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ウサ琴3(3)

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斗酒庵 みたびウサ琴作り の巻3ウサ琴3(3)


胴体を作る(1)

接合1

  実際には,棹とほぼ同時進行でやってます。

  胴体は例によってエコウッドの 30cm 径,板厚は約5mm,材質はスプルースです。
  約5cm 幅のものを真ん中から二つに切り,一本 2.5cm 幅にして使っています。

接合2
■ まずはこれをつなげて輪を作る。

  斜めにそぎ落とされている両端をうまく円になってつながるようにヤスリで整形,桐の板をうすーく削って間木をその隙間に噛ませて接着。

  これを円が崩れないよう外枠にはめこんで固定し,ゴムで縛って圧着してしまいます。


継ぎ目(1) 愚行その2

  今回,ボディの継ぎ目をギター風にとか考えてみました。

  オリジナルでは上図のようだった接合方法を,エコウッドの継ぎ目を垂直に切り落とし,下図のようなエンドブロックを作って,ホゾにエコウッドを噛ませたらカッコイイし,作業を一つ減らせるんじゃないか――とか思ったもので。しかーしッ!

  1)エコウッド自体が真円でなく,片方の端っこ部分がややまっすぐ気味になっていて,左右対称のホゾにハマってくれません。

  2)そんなら,と,そのまっすぐ気味な端っこ部分を湿らせたり茹でたりして,ベンディングしてみたものの思ったようにうまく曲がってくれません。

  3)それじゃ,と無理くりハメたら,ブロック自体がまッ二つに壊れました。

  ――と,いうメに逢ったもので。
  試作一本失敗のあと,けっきょくいつもの方法に戻りました。
継ぎ目(2)


エンドブロック1
  外枠に固定したまま一日以上おいて,接合部付近の外側を少し均したら次の作業。

■ エンドブロックを取り付けます。

  1.5cm 厚のカツラの板を胴体の幅に切り,さらに6cm長ほどに切り分け。
  片面を接合部の内側と擦り合わせしながら整形,接着します。

部分型枠
  さて,ここで今回の新兵器。

  部分型枠の登場です,じゃじゃ~んっ!…といってもまァ,棹の余り材のアッシュやクルミを胴体の外周に合わせて切っただけのシロモノですが。

  現在外枠は一個だけ。

  そちらはそちらで次の一本とかほかの作業に使っているので,これがあると作業の効率があがりますね。このくらいのサイズだとそれほどジャマにならないし。

エンドブロック2 エンドブロック3

  接合部の内側と,エンドブロックにニカワを塗って,部分型にはめこみ,クランプでぎゅ~。
  これもまた,一日以上はそのままにしておきましょう。


ブナ板1
  エンドブロックで接合部は内側から補強されました。

  おつぎは外側からブナの突き板を貼って……あ,そういえばコレって…

  考えてみれば,エンドブロックといっしょに圧着しちゃえば良かったんだよね。

  ――ということに気がついたのは,最後の1本をヤろうとしている時でありました。


ブナ板2
  愚行その3…次からはそうしましょう。

  ウサ琴はいまだ未完成の楽器,加工法や工程にはまだまだ未解決の部分もあれば,試行錯誤もムダもあるさ!

  接合部表面に圧着したブナの薄板をペーパーで均して段差を消してしまうと,もうこりゃカンペキな木の輪っか。軽くたたくと振動が全体に伝わってます。



  ホンモノの月琴とくらべると,ウサ琴は胴体も小さいし材質もずっと劣るのですが,そこそこ音量も出るし音も悪くはない(と,思ってます)。

  その原因の一つは,このボディの構造にあるのかもしれません。

  月琴の胴体は4つのパーツを組み合わせてできています。
  部材の接合は良くて凸凹ホゾ組み,ふつうは部材同士の木口を接着してあるだけで,あとは面板でサンドイッチにすることでカタチを保っています。
  まれにカミソリの刃も入らないほどピタリと接合され,今もなおビクともしないような神業を見ないでもありませんが,古い月琴の継ぎ目にはたいがいスキマができていて(ほとんどの場合,その原因は部材の収縮やニカワ落ちといった経年変化よりか,そもそもの工作のマズさ),見かけ上はともかく,現実にはちゃんと一本の輪としてつながっていない状態。

ブナ板3
  一方,ウサ琴の胴体は部材に切れが一箇所しかありません。
  四つの部材を組み合わせて輪にしているのとくらべると,振動の伝達がどちらのほうが上かはいうまでもありませんね。

  前にも書きましたが,月琴の胴体について楽器辞典などではよく「蒸気で撓めた板」で作られている,とか書かれていることがあります。

  事実は違って,板や角材から切り出した1/4円孤の部材を組み合わせて出来ています。
  そもそも1cm 以上もの厚みのある木材を「蒸気で撓め」ることができるような技術も機械も,月琴が流行した当時にはほとんどありませんでした。修理でもしていないかぎり,外見からだけだと分からないことではありましょうが,曲げわッパなどから連想されたものでしょうね。

  説自体は誤謬なのですが,月琴から出たウサ琴の胴体は,奇しくもその誤謬をアイデアとして出来てます――面白いものですね。


ネックブロック
  お尻の補強が終わると輪は丈夫になって,ちょッとやそッとの作業ではビクともしなくなります。

■ 次に棹を差し込む部分の補強として,反対側にもブロックを接着します。

  いちど型枠にはめて,エンドブロックとのバランスをみながら楽器の中心線を決め,それに沿って貼り付け位置をはかります。


ネックブロック2
  作業自体は前のブロックと変りませんね。貼り付け位置のカーブに合わせて片面を削り,ニカワを塗って部分枠で圧着。お尻のブロックの役目は接合部の補強だけ。それ自体に力がかかることはありませんので,接着後に薄く削ってしまいますが,こちらのブロックには棹の力がかかるので,長さも厚さもエンドブロックよりやや大きめに取ります。

  一日圧着,二日ほど乾燥させたら次の作業です。
  これで胴体の外側はほぼ完成。
  つぎは月琴とウサ琴の構造上の大きな違いの一つ,内部構造「竜骨(キール)」の組み込みです。


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