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13号柚多田
G13_01.txt
2009.12~ 明清楽の月琴(13号柚多田)
この年末も近くなって,我が家にはいまだ4面の壊れ月琴が転がり,修理を待っております。
しかもぜんぶ自出し月琴とはどういうことだ?
知り合いのマイミクさんが
「月琴が来たがってるのヨ」
とか言ってましたが…いろいろ不覚もあり因縁もありて,この状況。
重量級月琴12号とほぼ同時期に購入したほかの3面は,偶然にもみな,楽器としてより「資料的な価値」の方が高い物体です。
正直なところ,これらの楽器に手を入れたところで,11号や12号のような
ふつうの実用清楽月琴の音は出ない
でしょう。
月琴が大陸からの輸入品だった「唐渡り時代」から,そのコピーを生産していた時代,そしてちょっとづつ,三味線や琵琶の影響,日本独自の意匠や構造が入ってゆき,いわゆる「清楽月琴」の典型が出来あがるまで----日本における月琴の流行時期,それ自体が短いので,その変化はわずかなものですが,それをたどることで,この楽器のルーツをより正確に知ることが出来るかもしれません。
先にも書いたとおり,演奏楽器としてはどれも多少ナニがアレしますので,修理は急ぎませんが,とりあえず資料としてデータだけを,順繰り先出しでお送りいたします。
【13号月琴・柚多田 修理前所見】
3面のうち,まず最初にわが工房に到着したのがこの楽器です。
13号月琴,付けられたコードネームは
「柚多田ひかる」
ちゃん。
13面目なんでユダだ。(笑)
ま,冗談はともかく(でも銘は本気だ),いわゆる
「文人楽器」
として作られた月琴ですね。
もしかすると楽器店や唐木屋さんが作ったものではなく,個人による手作りの楽器かもしれません。
ただ,月琴という楽器として,それほどおかしな点も見受けられないことから,手作りであったとしても,ちゃんと楽器を識っていて,かなり細工に手馴れた人の作と思われます。
1.採寸
全長:668mm
胴体 縦:352mm 横:357mm 厚:35mm(表裏板ともに 厚4mm)
棹 全長:307mm 最大幅:37mm 最大厚:30mm 最小厚:22mm
指板ナシ 指板相当部分 長:155mm 最大幅:37mm 最小幅:27mm
糸倉 長:152mm(基部から先端まで) 幅:37mm(うち左右側部厚 11mm/弦池 13×112mm )指板面からの最大深さ:57mm
山口欠損のため未確定ながら,推定される有効弦長: 426mm
2.各部所見
■ 蓮頭:無装飾の黒塗り板。
素材は不明。オハグロ塗り?
糸倉や棹の太さからすると,寸法的には小さめかつ薄めである。周縁の切り込み浅く,加工はやや粗い。
■ 糸倉:ほぼ無傷。蓮頭下中央に間木をはさむ。
左右が分厚く(11mm,一般的な清楽月琴では8mmほど),頑丈そうな作りとなっている。
その割には軸穴はそれほど大きくない。
■ 軸:一本のみ残。
材質は不明。
ほぼ三味線の音締めと同じくらいの太さで,加工も粗い。
形状的にも
オリジナルかどうかは疑問。
■ 棹:損傷なし。
やや太めで,棹背にアールはなく,ほぼ直線。
糸倉との間のうなじは,やや深いがなめらか。
ふくら下の入込みはやや深い。
■ 山口:欠損。接着痕のみ。
接着痕から推測される平面的なサイズは,10×34mm。棹自体が幅広なこともあり,かなり大きい。
■ 柱(棹上):4本存。
材は杉かヒノキ。
異様に太く,先端を三角に尖らせているが,4本とも高さがほぼ変わらず,かつ等間隔に配置されていることから,実用には向かず,
おそらくすべて前修理者による後補部品
と思われる。
■ 棹茎(なかご):損傷なし。
棹から継ぎナシのムク。表板側と右側面にスペーサーの板が貼られている。寸法は薄く,短く。長:122mm 幅:23-18mm 厚:12-5mm
※ 糸倉~棹,材は「栗」か?
■ 胴体:比較的健全。
表面板
:5~6枚継ぎか。
右に楕円の落款(判読不明),墨書
「弄琴明月酌」
。左に墨書
「酒和風」
,落款二つ,判読不能。
かなり濃く変色しているが,やや年輪の広い柾目板で,表面はなめらか。楽器中心付近に打痕二筋,撥痕かなりあり。
中央やや左半月の下にヒビ。あちこちに小さな虫食い穴が見える。
裏面板
:4~5枚継ぎ。
全面に竹の墨絵,右に落款陰刻,判読不明。左下に署名
「〓崖舞鳳/〓仲昭邑〓/〓〓〓〓〓〓」
,落款陰刻,判読不明。
左右肩口に小ヒビ,左肩に剥落痕,中央中心付近と右下に虫食い穴数個あれど,表板よりはヨゴレ,変色も少なく,比較的健全。
側板
:4枚,凸凹継ぎ。棹と同材か。
天の側板右肩から右側中央付近まで,表面板ハガレ。棹穴付近の表面板木口に小虫食い。
地の側板,表面板側右から九割がたハガレ,面板との間に段差。
■ 柱(胴体上):4本存。
うち一番上は棹上のものと同じ材質,加工から後補と思われる。
下三本は竹製,加工も悪くなく,こちらがオリジナル部品かと推測される。
■ 半月:損傷なし。105×46×10.5mm。
やや大ぶりで,下周縁の処理が斜め切り落しではなく段差のあるところ,また上面中央の開口部が四角ではなく半円形であるところが少し変わっている。
糸孔は外弦間:26mm/内弦間:20mm。内外弦間:約3mm。 棹や糸倉が太い割には弦間はやや狭い。
※ 半月の上の面面板上に,絃停が着いていた形跡はない。
3.13号内部簡見
とりあえず,棹穴からの観察です。
今回の楽器は棹穴が小さめなのと,桁位置や音孔の大きさ・場所の関係で,死角になってしまう場所が多く,あまりよく分かりません。
オープン修理の予定ですので,より詳しいデーターは後で。
図クリックで,別窓が開き,拡大。(→)
響き線は一本。曲線で,楽器のほぼ中心を右から左へ浅く弧を描き,左側板の1~2センチ手前まで伸びています。
下桁の上左右端に,表裏の板にはさまれる形で,太さ20mmほどの円柱状の物体が仕込まれているようです。
左のものは現在響き線の先端を隠すように,そのすぐ上くらいのところに位置していますが,右のものは接着がはがれているらしく,,胴体内下桁の上を転がっております。
この円柱状物体。現在までのところその材質,用途,目的,共に不明です。
棹穴から垣間見た感じは,牛角みたいなんですけどねえ
「魂柱」みたいなものなんでしょうか?----さて,楽しみな。
4.13号概観
年代は不明。
その形状や加工から,個人製作のものである可能性が高い。
主材はおそらくクリ。
前修理者の仕業は棹上第一~胴体上第5フレットまでの再製作と,全体,もしくは部分的なニス塗り。
フレットを付けなおした指板相当部分周縁に,フレットについているのと同様のニスと思われる塗料染みが見受けられる。
オイルニスの類かも知れず,多少表面にベタつきを感じる。
これにより,棹および側板の現在の木色はやたらと黄色っぽいが,これがどこまで当初からの色あいなのかは現在までのところ不明。
表面板にハガレや段差が著しく,また内部の円柱形の部品がはずれているらしいことなどから,オープン修理をする必要がある。
表面板はかなり変色しており,墨書・落款がほとんど読み取れない箇所もある。虫食いもかなりあるが,墨書があるため,通常工房で行うような洗浄,また表面からの埋め木による修理は出来ない。
表面板表面を傷つけずに,虫食い痕を補強・充填する方法,ならびに墨書をなるべく傷つけずに,面板表面を洗浄する方法を現在探究中。
(つづく)
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