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27号初代不識(7)

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斗酒庵 夢にて出逢う の巻月琴27号 初代不識(7)

STEP7 そして佳菜との日々


  リアルでも夢の中でもいろいろあった今回の楽器の修理でしたが……

  いやいや,庵主,妙なココロの病にかかったわけでも変な宗教をはじめたわけでもありませんよ。

  たかだか夢の中のことですからね。


  まあ今回のことは,27号という楽器との出会いによって,いまは気がつかなかったり分からないでいるけど,その観察によって得られた多くの情報を,脳がとりあえずそういう夢のカタチにしてとりこんでいるのかもしれません。


  さて,修理も最終局面。
  棹基部の微調整も終わり組上げは順調……なんですが。

  一箇所だけ,どうしてもオリジナルの工作にガマンならないところがありますので,ここだけは替えさせてもらいます。うん,これは「修理者」としてではなく,月琴の「プレーヤー」としての行為,ですね。


  それはこの高音部のフレット。

  これがオリジナルの部品であることは,その工作からも,また同じ作者の楽器に同様のものがついている例があることからもほぼ間違いないのですが----さすがにこれでは弾きにくい。
  何度も書いているように,月琴が本来使われていた清楽という音楽では,この胴上,高音部の音が使われることが少ないため,この部分のフレットの調整や加工がけっこうぞんざいだったりすることが多いのですが,もともと13コしか音の出ないこの楽器で,現在の曲や音楽を弾くためには,最低でも,最高音まで全部の音がキレイに出てくれないと困ります。

  もちろん,このぶッ太いフレットそのままでもちゃんと音は出せるでしょうし,材質も黒檀,文句はありませんが。
  運指へのレスポンスや操作感を考えると……そしてなにより,なんだかカッコ悪いンですわ。(汗)

  月琴のフレットなんかはほぼ消耗品。次に持つ人が取り替えれば済むことですので,庵主の代ではここだけ,オリジナルと違うものを付けさせてもらうことといたしましょう。


  材料はローズウッド。
  長さはオリジナルに合わせ,厚みは棹上のフレットとほぼ同じくらいにしました。

  庵主の好みとしては,これでもかなり太目ちゃんなんですが……まあこれくらいなら,ふつうに演奏できるかな?



  フレッティング----今回はほぼ,石田義雄が付けたオリジナルの位置につけなおしただけです。

  新しく作った胴上のフレットのほかは,高さの調整もほとんどありません。棹の傾きもちゃんとついてるので,もともとフレットは理想的に低い----いつものような「理想とゲンジツの乖離」なんて問題はありません,さすがですね。

  チューナーで測ってみたところ,第6フレットがわずかに低すぎるほかは,ほとんど問題がないくらい,西洋音階に近い配列になっていました。
  このへんからも彼の楽器の先進性が見てとれます。


  フレットがついたところで,左右の目摂とコウモリ飾り,糸倉の上の蓮頭をもどします。
  2012年7月12日,名工・石田義雄の月琴27号,修理完了いたしました!




  まだ面板も乾ききってませんし,そのほかの修理の影響もあって,本気の音ではありませんが,大きな音量,空気砲のように前に出る音,派手なくらいの響き線の効きかた,間違いなく1号と同じです。
  1号は主材がサクラ,こちらはホオですので,そのぶん少しだけ音が柔らかい気もしますが,とりたてて「違う」というほどの差異はありませんね。

  「石田義雄は名工」「不識の楽器は名器」とずっと言ってきましたが,一般的な見方,またもし月琴初心者がたまたま手にしてしまったことを考えますと。彼の楽器はたとえ中級の普及品であっても,非常にピーキーで,かなりシビアに弾く人を選びます。


  何度も言っている通り,彼の楽器は「ギリギリ楽器」なのです。日本における「月琴」という楽器を極限まで削ぎ落とし,窮めた一つのカタチではあったかもしれないけれど,楽器としてはただただ,余裕がなく,扱いにくい。
  庵主は不幸にも,最初に手にした月琴が彼の作だったため,これで慣れてしまったところもあるのですが,その後色んな作家の月琴を手にするたび,「この楽器はホントはもっと気楽に弾けるもンなんじゃないか?」 と常々思いしらされ続けてきました。
  「ギリギリの楽器」は弾き手にも「ギリギリの能力」を求めます。そこで生み出されるパフォーマンスは,素晴らしいものかもしれませんが,こういう「ギリギリの楽器」をカンペキに操れるほどの技量をもつまでには「ギリギリの努力」が必要となるでしょう。

  庵主,正直,そんなのヤです。
  音楽はもっと楽しくなくっちゃね。(^_^;)


  とりあえず。

  面板の接合,また胴体の組立て手順を考えるあたりで二転三転したものの,名工・石田義雄の工作を出来る限り残すことのできた修理だったと思います----まあ,あちらにいるご本人が何点つけてくれるかはわかりませんが。
  工房到着時は例によって演奏可能な状態ではなかったですし,前修理者が手をつける以前のオリジナルの音がどんなだったかはもちろん分かりませんが,少なくとも修理のデキから言えば,かなりオリジナルに近いものになっているかとは考えます----まあ,これだけオリジナルの部品が完備していれば,どんなヘボだって…とは思いますが,自信はありますね,そこそこに。

  さて今は1号とほぼ同じ音色,同じスペックではありますが。
  この楽器,一年後,二年後にどのような変化を見せてくれるか。
  楽しみでなりませんね。



  修理が終わり。おそらくこの月琴と関係があるだろう佳菜ちゃんを,夢で見る頻度はぐッと下がりました。
  もっとも,もう余りに見慣れてしまったものですから,実際には毎夜,夢の片隅に存在しているのかも。
  単に庵主がオボエてないだけなのかもしれませんね。


  修理が終わったころ。世は夏休みとなっておりました。
  夢に見る佳菜ちゃんは見たところ,まだ学校にあがるような年齢でないようなのですが,毎朝,近所の公園に,ラジオ体操をしに通っているようです。
  ですが,その時の服装が----


  裸の大○的白のランニングに,カーキ色のハーパンという,
  女の子としては,あまりといえばあまりな格好だったため,
  「も少しどうにかならんか?」 的なことを,つい言ってしまったと思うのですが----


  そしたら次の日の朝,板塀の向こうを巨大なフランス人形,というか小林幸○的物体が地響きをさせながら通って行ったのを,おとおさんは見てしまったので,もう二度と,彼女の服装には何かケチをつけないこととしとうございます。


  その後どうなったかは知らないけれど,いっしょに行ったはずのお姉ちゃんが,どんな目に会ったかは,容易に想像できますね。

(いちおう,おわり)


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