« 胡琴を作らう!(1) | トップページ | 胡琴を作らう!(3) »

胡琴を作らう!(2)

K01_02.txt
斗酒庵 胡琴を作る の巻2012.2~ 胡琴を作らう!(2)

STEP2 んでわまンずまず,作ってみやう

  さてまずは材料----

  ----竹,ですね。(^_^;)

  このほかに入用なものはといえば,糸巻きになる棒が2本,琴筒(胴体)に張る皮が少々と,周りに巻く布きれくらいでしょうか。

  今回の素材は,胴体がマダケ(φ5センチ,\200),棹はシロダケ(φ2センチ,\260)。庵主はたまたま東急ハンズの端材コーナーでゲットしましたが,棹材の竹なんかは,ご近所の日曜大工屋さんとか園芸用品屋さんなんかだと,一本 \200 しないくらいで買えるかと思います。

  大陸の京胡の胴体にはもう少し太い竹が使われてますが,日本で作られた胡琴はなぜか細身で,このくらい寸法のものが多いのですね。直径6~7センチほどの太さの竹なら,べつだん,日中かわらずふつうに手に入ると思うのですが。何の差なんでしょうねえ?

  第一回の冒頭に,北京の古い風俗を描いた絵を載せましたよね。二胡の安いのとか京胡の類は,よくあんなふうに玩具的な楽器として街頭で売られてたりしてたんですが,清楽で使われた胡琴は,そういう玩具の京胡と比べてもさらに玩具みたいにどこもかしこも華奢で細くて小さいことが多く,楽器として実際に使われったかどうかは不明ですが,庵主が見た中では,棹の高さが30センチくらいのものもありましたよ。


  まずは胴体を切り出します。長さは14~15センチほど。
  「竹切り鋸」なんて専用の工具もありますが,この竹の肉はモウソウチクなんかに比べるとさなだき薄いので,べつにふつうの糸鋸でかまいません。
  切り口をなるべくまっすぐにするため,ぐるりにテープを巻いて目印にします。


  切り出した竹の表面の皮を削りとります。

  明笛でも同じようなことをしていますが,これもまたなんでなんでしょうねえ?
  国産の明笛で皮付き竹を使ったものはいくつかありましたが,胡琴の胴で皮付き竹が使われてるのは今のところ見たことがありません。でも台湾などで使われている竹製の二胡の類には,皮付き竹を使ったものもあるそうですよ。

  皮つきそのままのものと,皮をむいたもので音の違いがあるのかどうか,いづれ製作テストでもしてみましょう。


  つぎに棹を通す穴をあけましょう。

  皮の張られる前面の切り口から棹穴の中心まで,だいたい4~4.5センチといったところですね。
  位置を決めたら,マスキングテープなどを貼って目印を書き込み,ドリルで下孔をあけ,リーマーやヤスリで広げていきます。


  棹を切ります。

  上にも書いたように,清楽の胡琴にはもっと短いものもあるのですが,今回は前回修理した天津の胡琴に合わせて,長さ48センチとします。


  軸穴をほじくりましょう。

  胴体の上面から下の軸孔の中心までが25~27センチ,上下の糸巻きの間隔は8センチくらいです。
  軸孔の位置が,節のところにかからないように注意しましょう。

  竹に穴をあけるときは,画像のように,テープでがっちり巻いた上からやると,ヒビ割れとかしにくいのですよ。
  ほんとはこれの製作に関して,尺八みたいに「何番目の節目の何分のところに○○が…」みたいなキマリが書いてある古い資料もないではなかったのですが,実際の京胡とか胡琴の古いのとか見てますと,そういうのをあまり気にして作ってる様子はありませんねえ。


  軸穴の上下には補強に籐を巻きます。

  籐は\100均屋で素材として売られてるようなやつでじゅうぶんにいいのですが,いい感じの細さに裂くのとかに,けっこう手間がかかります。
  釣具店の大きなところへ行くと,和竿の工作なんかに使う細挽きの籐が売られてますよね。
  ほかの素材にくらべるとちょっと高いのですが,そんな大量に使うものでもないし,なによりキレイで使いやすいので,今回はそれを使いました。


  あともう一箇所,胴体との接合部のところにも一巻き。
  胴体の位置を固定するためですね。

  棹の先は軽く削っていくぶん先細りにし,胴体の中に入る部分には細い切り込み窓をあけます。
  これの役割はちょっと不明ですね。
  たぶん共鳴胴がせまいので,音をより響かせるための工夫だとは思いますが,この程度のことでそう変わるとも思えません。
  じっさい,清楽の胡琴にはこれがなくて,ホント「ただタケにタケを挿しただけ」みたいになってるのもありましたよ。
  


  糸巻きを削りましょう。

  材料は例によって,\100屋さんで買ったスダジイの丸棒(直径3センチ),長さは16センチです。

  これだけがちょとタイヘンかなあ。

  ----今回は間違いず,ちゃんと八角形に削り出しましたよ!(汗)

  軸先が棹から4センチほど突き出るように,軸穴に挿し,軸先を調整しながら削ってゆきます。
  出来たら握りの部分の各面に溝を彫りこんでナイフで切り広げ,角を丸めて「ミカン」にします。


  琴筒に皮を貼ります。

  庵主のところにはたまたま,絃停に使ったヘビ皮の切れ端(沖縄三線の皮のハギレ)があったのでこれを使ってますが,手に入らないとかヘビがニガテだとか言う方は,ブタ・ウシの生皮をお試しください----え,そんなもんドコにあるって?
  ペットショップの大きなところ行きますと「ワンちゃんのガム」とか言って,そうした生皮をまるめたり,結んだりしたものが売られています。
  それを水に漬け,もどして丁寧にほどくと,けっこう大きな皮になるんですねえ。
  民族楽器のタイコの皮を,そうしたものを使って張替えしたという方がいまして,そこから教わったんですが,じゅうぶんに丈夫な皮なので二胡,胡琴なんかでも余裕で使えますよ。


  工程は修理のときと同じです。

  ふやかした皮に短く切った竹棒を縫いつけ,琴筒を台に固定し,乗っけた皮をタコ糸をかけてしめあげます。
  皮の竹棒にひっかけたタコ糸に,ワリバシとかを噛ませてねじると,糸が縮んで皮が引っ張られるというじつに原始的な算段で。なんとなく指先で皮を触って様子をみながら,なるべく均等になるように調整して----ウソです,かなりテキトウに張ってます。
  モノが小さいのもあって,こんなもんでも相当にキツく皮張りができますが,皮というものは乾くとかなり縮むので,あんまりシメすぎると裂けちゃったりしますからね。そこも考えてホドホドのところでヤメましょう。


  あるていど皮がピンとなったら,トドメに口のところに太輪ゴムを巻いて皮を胴体に圧着します。
  琴筒に塗る接着剤にはニカワを使ってますが,国産のものではフノリ,ソクイ(米粉糊)の類が使われていることも多いようです。三味線屋さんが作るとそうなりましょうなあ。(三味線の皮の接着剤はソクイの類です)

  一晩たって余分を落す。
  ----もお「余ってる」なんて言わせない!的な?


  あとは琴筒に布巻いたり,糸巻きを染めたり,色を塗ったりする作業が残ってますが。
  まあ,この時点で糸を張ってコマ置いて千斤かけたら,もう演奏可能なわけで。
  楽器としてはほぼ完成しちゃってるんですよね。

  竹を切断するとこからはじめて,ここまでの作業期間わずかに二日………

  忙しいみなさんも,ぜひ一度お作りあれ。

(つづく)


« 胡琴を作らう!(1) | トップページ | 胡琴を作らう!(3) »