23日土曜日の開催予定です!

 会場はいつもの亀戸 EAT CAFE ANZU さん。

 いつものとおり,参加費無料のオーダー制。
 お店のほうに1オーダーお願い。

 お昼下りの,ちょろちょろ開催。
 参加自由,途中退席自由。
 楽器はいつも何面かよぶんに持っていきますので,手ブラでもOK。

 初心者,未経験者だいかんげい。
 「月琴」というものを見てみたい触ってみたい,弾いてみたい方もぜひどうぞ。うちは基本,楽器はお触り自由です。

 1曲弾けるようになっていってください!
 中国月琴,ギター他の楽器での乱入も可。

 弾いてみたい楽器(唐琵琶とか弦子とか)やりたい曲などありますればリクエストをどうぞ----楽譜など用意しておきますので。
 もちろん楽器の取扱から楽譜の読み方,思わず買っちゃった月琴の修理相談まで,ご要望アラバ何でもお教えしますよ。

 とくに予約の必要はありませんが,何かあったら中止のこともあるので,シンパイな方はワタシかお店の方にでもお問い合わせください。
  E-MAIL:YRL03232〓nifty.ne.jp(〓をアットマークに!)

 お店には41・49号2面の月琴が預けてあります。いちど月琴というものに触れてみたいかた,弾いてみたいかたで,WSの日だとどうしても来れないかたは,ふだんの日でも,美味しいランチのついでにお触りどうぞ~!

 現在,お嫁入り先募集中の楽器は57号時不知と60号。
 かなりタイプの違う楽器同士ですが,どちらも音はバツグンです。
 興味ありますれば,試奏がてらにでもどうぞ~。

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