« 2007年11月 | トップページ | 2008年1月 »

ウサ琴3(3)

USA3_03.txt
斗酒庵 みたびウサ琴作り の巻3ウサ琴3(3)


胴体を作る(1)

接合1

  実際には,棹とほぼ同時進行でやってます。

  胴体は例によってエコウッドの 30cm 径,板厚は約5mm,材質はスプルースです。
  約5cm 幅のものを真ん中から二つに切り,一本 2.5cm 幅にして使っています。

接合2
■ まずはこれをつなげて輪を作る。

  斜めにそぎ落とされている両端をうまく円になってつながるようにヤスリで整形,桐の板をうすーく削って間木をその隙間に噛ませて接着。

  これを円が崩れないよう外枠にはめこんで固定し,ゴムで縛って圧着してしまいます。


継ぎ目(1) 愚行その2

  今回,ボディの継ぎ目をギター風にとか考えてみました。

  オリジナルでは上図のようだった接合方法を,エコウッドの継ぎ目を垂直に切り落とし,下図のようなエンドブロックを作って,ホゾにエコウッドを噛ませたらカッコイイし,作業を一つ減らせるんじゃないか――とか思ったもので。しかーしッ!

  1)エコウッド自体が真円でなく,片方の端っこ部分がややまっすぐ気味になっていて,左右対称のホゾにハマってくれません。

  2)そんなら,と,そのまっすぐ気味な端っこ部分を湿らせたり茹でたりして,ベンディングしてみたものの思ったようにうまく曲がってくれません。

  3)それじゃ,と無理くりハメたら,ブロック自体がまッ二つに壊れました。

  ――と,いうメに逢ったもので。
  試作一本失敗のあと,けっきょくいつもの方法に戻りました。
継ぎ目(2)


エンドブロック1
  外枠に固定したまま一日以上おいて,接合部付近の外側を少し均したら次の作業。

■ エンドブロックを取り付けます。

  1.5cm 厚のカツラの板を胴体の幅に切り,さらに6cm長ほどに切り分け。
  片面を接合部の内側と擦り合わせしながら整形,接着します。

部分型枠
  さて,ここで今回の新兵器。

  部分型枠の登場です,じゃじゃ~んっ!…といってもまァ,棹の余り材のアッシュやクルミを胴体の外周に合わせて切っただけのシロモノですが。

  現在外枠は一個だけ。

  そちらはそちらで次の一本とかほかの作業に使っているので,これがあると作業の効率があがりますね。このくらいのサイズだとそれほどジャマにならないし。

エンドブロック2 エンドブロック3

  接合部の内側と,エンドブロックにニカワを塗って,部分型にはめこみ,クランプでぎゅ~。
  これもまた,一日以上はそのままにしておきましょう。


ブナ板1
  エンドブロックで接合部は内側から補強されました。

  おつぎは外側からブナの突き板を貼って……あ,そういえばコレって…

  考えてみれば,エンドブロックといっしょに圧着しちゃえば良かったんだよね。

  ――ということに気がついたのは,最後の1本をヤろうとしている時でありました。


ブナ板2
  愚行その3…次からはそうしましょう。

  ウサ琴はいまだ未完成の楽器,加工法や工程にはまだまだ未解決の部分もあれば,試行錯誤もムダもあるさ!

  接合部表面に圧着したブナの薄板をペーパーで均して段差を消してしまうと,もうこりゃカンペキな木の輪っか。軽くたたくと振動が全体に伝わってます。



  ホンモノの月琴とくらべると,ウサ琴は胴体も小さいし材質もずっと劣るのですが,そこそこ音量も出るし音も悪くはない(と,思ってます)。

  その原因の一つは,このボディの構造にあるのかもしれません。

  月琴の胴体は4つのパーツを組み合わせてできています。
  部材の接合は良くて凸凹ホゾ組み,ふつうは部材同士の木口を接着してあるだけで,あとは面板でサンドイッチにすることでカタチを保っています。
  まれにカミソリの刃も入らないほどピタリと接合され,今もなおビクともしないような神業を見ないでもありませんが,古い月琴の継ぎ目にはたいがいスキマができていて(ほとんどの場合,その原因は部材の収縮やニカワ落ちといった経年変化よりか,そもそもの工作のマズさ),見かけ上はともかく,現実にはちゃんと一本の輪としてつながっていない状態。

ブナ板3
  一方,ウサ琴の胴体は部材に切れが一箇所しかありません。
  四つの部材を組み合わせて輪にしているのとくらべると,振動の伝達がどちらのほうが上かはいうまでもありませんね。

  前にも書きましたが,月琴の胴体について楽器辞典などではよく「蒸気で撓めた板」で作られている,とか書かれていることがあります。

  事実は違って,板や角材から切り出した1/4円孤の部材を組み合わせて出来ています。
  そもそも1cm 以上もの厚みのある木材を「蒸気で撓め」ることができるような技術も機械も,月琴が流行した当時にはほとんどありませんでした。修理でもしていないかぎり,外見からだけだと分からないことではありましょうが,曲げわッパなどから連想されたものでしょうね。

  説自体は誤謬なのですが,月琴から出たウサ琴の胴体は,奇しくもその誤謬をアイデアとして出来てます――面白いものですね。


ネックブロック
  お尻の補強が終わると輪は丈夫になって,ちょッとやそッとの作業ではビクともしなくなります。

■ 次に棹を差し込む部分の補強として,反対側にもブロックを接着します。

  いちど型枠にはめて,エンドブロックとのバランスをみながら楽器の中心線を決め,それに沿って貼り付け位置をはかります。


ネックブロック2
  作業自体は前のブロックと変りませんね。貼り付け位置のカーブに合わせて片面を削り,ニカワを塗って部分枠で圧着。お尻のブロックの役目は接合部の補強だけ。それ自体に力がかかることはありませんので,接着後に薄く削ってしまいますが,こちらのブロックには棹の力がかかるので,長さも厚さもエンドブロックよりやや大きめに取ります。

  一日圧着,二日ほど乾燥させたら次の作業です。
  これで胴体の外側はほぼ完成。
  つぎは月琴とウサ琴の構造上の大きな違いの一つ,内部構造「竜骨(キール)」の組み込みです。



ウサ琴3(2)

USA3_02.txt
斗酒庵 みたびウサ琴作り の巻2ウサ琴3(2)


棹を作る

棹作り(1)

  部屋がせまいし,歩くと揺れるようなボロ家なんで。

棹作り(2)
  部材の切り出しとかの大仕事は,晴れた日にお外ですることにしております。
  すぐ近所の公園に,ちょうどいい木のベンチがありまして,大工道具とホウキを持って出かけます。お外だと盛大にギコギコできますし,ノコギリ仕事なんかは動作が大きくとれたほうが,作業の効率もいいんですよ。

  棹の削り出しも,そうしたお外でやる大仕事のひとつ。
  刃物よりヤスリ細工が得意なほうなんで,粗削り~中削りくらいまでは盛大に切り屑・削り屑舞いますからね。


棹作り(3)
  ■ 糸倉と指板の接着の終わった棹を整形します。
  この四角い物体を「月琴の棹」に削ってゆくのは,大好きな作業の一つ。
  曲線美の極致を目指して削ってまいりましょう。

  そのまましまいまで一気にゴリゴリ整形しようとすると,木口の部分が割れたり,思わぬところが欠けたりしますので,最後の方は木口部分を中心にラックニスを染ませては乾燥させ,木固めをしながら仕上げてゆきます。

  最初のほうは木工ヤスリの平と半丸の荒目にミニカンナや切り出しで盛大かつダイタンに,最後の方は棒ヤスリで慎重かつショリショリと――てとこでしょうか。


弦池拡張(1)
  ■ 全体のカタチが仕上がったら,弦池(糸倉の真ん中のあいている部分)を広げます。
  糸倉の左右を8mm ほどの厚さに,真ん中を14mm ほどの幅に。

  この作業,正確にキレイにきっちりやるのもいいのでしょうが,庵主はちょっと不正確にやります。

  本物の月琴は糸倉から棹までが一木造りで,弦池も彫り貫きです。
  ほかの民族楽器でもけっこうそうなんですが,この部分,弦を巻き取る大切なところであるわりに,作業としてはタイヘンなため,そこそこ質のいいものでも,よく見ると内側に削り痕が盛大に残っていたり,穴自体が歪んだ四角形になっていたりします。

  一方,ウサ琴の糸倉は棹と別材の寄木造りです。
  左右はもともと板を組み合わせたものなので,内も外もきっちり平らかです。
  そういうほうが工作としては良いのかもしれませんが,古物の月琴を見慣れた目にはかえって不自然に感じてしまいます。
  そこで――この弦池拡張の作業のついでに,糸倉に「手づくりっぽさ」というか,「人間味」みたいなものを加えるのですね。

弦池拡張(2) 弦池拡張(3) 弦池拡張(4)
  わずかに厚くなってたり薄くなってたり,四隅が少し丸くなってたり。
  だいたいの寸法に広がったなら,内側に粗めのペーパーをかけて,ここはもうこれだけにしておきます。
  本物の月琴でも,この弦池の内側をきっちり処理している例は少なく,たいていはザラザラのままにされています。ウサ琴の場合,このあとの棹の塗装で,このザラザラ面に塗料が染みてちょうどいい具合に強化されます。
  それもまた余禄,ってものかと。


  ここから先はお家で作業。
  火,使いますしね。

軸穴(1)
  ■ 軸穴をあけます。
  軸穴の位置・配置は,今まで修理した月琴の数値を元に,それを今回の型紙の寸法にあてはめて割り出してるんですが,糸倉が曲面構成で計算が複雑なことと,工作が不揃いなもので,一本一本微妙に糸倉のアールや長さが違ってしまうこともあって,何度やっても理想の位置・角度にはなかなか決まりません。
  とりあえず一番上と下の軸だけ,計算で割り出した位置にまず置いて下書きをし,真ん中の2本の位置や角度は,実際に全体のバランスを見ながら微妙に調整する…というのが,軸の配置を決める,まずまず失敗の少ないやりかたかと。

  とわ申せ――
  実作業で失敗ってしまうこともたびたび。


  いちおう穴の位置が決まってから,下穴をあけたところで竹串を挿して確かめてみたりもしてるのですが,実際に穴をあけてテスト用の軸を挿してみると思ったようになってないこともしばしばあります。
  糸倉の形状だけでなく,軸自体が水平方向には末広がり,垂直方向で軸頭がわずかに楽器の前方に傾く,という,3Dな構成をしているせいもあり,穴の位置がわずかにズレてるだけで,実際の見栄えにかなりの影響が出てしまうんですね。しかもその影響がどこにどんなふうに出るのか,複雑すぎて予想がつきません。


クルミ クスノキ

イチイ カツラ
  今回も,はじめにやった二本(棹材:クルミ・クス)は,使用に支障が出るほどではないものの,多少見栄え・バランス的にカンペキとはいえませんね。どちらも上から二本目の軸の水平面での角度がわずかに足りない。
  次の二本(棹材:イチイ・カツラ)はまあまあでしょうか。

  多少不満は残るにせよ,いったんあけてしまった穴をふさいで修整するとなると大事ですんで,使用に問題がなく,見栄えが壊滅的でない限りにおいては,そのままでいくしかありません。

  リーマーで穴を広げ,テスト用の軸を挿しながら,軸穴の大きさを調整してゆきます。
  最後の方は焼き棒を突っ込んで軸穴の内壁を焦がしながら,リーマーに紙ヤスリを巻きつけたもので,少しづつ慎重に広げてゆきます。
  理想は軸先が8分目くらいまではまっているくらい。
  あとは使用しているうち擦られて広がったり,軸が圧縮されて,いづれ100%きっちりハマるようになればいい。

  この道も,深いね。


愚行その1

  いままでオロカにも気がつかなかったのですが。

  ずっと書いてきたように,わたしは軸作りの最初の部分の作業がキライです。
  六角形にする前に,まず四角い角材の四面を斜めにソギ落とし,四角錐の素体を作るのですが,この作業がなんともキライです。1本で四回,一面分こさえるのに16回くりかえす単純作業。

  そこから先,六角形にするのはダイスキなんですがね。

今までの軸削り
  今までは,まず角材を11.5cmの長さに切ってから,四面を落としていました。
  片手で保持をして片手で切るのですが,材が短いものだから片手だけでは固定がしにくい。
  ただでさえチークは滑る木なのに,さらには切るほど細くなって,しっかり固定するのが難しくなります。
  最初は作業台のくぼみに先をひっかけたり,机に角材を固定して即席のストッパーを作ったり,この作業専用の当て木まで作ったもんですが,やっぱりタイヘンさはそれほど変りません。

  ――といったところ,今回ふと気がついたのですが。

  四面落とすの,イチバンはじめにすればいいンじゃね?

  つまりは,はじめに軸の長さに切り分けるのをやめて,長い角材のままでまず四面落としをして軸先の形を作り,最後に頭を11.5cmのところで切り落とす――というわけです。

軸削り改訂版
  現在軸に使っているチークの角棒は45cmくらいあり,1本から一面ぶん,4本の軸が切り出せます。
  これだけ長さがあると,保持も手じゃなくて足を使えてバッチリ固定できますし,おまけに手がフリーになりますから,ノコギリもしっかり握れて言うことナシです。

  唯一の欠点は,最後の2本は軸先を両頭にするしかないので,片方が逆目になってしまうことですが,まあ今までも木の目はあまり気にしていませんでしたから。

  考えてみますと。

  今までやってきた方法,作業の順番も,べつだん間違いというわけではないのです。
  もし電動ノコの類を使うなら,そちらの方法が良いでしょう。
  手元で作業しますから,はじめに素材を短く切り分けておいた方がぜったいにやりやすい。

  いつのまにか電動工具前提のアタマになっていたのかもしれません。
  出来上がるモノは同じでも,モノ造りの方法,手順は一つではありません。
  手作業には手作業の,機械作業には機械作業の,それぞれに合った手順があるということ。

  この程度のことなのに,一年以上やっててようやく気がつくとは。
  まさに愚行ですね(笑)。



« 2007年11月 | トップページ | 2008年1月 »