22号鶴寿堂2(1)
![]() STEP1 出会いは何時でも ![]() さてさて,笛吹きの試練やら弾き方教室やらもようやく一段落----ひさしぶりに,月琴修理報告へともどりましょう。 自出し購入月琴,22面目。 到着しての,まず感想は…………重い。 唐木製の8号ほどではないのですが,普及品の楽器の2倍くらいの重さはありますね。 こりゃきっと,よか材料が使われとぉたい。 ではまず,いつものように採寸と観察から。 ![]() 1.採寸・各部簡見 ・全長:646mm ・胴径:356mm(縦方向)358mm(横方向) ・胴厚:40mm(表面板5,裏面板4mm) ・有効弦長:425mm 同時に修理していた21号と並べると,胴の厚いのもあってやや大ぶりに見えました。 A)棹部分
B)胴体部分![]() ■ 側板。 棹と同じくカヤと思われる材に,カリンの化粧板を貼り回してある。化粧板の厚みは0.8mmほど,棹穴の中心で両端が合わさる。 向かって右肩および対角線上の左下は接合部が割れているらしく,面板の縁から内がわの胴材の木端面が少しのぞいている。 ![]() ■ 表面板。 左端に幅3センチほどの小板を足しているが,そのほかに矧ぎ目は見られず,ほぼ一枚板。中央に険しい山が盛り上がっているかのような木目がある。この木目のため中央付近はやや柔らかいが,周縁はかなり目が詰んで堅い。 中央下端,半月の真下辺りの縁にやや大きく,深いカケがあるほか,全体にヨゴレはあるが,ヒビなどの損傷はほとんど見られない。 胴下周縁で胴材からの接着ハガレ,ほぼ地の側板に相当する,全周縁の1/4程度におよぶ。 右肩から最終フレット付近にかけて,悪戯した程度の三味線のバチ痕らしいものが数本,また月琴のバチ先か釘のようなもので木理をなぞった痕が,絃停の右に一本見られるが,演奏による使用痕と確認できるようなものはない。 ![]() ■ 裏面板。 表面板とほぼ同じ板が貼られている。 向かって右端,小板との矧ぎ目にヒビ,上下貫通。上部に数箇所薄い打痕。 数箇所,上下に名前か何かを書き込んだものと,子供の手によると思われる悪戯書きなどが見える。いづれもそれほど大きなものではない。 胴材からの剥離がひどく,上部は向かって左肩の接合部付近から天の側板のほぼ周縁ぜんぶ,下部は左右の接合部を越えて全周縁の1/3におよぶ部分が剥離している。 面板のハガレを前所有者が修理しようとしたものか,周縁各所および小板との矧ぎ目中央あたりに合わせて5~6箇所ほど,竹釘が打たれている。もちろんあまり効果はなく,何箇所かは竹釘自体が抜け落ち,小さな穴のみがあいている。 ![]() ■ 絃停/半月。 絃停はヘビ皮。102×64。小さめである・ 半月は半円曲面。102×43,高10。おそらく唐木製。紫檀か。 表面に蓮の花が薄く浮き彫りにされている。透かし彫りなどに比べると一見地味だが,かえって手の込んだ細工である。 糸孔は外弦間:26.5,内弦間:20,内外の弦間は約3ミリ。このサイズの清楽月琴としてはややせまい。 ![]() ■ 装飾/フレット。 左右目摂は仏手柑。唐木と思われる。かなり丁寧な彫り。 オリジナルの扇飾りは欠落したらしく,黒いちりめんで作った扇状のものが貼り付けられている。 そのほかの中央円飾り,および柱間飾りの痕跡はない。 フレットは棹上・胴上,ともに全損,目安のケガキ線および接着痕のみ残る。 C)内部構造![]() ただし,この楽器の棹穴は18×22mmと小さめなので,大した観察は出来ませんでした。 ![]() ■ 棹基部/棹茎。 長:186 最大幅:20 最小幅:17 厚:16-5 棹基部は45×20×16,V字に切り松かツガと思われる延長材を挿す。延長材の根元に「第六号」と墨書。 加工と工作は比較的丁寧だが,墨書の横,表面板側の左がわにかなり長いカケがあるなど,材質はあまり良くない。 ■ 内桁。 おそらく1枚。棹穴の端から175mm,胴体のほぼ中央に位置する。真ん中に茎のウケ孔,その左に「六号」,右に花押のようなものが見える。 音孔は左右にありいずれもきっちりと四角く切られている。材質はスギかヒノキ。 ■ 響き線。 おそらく1本。材質形状不明だが,振った音や棹穴から棒を入れて触れた感じでは直線,楽器に向かって右側に基部があり,棹穴から 230mmのあたりを通る。
現在,柳家小春さんが使ってる5号月琴と同じ作者なわけです。 製作年代は分かりませんが,墨書であちこちに「六号」とあるので,かなり初期の楽器なのではないかと思われます。 月琴5号は明治の36~37年にかけて製作されたもの(表板と裏板の墨書で年記が違う)でした,二つの楽器を比べると,棹のフォルムなんかはほとんど同じなのですが,こちらの楽器のほうが,やや各部の工作にまだ手慣れていない感が見え隠れしています。 作者の同じ楽器の修理は,その技術の変遷や,楽器の時代的な変化とか,最高のデータが取れますからねえ,じつに楽しみです。 まずは鶴寿堂さん。 おかえりなさい(w)。 (つづく)
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