« 15号三耗(4) | トップページ | 15号三耗(6) »

15号三耗(5)

G15_05.txt
斗酒庵 ようやく本領発揮 の巻(5)2009.12~ 明清楽の月琴(15号三耗 さんはお)

第5回 こものなる古楽器のほとり

半月接着
  板は継ぎ足したものの,再貼り付けもうまくいったので,楽器の中心線はほとんどズレてません。
  半月はもとの位置に戻すだけですね。

  接着面を粗いペーパーで軽く荒らし,よ~くお湯をふくませてから,ニカワを塗って。
  当木を噛ませ,しっかり,ズレないように固定します。

  今回の楽器は1本桁。

  半月の下には何も支えがありませんから,クランピングにはちょっと注意が要ります。


棹基調整
  半月を接着している間に,ちょいと棹の調整もしておきましょう。

  古い月琴は棹の挿込がユルユルになってることが多いのですが,15号三耗,中級品の割にはそのへんの工作が比較的しっかりとしてまして,棹基部の右側に一枚,ツキ板を貼り付けるくらいで左右のガタツキも解消,「するぴた」が実現しました。

  ありがたいことです。


山口
  同時に弦の反対側を担う部品も作っておきましょう。
  今回の山口は竹製です。

  棹や胴体の色が,わりとキツめの赤なので,いつもの黒檀や紫檀だと色合い的にどうもクドくなってイケません。

  薄めの色の材料がいいのですが,とはいえツゲが使われるほど高級な楽器ではない。たぶんもと付いていたのは,カリンあたりだったのじゃないかと思うのですが,ちょうどいい材料が手元になかったので,斑竹の太いところを使って作ってみました。

  なんかこの書き方だと,素材を色やら似合うかどうかで決めたみたいですが。(^_^;)

  本物の月琴ではあまり見ないものの,竹の山口はウサ琴2やアルファさんの月琴で実用実験済み。
  安い素材ながら,音や具合はけして悪くありません。

  竹だけに,形を作るのはカンタン,ほんの10分くらいで完成。
  高さや形は14号月琴のものを参考にしました----こちらのほうが半月がやや低いので,そのあたりは調節しましたがね。

  出来上がった山口に,ヤシャ液を染ませラックニスを塗って磨きます。
  書けばほんの1行ですが,乾かしながらの作業ですからね。

  この部品だけで,三日はかかってるんですよ。



  ではその間に,SKT。
  至福の小物たーいむッ!!!!

軸作成(1)
軸作成(2)

  まずは軸,ですね。

  11号,12号とクルミの軸を試してみましたが,今回は元に戻ってスダジイ。

  にぎりの形は14号のものを参考にします。
  古いタイプの清楽月琴には,よくこの類の軸が付いてますからね。

  まずはいつもどおり,六角形の軸を削ります。

  つぎにこれまたいつもどおり,各面の中央に溝を引く----このまんま仕上げればただのミカン溝の軸ですが,ふだんは細い四角の棒ヤスリを使って,浅く彫り込むこの線を,今回は目立てヤスリや三角ヤスリも使って,これでもか!ってくらい深く刻み,角を落として丸っこくします。

軸作成(3)
軸作成(4)

  うむ,いい感じ。

  挿してみましょう----左上の軸の角度が足りなくて,なんだかちょっと左右のバランスが良くありませんが,このあたりはもともとの加工,いまさら直すわけにはいきませんねえ。

  見なかったことにします。


  ヤシャ液で染め,オイル仕上げ。
  ここはナチュラルでフラットなほうがカッコいいと思うなあ。

  中国の月琴の軸は,この溝をさらに分割で増やしていって,現在見るような形になったんだと思いますが,国産の清楽月琴の軸が,なぜそっち方向へ向かわず「六角形」になったのか,実際にやってみるとよく分かりますね。

  ----この加工,けっこうメンドイですわ。

  清楽月琴で軸の握りがほぼ六角形に統一されていった理由は,一つには演奏者の方が,三味線に近い操作感を欲したためがあると思うんですが,この加工の煩雑さ,それでいて操作上には大した違いがないといったあたりも原因となっておりましょう。

  琵琶くらいの値段の楽器だったら,細かな彫りをする余裕もあるでしょうが,月琴はどちらかといえば大量生産された,安い楽器です。
  月琴は材料も安いですし,はぶける工程はなるべくはぶいとかないと利益率が悪くなります。

  逆に言うと,軸がこちらのカタチになっていたり,やたら凝っているような楽器は,まだ唐渡り時代の余韻を残し,原形に則って作られた古いタイプのものか,特別あつらえの高価なもの,ということですね。


お飾り(1)
  今回は目摂も扇飾りもオリジナルのが健在で,工作もさほど悪くはありません。
  純粋な小物といえるのは柱間のお飾りくらいなものです。
  とはいえ,無くなってしまっているお飾りの形は,接着痕や日焼け痕から「おぼろげに」分かるか,って程度ですからね。
  過去の例や資料の中から,だいたい似たようなカタチのお飾りを探して,参考にしました。

  山口と第1フレットの間には「花籃」,第3~4間には「花」,第6~7間には「魚」を置くことにしました。

お飾り(2)
  材料は「凍石」。
  書道のハンコ,いわゆる「落款」とかを作るのに使う石ですが,要はむかし道路にイタズラ描きするのに使った「ロウ石」ってのがありましたよね?駄菓子屋で売ってたやつ。あれのちょっと高級なものですわ。

  庵主,ハンコ彫りの前科もございますので,この素材には慣れております。「石」ではありますがごく柔らかいものなので,いつも使ってる糸ノコやヤスリでふつうに加工できます。


中央飾り(1)
  ちょっと問題なのが,楽器中央の飾りですね。

  ここにはよく円形の飾りが付けられることが多いんですが,今回は逆三角形に近いカタチの何かがついていました。
  まずは画像をごらんあれ。
  全体は横につぶれたハート型,下辺はひらひらに飾りがつき,上の真ん中には小さなとんがり頭,そこから「触角」のように曲線が流れて,頭の左右が空間になっています。

  この接着痕と日焼け痕から見て,おそらくは「蝙蝠」か「蝶」だと思うのですが…いまひとつ,どちらという決め手がない。

  え?「触角」があるなら「蝶」に決まってるだろう,って?

  甘い!…甘いよキミは。

  下の図を見たまえ。
  左は吉祥図の「蝴蝶」,右は「コウモリ」の図案の一つだ。

参考図(2) 参考図(1)
中央飾り(3)
  このとおり,吉祥図のコウモリさんには似たような「触角」が生えてるのがいるのじゃ。
  まあもっともこの楽器,半月にも蓮頭にも,柱間の飾りにもコウモリさんがいないので,そっちのほうが確率は高いのですが…。

  12号で二匹も彫っちゃったばかりですからね。

  正直,何か飽きちゃってるんスよ,コウモリさんに。
  ----ですので,ここはひとつ,「蝴蝶」で行かせてください。

  材料は柱間飾りと同じですが,その中ではちょっと高級なのを,これ,庵主のとっておきだったんですがね。
  日焼け痕の輪郭の中で,よくある吉祥図の蝴蝶を参考にデザインしてみました。

絃停(1)
絃停(2)

  今回,絃停には,めずらしくヘビ皮を用意しました。

  庵主はどちらかというと「ヘビ皮使用反対派」(自然保護の観点からではなく嗜好として)なんですが,古風な楽器ですので今回はヨシとします。

  素材は三線の皮のハギレですね。

  ちなみに庵主,沖縄三線も弾きます。
  ときおりお店で偽うちなんちゅーして,島歌などうなってることもありまして。「どこの島の出ね?」と聞かれるときは「北のほう」と答えることにしています。
  ちなみに中国にいたときは「どこから来た?」と聞かれたら「山東省の東の方の島」と答えてました。

  そのままだと絃停には厚すぎるので,水でふやかしてから裏をこそいで薄くしました。
  さらにちょいと伸ばしながら乾かします。

  では次回こそ,完成。

(つづく)

« 15号三耗(4) | トップページ | 15号三耗(6) »