楓溪さんの月琴(2)
![]() 楓溪さんの月琴(2) 前にも書いたとおりこの楽器,あまりコワれてるところがないので,この糸倉のヒビ継ぎのほかは,表板のクリーニングとあとは棹の取付がちょっとユルいのを直す程度であります。
糸倉のヒビ継ぎにかかります。 ![]() まずは糸倉側部と基部の二箇所に,チギリを打つためのくぼみを彫っておきます。 今回も力がかかる場所だし,かなり小さい部品となるので,チギリには細工しやすく粘りのある象牙を使います。 チギリはきっちりとくぼみに嵌るように慎重に調整しておきます。 場所が場所だけに作業はほぼ一発勝負。失敗はゆるされません。 ![]() 軸孔にラジオペンチの先をつっこみ,ヒビ割れ部分をちょっと広げるようにしながら,ゆるめに溶いたニカワをたらして染ませます。ヒビ全体にニカワがゆきわたったところでペンチをはずし,すかさずチギリを打って継いでしまいます。 ゆるく溶いたニカワは乾くのに時間がかかりますので,この日はこれで終了。 継ぎめからニカワが滲んできますので和紙でくるんで,その上から輪ゴムやらひもやらで緊縛して一晩おいておきます。 ニカワをたらすときに苦労するほどごく細いヒビだったので,それほど深いものではなかろうと思っていたのですが,翌日になって確認してみると,昨日のニカワが糸倉の内側まで滲み出て,細い細いスジになってました。 完全に割れていたようですね。 ![]() まずは補強のため,竹釘を二本ほど通しておきます。 はみだしたニカワが乾いたら,頭をちょんぎって整形。 次に籐を巻きます。 籐は細く裂いて,ニカワといっしょに鍋で煮てやわらかくしておきます。 籐が濡れてるうちに,糸倉にニカワを塗ってイッキに,しっかりと巻く――あらかじめ,糸倉の上下に籐をひっかけるための浅いミゾを切っておくとラク。 仕上げに焼き鏝をあてて,強制接着。 ついでに平らに均します。 ![]() ![]() ![]() 籐はすこし焦げるぐらいでいいのですが,くれぐれも木のほうを焦がさないよう…あ,内側少し焦がしちゃった。まあ,このくらいなら。あと,最後の止め目が少々目立つところにきちゃったのが少々ザンネンながら,強度はバチリと思われます。 糸倉は弦楽器のイノチ。 ここがイカれるとたいていの楽器はおシャカですが,1号月琴ですでにお試し済みの補修。 今のところ軸をかなり強く挿してもヒビは広がりません。 |