21号柏遊堂(1)
![]() STEP1 柏遊堂,とわ? ![]() ああ,自出し月琴,21号です。え,数がどうしたって? もういいぢゃありませんか。 どうにでもなれー,ちんぷい,ちんぷい。(w) 背面に「柏遊堂」と,ラベルがありますが---- 今のところ,これがどこの誰なのか,判りません。 『明治大正期楽器商リスト』にも出てきませんしね。 山形屋さんや菊芳のラベルと違い,住所がなく名前だけのラベルなので,どうにもなりませんねえ。 あちこちコワれて,頭の上にナニヤラ鶏冠態のモノをへっつけられてはいますが,全体として,出来も保存も悪くはないようです。 ![]() 1.採寸・各部簡見 ・全長:695mm(蓮頭の基部までだと 630 ) ・胴径:352mm(縦方向)349mm(横方向) 胴厚:35mm(表裏面板,厚4 ) *見た目,ほぼ真円ですが,測ってみると少しだけ縦方向に長い。 ・有効弦長:421(山口欠損のため推定) ![]() ■ 蓮頭:欠損 かわりに家具の足(?)と思われる,猫足状の木片がとりつけられている。 材質は不明だが,水性ニス,あるいはオイルステンと見られる塗料で黒っぽく塗装されているもよう。 ■ 糸倉:損傷アリ。 ![]() ![]() ![]() 長:138 最大幅:31 側面厚:8。 蓮頭の基部まで一木造で,弦池は彫り貫き。やや長いが,アールもさほど深くはなく,実用的な作りである。 一番下の軸孔のところから,一度,まっぷたつに割れた様子。 おそらく切断面にホゾを埋め込み,ウルシで接着している。 修理自体は古いが,かなりきっちりと修理してあり,強度もあるため現状でも使用は可能と思われる。 ![]() ■ 軸:四本そろう。 おそらくホオ材。うち一本だけ着色が異なる。糸倉に挿すと糸穴がほとんど見えなくなるところから,この一本のみはもう少し糸倉の幅のある別の楽器より移植された部品と思われる ![]() ![]() ■ 山口/棹上フレット/棹 山口は欠損。代わりに筆軸と思われる細い竹筒を割ったものが貼られている。 山口の代わりに使用された痕跡はなく,蓮頭の猫足と同様,古物としての体裁(?)を整えるための蛇足と思われる。 オリジナルのフレットが2本。材質は象牙か。第3フレットのみ欠損し,棹上に接着痕のみを残す。 第3フレット接着痕に少虫食いあり。 棹表面に指板はない。糸倉から棹まで,おそらくホオ材。 指板相当部分,長147,最大幅31,最小幅24。最も太いところで背面まで30,最も細い部分が25。 中級の月琴としては一般的なサイズで,背面に装飾的なアールもほとんどない実用的な棹である。 ■ 装飾:左右目摂・扇飾り・中心円飾り/胴上フレット ![]() ![]() 蓮頭以外の装飾はすべて残っており,オリジナルと思われる。これ以外の柱間飾り等が付いていた痕跡はない。 胴体中心の円飾り(唐木)以外は,ホオかカツラの薄板を染めたものと思われる。 扇飾りは一般的な唐草卍帯,左右目摂の意匠は仏手柑。工作はやや稚拙。 胴上のフレットもすべて残る。貼りなおされた形跡もない。 材は棹上のものと同じ。高音部,いづれも細身で,丈もかなり低い。 ![]() ■ 絃停/半月 絃停はニシキヘビの皮。102×70。右上カドと左辺下に傷み多少。全体に接着が浮いている。 周囲に貼り直しの際の作業痕と見られる白っぽい染みあり。 半月は102×40,最大高 10。半円曲面。唐木製かなにかの木を染めたものか,現状では不明。 表面の線彫りの意匠はおそらく蓮花。糸孔は 外弦間:33 内弦間:27 内外の弦間はどちらもおよそ3ミリ。 使用痕あり,糸擦れの一部はかなり深い。また上端右に小カケあり。 ![]() ![]() ![]() ■ 胴体 側板:材はクリと思われる。 接合部ほぼ健全でスキマも狭いが,四方ともに黒っぽい物質(おそらくウルシ)で埋められている模様。 糸倉と同時期の古い修繕か? ![]() 表面板:全体にほぼ柾目の板で構成。 現状,何枚矧ぎかは不明(7枚矧ぎ?)だが,左右端にギラ目の入った板が使われている。 絃停の上,胴中央付近に木目に沿ったミゾ・凸凹,やや深い。 同箇所を中心に演奏によるピックの擦痕多数。 上端棹の右手に小ヒビ。ヒビ周辺に擦痕と何かコゲたような痕少々。 下端,半月の右下周縁にクランプ痕と見られる丸い圧痕,4~5個。 半月左下から周縁まで小ヒビ,その少し左にも,一本小ヒビ。 裏面板:左側に大きくヒビ貫通。最下端で幅1ミリほど開く。下端左に虫食い穴あり,これが原因か? このヒビを中心に左右,裏面板下端周縁が,胴体からやや出っ張っており,おそらくは再接着されたものと思われる。 (つづく)
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