« 赤城山1号(3) | トップページ | 赤城山1号(5) »

赤城山1号(4)

AK01_04.txt
斗酒庵 覚えず清琴斎(二記)と再会す の巻2010.12~ 赤城山1号 (4)

STEP4 接着戦隊!ボントマン!!

  きっとこの世界のどこかに 「狂聖ボンド帝国」 というのがあって。そこからハケンされた連中が,わたしをピンポイントで困らせるため,古い楽器にボンドをつけてまわっているのだと思う。

  ----いや,間違いない!

  「狂聖ボンド帝国」の前身,三鷹にあった「聖ボンド王国」は,日本月琴教会の先代大首領が,自らのイノチと引き換えに倒したのだが,その残党が越ヶ谷のフリー○ーソンと結託して新たに阿佐ヶ谷のあたりに作り上げたのが「狂聖ボンド帝国」である。われら悪の秘密結社・日本月琴教会に対抗するため結成された特殊工作員……その名こそ


  ----である。

  つけろつけろ,くっつけろー
  なんでもかんでもつけちまえー
  この世のすべてがついたなら
  世界に平和が訪れる!
  ゴム!木工!瞬間!

  つけーつけつけつけ
  接着だー(シャキーン!!)


  というわけで。


  「赤城山1号」本体の修理作業に入ったとたん,イキナリ現実逃避しております。
  まずは表面板上についてるものはハガせるだけハガしちまいます。


  中心線上についていたピンクっぽい凍石のお飾りは,それぞれのついてる位置が適当(いちおうキマリというか,順番らしきものがある)なんで,そじゃないかなーとは思ってたんですが,やぱーりほとんど後付けでした。棹上の竹フレットも間違いなく同じです。
  ----なんせどちらも,木工ボンドでペタぺたり………ううううう。


  逆に,オリジナルの接着だと思われるものは,左右の目摂と,扇飾り,胴上のフレットと中心の円飾りです。
  ただし接着に使われているのはニカワじゃなく,おそらく「そくい(お米系の接着剤)」の類。
  ヘビ皮の絃停の貼り付けにはよく使われてるんですが,お飾りの接着もぜんぶ「そくい」ってのは,ほかではあまり見ませんね。
  「そくい」の接着力はニカワ同じくらい,もしくはそれより強固ですが,一度はずれたら濡らしてもう一度くっつける,といったことはできません。あと,ニカワよりは虫の害を受けにくいみたいですね。今回の楽器,虫の食害が今のところほとんど見られません。

  お米からつくる「そくい」は基本,炭水化物なんで,ニカワと違って,劣化すると炭化して黒いモロモロになります。
  このモロモロとボンドは,できうるかぎり,徹底的に除去いたします。
  どちらもあるていど耐水性があるんで,再接着のときの障害になるからですね。


  棹上のフレットや柱間飾りの剥離とボンド痕の始末は,範囲も小さいし,たいしたことなかったんですが,絃停をハガす段になりましたところ,そのはじっこのほうにそれはまあコンモリと----その始末をしていたら,なにやら半月がグラグラしはじめました。


  これもついでにはずしちゃいましょう。

  前に修理した兄弟器「十六夜」は,演奏中に半月がスポーンとハガれて友人のおデコ直撃したそうですが,どうやら山田月琴最大の弱点は,この半月のようですね。以前ネオクで出てた楽器や博物館にあったものでも,半月のはずれてるのがけっこうありました。
  今回のは保存状態のせいで,半月の材がやや反ったせいもあるみたいなんですが,そもそもちょっと濡らしたぐらいでガタつくこんなユルい接着じゃ,安心して弾けやしません。
  半月はこの楽器のなかで,最も力のかかる部品のひとつ。ここは転ばぬ先に手を打っておくことといたしましょう。

  半月をはずしたら,穴が出てきました。
  一部の解説ではサウンドホールとされてますが,清楽月琴の場合はたんなる空気穴です。
  唐物や中国の月琴にはないので,日本の楽器職が琵琶の「陰月」のつもりで付けたんでしょうね。
  ただ,この穴が四角いのは,はじめて見ます。そもそも,どやってあけたんだ,この穴?


  表面板のヒビ割レの根元,地の側板のハガレの周囲にも,ニカワじゃない接着剤が使われていましたが,こちらは濡らしてもカッチリ硬く,透明なまま----たぶんボンドじゃなくセメダインじゃないかな。ハガレの接着面に数箇所垂らした程度だったので助かりました。


  蓮頭もボンド接着のようなんですが,修理の邪魔にはならないので,ここはとりあえずそのままにしておきます。
  山田縫三郎の楽器は量産品なこともあり,通常あまり凝った装飾は施されていません。この蓮頭は彫りの手も違うし(かなり巧い),同社の楽器中に似たような例を見たこともないので,柱間飾りと同様,ほかの楽器から移植されたものだと思われます。

  また,左右の目摂の下に一つづつ付けられた凍石飾りも明らかに後補のものですが,その接着にはボンドでなくニカワが使用されていました。接着も上手い。これだけはほかのお飾りより以前に,楽器屋がやったんじゃないかな,と考えております。修理で出た余ったお飾りでも貼り付けたのかもしれません。

  けっこう苦労しましたが,なんとかぜんぶひっぱがせました。
  やれやれ。

(つづく)


« 赤城山1号(3) | トップページ | 赤城山1号(5) »