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26号菊芳3(3)

G026_03.txt
斗酒庵 芳之助とみたび再会す の巻月琴26号 菊芳3(3)
STEP3 鳴かせてみしょうホトトギス


  26号,棹孔と響き線修理のためハガした裏板の開口部から観察した,内部構造は右図の通り。
  上桁には中央に棹茎の受け孔のほか,左右に2つ木の葉型の音孔,下桁には3つの音孔が開けられています。素材はスギだと思われます。
  工作は比較的丁寧。

  上桁は左右の木口を斜めに削いで,側板内面にぴったり合わせ接着していますが,下桁の左右は真直ぐなままで,側板にはほとんど付いていません。つまり下桁は表裏の面板にサンドイッチで接着されているだけなわけですね。
  10号はもちろん,4号や20号などほかの作者の楽器でも,ほぼ同様の加工になっていました。
  庵主としては下桁だけこのように不安定な構造にすることには疑問があり,時々修整したりしちゃってますが,もしかすると,何か意味があってやってるのかもしれませんね。



  さて,まあほかのヒトもやってる工作なら,そッちはそれで良いとして----

  この基部の取付角度をご覧ください。

  斜めになってますよね。
  ちょっと前に修理した24号などもそうですが,この響き線の基部は内桁の「支え」も兼ねてる場合が多いのですが,これではほとんどその用はなしません。
  また,わざわざこんなふうにナナメに取付けている理由自体不明です。
  同じことなら響き線の取付面だけを斜めに切ればいいことですしね。

  このへんも……

  ふっ…若さゆえの,あやまち,か。(CV:池田秀一)

  また,ここがせめてふつうに四角い木片を噛ませただけだったら,線が落ちたとしても,棹孔から棒でも突っ込んでうまいこと直せたかもしれませんが,妙な角度で下に向いてるのでそれも難しそうです。

  ほんとにもー。


  ここまできて気がついたんですが----

  たとえば裏板中央下縁の切れ目というか穴,側板と面板の接合部につけられた刃先の痕----楽器の側部や面板の端,何箇所かに,不自然な加工痕があるんですね。
  「加工痕」と言っても, 「なにかをした」 という痕跡ではなく,どちらかというと 「何かをしようとしてあきらめた」 ,まあいうならば 「ためらい傷」 って感じなんですが。

  これらはもしかすると前の所有者が,この響き線をなんとかしようとしたアトなんじゃないでしょうかね?

  はじめは刃物で裏板をハガそうとし(失敗),次に思い切って胴体に少し穴をあけ,ハリガネでもさしこんでどうにかしようとし(もちろん失敗),結局あきらめて,墨で音符の位置を書き込み,お教室の教材用にでも使っていたのかもしれません。

  庵主はもう慣れちゃったんで,こんなふうにバリっと板をハガしちゃいますが。
  シロウトさんだと,たしかにその行為はコワかろう,と思います。
  庵主だってハジメテ1号の裏板をハガすとき,かなりの勇気と自棄っぱちが要りましたもんね。(w)


  修理はここから----と,言いましても。まあ,抜け落ちた線をモトの穴につっこんでやればイイだけなんスけどね。
  もっとも,前回お話したように基部には「タガヤサン」が使われてますので,ニカワあたりを塗って挿し込んだ程度では,間違いなくまた抜け落ちてしまいます。
  線が抜けるたびに,板を剥がして修理するわけにもいきませんので,ここは一つエポキシ系の強力な接着剤で,ガッチリバッチリと接着固定してしまいましょう。
  23号茜丸の修理でも使いましたが,タガヤサンという,最強なうえに暴れやすくおまけに接着の難しい素材に対しては,このくらいの材料を使わないと,実用的にはとても保ちません。

  接着前に,何度か実際に取付けて,線の位置とか角度をシュミレートしてみたんですが----どうやらここにも芳之助のワカゲが発揮されているようす----どうやっても,線が,長すぎます!
  基部の一番奥までさしこんでも,先端が反対側の胴材の裏にひっかかる。
  その状態でもまあ,響き線として,いちおう機能しないこともないのですが,音色に与える効果はかなり弱くなってしまいます。

  けっきょく根元の部分を約5ミリほど切縮め,先端をもう少しだけ内側にカーブさせることで,ちょうど何とか,ギリギリで,胴体内部におさまりました。

  ----本当はこの部品,サビ落しとか以外では,あんまりイジりたくないのですが。


  エポキの硬化を確かめ,あらためて響き線の角度等を調整し。
  修理のため切り開いた部分を塞いで,胴体を箱に戻します。

  さて,今回の修理最大の難関,突破!

(つづく)


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