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24号松琴斎(4)

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斗酒庵 油まみれ! の巻2011.11~ 月琴24号 松琴斎 (4)

STEP5 修理は踊る

  さて表板はへっつきましたが,胴体はまだ箱に戻っておりません。

  裏板の右端に比較的重度の虫害があり,矧ぎ板一枚分切除してあるので,そこに板を当てます。
  この楽器の場合,表面板がまるっと残ってるわけですが,ザンネンなことに油まみれで使い物になりませんので,例によって,過去の修理で出た古い面板を使います。

  この古い面板の桐板,言っちゃえばゴミみたいなものですが,うちにある材料の中で,ある意味いちばん貴重なものの一つかもしれませんね。


  表面板の接着やこの作業などで,側板の表面を多少こそいでしまいましたので,補彩と古色付けをしておきます。
  面板の木口をマスキングした後,柿渋に乾性油を一垂らし,それを布にとり,炭粉と木灰をなすりつけて磨き上げます。

  こういうとき,クリは材質的に染みこみと色づきがいいので,作業は比較的ラクです。


  棹は染めた後,カシューで塗膜のない擦り漆風に塗装。
  接着固定はもちろん慎重にやりましたし,指板を厚めのものにしたりと強度の面では問題ないと思いますが,ギターと違って月琴の棹は細くしかも,3ピースの寄木棹ですからね。
  湿気対策としてある程度の表面保護が必要と考えます。

  いつもながら,この塗装作業がいちばん時間のかかるところで。
  まずは塗装前の下処理として,#1500ほどのShinexで,二日間ほど棹表面を磨きまくりました。


  その後,二日ほど間を置きながらカシューの擦りこみを3度ばかりしたあと,1週間乾燥。
  今年はやたらと寒かったので塗装の乾きが遅く,いつもより余計に時間をかけましたね。

  そのまんまだと若干テラテラしてるので,表面を乾性油と炭粉で磨きます。
  右画像下が処置前,上が処置後。最後にカルナバ蝋で磨いて仕上げ----う~ん,しっとり出来ました。


  小物作業そのイチは,半月の補修。

  前面の端の部分が,かなり齧られてしまってます----くそ~ネズちゅうめ。
  凸凹を均し,斜めに削って,ローズの端材で「入れ歯」をします。
  接着面が狭いのと斜めになってるので,対した大きさではないんですが,輪ゴムやらクランプやら総動員。


  なんとかうまくくっついたみたいですね。
  でっぱってる部分をヤスリで整形します。

  木色は異なりますが,スオウやオハグロ液で染め直して補彩すると,ほとんど分からなくなります。


  小物そのニは蓮頭の作成。

  蓮頭のデザインは,以前ネオクで出た,同じ作者の楽器についていたものを参考にしました。
  荷花に波唐草をあしらった同種の意匠は,この部品ではコウモリと並ぶ定番の一つですね。


  まだ染めてませんが,つけてみるとこんなふう……ふむ,上々。

  今回の軸はカツラ。カテキューとスオウで棹とほぼ同じ色に染めてあります。
  オリジナルの軸も3本残っていましたが,かなり使い込まれており,先端の痩せが酷いので新たに作り直しました。
  こちらも表面をカシューで拭き漆風にしてありますが,棹よりはややフラットに仕上げてあります。


  小物そのサン。

  中央飾りを作りましょう。

  オリジナルの表面板には痕跡が見つかりませんが,同じ作者の類例には付いているものもありますし,鸞鳥の目摂の場合,デザインとしてここになんかないと真ん中がガランとしてなンかサミしいですからね。

  円盤型のお飾りが基本ですが,今回はちょっと凝ってみましょう。
  「魚」は中国語で「ユー」。「余裕」の「余」と同じ音です。昔の穴あき貨幣「眼銭(イェンチェン)」は目の前「眼前」と同音。
  したがって「穴あき銭にお魚」つまり「眼銭有魚」は「眼前有余(もうすぐラクになる)」ということ。その「お魚」が「コイ(鯉)」だったとしますと「鯉(リ)」は「利」に通じますので「もうすぐもうかる」になり,さらにそれが「双」になりますと「もうすぐガッポガッポでウッハウハ!」というような目出度いことになります。


  ほんと,洒落の解説ってのは,ある意味苦行ですねえ。(^_^;)

  書いてるうちに彫りあがりました。直径は4センチくらい。
  北海道人の性として「大きなお魚」を描いたり彫ったりしますと,どうしても「シャケ」になってしまうのです---今回もデザイン段階でかなり苦しみましたが……まあなんとかギリ「鯉」に見えますかね?


  棹がなるべくまっすぐ挿さるように,棹基部を調整します。
  写真ではちょっと分かりにくいかと思いますが,この楽器,棹を挿す孔自体が,もともと胴体の中心線から2ミリほど右方向へズレ,さらに棹孔周縁がやや右方向に傾いた形で斜めに均されてしまってるので,立体的になかなかムズかしいところがあります。
  あまり見苦しくならないあたりで妥協しましょう。あとは半月の位置と角度で補正するしかないですね。



  さて,表面板は白木のままですので,ヤシャブシで染め,裏面板は軽く清掃しておきます。

  かなりまっ黄色に染めましたが,乾いちゃうとなんかあんがい白っぽくなるんですよね。
  でもご注意。このあたりが天然染料のコワいところで----
  何週間か経つと色があがってきて,黄色味が増してきます。ですのでいい気になって染め続けると,半年後くらいにはタバコのヤニがついたみたいになって,逆に色抜きしなくちゃならなくなっちゃったりしますので。
  染めはほどほどにしましょう(経験者・談)。

  乾いたところで布で磨き上げ,あらかじめ決めておいた位置に半月をへっつけます。


  さてここまできたらあと一息ですぞ!

  小物そのヨン,山口は今回ツゲです。

  オリジナルは欠損,残ってたフレットは象牙でしたからここも象牙だったかもしれませんが…

  なんかもったいないので。

  同じ理由につき,フレットも竹に変更。
  普及品の実用楽器ですし,前にも書いたとおり斗酒庵製竹フレット,手間だけ考えると端材の象牙なんかよりはるかに上等です。
  今回の棹は自作の複製品ですので,オリジナルより背側へ傾斜させてあります。
  山口のところで表面板の面より3ミリ----この楽器の工作としては理想的な角度ですね。
  おかげで半月にゲタを噛ませなくても,高音部がかなり低くまとまりました。
  低音部はっやあ高く,高音部は低いほうが,操作感もよく,音の伸びやヌケが若干向上しますので。


  調整の終わったフレットは,表面を#400くらいまで磨き上げてから,\100均屋で売ってる不繊紙の「ダシ袋」に入れ,ヤシャ液で10~20分ほど煮立てます。
  (注意!ヤシャ液はかならずホーロー鍋かガラス鍋で煮ましょうね。金属の鍋はダメですよ。)

  そのまま一晩漬け置いて翌日取り出し,一日乾燥させます。
  また#1500くらいのペーパーで磨き,ちょっと薄めたラックニスに1~2時間漬け込み,また1~2日置いてから磨いて完成。


  何度も書いてますが竹製フレット,ふつうは切って削るだけなんで,価格は安いし加工とフレッティングまではお手軽なんですが,斗酒庵,凝り性なもので,その後がかくのごとくであります----しかしながら,染められ,滲まされ,磨きあげられたフレットは,裏も表も黄金色。上等のツゲ材とも見まがうほどの出来。しかも強度と,擦れに対する耐久は,ツゲより上だと思いますよ。


  さて,フレットもできたし,新作の蓮頭と中央飾りも染め終わりましたし。オリジナルの鸞の目摂と扇飾りは染め直しました。

  全部そろったところであとはこれ,接着したら,わーい完成だァ!

  ----などとウカれていたら。
  最後の最後に,思いも寄らないヒゲキが!
  待て,次回。

(つづく)


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