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ウサ琴2(2)

USA2_02.txt
斗酒庵 ふたたびウサ琴作り の巻ウサ琴2(2)

STEP2 胴体を作る

エコウッド
  作る,といってもまあ,材料がもとから丸くなってますから。

  これをつなげるとできあがるわけで。

胴体接合部(1)
  できれば単純に両端を接着するだけにしたいのですが,素材自体が完全な円形ではないため,そのままではやはり上手くいきません。
  端と端をつなぐ中間材として,今回は接着のいい桐板の端材でスキマを埋めてみました。


胴体(2)
  この接合部のあるほうが楽器の「地」の方向,お尻のがわになります。
  まずはこことその反対側,棹の入る天の部分の裏側に,補強のブロックを接着します。

  天の側のはみんな同じカタチのものにしましたが,お尻のほうのブロックは二種類用意しました。
  天側とおなじ台形のものと,前回のウサ琴1号と同様,薄い板状のものです。
  強度的には前者の方が安心なんですが,仕込む響き線によっては,ここが出っ張ってると困るものがありますので。



胴体(3)
  ブロックが接着されたら天の側に,棹を挿しこむための孔をあけます。

  最初四隅に小さな孔をあけ,つぎにもう少し内側に糸ノコの刃が通るくらいのをあけて切り抜き,ヤスリやノミで調整します。上下の余裕が5mm くらいなんで,エコウッドや補強のブロックが割れないように,ちょいと優しくゴリゴリします。

  今回は4本の棹でとっかえひっかえ実験してみたいので,どの棹もつけられるように,多少大きめ,ユルめにあけときましょう。
胴体(4)


胴体(5)
  反対側の地のほうには,接合部の補強と尻隠しを兼ねて,ツキ板でもはりましょう。

  同じスプルースのが良かったんですが手に入らなかったので,とりあえずブナで。

  だいたいの大きさに切ったツキ板を,ニカワを湯煎する鍋でいっしょに茹でて貼り付けます。
  マスキングテープでおさえつけ,さらに両端が浮かないように輪ゴムをかけます。

  このまま一晩放置。

胴体(6)
  乾いたら余計な部分を切り取ってヤスリをかけ,上から塗ったら分かんなくなるくらい,滑らかにしてしまいます。

  工作が悪くてちょっと凹ができてしまってるようなところには,その上から小切れを一二枚,焼き鏝あてて貼り付けましょか――似たような凹隠しの作業は2号月琴の修理でもやりましたね。



内部構造(1)
  内部構造を作ります。

  ホンモノの月琴ですと側板が1cmくらいはあるのでそういう心配はないのですが,ウサ琴の側板は厚さ約5mm。この材質この薄さだと,強度的な心配もさることながら,胴全体の歪みや変形に対処する必要があります。
  そうした楽器の変形を少なくするため,また補強も兼ねて,円形箱の胴体の内部に,入れ子のようにもうひとつ箱状の構造を仕込む――このニ重箱構造がウサ琴の特徴にして,「月琴ならざる」楽器たる所以でございます。

内部構造(2)
  左右内壁のちょうど中央,内部のアールに沿うように板を切り出し,その板(竜骨)に上下の桁を噛ませて繋ぎ,内桁そのものを箱状の構造の一部にしてしまいます。

  桁はヒノキ。前回より薄く厚9mm。
  竜骨はスギで厚さ6mm。竜骨の中央のあたりは余計な部分を切り払い,5~6mmくらいの幅にしておきます。


  この構造にはほかにも利点がいろいろとあります。

  まずウサ琴は側板が薄いんで,桁もミゾを切ってハメこむようなわけにいきません。
  内壁に直接接着するほかないのですが,それだと左右から力のかかったときなど,衝撃や楽器の変形でニカワが割れ,簡単にズレたりハガれてしまったりするかもしれません。
  また響き線も,ホンモノの月琴だと桁と同じようにホゾにはめこんだブロックか,内壁に孔をあけて直接取り付けられていますが,それもできないわけです。

  内桁のハガれは楽器としては致命的,響き線は月琴の音のイノチです。

  この2つの問題を解決するのも竜骨構造。
  響き線のブロックや桁をこれに噛ませれば容易にズレませんし,もちろん強度は格段あがります。

  ただしこういう構造を楽器の内部に仕込んだ時,音響的にどういう影響が出るのかが専門家でないんでちょっと分からない。
  そのへんが少し不安ですね。

内部構造(3)
内部構造(4)

  この時点でどの胴に,どういう響き線を仕込むかを決めておきます。
  響き線のタイプによって,上下桁の間隔とか,板にあける音孔のカタチとかが違ってきますので。


イ号胴   ■イ号胴:(裏面から見て)左肩から半周する曲がった響き線をもつ(=松音齋,彼氏月琴)。上桁左の孔は右よりやや大きく,下桁の孔は通しの一つ孔。鋼線。
ロ号胴   ■ロ号胴:鶴壽堂の内部構造を再現。中と下の空間に,左右互い違いの響き線をもつ。真鍮線。下の空間をやや広くとっている。
ハ号胴   ■ハ号胴:赤いヒヨコ月琴の内部構造を参考。真鍮線。ただし桁は2本に。下空間に例のフシギな構造の響き線を仕込むため,桁の配置はロ号と同様。
ニ号胴   ■ニ号胴体:鋼線,直一本の響き線。1号月琴と同じ最も単純な構造だが,響き線の加工と調整次第ではおそらくいちばん月琴らしい音が出るだろう。



STEP3 面板を作る

  赤いヒヨコ月琴の(5)で述べたように,月琴の面板はおそらく,桐の角材か厚板のような材料を積み上げて接着し,そこから切り出したものと考えられます。

  まあ,いつかはそうしてみたいものだけれど,斗酒庵工房,せまいものでそういう大物を扱う作業スペースがとれません。今回も面板は薄板横継ぎでまいります。こちらも材料は同じ¥100屋さんの「焼桐板」,15×60cm,厚さ約6mm。

面板(1)
  板の下ごしらえに,アラカンや荒ペーパーをかけて,表面の茶色い部分を剥いでおきます。
  木目の良いほうを表に使って丁寧に,そうじゃないほうは見えない内側に回しちゃえばいいんで,かなりテキトーでもいいでしょう。


  おおきな材を積層して板を切り出すやりかたならば,接着面も大きく,かなり強い圧をかけることもできましょうから,切り出される板は薄くてもしっかりくっついているワケですが,もともと薄い板を横に継いで大きな板にするというのは,けっこう繊細で難しい,神経を使う作業となります。

  前回はなるべくその厄介な回数を減らそうと,通称フンドシ――真ん中に幅広の一枚,左右に同じ幅のがそれぞれ一枚づつ――の3枚継ぎでやったのですが,この継ぎかただと板を余計に食います。

  一枚の板で一面の2/3しかふさげない。

  しかも余った板は,けっこう大きなワリには次に使えない,中途半端なカタチとサイズになってしまうんですね。

  今回は数も多いことですし,板をムダなく使えるように材取りをしたいところです。

  切り出す板の幅をせまくして,継ぎを多くしたほうが,よりムダなく板を使えるのですが,継ぎの回数を多くすると――1)加工がタイヘンになる,2)板が弱くなる,3)木目をそろえるのが難しくなって出来上がりが汚くなる――といった欠点があるんで,むやみに増やすわけにもいきません。

  今回は1枚だけ増やし,4枚継ぎとすることとしました。

材取り
  板の組み合わせと,材取りは図のようなカンジ。

  板幅 15cm のままのいちばん広い板を真ん中にもってくるのは前回と同じですが,右もしくは左のはじに,長 20cm ほど,幅5~6cm の小板を一枚足します。
  これくらいのサイズなら別にこれ用の板を用意しなくても,いままでの製作で出た余り板で8枚じゅうぶん作れます。
  この細い板を一枚噛ませただけで,板をほとんどムダなく使えるようになりました。


  切り出して,木端口をニカワで横に継ぎます。

  言うとそれだけのコトなんですが,6mm 厚の板の横っちょをカンナやヤスリで削って,ぴったりくっつくように擦り合わせるのはタイヘンなんですよ~。


面板(2)
  ふつうはハタガネとかで固定して,一枚一枚圧着するんですが,今回は一度に8枚も作るわけで,多少出来に問題があってもいいので,一度に数こなせる方法を考えましょう。

  大き目の作業板の片方に,角材で作ったストッパーをクランプで固定します。

  ストッパーがわにおしつけるようにしながら,ニカワを塗った面板の部品をここに並べ,くっつかないように間にラップを敷いて重ねていきます。

  8枚分の材料が重なったら,ストッパーと反対の方も角材で固定してしまいましょう。

  ただし部材の切り方とか,木端口の擦り合わせ作業とかのせいで,板のサイズはピッタリ同じなわけではなくこっちの端は凸凹になってますんで,木切れやスポンジを詰め込んでスキマを埋め,なるべく均等に圧がかかるようにます――これで左右方向に圧をかけ,ハタガネのかわりにしようというワケ。

  最後に上から重しの板をのせて,Fクランプで一気にぎゅぎゅーっと。

  うまくできてれば御の字だったんですが,結果は8枚中,そのまま使用可能なもの4枚,完全やり直し2枚,一部やりなおし2枚――まあ,こんなもんでしょう。
  世の中すべてがうまくいくもんじゃありませんよぅ。

面板(3)
  出来上がった板はホームベーズみたいなカタチ。
  スキマが見えちゃうようなところはパテを盛って,表面を軽く均しておきましょう。
  このへんはヴァイオリンやギターの板ほど精密じゃなくていいんで助かりますぅ。



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