南越1号(3)
南越1号(3)
STEP3 胴体続き 内部構造の組み付けです。 棹に継ぐ茎(たぶん米松,DIY屋さんで買った端材より)も作り,実際に挿して,串にした状態で胴体に入れ込みます。 こうしときゃ,まず後で「挿さらないっ!」てことはないわけで。 いつもですと外枠にはめこみ,円が崩れないようにしながらやるのですが,今回はそうすると,胴の厚みのせいでクランプがかけられなくなるので,左右に部分枠をはめたりしてなんとか… いやはや,サイズが二倍になっただけで,いろいろとタイヘンですわい。 下桁がわずかに傾いでしまいましたが,構造上は問題なく,なんとか接着できました。 ウサ琴の竜骨構造は,普通の月琴よりニカワでの接着部分が多いので,乾いたら柿渋を塗りまわします。 これにて補強&耐湿&接合部のニカワを狙う厄介な虫類からもガード。 内部がイカレたら,欠けたりもげたりより始末が悪いですからね---- 古い月琴とかではよくここで職人さんの「手抜き」が見つかります。 後世,そうやって誰かに見つかるのもヤですからね。 出来ることは,ちゃんとしておきましょう。 内部構造も完成しましたので,さっそく仮組み----棹を挿してみましょう。 バラバラ状態だと,手桶と魔法少女のナニヤラ・ステッキ的なモノにしか見えないんですが,ようやく「楽器」っぽくなってきましたねえ。 さて,これで表面板が着けば,もう完全に「楽器」の顔になりますね。 今回の板はいつもの¥100均の焼き桐板を削ったものではなく,府中家具さんより買った5ミリの板。 いつものように手で削ったものでなく,家具用に機械で切り出された板なので,厚みも正確,側面の断ち切りも鋭い――ほとんど何も調整しないでも,切って,木端面にニカワを塗って合わせたら,そのままピッタリ着いちゃいました。 矧ぎ終わった板の余分な角を切り落として,胴体に接着します。 写真はございませんが,胴体の厚みのせいで,いつものCクランプ(5cm口)が使えず,板二枚と角材で挟みこみ,荷止めゴムでグルグル巻きに縛り上げて,なんとか接着....けっこうタイヘンでした。 くっついたら縁を整形して,まンまるに。 まだまだオープンバックですが,糸を張ったら三味線みたいに鳴りそうですね。 STEP4 響き線を仕込む もちろん,本物のベトナム月琴にはこんなもん仕込まれておりません。 通常のベトナム月琴の胴径は,だいたい明清楽の月琴などと同じ 35~36センチほど。 今回はエコウッドを丸ッと使い,胴の厚みは同じくらいになってますが,胴体の直径のほうはウサ琴と同じく,30センチほどです。ベトナム月琴のあの深みのある幽玄な音色は,この胴内の空間から生み出されるものなわけですが,南越1号,その点ではかなり内部の容量が足りません。 そこで,明清楽の月琴で培った知識を使い,余韻の足りない分のリゾネーターとして,「響き線」を入れてみることとしました----たんに「ベトナム月琴に "響き線" とか仕込んだら,面白いンじゃネ?」とかいう思い付きがハジマリだったことは禁則事項です。 茎が胴をほぼ二分する形で通っているので,直線や弧線の長いものは入れられません。 この形にじゅうぶん入って,もっとも音色上の効果が高いのは「渦巻き型」の線。 「2号月琴」で実物をはじめて目にし,以後「ウサ琴」の初号機,「ゴッタン阮咸」「アルファさんの月琴」など,チューブラアンプのようなうねりのある余韻が,深く長く持続する----庵主お気に入りの構造ですが,この渦巻き線には,楽器の揺れに敏感でノイズが起こりやすいという欠点があります。 しかも構造上この「線鳴り」がはじまると,なかなか収まらない上,かなり音がでかい。 楽器を自由にぶン回しながら弾きたいムキにはやや不向き,ということ。 実験のときはともかくとして,思い切り弾ける楽器がいいでしょう。 ――というわけで,線は4本直線。 いづれも通常仕込む響き線の半分くらいの長さです。 上の線はハガネ。鋼線は硬く,短いと効果が足りなくなるので,ギリギリまで長くするため,斜めに取り付けます。下の2本は真鍮。真鍮の線は柔らかいので,短くてもちゃんと音を拾ってくれるはず。 焼入れもうまくいったし,取り付け・調整もまあまあ。 メインの鋼線二本がやはり短いせいで,ウサ琴とかで上手くいったときのように,金属余韻がビリビリ響きまくる,というほどではありませんが,胴に耳を付けて胴側や面板をはじくと,ちゃんと「キーン....」と金属の余韻が生まれています。 弦の長い楽器なので,音の振幅も長い。もともとの余韻も,短い月琴よりは長いはず。 そのぶん,響き線がこのくらいでも,じゅうぶんに面白い効果が出せるのじゃないかと,多少楽観的ながら考えています。 |