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赤いヒヨコ月琴(3)

MOONH23.txt
斗酒庵 太清堂の月琴を直す 之巻赤いヒヨコ月琴(3)


  このところ自作楽器やら四方山やらで,エラく放置してしまいました。
  さて本筋の「修理報告」であります。


STEP4 裏板再接着

前回まで
  懸案の表板の補強は,けっきょくそのまま。棹側の空間に補強板は入れないことにしました。

  強度的にはやや不安が残りますが,現在半分がた面板から浮いてしまってる内桁をしっかり再接着すれば,先の補強とあわせて問題ないでしょう。


裏板(1) 裏板(2)

  さて,ハガした裏板の手入れにかかります。

  はがすときにほぼ真ん中からパックリ二つに割れてしまったのですが,それも当然で,板の中央あたりまで,細長~く虫が食ってスカスカになってしまっていました。ありがたいことに(?)真面目な虫で,わき道もほとんどつくらず,継ぎ目にそってほぼまっすぐ食ってますね。

裏板(3) 裏板(4)

  まず縦に走る長い虫食い痕は,表板を皮一枚残して埋めやすいように整形。

  板を継ぐ時ついでに,過去の修理で出た古い桐板を細長く刻んで,虫食いに反って埋め木をしておきます。
  地の側板に接着されてたあたりも,迷路みたいに複雑に食いまわされてますのでパテで埋めておきましょう。

  ヒビのすぐそばに大切な「太清堂」のラベルがあるので,ちょっと慎重に作業します。


裏板(5)
おまけ 月琴面板の工程について

  さて,これ(←)が裏板の内側の状態。

  緑は虫食い痕ですが,ピンクは製材の時についた痕,そのままになってます。

  板に対して水平方向に,細い三角形のミゾがいくつもついてますよね。

  ほかの月琴の板でも良く見るキズで,時としてミゾの中に竹釘の断片が残っていることがあります。
  最初は古箪笥か何かをバラして板を作ったために,使われていた竹釘がそのまま残ったのだろう,とか考えていたんですが――これはどうやら桐板そのものを作る工程と関係あるようですね。

  わたしはずっと,この楽器の表裏板は桐箱やそれこそ桐箪笥の職人さんとかから,ちょうどいい薄板を分けてもらって,それを継いで使ってるじゃないかと考えていましたが,どうやら昔の月琴職人さんたちは思いのほかマメなようで,この2~5mmほどの薄い板も,はじめから月琴のサイズに合わせて自分たちで作っていたようです。

裏板(6)
  現在推測される工程は図(←)のようなもの,ピンク色に塗ってあるほうが木口ですね。

 1) まずは桐の厚い板か角材を買ってきて,接着する面を平らにします。

 2) 次にこれを重ねます。接着面にはニカワを塗って,竹クギか竹のクサビのようなものを等間隔にうちこんで固定します。

 3) そして重しをかけたか縄でふン縛ったか,なにか巨大なハタガネのような道具を使ったか…そのへんのところは定かではありませんが,とにかく圧をかけて大きな四角い集成材を作り,これを大ノコで挽く。

  竹釘が埋め込まれているところで,ちょうどノコギリが釘を真っ二つに切るように正確に挽かなきゃならないはずですから,集成材にはなんらかの目印などついていたと思われます。

  おそらくこんなところではなかったかと思われます。

  この月琴の板の加工なんかもそうですが,時おり右端と左端で厚みがエラく違っていたり,竹釘が表面にちょっとだけ顔をのぞかせてたりすることなんかがあるのも,そうした自家製の板だとしたならうなづけますね。



裏板(7)
  おっとっと。ハナシが逸れた。
  修理に戻りましょう。

  一枚の板にもどった裏板は,まず虫食い痕の補修箇所を整形し,上に書いたようなノコ痕などのヒドイものもパテで埋めてしまいます。次に,もうヒビたり割れたりしないよう,補強材を貼り付けます。

  表板では躊躇しましたが,裏板は音にそれほど影響がないので,とにかく丈夫にしときましょう。

  ヒノキの薄板を削り,板の水平方向に上下2本,ニカワで貼り付けます。

裏板(8)
  楽器にへっついたままの状態で作業しなきゃならなかった表板と違って,こっちはただの板の状態なので作業はラク。

  自作楽器の指板用に切り出した黒檀やらタガヤサンの板を縦横に渡して,クランプで固定します。


裏板(9)
  そのまま二三日置いて,確実に接着させます。
  補強板の入るのはなにせ楽器の内側なんで,あとでポロ,とか取れてしまうと始末に困ります。

  左右のはみだした部分を切り取り,胴体の内側にキッチリはまるように整形して裏板の補修はできあがり。

  補修の終わった裏板は,無事,再び胴体に接着されました。

  まずはめでたしめでたし。



STEP5 表板のクリーニング

  さあ,楽器の胴体がふたたび箱の状態にもどりました。

  今回の修理では,棹や側板の塗装作業がないので,胴体ができあがれば,こっから先はもう仕上げみたいなもんですね――。

表板虫食い(1)
  もっとも,棹や側板は軽くクリーニングしてあげればいいくらいですが,板はそうはいきません。
  汚れは薄いものの,お飾りをへっぱがしたときのキズもあるし割レありヒビあり虫食いありで,補修痕がいろいろ…ヤシャブシ染めの再塗装の前にまずはキレイにしときましょう。

  いつものように#240の耐水ペーパーでエタノールをたらしながらコスコスコス…おや?
  半月の斜め上,絃停の貼ってあったとこのすぐ横あたりに,濡らすとみょーに色が濃くなる場所があります。
  よくみると板が,薄皮一枚…ペラペラ,ちょっとツツいたら穴が…。

  うぎゃ~っ!!虫食いですぅ!


表板虫食い(2) 表板虫食い(3)

  板の裏にまで貫通してなかったんで気がつかなかったんですね。
  ほじくってみるとけっこう大きい。長さ5cm 幅3~4mm くらいでしょうか。
  トンネルみたい…もののみごとに板の厚みの真ん中だけを食い荒らしてますね。

  薄皮だけになってる部分と中のモロモロを除去し,軽く整形してから桐の板を削って埋め木で補修。
  場所が場所なんで,ちょっと目立っちゃうかなあ。
  でも大きいし,皮一枚なんで,場所も場所なんでそのままにしとくわけにもいきませんでした。
  演奏中にピックがボディにズボッ!なんてのは笑えませんからね。



STEP6 指板磨き・軸作り

  へんなお飾りに隠れてましたが,この月琴の指板はおそらく本紫檀。

指板磨き
  いい材ですね。

  表面の汚れをエタノで拭い取り,軽くラックニスで磨いて,乾燥後仕上げに研磨剤で布磨き。
  キョーアクなくらいピカピカ。ラックニスで木目が浮き上がってキレイです。

  これなら指板上にはお飾りつけないで,このままのほうがいいなあ。
  せっかくの木目がもったいない。


  お次は一本折れてしまっている軸を作ります。

  オリジナルと同じに黒檀を削る根性と資金がないので,材料はいつものチーク。
  やや長めのスマートな形に削って,各面に三本線を彫り込みます。

  もっとも,このまんまじゃさすがに色が…でわでわ,塗ってゴマかしましょう!
  材質・強度的には問題ありませんし,自称・胡麻河岸魔王の庵主――ちょっと目には分かりませんて?

  さあて,右の写真は4本そろった軸を写したもの。どれが新作でしょう?

軸新作(1) 軸新作(2)



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