臨時増刊 8号/9号弾き比べ
臨時増刊・8号/9号弾き比べ
くらべてみませう! 絃停は8号には緑の桐唐草,9号には前にウサ琴で使った丹色の梅唐草を貼りました。 修理はこれにて,ほぼ完全完了。あとはしばらく病後の様子見と各部の微調整ですね。 8号生葉は棹から胴材から高級な唐木で出来た,かなり上物の月琴。 これに対して9号早苗ちゃんは棹から胴材から,クリという,この楽器では一般的な素材で作られた,普及品~お手軽価格クラスの楽器であります。 これだけレベルの違う月琴が,いちどき同じ場所にあって,しかも両方とも演奏可能状態,というのも一般家庭ではあまり例のないことなので(あるかッ!),今回のデーターは,両機の音声が比較可能なように一緒にまとめて載せたいと思いまする。 まずは開放弦の響きをどうぞ―― ■ 8号生葉・開放弦 ■ 9号早苗・開放弦 つづいて全音階。Fまでは低音絃,G以降が高音弦で,13音です―― ■ 8号生葉・音階(29kb) ■ 9号早苗・音階(33kb) 試奏。まずは明清楽の基礎曲第一歩め「韻頭」。 ■ 8号生葉・韻頭(121kb) ■ 9号早苗・韻頭(112kb) つづいて定番の「九連環」。 ■ 8号生葉・九連環(166kb) ■ 9号早苗・九連環(100kb) 本記事にもあったように,8号の音は余韻が強く,早弾きの曲には向きません。 そのかわり,たとえばこんな曲をやると響きが深くてステキでした。 ■ 8号生葉・散花落(117kb) ■ 8号生葉・蝴蝶飛(115kb) ■ 8号生葉・四季曲(160kb) 逆に9号は軽やかな曲に向いています。楽器も軽いしね。 向き不向きのおためしに,8号とおなじく「四季曲」を弾いてみましょう。 ■ 9号早苗・四季曲(164kb) うむ…これはこれで悪くはないが,音符の間がちょっと保ちませぬ。 そのかわり,こんなのはけっこういいですね。 ■ 9号早苗・茉莉花(152kb) 長崎明清楽の「茉莉花」はもっとゆっくり弾きますが,当時の楽譜を現在の中国民歌版のテンポで弾くとこのぐらいになります。もっと早くてもいいかもしれない。 例によってSPWaveで,開放弦の音の波を視覚化してみましょう。 まずは8号,右が全体,左が二番目の音(高音の開放弦)を拡大したものです。 続いて9号。以下同文。 音の胴体(線が太くなっている部分)は,9号の方が多少太く,長いですね。 最大音量も9号の方が上でした。 余韻のはじまりは8号のほうが先,全体の音の減衰はなだらか。音のしっぽの付け根部分が,いちどくびれて,ぷくんと膨れてますよね。ここで弦音が楽器内で増幅された効果,音の胴体とは違う,いわゆる「余韻」が発生しているわけです。 また,しっぽのあとのほうの線の太さを,アタック直前のそれと比べてみてください。一見,弦をはじく前と同じくらいに戻ってしまっているようですが,わずかに太くなっています。拡大図では切れてしまっていますが,このわずかな余韻が,最高で4秒以上かかることもあるようです。 一方,9号のしっぽの付け根の減衰は急激で,8号のような盛りかえしはなく,「余韻」というよりは音の胴体がそのまま小さくなった感じになっています。たんにボリュームをしぼって出すフェードアウトみたいなものですね。また音の胴体が太く長いため,実際の演奏では,前の音が「余韻」になる前に,つぎの音がかぶさってしまいがちです。 うん,ちょっとお勉強もしたので,さいきん少しづつこの波形図の見方が分かるようになってきたぞ。(ホントか?) 最後におまけ。 この音は弦が生み出す楽器の音色とは直接関係ないのですが,これもまた「月琴の音」。 大流行していたころは,町のあちこち,お師匠さんのところへ通う女の子たちの背中から,こんな音が鳴っていたことでしょう。 それぞれの楽器でそれぞれに違う響きなので面白いですよ。 ■ 8号生葉・響き線 ■ 9号早苗・響き線 |