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11号柏葉堂/12号まだ名は無い(2)

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斗酒庵 2面同時に月琴を直す の巻(2)2009.10~ 明清楽の月琴(11号柏葉堂/12号まだ名は無い)

第2回 ご隠居!内幕ってやつァ…

第2回
  こんにちは。

  自称・武闘派系修理者(たんにランボー者,とも言う)の野良犬月琴弾き,斗酒庵がお送りいたします,月琴ハラワタ・ショーの時間がやってまいりました。

  とはいえ,今回はまだ板もベリベリ剥がしてないし,胴体もゴリゴリ削ってない…今のところ,それほどのランボーはしてませんが,さてこの後どうなるやら?

  請う,ご期待。(^_^;)


  千里の道も一歩から。
  修理の道はまず調査から。

  回りくどくとも,足らずとも,調べられる部分はどんな些細なことでも調べておく。

  ちゃんと調べないで作業を進めたため,後になって二度手間,再製作,再調整。
  そういうことは良くあります。

  実際の作業に入らないと,どうしても分からない,ってことも確かにありますが。
  はじめにどれだけしっかり調べといたかが,あとあとの作業や手順に影響することを,身をもって知らされ続けたこの数年でありました。

  今回の2面は,欠損部品はあるものの,楽器本体はどちらも比較的健全と言え,わたしがうきーッとなって ランボー怒りの大修理 はじめるほどの箇所は,いまのところ見つかっておりません。

  恒例の板剥がしもないので,内部構造は,棹穴から覗いたり,鏡を差し込んで見たり,棒をつっこんで計ったりして調べるのが関の山。

  そこで,詳しいものではありませんが,だいたいのところを絵にまとめてみましたので,記事中の画像をクリックしてご覧になってください。



1.11号・内部簡見

11号内部
参考・4号月琴内部,裏面より
※クリックで拡大※

■ 上桁,下桁ともに松板のようです。 音孔は上下ともに左右2コ。笹の葉型ですが,例によって工作は粗く,輪郭はいささかガタガタになってます。

■ 響き線は一本。 おそらく鋼線で,4号 (←写真参照) と同様の曲線タイプ。

  鏡の角度をいろいろ変えて,基部に四角い木のブロックを噛ませてあるところまでは分かったものの,固定方法までは不明----クギは見えなかったなあ。線自体は健全で,ほとんどサビも見えません。

11号内部簡見
※クリックで拡大※

  側板内側には,細かなノコ痕が斜めに残っています。加工は悪くない。
  上下桁は内壁に接着してあるだけのようですが,かなりしっかりきっちりとした加工で,左右端にスキマ等は見えません。

  小さい鏡を差し込んで見えた範囲では,作者・年代の手がかりとなるような墨書等はないようです。

  また,上桁の棹穴などの指示線はエンピツのようです。
  下桁の裏面側左に半円が墨書されていますが,何でしょうねえ。

  下桁は中央に小さな丸い孔が空いていて,左右に音孔。その先の空間は,なんとしても見えず。不明です。
  例の裏板左端の,貫通した虫食いヒビのある部分が,桁からすっかりはずれて浮いてしまっていますね。

  やれやれ,やっぱりこの部分はハガさなきゃならないようです。


  ……って,ことは,その時また,より詳しく月琴のハラワタがっ!

  きゃっほーい!!!!

  見れるのねえ。




2.12号・内部簡見

12号内部
12号内部

  材料の面だけから言うと,間違いなく11号よりは高級月琴,12号,まだ名前考えてません(汗)。

  側板が分厚いですねえ。

  棹穴のところで計ると,ほぼ2センチ近くあります。
  このためもあって,棹穴からの画像がうまく撮れませんわい。

  また,この側板には,はじめて見る加工がされています。

  どう説明していいか……たぶん厚さ最大18ミリのうち,外縁15ミリくらいまでは表裏ともに平らで,面板とくっついているのですが,内縁に沿った2~3ミリほどの角を落とし,楽器内側に向かって,台形にせり出すようにしてあるのですね。


12号内部簡見
※クリックで拡大※


  詳しくは図説(→)をどうぞ。

  よく,桁の表面板側の両端を落として,斜めに削いでありますが,あれの逆ですね。
  そちらも今のところ理由不明の加工なんですが。内側にでっぱってる,という点ではむしろ,ウサ琴の「竜骨」構造と共通してます。

  ただこれが音のためなのか,なにか強度のためなのか,ちとよく分かりません。

  側板の内側は,ノコ痕もなく,磨かれてる,というほどではないものの,かなりツルンと処理してあります。

  ----なんとなく,ただ材料をゼイタクに使いたかった,って言う気もしますが。

  上下桁の左右は,側板の,その台形になったところにミゾを切ってハメこんであるようです。


■ 桁材はこれもおそらく松。

  音孔は,上桁が左右二つ,下桁はおそらく長いのが一つ(たぶん間違いないとは思うのですが,なにせ棹穴から覗いてるだけなので,下桁の全体は見えません)。
  庵主がウサ琴でやるのとほぼおなじ楕円形の穴で,加工が珍しく丁寧!
  きちんと,均一に切り回されています。

  これだけちゃんとしてるのは,初めて見たなあ(^_^;)。
  やれば出来るんじゃん,月琴職人!
(汗…ナニをエラそうに)

  下桁の左端と,左側板内側に「二」の漢数字が書いてあります。
  11号も同じところに墨書がありましたね。
  ここだけ墨で,ほかの指示線等はエンピツなんだなあ。

  何なんでしょう?

  見える範囲では,作者・年代の手がかりとなるような墨書等はほかにありません。
  鶴寿堂と良く似た楽器なので,何かあるかと思ったんですが…ざんねん…「○○斎」の「○○」が知りたかったんだけどなあ。


■ 響き線は1本。 直線のようです。

  上桁の下,2センチほどのところ,胴体内壁に直挿し。
  頭を潰した四角釘で固定してあります。
  そこから斜め下方向,胴径の7/8くらいまで。けっこう長い線ですね。
  おそらく鋼線。少しサビが浮いているようですが,影響があるほどではなさそうです。


(つづく)


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