月のあしび
月琴修理報告別館
プロフィール
ホームページ
月琴修理報告INDEX
斗酒庵茶房
明清楽復元曲一覧
清楽曲譜リスト
明治大正期楽器商リスト
カテゴリー
そのほか
アニメ・コミック
イベント
工尺譜
文化・芸術
明笛
月琴
楽器修理
楽器製作
胡琴
趣味
音楽
最近の記事
松音斎(1)
長崎からの老天華(終)
月琴WS2021年4月卯月場所!
長崎からの老天華(6)
長崎からの老天華(5)
長崎からの老天華(4)
長崎からの老天華(3)
長崎からの老天華(2)
長崎からの老天華(1)
月琴WS2021年3月弥生場所!
バックナンバー
2021年4月
2021年3月
2021年2月
2021年1月
2020年12月
2020年11月
2020年10月
2020年9月
2020年8月
2020年7月
@nifty
が提供する
無料ブログはココログ
!
« 29号山形屋雄蔵(2)
|
トップページ
|
月琴の起源について その2 »
月琴の起源について その1
kigen_01.txt
月琴の起源について その1
阮咸編(1)
*イラストはクリックで別窓拡大します*
さてさてと,かけ声はかけたものの,若干資金難につき29号の修理作業も滞っております。
この機会にこの数年調べてきたこと,考えてきたことをまとめてみたいと存ずる。
とはいえ,Webにガチの大論文載せるのも野暮なので----
はんぶんマンガにするとしましょう。
いや,フザけてんじゃないですよお。
マンガのチカラなめんな。
絵はそれだけで注になります。さらにそこに注釈書き込めば,イチイチ脚注とか巻末の解説で,細かい文字に数字の羅列追わなくて済むもんね。
絵と文が共存する日本のマンガというメディアは,2Dアナログにおける,情報の多重化,圧縮化のキワミみたいなもンでもあるんでっせー。
まずは「月琴」にかかわる,また「月琴」と呼ばれる様々な楽器のことを述べ,外堀を埋めながら「月琴の起源」という本題へと迫っていきましょう。
音楽の解説書や,楽器辞典の解説・説明では「月琴」の名前で軽くひとまとめにされちゃってることが多いんですが,その中には,実際にはいくつもの異種の楽器が含まれています。
唐の時代に由来する古楽器の
「阮咸」
(別名が「月琴」),中国で伝統的に弾かれてきた
「中国月琴」
,それをモトに近年になって開発された
「中国現代月琴」
。
ほとんど絶滅しちゃってる韓国の
「ウォルグム」
(もしくは「ノルグム」)。これも絶滅楽器ですが日本の
「清楽月琴」
にも国産のものと,
「古渡り」
と呼ばれる中国製のものがあり,それもまた,現在も作られている一般的な「中国月琴」とは微妙に差があります。さらに,清楽で「阮咸」と呼ばれた長棹八角胴の楽器は明楽では「月琴」と呼ばれてました。
長い棹の「月琴」としてはほかにも,ベトナムの
「ダン・ングィエット」
や,台湾の
「南月琴」
(「乞丐琴」「歌仔月琴」とも)などがあります。
庵主は「清楽月琴」の弾き手ですので,前フリなしで「月琴」って言ったときは,通常,中国から日本に伝わってきて江戸~明治のころ大流行した,古い,この絶滅楽器を指しますが。
今回の「起源」は「短い棹で丸い胴体」の,現在「月琴」と一般に呼ばれている楽器全般の「起源」だと考えていただいて差支えございません。
第一回はまず,一般に「月琴(短い棹の)のご先祖様」と信じられている,この古い古い楽器。
「阮咸」と「月琴」の関係について,再考してみましょう。
この楽器はそもそも----
ちなみにこの爺さん(勝手な想像)のちゃんとした名は「元行沖」さん。
史書である『唐書』の記述の中には,「阮咸=月琴」というハナシは出てきません。
「"月琴"は阮咸の異名である」
という説は,次の王朝,宋の時代になって書かれた陳晹の『楽書』において,はじめて登場してきます。
といったとこで本題に入りましょうか!
現在,一般的な説では「(短い棹の)月琴」は,この唐の時代からあった「阮咸」が,清の時代に短くなってできたもの,とされていますが----
とまあ,まずは基本構造が異なります。
「阮咸」の作りを簡易化した,とか考えることも出来なくはありませんが,伝統的な楽器というものは,そう簡単にこういう基本構造まで変わっちゃうことはありません。
「ムダだ」「もっといい方法がある」と分かっていても,まったく変わらなかったり,もとの構造の名残が,盲腸のように尾骨のように,そのどこかに残っていたりするものですが,バラしてみると阮咸と月琴には,「どッちも胴体が丸い」というほかには,まったくといっていいほど共通点はありません。
もちろん,阮咸には「響き線」も入ってませんしね。
「阮咸」は宋の時代に弦が一本増えて「五弦」という名前の楽器になりました。
この「五弦」は日本の雅楽にも取り入れられ,かつて演奏されたこともあったようですが,いつからか途絶え,今日ではその楽器も見られません。
さらに「複弦化」する目的が音色的な深みや,技巧的なものである場合は,同音のユニゾンだけではなく12弦ギターのようにオクターブの複弦ということもありますね。
で,けつろんです。(笑)
「派生した」つまり,楽器間に関係がある,というなら。その奏法や音階において,もちろん共通項がなければいけません。阮咸の高音域をカバーするためとか,より早くて軽快なパッセージを入れるために特化したとか。変化の理由も必要です。
しかし,そもそも楽器同士を同じ曲で合わせることすら難しいこの状況----
これに関する妥当な説明や解説は,どの楽器辞典,解説書にも載っておりません。
つまりは----
「阮咸」と「(短い棹の)月琴」の間には,古書・古記録における名前の一致と「胴が丸い」といった外見的な共通項のほかに,楽器としての系統的な関係は
ナイ
。
「(短い棹の)月琴は,阮咸から派生した楽器だ!」という説は,むかしのどこぞの誰やらが,古書から同じ名前の事物を拾って,むりやりくっつけた,という
程度のものでしかナイ
。
ニセモノだ。(CV:神谷浩○)
ということです。
しかしながら……「月琴」の名を持つ最古の楽器・「阮咸」とその由来には,短い棹の月琴族の,ほンとの歴史と系譜に関するヒントが隠されてます----
そのあたりは,またいづれ。
(つづく)
« 29号山形屋雄蔵(2)
|
トップページ
|
月琴の起源について その2 »