17号柏葉堂3(3)
![]() STEP1. 修理てェほどのもンじゃあ,ござンせんが… ![]() 修理するところが,あまりありません。 でもまあ,このままじゃ使えねー状態なのは確かなので,やることァやりましょう。 まずはお飾り類をとりはずします。 接着剤はニカワ。ニカワの量がやや多めですが,ふつうにはずれました。 ----絃停以外は。 この絃停,皮自体がやや厚めなうえ,めっさ頑丈に貼られちゃっています。 フノリを使ったオリジナルの接着ですが,絃停左右にあるヒビ割れは,間違いなくこれが原因ですね。 皮が縮んで,面板をひっぱった----ふつうは皮がはがれて終わるところを,妙に接着が強固だったのと,皮自体やたらと丈夫だったため,そのまま板に力がかかって,メリリと裂けるとこまでいったものでしょう。 絃停の再接着を,強固なボンドなどでやった場合によく見られる被害ですが,オリジナルの接着が原因というのはそう見ませんねえ。 ![]() ![]() 皮が厚くて,筆でいくら濡らしてもキキめがありません。 際限なくビシャビシャにするわけにもいかないので,水を染ませた脱脂綿を置いてラップで覆い2~3時間。 なんとかハガれてくれましたが……うう~,痕がゴベゴベですぅ。 剥がした皮は多少縮んでいますが,まだ使えそうです。 再びこんな被害を出さないよう,裏を掻いてもっと薄くし,キレイにしておきます。 ![]() ![]() ひび割れは表が4箇所,裏に一箇所。 表面板の損傷は,上にも書いた,絃停左右の比較的長い裂け目が右2本,左1本。半月右下の周縁部に細いヒビが一本(2センチくらい)。そのほか欠けやヘコミが数箇所。剥がした目摂や絃停の下からも,虫食いによるキズなどが数箇所出てきましたが,いづれも軽症。だいたいは木粉粘土を充填するだけで済ませました。 ![]() ![]() 裏板の割レは,板自体の収縮によるものですね。 裏面板は板目の板で,この割れ目の右横に大きな節目があり,その方向へ縮んだようです。 周縁部の割レのところから中心に向かっての部分が,少し内側にズレてるのがお分かりになれましょうか?(見えないかなあ…)このへんから,斜め上方向にむかって,縮んでいます。 この箇所,側板から少しハガれちゃってますので,まずその周縁部を再接着してから,埋め木で埋めて整形。 たぶん「やーい××の子ぉ」的な悪戯書きだと思うんですが,すぐ横に 「も〓どのわ〓〓んのたね」 という,ありがたーい墨書がありますので(紙を貼って隠してたらしい),これを傷つけないように,ちょっと気をつけてお仕事です。
![]() ![]() 山口はどんなのがついてたか分からないので,4号のをコピー。 材はカリンです。 柏葉堂の山口は,一見,単純なカマボコ真っ二つ型に見えますが,上面左右がスッっと軽く削り落とされてたり,背面下部がわずかにひっこんでたりで。実は意外とほかに例のない,凝った作りになってるんですよ。 ![]() ![]() ![]() 面板清掃までこぎつけました。 かなり濃い目,また砥粉がやや多めのヤシャ液が使われています。 ヨゴレはさほどでもなかったのですが,ちょっと擦るとドロドロした汁が出て,重曹水がたちまち真黒になりました。 棹や胴体側部は,重曹水をつけて固く絞った布でさッと拭いて,乾いてから亜麻仁油で磨きます。 うむ,キレイ。 (つづく)
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