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楓溪さんの月琴(2)

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斗酒庵 楓溪さんの月琴を直す 之巻(2)2006 11月~ 明清楽の月琴


楓溪さんの月琴(2)

  前にも書いたとおりこの楽器,あまりコワれてるところがないので,この糸倉のヒビ継ぎのほかは,表板のクリーニングとあとは棹の取付がちょっとユルいのを直す程度であります。

飾り取外し(1)

  まずは作業にジャマな象牙製のフレットと,胴体についたお飾り類をとっぱらいます。

  フレットや木製の目摂は,ちょっと水で濡らせばかんたんにはずせたのですが,凍石(篆刻で印材として使うような石)製のお飾りがなかなかはずれません。

  結局,上から濡れタオルをあてて焼き鏝で蒸らしたりして,なんとか取り去りましたが,いくつかちょっと欠けたり,キズついたりしてしまいました。
  とくに胴体の一番上についていたお飾りなど,もともと一度欠けたかしたのを彫りなおしたものらしく,一部分極端に薄くなっていたので,ほぼバラバラ。

  さいわい庵主は篆刻もやるため,材料はいっぱいあります。

  こんど,もうちょい立派な石で,再現してつくってみましょ。
飾り取外し(2)

第4フレット取付部
■ 棹のフレットをはずすときに気がついたんですが。この月琴の第4フレットは棹上というか,もうそのギリギリ「継ぎ目の上」といってもいいくらいの場所に付けてあります。
  これはこれで,なかなか難しい工作ですね。


■ 絃停のヘビ皮はノリで表面板に直接貼り付けてありました。
  通常,この絃停は和紙などでちゃんと裏打ちしてから貼り付けられることが多いのですが。貼り付け方も多少雑,後で補修したものかもしれません。
絃停(表) 絃停(裏)



  糸倉のヒビ継ぎにかかります。

ヒビ継ぎ(1)
  まずは糸倉側部と基部の二箇所に,チギリを打つためのくぼみを彫っておきます。
  今回も力がかかる場所だし,かなり小さい部品となるので,チギリには細工しやすく粘りのある象牙を使います。

  チギリはきっちりとくぼみに嵌るように慎重に調整しておきます。
  場所が場所だけに作業はほぼ一発勝負。失敗はゆるされません。

ヒビ継ぎ(2)
  軸孔にラジオペンチの先をつっこみ,ヒビ割れ部分をちょっと広げるようにしながら,ゆるめに溶いたニカワをたらして染ませます。ヒビ全体にニカワがゆきわたったところでペンチをはずし,すかさずチギリを打って継いでしまいます。

  ゆるく溶いたニカワは乾くのに時間がかかりますので,この日はこれで終了。 継ぎめからニカワが滲んできますので和紙でくるんで,その上から輪ゴムやらひもやらで緊縛して一晩おいておきます。

  ニカワをたらすときに苦労するほどごく細いヒビだったので,それほど深いものではなかろうと思っていたのですが,翌日になって確認してみると,昨日のニカワが糸倉の内側まで滲み出て,細い細いスジになってました。
  完全に割れていたようですね。


ヒビ継ぎ(3)   修理二日目。

  まずは補強のため,竹釘を二本ほど通しておきます。
  はみだしたニカワが乾いたら,頭をちょんぎって整形。

  次に籐を巻きます。

  籐は細く裂いて,ニカワといっしょに鍋で煮てやわらかくしておきます。
  籐が濡れてるうちに,糸倉にニカワを塗ってイッキに,しっかりと巻く――あらかじめ,糸倉の上下に籐をひっかけるための浅いミゾを切っておくとラク。


  仕上げに焼き鏝をあてて,強制接着。
  ついでに平らに均します。
籐巻き(1) 籐巻き(2) 籐巻き(3)

  籐はすこし焦げるぐらいでいいのですが,くれぐれも木のほうを焦がさないよう…あ,内側少し焦がしちゃった。まあ,このくらいなら。あと,最後の止め目が少々目立つところにきちゃったのが少々ザンネンながら,強度はバチリと思われます。

  糸倉は弦楽器のイノチ。
  ここがイカれるとたいていの楽器はおシャカですが,1号月琴ですでにお試し済みの補修。

  今のところ軸をかなり強く挿してもヒビは広がりません。


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