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改訂版・月琴の弾き方(1)
PLAY01.txt(2012)
改訂版・月琴の弾き方(1)
前回,この記事を書いたのが2007年のことですからねえ。
そのとき生まれた子がいたら,もう5歳くらい?
月日が流れるのは早いものですにゃ…げほげほ。
当時はこんなマイナー楽器の扱い方,どうせ誰も読まない,使わないだろうと,かなりテキトーに書きましたので。読みにくい部分,意味の分かりづらいところなど多々あったかと思われます。深川で続けている月琴のWSももう2年だか3年目に突入,修理した楽器を知り合いにおしつけ,自己増殖的行為を続けているうち,気がつけば,
周囲に月琴の弾き手が20人くらい
いたりするということになりました。
21・22号の修理も終わり,数年来懸案だった明笛の調査も一段落。
ここらで一つ二つ,旧悪をはらっておきましょう。
なお,「月琴の弾き方」つーても,「清楽月琴」のハナシですんで。
現在主流の中国月琴の方々には役立ちません
…あしからず。
STEP1 糸のかけかた
月琴は「弦楽器」でありますから,糸が張られてなければただの箱なわけで。
すべからく弦楽器の扱いは,糸を張るとこから。
まずはどんな糸を,どんなふうに楽器にかけてやればいいのか----そのへんとこからはじめましょう!
1. 糸を買おう!
月琴には「三味線の糸」を使います。
往時この楽器が流行していたころには,専用の糸というものもあって,そこらの楽器店で買えたのでしょうがね。今現在は伝統的な邦楽器の糸を製造販売しているところ(たとえば京都の鳥羽屋さんなど)でしか扱っておりません。
もっとも,月琴専用の糸と三味線の糸との違いは,縒りかた番手(太さ)の差が少々と,表面に塗られている糊が黄色でなく白な事くらいですから,基本的には「三味線の糸」でまったく構いません。
庵主もずっとそれで通しておりますが,さして問題はございませんよ。
「三味線の糸」と一口に申しましても,お座敷三味専用の細いものから,津軽三味線に使われる荷物紐みたいな太いものまで,材質も伝統的な絹から,ナイロン,テトロンなど化学繊維のものまでさまざまですね。
楽器が健全で,特に糸倉に損傷がないのでしたら,ナイロンやテトロンの弦を試してみるのも一興ですが,基本的にはむかしの専用弦に近い
「絹の糸(絹弦)」
をお勧めします。
糸の番手(太さ)は「13-2」と「12-3」。
それを2本づつ使います。
最初の13とか12,と言うのは糸の太さを表します。三味線糸では番手が大きくなるほど太い糸です。つぎの「2」とか「3」というのは「二の糸」「三の糸」という意味。「2」のほうが太い弦,「3」のほうが細い弦です。
これは長唄などで使われる,比較的細い糸の組み合わせなのですが,もし音が気に食わないようでしたら,1~2号太いの細いのを使っても構いません(もっとも絹弦の三の糸はたいてい,12-3が最も細い番手になってます)。
ご近所に三味線屋さんや楽器店の大きなところがあれば,直接購入することも可能ですが,今は
ネットの通販
でかんたんに手に入りますし,おそらくそちらのほうが,安いものから高いものまで,いろいろ選んで買えると思います。
庵主がふだん使っている「ふじ糸」の絹弦は,13-2が10本1セットで千五~六百円,12-3が千円くらいです。
太いほうの弦は滅多なことでは切れませんが,細いほうは(特に最初のころは)もーしょっちゅうプッツンしますので,ちょっと多めに買っておくことをお勧めします。
2. 糸を張ろう!
さて,では糸を楽器に張りましょう!
月琴の糸は四本ですが,左右に2本づつ同じ太さの糸が張られます。音楽用語で言うと
「4弦2コースの複弦楽器」
ということになりますな。弦は少ないですが,要はリュートやマンドリンなどと同じ仲間の楽器なわけです。
楽器を正面から見て,左右外側の弦を
「外弦」
,内側2本を
「内弦」
としましょう。
どこからはじめても構わないとは思いますが,庵主はいつも高音外弦
(細いほう,楽器を正面から見ていちばん右側)
から張ってゆきます。これは庵主がさいしょのころ,安物のギター・チューナー(低音開放弦の「C(=ド)」が測れない)を使って調弦していたことからくる癖ですので,みなさんはやりやすいところからやってください。
基本的には庵主と逆に,左端の低音の外絃から張っていったほうが,次の弦を張るとき,前の弦がジャマになりにくいと思いますよ。
A.半月への取付け
まずは丸くまとめられた三味線のお糸をほどきます。
糸の片方の端に,赤とか銀色で色がつけてありますね。どっちをどっちに使ってもかまいませんが,庵主は色を塗ってあるほうを軸(糸巻き)がわに巻き取っています。
まずはこれを「半月」(胴体上にへっついているテールピース)に結びつけましょう。手順は以下----
1) 色のついていないほうの端(A)に,単(ひとえ)結びの輪を作りましょう。
2) 半月の糸穴に,色のついてるほうの先端(B)を通します。(上から)
3) さっき作った輪(A)の中に,色つきのほう(B)を通します。(下から)
4) 通した糸の両方をひっぱりながら,輪を縮めてゆきます。
この時,ひとえ結びの輪の「結び目」のところを,
糸穴の縁にひっかけて,
結び目の部分が穴の中にちょっと沈み込むよう,ひっぱる角度とか力を加減してください。
5) 輪がほどよく縮んだところで,両端を軽くひっぱって完成。
言っちゃえば,ひとえ結びの輪をただ半月にひっかけてるだけなので,最初のころはなんとなく危なげに感じますが,基本的には三味線や琵琶の糸の結わえかたもこれと同じですし,このあと弦をしぼってゆくと自然に締まって固まって,ハズれることはまずありません
----ご安心を。
B.糸巻きへの取付け
エレキギターとかですと,低音の弦は一番下のペグに,高音弦は一番上のペグに巻き取りますが,月琴は向かって左端,
低音の外絃が一番上の糸巻き,
以下,左から右へ順繰り,一番右の高音外絃は一番下の糸巻きで巻き取ります。多少ピタゴラスの定理とかに逆らってる気もしますが,ギターほど弦の長さのない楽器なんで,音程への影響はそんなに考えなくてもいいんですよ。
まあどうしても気になる方は,べつだんこれと逆になさっても結構(ww)。
糸巻きへの結いつけ方は,
下図を参照(クリックで拡大),
糸巻きの棒の右側が,楽器の正面ですね。
このほうが糸がユルみにくいのですが,楽器によっては軸の糸孔が小さすぎて,この「二度通し」ができないかもしれません。その場合は,もっと簡単に,孔に糸を通して巻き込むだけでもかまいません。
糸を糸巻きに通したら,あとは糸巻きを回して,余分な糸を巻きとります。
言っちゃえば単純なことですが,
ここでご注意。
糸巻きに糸がキッチリ巻きとられてないのは,いつまでたっても音が合わない原因の一つになりますから,ちょっと丁寧に。
三味線や沖縄三線の調弦ではこのとき,軸先を糸倉から浮かし,糸巻きを多少フリーな状態にして大体の糸を巻き取り,最後に「ギュッ」と押し込んで止める,ということをします。しかし月琴は琵琶と同じで,糸巻きは浮かさず
「ドライバーでネジ回し」
の要領で巻きとります。
糸巻きを回すときの
「いちばんダメな握り方」
は,右みたいにただつかんで回すやり方。
ギターのペグなどと違って,月琴の糸巻きはただ穴に差し込んであるだけのモノなので,こんな風な手つきでグルグル回していると,先端が糸倉から浮き上がって,巻きがユルくなっちゃいます。
上に書いたよう
「ドライバーでネジ回し」
の感じですよ。
かならず糸巻きのお尻に力をかけ,糸倉に糸巻きを押し込むような感じで回してください。
もっとも,あんまり力まかせにギリギリやると,糸倉が割れちゃったりしますからね
----チカラ加減はほどほどに。
右側の糸巻きを回すときは写真のように,
かならず親指を反対側の糸倉に,小指を糸巻きのお尻にひっかけて,
握りこむようにしながらやってください。
反対側の,左の糸巻きを回すときは,今度は親指じゃなく,
小指を糸倉にかけるのが本当なんですが,
庵主は手がきわめて小さく握力もそんなにないため,左側の糸巻きを回すときは
下の写真
みたいに,軸先が浮かないよう,右側の糸巻きを膝の上に当ててやることが多いですね。
同じように握力に自信がなかったりする方は,左側の糸巻きを回す時も,肩とか胸に当てながら巻いてみてください。
なお,三味線の絹弦の表面には,糸を強化するためデンプン糊の類が塗布されています。
それでなんだか細いほうの弦など,見た感じテグスのようにツルリ,カッチリとしているわけなんですが,張るときに糸がねじれたり丸まったりしてると,
そこから折れて,
糸が切れやすくなってしまいますので,余分な糸をある程度のところまで巻き切るまでは,糸をうまくあやしながら,
糸の途中で折れ目とか結び目ができちゃわないように
注意してください。
巻き取りは均等にウツクシク----な必要はたいしてありませんが,あんまり片寄ってたりすると,音合せがしにくくなっちゃったりするので,まあまあ心得ていてください。
あくまで「理想」といたしましては,糸倉を横から見た時にはさながら「ビルマの竪琴」のように,正面から見た時にはあたかも「翼をたたんだ鳳凰」のように見えるのが美しいかと……(Wow...マニアック!)。
さて,月琴を弾く準備,実はここからがイバラの道。
カクゴしてついてきてください~。
(つづく)
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