月のあしび
月琴修理報告別館
プロフィール
ホームページ
月琴修理報告INDEX
斗酒庵茶房
明清楽復元曲一覧
清楽曲譜リスト
明治大正期楽器商リスト
カテゴリー
おすすめサイト
そのほか
アニメ・コミック
イベント
工尺譜
文化・芸術
明笛
月琴
楽器修理
楽器製作
胡琴
趣味
音楽
最近の記事
2023年師走の月琴WS@亀戸!!
名前はまだない(11):RE
名前はまだない(10):RE
名前はまだない(9):RE
名前はまだない(8):RE
月琴WS@亀戸2023年11月!!
月琴WS@亀戸 2023年10月!!!
「明清楽復元曲一覧」 部分更新!!
月琴WS@亀戸 2023年9月!!
清楽月琴WS@亀戸 2023年7月!!
バックナンバー
2023年11月
2023年10月
2023年9月
2023年8月
2023年6月
2023年5月
2023年4月
2023年3月
2023年2月
2022年12月
« 月琴のフレットの作り方(3)
|
トップページ
|
月琴の軸の調整(1) »
月琴のフレットの作り方(4)
FLET_04.txt
斗酒庵流 月琴のフレットの作り方(4)
フレット作り(実践篇 3)
3)斗酒庵流もう一手間
竹のフレットが主流なのは,その
丈夫さと加工性の良さ
がいちばんの理由。
慣れちゃえば月琴に必要なフレット,1セット8本,ほんの2~3時間で用意することも可能です。
また竹はもともと,仕上げにあまり手のかからない素材で,表面を軽く磨いてあげるだけですぐツルツルになるし,ニスや柿渋を軽く塗れば,それだけでもかなり雰囲気が違ってきます。
しかし,庵主はひねくれものなので,この
「早くて安い!」
がウリの竹製品に,さらに余計な手間をかけています。
(1)材取り
カタチの作り方,切ったり削ったりの工作自体は,前2回のそれとなんら変わりありません。
素材の竹板を楽器に当てて,高さをはかりながらフレットを削ってゆきます。
ただ庵主のフレットは,ちょうど
中国月琴と明清楽のそれを合わせたような感じ
になっています。
材取りは明清楽のに近く,
フレットの片面を表皮のがわに向けて取りますが,ざっくりと半月型に削ぎ取るのではなく,頭の部分がちょうど皮の表面のところにくるように,
やや斜めに傾けて取り,両面を削ぎ取って,カタチとしては中国月琴のフレット
のようにしています。
前にも言いましたが,竹の皮の表面には,竹でいちばん硬くて丈夫な
ガラス質
の層があります。
この部分はきわめて硬く,面では糸擦れ等に強いのですが,層の横からだと意外とモロい。またこの層の部分が水分をはじいてしまうので,竹はふつう
耐水耐染,
あると染めたり塗ったりが,けっこうタイヘンです。
この最表皮の層の,まさに薄皮一枚下には,竹の繊維がぎゅっとつまった層があります。
この部分はガラス質ではないけれど,繊維が詰んでいるので,じゅうぶん丈夫。
庵主,ガラス質の部分はあえて捨てて,その下の美味しいところを利用します。
材を斜めに取るので,ほかのフレットより
ゼイタクな材取り
にはなりますが,大量生産しているわけではないので,それでもよろしいかと。
両面を削ぐので,
あとでのカタチの修整はラク
ですし,片面のほとんどが,肉よりはずっと丈夫な層で覆われているので,
摩擦や衝撃にも強く,
また表層ほどモロくありません。
さらに,塗料の類がしみこまないガラス質の部分を取り去っているので,このフレットには,
色を比較的容易つけることができます。
(2)うでる・染める
整形したフレットを,ヤシャブシの液に砥粉を少量混ぜた汁
(面板を染めるのに使ってるのと同じもの)
の中で煮つけます。弱火で30分~1時間ほど煮たら,
紙で落とし蓋
をして,そのまま
一晩ほど放置
し,色を染みこませます。
(3)ニス漬け
煮〆たフレットを引揚げて,
一日ほど乾燥。
乾いたらそれをそのまま,今度は
ラックニス
(棹や胴体を雑巾ポリッシュするのに使っている,エタノールで薄めたもの)のなかにドボン!
またまた一晩~二晩漬け込みます。
(4)磨き
ニスから引揚げたフレットを
数日乾燥
させ,#1500~2000くらいの耐水ペーパーで空研ぎ。
ついで同じくらいの番手のペーパーに,研磨剤と亜麻仁油を少しつけて仕上げ磨き。
油が乾くまで,また二晩ほど乾燥させます。
ヤシャ液で煮ると,
白い竹の肉の部分に色がついて,
どっちが表だかわからなくなるのと,全体が茶黄色くなって,
古色めいた風合い
が出ます。ニスに漬け込むのは,このヤシャ液の色止めのためですが,染み込んだニスで
竹自体が強化
されるのも余禄ですね。
木口からのササクレだちとか,しにくくなりますし。
とはいえ,最初に言ったように,
ただ削るだけなら数時間で仕上がる
ものに,数日…
きちんとやれば一週間
もの時間をかけようというのですから,物好きでないとできません。演奏とメンテで必要なフレットの工作テクニック,それ自体は,
前回までのぶんでじゅうぶん,じゅうにぶん。
こちらはあくまで,ヒマと手間が惜しくない方向きですよ――ハイ。
« 月琴のフレットの作り方(3)
|
トップページ
|
月琴の軸の調整(1) »