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22号鶴寿堂2(1)

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斗酒庵 鶴寿堂と再会す の巻2011.10~ 月琴22号・鶴寿堂 (1)

STEP1 出会いは何時でも

  さてさて,笛吹きの試練やら弾き方教室やらもようやく一段落----ひさしぶりに,月琴修理報告へともどりましょう。

  自出し購入月琴,22面目。
  到着しての,まず感想は…………重い。
  唐木製の8号ほどではないのですが,普及品の楽器の2倍くらいの重さはありますね。

  こりゃきっと,よか材料が使われとぉたい。

  ではまず,いつものように採寸と観察から。



1.採寸・各部簡見

 ・全長:646mm
 ・胴径:356mm(縦方向)358mm(横方向)
 ・胴厚:40mm(表面板5,裏面板4mm)
 ・有効弦長:425mm

  同時に修理していた21号と並べると,胴の厚いのもあってやや大ぶりに見えました。

A)棹部分



  主材はカヤと思われる。
  表面には厚さ0.5mmほどごく薄い唐木の指板が,山口取付部の手前まで貼られている。指板部分の寸法は長146,最大幅31,最小幅25。フレットは全損してケガキの目安線と接着痕のみが3つ残る。
  胴体との接合部付近で最大太さ34,糸倉の基部付近で最小20mm。
  棹背は浅く美しい曲線を描く。

 ■ 蓮頭:剥落。76×48
  紫檀製と思われる。意匠は葡萄。やや小さく薄手で,彫りは緻密。

 ■ 糸倉部:損傷なし。
  長:159 幅:32 側面厚:8 最大深:75
  天のところに同材の間木をはさむ。アールはふつう。うなじの部分がやや深く,長い。

 ■ 軸:健全。4本存。
  長:116 径:25 やや細身の六角握りで3本溝。おそらく棹と同じくカヤ製。加工は丁寧。

 ■ 山口:欠損。


B)胴体部分


 ■ 側板。
  棹と同じくカヤと思われる材に,カリンの化粧板を貼り回してある。化粧板の厚みは0.8mmほど,棹穴の中心で両端が合わさる。

  向かって右肩および対角線上の左下は接合部が割れているらしく,面板の縁から内がわの胴材の木端面が少しのぞいている。


 ■ 表面板。
  左端に幅3センチほどの小板を足しているが,そのほかに矧ぎ目は見られず,ほぼ一枚板。中央に険しい山が盛り上がっているかのような木目がある。この木目のため中央付近はやや柔らかいが,周縁はかなり目が詰んで堅い。

  中央下端,半月の真下辺りの縁にやや大きく,深いカケがあるほか,全体にヨゴレはあるが,ヒビなどの損傷はほとんど見られない。
  胴下周縁で胴材からの接着ハガレ,ほぼ地の側板に相当する,全周縁の1/4程度におよぶ。
  右肩から最終フレット付近にかけて,悪戯した程度の三味線のバチ痕らしいものが数本,また月琴のバチ先か釘のようなもので木理をなぞった痕が,絃停の右に一本見られるが,演奏による使用痕と確認できるようなものはない。


 ■ 裏面板。
  表面板とほぼ同じ板が貼られている。

  向かって右端,小板との矧ぎ目にヒビ,上下貫通。上部に数箇所薄い打痕。
  数箇所,上下に名前か何かを書き込んだものと,子供の手によると思われる悪戯書きなどが見える。いづれもそれほど大きなものではない。
  胴材からの剥離がひどく,上部は向かって左肩の接合部付近から天の側板のほぼ周縁ぜんぶ,下部は左右の接合部を越えて全周縁の1/3におよぶ部分が剥離している。
  面板のハガレを前所有者が修理しようとしたものか,周縁各所および小板との矧ぎ目中央あたりに合わせて5~6箇所ほど,竹釘が打たれている。もちろんあまり効果はなく,何箇所かは竹釘自体が抜け落ち,小さな穴のみがあいている。


 ■ 絃停/半月。
  絃停はヘビ皮。102×64。小さめである・

  半月は半円曲面。102×43,高10。おそらく唐木製。紫檀か。
  表面に蓮の花が薄く浮き彫りにされている。透かし彫りなどに比べると一見地味だが,かえって手の込んだ細工である。

  糸孔は外弦間:26.5,内弦間:20,内外の弦間は約3ミリ。このサイズの清楽月琴としてはややせまい。


 ■ 装飾/フレット。
  左右目摂は仏手柑。唐木と思われる。かなり丁寧な彫り。

  オリジナルの扇飾りは欠落したらしく,黒いちりめんで作った扇状のものが貼り付けられている。
  そのほかの中央円飾り,および柱間飾りの痕跡はない。

  フレットは棹上・胴上,ともに全損,目安のケガキ線および接着痕のみ残る。


C)内部構造

  面板の剥離が激しいこと,そして側板に化粧板を回してあるため,現状のままだと接合部の修理が出来ないので,今回はひさしぶりのオープン修理になると思われます。内部構造の詳細については,その時にふたたび書くこととして,とりあえず棹穴から観察したものを。

  ただし,この楽器の棹穴は18×22mmと小さめなので,大した観察は出来ませんでした。


 ■ 棹基部/棹茎。
  長:186 最大幅:20 最小幅:17 厚:16-5
  棹基部は45×20×16,V字に切り松かツガと思われる延長材を挿す。延長材の根元に「第六号」と墨書。

  加工と工作は比較的丁寧だが,墨書の横,表面板側の左がわにかなり長いカケがあるなど,材質はあまり良くない。

 ■ 内桁。
  おそらく1枚。棹穴の端から175mm,胴体のほぼ中央に位置する。真ん中に茎のウケ孔,その左に「六号」,右に花押のようなものが見える。
  音孔は左右にありいずれもきっちりと四角く切られている。材質はスギかヒノキ。

 ■ 響き線。
  おそらく1本。材質形状不明だが,振った音や棹穴から棒を入れて触れた感じでは直線,楽器に向かって右側に基部があり,棹穴から 230mmのあたりを通る。




  上にも書いたように,この楽器は棹穴が小さくて,内部構造の撮影はもちろん,目視での計測や観察もきちんとはできなかったのですが,表裏板の裏側にある墨書をなんとか確認することができました。内桁で阻まれて上半分しか見えないのですが,裏板に「物外…大観…」そして「鶴寿」の文字が見えました---庵主にとってはこの楽器の作者を知るに,とりあえずまあ,これだけでじゅうぶんですね。

  楽器の外見,カヤが主材であること。
  指板が山口の前までしかないのも大きな特徴。
  そしてとくに懐かしい,この棹背の美しい曲線。

  名古屋上薗町,「鶴寿堂・林治兵衛」さんの作品ですね。

  現在,柳家小春さんが使ってる5号月琴と同じ作者なわけです。
  製作年代は分かりませんが,墨書であちこちに「六号」とあるので,かなり初期の楽器なのではないかと思われます。
  月琴5号は明治の36~37年にかけて製作されたもの(表板と裏板の墨書で年記が違う)でした,二つの楽器を比べると,棹のフォルムなんかはほとんど同じなのですが,こちらの楽器のほうが,やや各部の工作にまだ手慣れていない感が見え隠れしています。

  作者の同じ楽器の修理は,その技術の変遷や,楽器の時代的な変化とか,最高のデータが取れますからねえ,じつに楽しみです。

  まずは鶴寿堂さん。
  おかえりなさい(w)。

(つづく)


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