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14号玉華斎(5)

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斗酒庵 銘器を前にたじろぐ の巻(5)2009.12~ 明清楽の月琴(14号玉華斎)

第6回 唐のくにからコンニチワ

完成直前
  さてさて,その高級さを前にたじろいた,低級庶民の庵主による修理もいよいよ大詰め。
  いよいよ完成と相成ります。

  ----その前に。
  細かい仕事をふたつみつ。

  まずは側面飾りの欠けてるところの補修。

  オリジナルは竹の薄板で作られています。
  曲面に貼り付けるお飾りですから,弾力のある竹というのはさすがの選択。

側部飾り補修(1)
側部飾り補修(2)
側部飾り補修(3)

  しかし竹は目がありますので,こういう欠けた細かい部分だけを作るのには,あまり向きません----つか,試しにいくつかやってみたんですが,いづれも完成前に見事に割れやがってくれやがりました。

  そんなわけで,ここはツゲを使いました。
  クシを作るくらいですからね。固くて密なツゲ材は小さな細工物の加工には最適な材料です。

  板に穴をあけ,その周囲を四角く切り取ります。
  つぎにこれをアートナイフで加工。
  だいたいのカタチになったら,もう欠けている場所に接着してしまい,それからさらに整形してゆきます。

  「小さいものは大きくしてから」加工せよ,てのは,指物の親方からもらった至言ですが。
  こういう小さな部品は,どこかに大きな場所に固定されてるほうが,より細かな作業ができるんです。

  カタチが決まったら,ヤスリでこそいで面一に。
  ヘタこくと,お飾りか胴体にキズしますからね。
  あとは磨いて色付けです。ヤシャ液とスオウ汁に砥粉でまずはこんなもの。
  ちょっとまだ目立ちますが,時間がたつと色が濃くなってあまり分からなくなるかと。

糸間調整

  つぎ。糸の間隔をちょっと調整します。

  半月のところで,低音弦のほうの糸間が,高音の二本のより,かなり広くなってました。
  まあ使う上ではさほどの難もないのですが,いちおうきちんとしておきましょう。
  糸のかかるあたりをヤスリで微妙に削って,弦同士を寄せました。
  これにより,当初8ミリ近かった低音弦の糸間が,高音のとほぼ同じ4~5ミリに。

  ピッキングが少し,なめらかにできるようになりました。



  で,お飾りも戻し,絃停も貼りました。
  今回もまた古器ということで,絃停はヘビ皮です。

  というわけで,2010年三月弥生。
  もしかすると唐渡りの高級品,14号月琴・玉華斎,修理完了!

修理後全景



14月琴玉華斎・音源

  1.開放弦
  2.音階(1)
  3.音階(2)低音弦/高音弦それぞれ
  4.九連環
  5.小九連環
  6.紗窓
  7.平板調



玉華斎ラベル
  もしかして唐渡りの高級楽器とのことで,それなりにきゅうくつな…いえいえ,緊張した修理となりました。
  古式というところだけは同じな15号が,いい練習台というかスターターとなってくれたので,なんとかこなせた,というところかなあ?

  今のところ確定的な証拠がないので,どういう素性のものかははっきり言えませんが,各部の木取りや細工には日本人の感覚でない「手」が感じられ,糸倉の絃池などに残る加工痕などからも,これが唐渡りの楽器である可能性は高いかと思われます。

  はじめの号で述べたように,その材質,そして半月が「飾り彫り」どころか,この作者の楽器ではちょっと類のない形状になっていること,また「四爪の龍」がつけられているところなどから見て,特注…とまでいかなくとも,「特製」の高級品でありましょう。

  それというのも,イチからにオーダーメイドの「特注品」なら,飾りは本物の黒檀や紫檀でしょうし,柱間のお飾りなども,こういう典型的なものではなく,特別な意匠で,材料も凍石ではなく翡翠や硬玉が使われるはずだからです。

蓮頭 玉華斎花押

  ネオクなどでも,ときおり金ぴかの飾りをつけた楽器や,全面に中国の文人の詩やら賛やら絵やらを描きまくったもの,また各部の意匠を凝った変形月琴が出ていることがあります。
  そういうのは当時の政府高官や富裕層に贈られた,「一品物」であることが多いですね。

14号半月

  しかし,この14号玉華斎では,通常と大きく異なっている意匠は半月だけ。

  そのほかの部分は,通常の月琴の典型的なカタチのままです。
  そこからすると,清朝のお役人あたりが「贈答用」として,ある程度の数作らせたものではないかと考えます。

  それなりに高級品ですが,「一品物」ではない。

  依頼主が何を考えて,何を祝ってこの月琴を作らせたのか----そういう事情が何か,この変形半月の意匠にこめられているように思うのですが,そのあたりはいまだ,解読できておりません。
(おわり)

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