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ゴッタン阮咸(2)

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斗酒庵 明清楽阮咸をデッチあげる 之巻(2)2006 12月~ ゴッタン阮咸(2)


STEP3 軸穴をあける。


  そういえば忘れてました(笑)。軸穴があいてないと弦楽器になれませんね。

  位置を決め下穴をあけたら,テーパーリーマーである程度まで広げておきます。
  太い方は径9mm,細い方が7mmくらいですね。

  べつだん糸倉に対して垂直でもいいんでしょうが,お三味や月琴と同じく「左右に末広がり,やや前に傾く」という,角度をつけます。
  角度が3Dなもんで,工作のとき少々おツムがついてこれなくなるものの,庵主はお三味で慣れてるのでこのカタチのほうが調音のときやりやすいんです。
軸穴(1) 軸穴(2)

軸穴(3)
  リーマーであけて,ヤスリで均した程度でもいいのでしょうがもう一工夫。

■ お望みの直径一歩手前くらいまでリーマーで広げた軸穴に,先の尖った鉄の棒をコンロで熱してつっこみ,穴を焼き広げます。

  これ,三味線なんかでやる工程で,こうするとドリルとかでただあけた時よりヒビ割れないとか,音締め(軸)の穴にハメる「覆輪」という金具を打ち込むときヒビが入らない,とか言われてますね。

  月琴も糸倉の内側はたいていこの工法か,この上に黒ウルシをさっと塗って仕上げられています。
  穴内部の仕上げ,強化としてはいい方法だと思いますが,もしやるんなら注意してくださ~い。

  焦がしすぎて糸倉が燃えちゃったり,穴が広がりすぎたらパーですからね!



STEP4 響き線の組み付け

  胴体の部品はできてますから,あとは組み立てなんですが,その前にこれをつけておきましょう。
  「響き線」というやつです。

  メイン楽器の月琴をはじめ,中国琵琶の「清琵琶」,ハンマーダルシマーの類「楊琴」,明清楽の撥弦楽器にはたいてい,これが仕込まれていますが――うむ,この部品を何と表現していいのかは悩みますね。
  「共鳴弦」というほどには弦の振動に共鳴しているワケではないし,「リゾネーター」というほど増幅もしてくれない。
  「効果線」とでもいいましょうか。
  木の箱に絹の糸,しかも共鳴箱が小さいですから,ペコペコした音しか出ないわけですが,胴体の中でこの線が揺れることで,音に金属的なサスティンがかかるわけです。

  ただしほとんど勝手に揺れているだけなので,その効果のほどは,ほぼコントロール不能。おまけに,うまくホドよく静かに振れてくれているうちは良いんですが,楽器を傾けたかの拍子にせまい胴内で大暴れしはじめ,癒しの演奏をノイズ音楽にしてくれやがったりもしてしまいます。
  
  色んなカタチがありますが,今回は胴体の真ん中に棹の延長材が通るので,渦巻き状のを左右に二個ぶらさげることにします。斗酒庵工房で修理した2号月琴のと同じタイプですね。

  0.9mmのピアノ線を蚊取り線香みたいに巻き,コンロであぶって焼きを入れます。

  このとき注意してください。あとで取り付ける関係上,根元の部分に焼きが入ってしまうと曲げられなくなっちゃいますからね。
  ペンチで渦巻きのすぐ手前くらいをつまんでコンロにかざし,渦巻き部分が真っ赤になったらすかさず水でジュっ!
  殺し屋さんの鉄砲みたいなテンパーブルーが理想ですね~。

響き線(1)
  上桁にピンバイスで線が通るほどの小さな穴を,左右二つづつあけます。
  音穴に近いほうはキリか何かで,ちょと広げておいてください。あとで竹釘を打って,線を固定しますんで。

■ 線の根元を音穴がわの小穴から通して,先を下向きコの字に曲げたら,もう一方の穴にハメこみます。

  最初に通した穴の音穴がわのほうのスキマに,竹釘にニカワを塗ったのを指でギュッっと差込み,響き線を固定。取付が終わったら,表板と裏板にはさまれた空間の,ちょうど真ん中でぷるぷるするように調整しましょう。

  この竹釘を打ち終わると,響き線はきっちり固定されて,指で弾くと「キ~ン,カ~ン」と,まさしく「響き」はじめます。




STEP5 補強ブロックの組み付け
補強ブロック(1)
  内部構造の響き線も出来たので,いよいよ胴体骨格も完成間近…でもしかし!材料はアヤしい小板の集合体,こんな薄い板だけの箱構造では,いくらなんでもあの長い棹を支えきれますまい。

■ 棹元に近いところとお尻の内側に,補強のブロックを噛ませておきましょう。

補強ブロック(2)
  材料はカツラ,前に月琴の軸を作った時の余り材です。天の内側につくほうはカッコつけてカモメさんのようにエグってみましたが,さしてイミはございませぬ。

  棹をさしてみて,ちゃんと通るのを確かめたら,ニカワを塗ってクランプで固定。
  天地の板裏に密着させます。

  これでまあ,「糸を貼ったとたん胴体爆裂!」とかいうような事態は避けられましょう。


 STEP0 軸穴あけなおし(^_^;)
軸穴あけなおし(1)
  ここで「修正してやる!」パート1。
  ちょと角度が足らんかったようですね。
  最初は気がつかなかったんですが,仮に軸を挿してみて正面から見ると,末広がりどころかやや下向き加減に見えてどうにもカッコ悪い。
  月琴と同じに考えてたせいでしょうね――そういやカーブが逆でした。
  カツラの余り材を削って,いったん穴を埋め,再度チャレンジ!
  見栄えがちょいとナニになってしまいましたが,ナニ,塗装でなんとか誤魔化しましょう。


STEP6 表板を作る

表面板(1)
  表裏の面板,材料は¥100屋の「焼き桐」板でございます。

  幅15cm,厚さ6mmのヤツの黒く塗ってある表面(「焼桐」ではありますが,「焼いて」はいないようですね,ソレっぽい色を塗料か薬剤のようなもので出しているだけみたい)を,アラカンと#80くらいの布ペーパーでこそぎ落としました。

  「楽器」の板ではありますが,月琴のなんかは,よほど高級なものでもない限り「おっ,これは!」と思うような良材は使われてません(「おっ,コレわ!(^_^;)」というのは良く見かけるんですが)

  なもんでまあ,これでもじゅうぶん――というか表面を剥いでみると,思ってたよりは良い板でしたね。

  今回は真ん中に幅広の一枚,左右に一枚づつの三枚継ぎでイキます。

  さいしょにまあ,だいたいのカタチに上下左右を切り落としておきましょう。
  そして真ん中の板を胴の天地,補強ブロックの上あたりに両面テープを貼って仮止め。

  つぎに左右の板のワキをカンナとかペーパーで削って,なるたけスキマのないように調整。
  スキマがあまり目立たなくなったら,接着面をお湯でちょと濡らし,ニカワを塗ってこすりつけるようにしてくっつけます。

  桐は接着がいいんで,こうしてお湯を含ませて柔らかくしてから貼ると,多少スキマてても,けっこうぴったりひっつきますよ。

  継ぎ目からはニカワがハミ出てくるんで和紙でもかぶせておきましょう。
  下に平らな板を敷いたら,重しをかけて一晩くらいおくと,三枚の板が一枚になります。

  できた板をいったんはずし,もう一度裏から両面テープや布テープで仮止めしたら,胴体からハミ出た部分を切取りましょう。
  あとでちゃんと貼り付けてから仕上げるので,ここでもまだ「きっちり」じゃなく「だいたい」。ちょっと胴体からハミ出てるくらいがいいですよ。

表面板(2) 表面板(3)



STEP7 半月の製作・取付
半月(1)
  月琴でいうところの「半月」。テールピースですね。
  阮咸のは琵琶とかに近く,L字をひっくり返した形になっています。

  今回は奢ってタガヤサン。

  高級材ですが,ナニ,これもこないだ貰ってきた端材で。
  半分木腐れしているようなカタマリから切り出しました。
  とはいえ「鉄刀木」の漢名どおりの手ごわい材でありましたあ…幅7cm,高さ2cm のものを切り出すのに,ノコはすべるは手はマメるわ。
  欲を言えば木の目が90度違っていれば最高だったんですが――まあ材料費タダですし,強度的には問題ナシ。

  ご家庭で御製作のおりには(いるんか?)カツラやカバ・サクラ材なんかでも,べつにかまわないでしょう。ギターやウクレレのブリッジとかほどには力もかかりませんしね。

半月(2)
  この部品は,表面板を胴体につける前に,あらかじめ接着しておいてしまいます。

  位置をきめたらのっかるあたりの表面を,ヤスリでちょっと彫り下げるように荒らしておき,そこにお湯を含ませたら,すかさずニカワを塗って,半月をのせます。

半月(3)
  クランプで上からおさえつけて,しっかり固定。
  前にズレないように何か板材を渡しておくのと,逆L字ですんで,倒れないようスキマに板切れでもつめておきましょう。

  ここは確実にへっついて欲しいので,このまま二晩ばかり放置。

  今回の報告はここまで!

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