ウサ琴5(4)
![]() STEP5 最後の完成と「SOS団」 ![]() 今回のシリーズ記事は,今までやってきたことの検証,ってことで。 まとめのところと,新しく判ったあたりを中心にして,間の工作やら,工程についてはほとんどハブりました。 まあ,何度も同じようなこと書いてますからね。 ウサ琴5は今までの集大成----省ける部分は徹底的に省き,凝れる部分は徹底的に凝りました。 楽器としてはウサ琴シリーズの完成形ですね。 製作途中で5-Aの糸倉が割れ,5-Dだけどこかで失敗じって棹が5ミリばかり短くなってしまってますが(どこが「集大成」で「完成形」だ)---これが「ケガの功名」というものでしょうか---5-Aは4本中もっとも音が良く,5-Dは最もバランスのいい楽器になりました(下画像,上の楽器が5-D号)。 ![]() そもそも,ウサ琴シリーズの棹の長さは,1号月琴の弦長を基準として設定したところから算出されたもの。 当時は参考に出来るデーターが少なかったんですが,その後,何面もの月琴を修理しながら計測したところ,この楽器の弦長は,製作者によってかなりの幅があるということが分かってきました。 長いものと短いものでは,最大5センチくらいの差があります(ちなみにウサ琴のモデルになった1号は,かなり長い方)。 この弦の寸法を維持するため,棹を長くし(平均的な清楽月琴より1.5~2センチ長い),半月の位置も胴体下端ギリギリまで下げたのですが,しかし,楽器全体のバランスや,弾きやすさを考えると,ウサ琴にはウサ琴の,本物の月琴より5センチも小さいこの胴体のサイズによりぴったりと合う弦長があったのではなかったかと----実際,いままでのウサ琴は少しヘッドヘビーな楽器でしたが,棹を5ミリ短くしただけで,D号はバランスがかなりよく,すいぶん弾きやすくなっています。 ![]() 内部構造の一本桁と長弧線----これは清楽月琴でも古いタイプのものに良く使われている工作を採用したものですが,胴側部の材質や強度の違いなどもありますから,内部構造に関しては,これからどのような問題が生じるのか(あるいは生じないのか),正直分かりませんが。完成から一ト月以上,今のところ,構造上の不具合は報告されていません。 響き線に関してましては,いままでもさんざ実験してきましたし,調査もしたので何の問題もないでしょう。 最も古いタイプだというだけあって,胴体内をほぼ2/3周するこの手の長弧線の響きは,いかにも月琴という楽器に似合っており,何とも言えません。 直線タイプに比べると,線自体の加工・調整による音質的な格差の幅が,比較的せまいのもメリットではありますね。 あとは音色的な好み,また演奏スタイルによる向き不向きでしょうか。 庵主的には演奏上ちょっとアバれてもノイズの出にくい直線のほうが好みなんですが, ウサ琴はあくまで「清楽月琴代用楽器」。弦長を本物の月琴と同じにしたのも,なるべくその音色や操作性を損ないたくない,という思いからでしたが,いままでの経験を通して,月琴の音色や操作性のツボといいますか,ここさえハズさなければ同じ,というところは,意外と,はじめに思っていたような場所にはないようだ,ということが次第に分かってきたように思います。 そのため,ずいぶんイロイロと,回り道な実験や余計な工作を重ねたものですが,まあ,月琴の製作工程自体,知識としてはほぼ消滅してしまっているわけですし,庵主も木工の前科はあったとはいえ,「楽器」のほうはさっぱりでしたので,そういうところに気がつくのが遅かったのですね。 ですので,そういうところをハズさず詰めてゆけば,いづれは音色や操作性に影響しない範囲で,より良い方向へ設計や寸法の変更が出来るようになるのではないかと考えます。 あくまで実験のための「代用楽器」ではありましたが,このウサ琴シリーズの製作記録やデータが,清楽月琴という一度は滅びてしまった楽器を,今の時代にも受け入れやすい形で復活させる----月琴という楽器の,未来への可能性の一つにでもなればいいですね。 ![]() さて,今回の第5シリーズで,ウサ琴は17面。 ほかに作った楽器を加えると,庵主製作の楽器は目出度く20面を突破しております。 べつだん楽器職人でもなく。おまけに電動工具を使わないほぼ完全手工の楽器の製作数として,わずか4年でこの数は,ちょっとばかり異常なものなンですが,最初の1号はべつとして,その後,量産工程や技術を解明するための実験も兼ね,4面同時に製作してきたせいもありますね。 時には修理も同時だったりしましたから。 正直キツかったです。 まだ多少未解明の部分はありますので,今後も製作自体は続けるつもりですが,もう数打ちはしなくても良くなったかと。 ですので,今回のが量産型としては最後のウサ琴シリーズとなります。 いままで作り飛ばしてきたウサ琴は,ありがたいことに,ほとんど実験が終わったとたん,欲しいというヒトのもとへもらわれてゆきました。今回の第5シリーズもみな,庵主が月一でやっている月琴のワークショップに参加してくれてる,常連さんたちの手元に旅立ってゆきました。 ……うーむ,色んな経年変化を見るために,いつも一面くらいは手元に残したいと思ってるんですが。 ![]() ああ,そうそう,去年から庵主,月琴や清楽のワークショップを開いております。 正式名称 「誰でも弾けるようになるけど何の役にもたたない清楽月琴ワークショップ in そら庵」。 はじめはだれーも来ないだろうと思ってたんですが,庵主が修理した楽器のオーナーや,興味本位で立ち寄ったヒトに,研究のため購入した明笛や胡琴を押し付けたりしてるうち,気がつけばちょっとした楽団ができそうな人数・規模になってしまいました。ウサ琴のオーナーだけで6人くらいいますからねえ。 ![]() WS常連衆による不定形楽団としての名前は 「そら庵大川端清楽団」。 (そらあんおおかわばたしんがくだん) 略して「SOS団」 と申します----もちろんパクリですが何か? *注:「(S)しょーもない(O)音楽をやってる(S)集団」の略,というハナシもあります。
会場は,深川・正木稲荷のとなりにあるイベントスペース「そら庵」さん。
参加費はお店のほうに1drink 以上,オーダー。 コーヒー,お酒のほか,多彩なドリンク類,美味しいカレーもあるでよ。 この7月に開催された回ですでに8回,不定期に開催される「補講」を加えるとすでに10回以上にもなりましょうか。 今夏2ヶ月はお休みをいただきますが,秋にはまたまた再開の予定。 開催予定はミクシの月琴コミュか,そら庵さんのHPをご覧ください。 そら庵HP:http://www.geocities.jp/sora_an_111/ ![]() WSは途中参加,途中退席自由。 楽器はいつも余計に持って行きますので,その場でお貸しできましょう。 毎回,お昼ごろからボチボチポロポロと,清楽の曲やら唱歌曲やらを,なんとなく練習します。 初心者の方にはドレミから「きらきら星」まで,懇切丁寧にお教えいたしておりますような気がする。 庵主のやることですので,あまり本格的な「お教室」とかではございませんが。 「清楽月琴」というものを,触ってみたい方,鳴らしてみたい方,生音を聞いてみたい方などいらっしゃいますれば。 どうか一度,お気軽にご参加くださいな。 |