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17,18,19号仕上げ(2)

G17_19_end2.txt
斗酒庵 3面同時に仕上げる の巻月琴17号~19号仕上げ(2)

闘い終って

  さてさて----3面同時仕上げは,作業としては正直かなりキツうございましたが,ほぼ同時代の,違う作家の楽器が3面あるということで,さまざまな比較が出来。調査の上では興味深いデーターがいっぱい集まりました。
  17号,19号に関しては,面板の修理箇所が多かったり,半月にゲタを噛ませるなどしたために,その音色はかならずしも製作当初のものと同じとは言えませんが(もっとも,大きく違うわけでもないですが),それぞれにかなりはっきりとした個性があります。
  試奏中ずっと「あの世楽器商連合」所属の故人から「ワシの音はどんなんじゃいッ!」と,後ろからガン見されてるようで,なかなかにキモうございました。

  フレッティングの際に,接着痕や原作者のつけた目印などから判る,もともとのフレット位置での音階を計測してあります。
  庵主は西洋音階に近くフレッティングし直しちゃってますので,音声資料のほうとは異なりますが,これも一覧表にして付けておきますね。この三人の楽器については,意外と違いが小さいのですが,開放弦C/GにしたときにEとBが低くなりCが多少上がる傾向は,デフォルトで西洋音階にかなり近い,清琴斎の19号をのぞいて,だいたい一致しているようです。

【17号柏葉堂】

17号・原音階
開放弦
4D+104E-294F 04G+204Ab-15C+255D+65F+11
4A+44B-285C+175D+275Eb+395G+85A-146C+10


  17号の音は明るく,くっきりとして,ちょっと跳ねるような感じがします。
  響き線の効果は,余韻よりも音の中間以降に強くかかっているようです。
  そのため余韻に深みが若干足りず,しっとりとした曲にはやや向きませんが,リズミカルなものには最適かもしれません。
  裏面の悪戯書きからして,子どもが持っていたんじゃないかと思いますが,「やんちゃ坊主」って感じの音ですね。



  胴体水平面から見て,棹は山口のところで1ミリほど背面側に傾いています。この浅さが例の「理想との差,5ミリ」の原因の一つですね。

【18号唐木屋】

18号・原音階
開放弦
4D 04E-304F+74G+114B-365C-15D-335F+14
4A-54B-405C-55D+25E-495G+15Ab 06C-17


  18号「モナカちゃん」。銘はちょっとアレですが,その音は3面の中でもっとも「月琴らしい」と言いますか,「和楽器」な音,と言いますか。
  音の伸びや音量の点では物足りなさがありますが,しっとりとした音色で,余韻は甘く深みがあり,響きが前に伸びてゆかないかわり,演奏者のほうにまとわりつくような感じがしますね。音色だけではなく,楽器自体がかなり軽いため(器体が暴れます)もあり,17号とは逆でリズミカルなものには向きませんが,俗曲や清楽曲ののんびりしたのをポロポロ弾くには最適ですね。



  棹の傾きは,山口のところで約3ミリ。おかげでフレット全体が低めでまとまります。そのへんのところは3面の中で一番きちんと作られています。

【19号清琴斎】

19号・原音階
開放弦
4D+114E-224F -74G+254A+155C+305Eb-435F#+37
4A-14B-245C-45D+95E+15G+95A+366C+10


  19号「与三郎」。楽器としては3面中,もっとも完成度が高いと思います。
  操作性は言うに及ばず,音色も申し分ないのですが,さて,これをなんと言って誉めたら良いものか。「特徴らしい特徴がない」のが特徴,とでも言いましょうか。いやもちろん悪いのじゃないのですよ。このクラスの楽器で,この材質でここまで鳴るというのはもうリッパなものです。
  まっすぐな響きの,明るめの音ではありますが,月琴らしい余韻もきちんと持っています。
  それでいて,何を弾いても不自然さがありません。
  リズミカルな曲を弾けばくっきりした音で響き,しっとりとした曲を弾けばひそやかな余韻で応えます。
  ----そこが逆に,いささかキモチ悪いですね。




  棹の傾きは山口のところで約2ミリ。少しだけ浅めですが,それでも当時の月琴としては,絃高をかなり低くおさえてあります。



  3面の音色比較用にこんなのを作ってみました。
  清楽の曲だと,けっこうどれもおんなじように聞こえるんですが,このくらいのテンポで,しかも耳慣れた曲だと,かえって楽器の音の違いがはっきりしてきますね~。

(おわり)


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