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13号柚多田(5)

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斗酒庵 石村近江の衝撃波 の巻2011.1~ 月琴13号・柚多田 (5)

STEP4 丸い竹の憂鬱

  重曹で漂白,虫食いを埋めて矧ぎなおした表面板。
  墨書があり,表面からの手当てができないため,かなり苦労して修理したのですが。さらに修理後,半月ほど置いて,新たな割レやら修理箇所の陥没やらという二次的なヒゲキが起きないか,じっくり様子を見ていました。

  表面をまんべんなく濡らしたので,多少の反りは出たのですが,それ以上のさしたる支障も発生しないようですので。
  さて,胴体にもどしましょう----でもその前に。


  これをやっておかなきゃなりません。
  13号月琴の大きな特徴の一つが,響き線の先端を囲む竹の内部構造。
  表裏板裏面に竹の板と丸竹を張って,柔らかな響き線の振幅範囲を制限し,線を保護しているものと思われます。

  しかし,工房到着時,すでにその構造の一端,丸竹の片方がはずれて,胴体内をコロコロ転がっておりました。

  接着痕は表裏面板の裏面,双方についてますが,あらためて楽器に当てて測ってみますと,丸竹の長さと胴体の幅の間にかなりのスキマが……何でしょうねこれは。
  一世紀半年の間に,木が縮んだり伸びたりしたのでしょうか?
  いやいや,竹がこんなに,1ミリ以上も縮んだなんてハナシは聞いたことがありません。しかもこれ,きちんと乾燥させた煤竹みたいだし。じゃ,胴体がふくらんだ…あるか~いっ!
  ----というとこですんで。
  ……テキトウやりやがったな石村あ。

  月琴という楽器は,サウンドホールのない構造ですから,こいうものがハズれると,直す方法はオープン修理しかなくなります。
  したがって,こういうものは,できればまずもってハズれたりハガれたりしないよう,ガッチリ接着されてて欲しいものです----



  まずは,竹にスペーサーを。
  桐の薄板を接着します。写真では写ってませんが,これ,ただの板でなく内側にもう一枚,ポッチになるような丸い板の欠片が貼り付けてあり,そう簡単にハズれないようになっています。

  底部を削って胴体内の厚みギリギリに合わせましょう。


  竹という素材,さらににこうしたその木口の部分は,特に接着の悪い箇所なのですが,片面に接着のいい桐板のスペーサー&はずれないように,もう一枚ディンプル状になった木片が内側に仕込んであります。
  これでまあ,どっちか一面の接着がはずれたとしても,前みたいに胴内コロコロといった事態には,容易にはなりますまい。

  丸竹を接着し,あらためて観察してみて,すごいことに気がつきました。楽器を横にしていると,響き線の位置はこんなもんですが。



  楽器を立てて演奏姿勢にすると,なんとその先端は下の丸竹の上,約3ミリのところでピタリと止まり,胴内で完全フローティングな状態になります。
  このへんはさすが石村,GJです。

  テストもしてみて,丸竹の両面が表裏面板の裏側にちゃんと密着することも確かめましたので,いろいろあった表面板ですが,これでいよいよ再接着となります!


  胴体が箱になります。
  100年の時を経て,物体がまた「楽器」になる----その瞬間に立ち会えること。

  楽器修理者の喜びってのは,そういうところにあるのかもしれませんね。

(つづく)


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