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アルファさんの月琴(2)

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斗酒庵 アルファさんの月琴を作る の巻ヨコハマ買い出し月琴(2)


5)半月の接着

半月接着(1)
  さて,続きです。

  裏板を張って,胴体を箱にする前に,まずは半月を接着します。
  コミックスを見たり,絵から寸法を割り出したりして,その下限位置は胴体の縁から1.5cm のところと決めました。

  これにより,この楽器の山口から半月までの弦の長さ,「有効絃長」は 43cm となります。

  明清楽の月琴で 38~42cm ですから,スケール的にはそれほどの違いではなさそうですが,棹が長いぶん操作感とかには大きな違いが出そうですね。

  接着をしっかりするため,半月をのせる前には面板の接着面をペーパーで荒らして,お湯をふくませてあります。大きさはふだんのウサ琴の2倍ですが,左右に空間があるぶん,接着面はかえってせまく,琵琶や阮咸さんのテールピースのようにほとんど「片持ち」で面板についてる,といった感じになりますから,部品自体のバランスもそれほど良くはありません。
  力のかかるところなので,慎重に,確実に貼り付けたいですね。

  面板の裏側にも角材を噛ませて,表裏からきっちり力をかけれるようにしてあります。

  それでもこの半月は全体が曲面なので,クランプをかけるの自体が難しい。
  そのうえ,ヘンなところに力がかかってしまうと,下に支えのない真ん中の部分が割れてしまいそうですから,その下に間木を噛ませたり,半月上にはコルクの薄板を並べて,なんとかクランプを定位置に落ち着かせました。

  三日ほどそのままにして,半月が着いたところで。

  まだ裏もとじてないし,フレットもない状態ですが,仮軸を挿し,糸を張ってみました。

  なにせイロイロと未知なところの多い製作ですからね,今回は。

  楽器としてちゃんと鳴るのか,構造的に無理はないのか,この時点で調べておきます。
  糸の高さも問題なし,とりあえず半月もハガれてこないし,棹の反りもなく,弦をピンと張っても折れません――このまま作っても大丈夫みたいですね(笑)。

半月接着(2) 半月接着(3) 半月接着(4)


6)響き線の追加

  ここでふと思いついて,響き線を追加することに。

  「赤いヒヨコ月琴」に付いてたフシギな構造――真鍮のバネみたいのと直線の組み合わせ。一見SFっぽい――を加えましょう。この構造,効果はそのものは小さいんですが,面白い残響が付きます。

  そこにちょっとロマンも追加。   赤い石――ここではガーネットですね。
  楽器のお守りというかパワーストーンみたいなもんで,音的には特に意味ありませんが。
  原作ファンなら,ははあん,でニヤッ,てとこでしょか。

追加線(1) 追加線(2) 追加線(3)


7)塗装

塗装(1)
  響き線も仕込み終わったので,裏板を貼って胴体を箱にして,塗装に入ります。

  棹はラックニスで下塗りをした上から,オイルニスを上塗りします。

  胴体側部も同じ塗装ですが,今回は表裏の面板をヤシャブシの汁で染めるついでに,側板もいっしょに黄色くしてあります。

  糸倉の先端しかり,半月しかりなんですが。この月琴のデザインのあちこちからは,大型の水鳥とか,船みたいなイメージが浮かんできます。

  今回,棹材の選択もそうなんですが,側板を黄色く染めたのも,ここをチークっぽくしたかったからです。
  チークは耐水性に優れているので,むかしから高級な船の材料としてよく使われていました。

  未来という時間の海を渡る楽器には,ふさわしい材質かな,と。

  これもまた,ほんのロマンに過ぎませんが。

塗装(2)
  胴体をオイルニスで塗装するのはこれが二度目です。

  楽器用のオイルニスは紫外線で硬化するものなので,塗装後は楽器を日干しにする必要があります。以前,4号月琴の修理で使ってみたのですが,初夏だったこともあり,塗料が固まる前にキョーレツな日差しで面板にヒビがビシッ!…なんて悲劇がありまして。この塗料,以来戸棚に封印されておりました。

  棹はもともと日干しにしても問題なしですが。

  さて,胴体はどうかなあ?…と多少不安はありましたが,うまいことに今回季節は冬。
  温度は低く,日差しだけをもらって乾きも早く,前回の苦労がウソのよう。
  お日様さえあれば,ふだん使ってるカシューよりもずっと乾くのが早かったですね。

  じつに快調な塗装作業でありました。

  塗り重ねられて薄く飴色がかった塗膜が,なんだかちょっと美味しそうです。


  ――次回,いよいよ完成です!

 

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