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1号再修理(2)

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斗酒庵 過去の亡霊と対峙す の巻2012.3月~ 月琴1号再修理 (2)

  これは後で…27号の修理記のときに書いたほうが良かったのかもしれませんが。

  月琴1号の修理は,24号の修理とほぼ同時進行でした。
  この年末から年始にかけて,資料用にけっこうな数の壊レ楽器を買っちゃったので,その修理と支払いに毎夜うんうんうなされていたんですが----そういうある夜の夢の中。

  庵主珍しく,黒の三つ揃いなぞ着て,どこかの学校の体育館のような,講堂のようなところにいます。
  パイプ椅子がところせましと並べられていて,けっこうな数の人が座り,講演か演説みたいなもののはじまるのを待っている様子。
  ふと気がつくと…何歳くらいかなあ。たぶん二歳か三歳くらいのごく小さな女の子が,大人と大人の間のせまいとこをトコトコと歩いてきたかと思うと,いきなり庵主の膝につかまって,うんしょとよじのぼってきたんですね。
  ちょっと古風な黒いワンピースを着てて,さらさらのおかっぱ頭をしてました。
  膝のうえに乗っかった幼女は,無言のままけっこうエラそうにふんぞりかえっています。


  何故だかは知りませんが,庵主はこの子が「石田佳菜」ちゃんで「紗菜」ちゃんという小学生のお姉ちゃんがいる,ということを知っているんですわ。
  まあお父さんとでも間違いているんだろう,と思い,しょうがないのでとりあえず,落ちないようおなかのあたりに手をまわして,ポンポンと叩いてやっていたら,佳菜ちゃんの身体が熱ーくなって,少しくにゃり,としてきました。
  あーこりゃあこのまンま寝ちゃうのかなー,と思ったとき。

  「かな~…かなあ~。」

  と向こうのほうで,紗菜お姉ちゃんの呼んでる声。
  佳菜ちゃんは膝からとびおり,声の方に向かって人群れの中に消えていったのでした。

  まあ夢のハナシなんですが,妙にリアルな夢で。
  二三日,膝の上に,抱っこしてたときの感触が残ってましたね。

  次の日に届いたのが月琴27号,現在修理中の1号とほぼ同時期の,石田不識による月琴です。
  棹茎の番号から27号がどうやら「佳菜ちゃん」,呼んでたお姉ちゃんは修理中の1号だったのでしょう。
  ちなみにこの27号,どうやら業の深い楽器らしく,カイキな現象はこれだけではありませんでしたが,そちらはいづれ……。


  今回の再修理も,主眼は棹の複製であります。
  石田不識の棹はほかの作者のに比べると,糸倉も棹本体も長く,前から見るとすらりとしています。
  棹背はほとんどまっすぐで,太さの変化はゆるやかですが,長いので細めに見えます。
  糸倉のアールは浅め,その付け根「うなじ」にあたる部分は短く,ふくら(山口…トップナットの乗っかっている部分)はやや広く,その下のくびれもすこし深めにとられています。第4フレットが棹の上にのっかっているのも特徴の一つ。

  まあ庵主くらいなものでしょうが(汗),この棹の部分だけで誰の作だか分かっちゃうくらい,特徴的なものです。
  オリジナルの材質は胴と同じくサクラだと思われますが,棹の中心や糸倉に小さな節があったりして,そんなに良質な材料ではありません。


  さあて名工の作をコピーするわけですからね。
  腕が鳴りますポキポキと(あ,折れた…)

  斗酒庵式月琴複製棹,材料は例によってカツラとサクラの板。
  サクラの板(厚 1.4cm)を中心にした,3ピースの寄木細工でまいります。

  切り出した板3枚に,糸倉の天のところの間木を,ニカワで貼ってクランプで圧着固定。
  この弦池(糸倉の内側の空間)のところも,多くの月琴作者が二股フォーク状態に切り抜いてから,最後に間木をはさんでいるのに対して,石田不識オリジナルの棹は彫り貫きになっています。茎まで無垢だし,どこまで一木にこだわるんでしょうねえ。


  数日置いて,出来上がった四角い物体を,カンナやヤスリで削りますぞえ,えんやらや。
  オリジナルを横に置いて,寸法を確かめ,見た目を確かめ,ときおり撫でては表面の感触まで写してゆきます。

  最初に手に入れて以来,ずっと何年も使ってた楽器ですからね,測った寸法より手のほうがすべてを覚えてる感じです。


  今回,軸には8号生葉のオリジナル(黒檀製)を使います。
  8号生葉も不識作の月琴で,1号よりずっと手の込んだ総唐木造りの楽器だったのですが,なぜか糸巻きが糸倉とちゃんと噛合っておらず,糸がユルみやすかったため,先年,糸倉に合わせて新たに軸を削ってやりました。そこでこのオリジナルの軸が余ってしまったわけなのですが,なんせこの軸,今では貴重なマグロ黒檀の無垢,ただほかしておくのは何とも勿体ない。

  いつもは先に穴があって,そこに軸先を調整しながら合わせていくのですが,今回は逆。
  糸巻きにぴったり合うように,穴のほうを広げてゆきます。


  先にも触れたように,棹から棹茎まで無垢であるのもまた,石田月琴の特色の一つながら。
  3ピースの寄木細工で同じことをするわけにも(強度的に)イカないので,複製棹では一般的な月琴と同じく,棹本体に延長材を継ぐ形式とするんですが----
  今回はせっかくなので,というか,棹を作りなおすぶんせめて,というか。この切り取ったオリジナルの茎部分を,そのまま延長材として使っちゃおうと思います。
  ここにはオリジナルの「十一」も書も入ってますからね。



  剥がしてしまった裏板には,最近24号の表板に使ったのと同じ,ウサ琴製作用に仕入れた桐板を使います。
  24号のときもこれをわずか1ミリほど削るのに,けっこう大変な目に遭いましたが,1号はさらに板が薄いので----ジゴクが見えました。

  ほぼ半日かけて,約2ミリほど薄くしましたが,この作業で,半丸の鬼目ヤスリ1本と#80番のペーパーが2枚逝きました。
  なーむー。

(つづく)


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