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明笛について(1)
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明笛・清笛-清楽の基本音階についての研究-(1)
STEP1 INTRODUCTION
さて,以前にもちょっと書いたかと思いますが。
庵主は糸を「はじく」タイプの楽器なら,琵琶だろがラバブだろがウポロン星人の12本の触手で弾く楽器だろうが,そこそこ弾ける自信があるのですが,「絃をこする」楽器と「吹く」楽器に関しましては,
天才的な不得手さ
を有しております。
二胡のお教室では,三週間ほどで先生から見放され,吹くほうは小学校のリコーダーでトラウマって以来数十年……この二種類の楽器の演奏とは,宇宙壊滅のその日まで無縁ならむと堅く信じておりました。
----そういう人間が,笛を吹く,というのですから。
よほどに追い込まれたものと,お考えください。
民謡だと尺八,オーケストラだとオーボエ。
音楽には合奏のさいにすべての楽器がその音に合わせて,おのおの調整をすることになっている楽器があります。
「基音楽器」
というものですね。
清楽における「基音楽器」は「明笛」もしくは「清笛」。
現在も中国音楽で使われている「笛子(ディーツ)」の仲間の横笛です。
そのほかに「排簫」といって,各音の管を並べた巨大なチューニングパイプ,というか据え置き型パンフルートのような楽器があり,これを基音楽器のように書いている本もありますが,これは「雅楽」や「清国の音楽」でないほうの「清楽(せいがく--伝統的な宮廷音楽,儀式音楽)」の分野で,「宮」とか「角」といった調子を確認するために使われるもので。通俗音楽,いわゆるポップスである「清楽(しんがく)」とは,本来関係のない楽器です。
明笛の指孔は6コ,さらに歌口と指孔の間に
「響孔」
という吹きも押えもしない孔が一つあいていて,ここに
「笛膜」
という薄い膜を貼り付けます。
「笛膜」はアシの茎の内皮や,竹から採った「竹紙」と呼ばれる植物性の薄い皮で出来ていて,息が通るとここが震動する----つまりカズーやおもちゃのブーブー笛と同じ仕組みですね。この笛膜が管音と共鳴することによって,ちょっとカン高い倍音が重なって出るようになってるんですね。
本によってはこの「響孔」のないものを「清笛」としていることもありますが,名前が違っても基本的には同じ楽器。
今回は「明笛」に統一しますね。
古い楽譜の口絵などにある「明笛」は,たいてい長くて,指孔や歌口の間が総籐巻きになっています。これだとほぼ現在の中国笛子と同じ形状ですが,ネオクなどでよく手に入る国産の「明笛」の多くは,籐巻きがなくて,もうすこし短く,象牙や骨材,唐木の類で作られた,ラッパ状の飾りが管頭と管尻についています。
清楽という音楽分野や月琴がすたれた後も,明笛という楽器はしばらく人気があって,大正のころまでよく売れていたようです。そのため,さまざまなメーカーがこの手の笛を作っており,今はほとんど吹かれてなくても,かなりの数が残っていることでしょう。
けっこう出てるし,そんなに高いものではないので,短期間にかなりの数を落としまくりました。
半年あまりの間で集めた明笛は,時代も形も様々ながら20を越す本数に及びました
----笛本業の方々,ごめんなさい。
再現MIDIの作成,またそら庵でのWSなどで庵主は,清楽の音階を----
合
四
(乙)
上
尺
工
凡
六
五
乙
3G
3A
(3B)
4C
4D
4E
4F
4G
4A
4B
---で教えています。
これは月琴を4C/4Gで調弦しているのに合わせているためです。
また,上=Cとするこの調弦のほうが,教えるのにもラクだし,西洋楽器などと合わせるときにも都合が良いからなのですが,本来清楽の音階は上=EもしくはE
b
,これより3音ばかり高かったとされています。
良く引用される大塚寅蔵の『明清楽独まなび』の表では----
合/六
四/五
乙
上
尺
工
凡
A
#
/B
b
C
D
D
#
/E
b
F
G
A
---となっていますね。
音階,もしくは基音というものは,ある音楽分野を考えるとき,けっこう基本的かつ重要なテーマだと思うのですが,問題は,
こういうことをちゃんと検証した資料が見当たらない,
ということです。
清楽の音階については上にも書いたように,この『明清楽独まなび』の表など,古い文献をそのまま引用したものが多く,楽器自体の調査から,これをきちんと確認したものがあまりありません。
明笛においても,ある1本,2本の笛の音階や音響について簡単に調べたものはいくつかあるのですが,
一つの音楽分野における「基本音階の調査」
ということになりますと,庵主にはそれで済むようには思えません。
大流行した清楽という音楽で,実際,どのような音階が用いられていたのか。
基音楽器である明笛の調査をもとに,ある程度の幅をもったデータを作成しておくことが,清楽というすでに滅んでしまった音楽分野を研究する上で,またその曲を再現するうえでも,大切なことの一つだと考えます。
とはいえ……………笛かァ。
たいへんだあ。
さいしょに書いたように,おいら吹けないんだもん(泣)。
(つづく)
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