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工尺譜の読み方

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工尺譜の読み解き方(1)工尺譜の読み解き方(1)

  ずっとギモンに思っていたようなことが,ある日,ふとした拍子に,何かキッカケがあったわけでなく解けてしまうことがある。

  文字譜である工尺譜の音階を表にすると,

11111112222222
仩伬仜

(伍)

  となります。

※ 本によって「一」がなかったり,G2,A2あたりが違ってたりします。


  月琴は最低音が上(C)なので,合・六(G/G1)四・五(A/A1)はともにG1,A1で弾く。
  つまり楽譜上どっちの記号が書いてあっても出す音は同じ。じゃあ月琴の譜面では,この「合・六」「四・五」は,どっちかに統一されててもいいんじゃない?――と思うんですが,実際には混じって使われています。

久聞歌(『明清楽之栞』より)
  ちょっと「久聞歌」という曲の工尺譜を見てましょうね。
  ――ほら,アタマから「五上尺」てのがあるかと思うと「合合四」もある。

  月琴の譜面は,実際にはほかの楽器との合奏も考えて書かれている――というのは以前から分かってたのだけれど,上の青字,赤字のあたりの読み解きかたがイマイチ納得がゆかないまま,はずかしながら今日まできてましたのよ。

  まずこれを月琴で弾いてみましょう。 ♪ コチラ

  さっきも言ったとおり「合・六」「四・五」は同じ音で弾いてますね。
  さて,ではここに,月琴よりも音域のある,ほかの楽器を合わせるとします。たとえば阮咸。
  明清楽の阮咸は調弦がG/C1。月琴では「六」・「五」と同じになってた低音,「合」(G)「四」(A)がふつうに出せます。

  だもので実際にこれを「譜面どおり」の音階で,演奏してみると―― ♪ コチラ

――となってしまいます。何かヘンですね…特に赤字の部分が。
  GGA C2AC2 ではオクターブがあがりすぎてバランスが悪く,これで合奏させてみてもうまく合いません。

  ここでふと,気がついたんですね。
  「合・六」「四・五」が混在してる理由と,その法則に。

  月琴より音域の広い楽器を用いて工尺譜を合奏譜として読む時,「六・五」の後の高音はそのまま,わざわざ低い方の音の記号で書いてある「合・四」の後,あるいは間の高音は,「合・四」に合わせて1オクターブ下げて読むのでわなかろうか。

  つまり「五仩六―」は譜面どおり A1C2G1 で弾くが,月琴にはない低音の「合」「四」に囲まれてる「合―合四,仩―四仩の部分では GGA C2AC2 じゃなく高音をあらわす記号である「イ」を無視して GGA C1AC1 と読み解いて弾くわけですね。

  じゃあその手で,演奏したのを聞いてみましょう。 ♪ コチラ

  つぎにこれを合奏させてみる,と。 ♪ コチラ

  うむ,これなら違和感ありませんね。

  分かってみればなぁんだという,カンタンなことなんですが。   明清楽の独習本は音階までは書いてあるくせに,このへんのことをイガイと書いといてくれていない。
  なんせ教えてくれる人もいないもんで,本が頼り。このくらいの基礎のことさえ,なかなか分かりませんでした――独学のカナシサであります。


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