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29号山形屋雄蔵(4)

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山形屋 ふたたび の巻2012.10~ 月琴29号 山形屋雄蔵(4)

STEP4 この楽器は弾かれたことが少ない2


  さて,埋めるところも埋まり,ヘっつけるとこもへっついたところで,清掃に入ります。
  もともと保存状態が良く,さしたるヨゴレもございませんが,全体にくすんで灰色っぽくなっちゃってますからねえ。

  洗浄液にはいつものように,ぬるま湯に重曹を溶きこんだものを使います。

  ここで要注意!

  この楽器の側板はスオウ染め。それもあの色褪せやすい染料が,「奇跡的」と言って良いほど,オリジナルに近い色合いで残っています。スオウは重曹に反応してしまいますから,これが側部に垂れると,少なくともヨロシクはありません!
  そこで今回の掃除は,洗浄液が側板にこぼれないように慎重に慎重にやらなきゃならんわけです。

  それ…コスコスコス…やれ………コスコスコス。

  だいたいキレイになりました。ほぼ一度で済みましたね。
  表面板に続いて裏板。こちらにはラベルもありますから,さらに慎重に

  それ…コスコスコス…やれ………コスコスコス。


  表面板は木目の合せが巧くて,濡らしても今ひとつ矧ぎ目がはっきりしなかったんですが,裏のほうはだいたい,木目なんかあんまり気にしていない,質の劣る板が使われることが多いので数えやすくなっています。一部の楽器で表裏の板の矧ぎ数が異なっている例もありましたが,たいていは同じような板が使われます。

  ---13枚矧ぎ,ですね。

  いちばんせまい小板なんか,幅が1センチちょっとしかありません。
  うむ,もったいないの精神が存分に発揮されている板だなあ。


  もともとけっこう白っぽかったんですが,乾いたら輝かんばかりの白さになりました。

  保存状態も良かったし,もとの染めも薄かったおかげですね。
  いままで扱った中では,18号「モナカちゃん(唐木屋林才平)」が最良の保存状態で,面板も真っ白でしたが,この楽器の面板も今はおそらく,新品の時の色とそんなに変わらないと思いますよ。


  続いては,棹の角度の調整に入ります。

  オリジナルからそうであったのか,あるいはお飾り楽器として弦を張りっぱなしでいたせいか(基部の状態から考えて,おそらく前者),この楽器の棹は楽器正面がわにやや倒れこんでいます。
  山口(トップナット)のあたりでおよそ2ミリ。
  過去にも何度か書いたように,月琴という楽器では,これとは逆に背面がわに3ミリほど傾いているのが,ほんとうは理想的な設定なのです。

  おなじ山形屋の作でも,20号ではほぼそういう設定になっていましたが,この楽器はおそらくそれよりも早い時期に作られたもの----少し前に修理した菊芳の26号や16号でもそうだったんですが,月琴を作り始めて間もないころの作家さんは,棹の指板を胴体面板とどうしても面一にしてしまうことが多いようです。

  ここが面一,あるいはこのように楽器正面に倒れこんでいますと,フレットが全体に高く,特に高音部が非常に弾きにくい楽器になってしまいます。せっかくの名人の作ではありますが,いやそれ故に,ここは修正しておいたほうが良いでしょう。

  いくらオリジナルどおりであっても,使いづらくてただ放置されるモノとなるよりは,使い切られて壊れるくらいのほうが,楽器としては幸せだと,庵主は考えます。


  まずは茎をはずします。
  接合部に脱脂綿をまいてお湯を含ませ,ラップをかけて半日ほど。

  いやー,こんなところまでさすがの工作精度ですわ。
  どうやったらこんなにキレイに加工できるのやら。

  棹の接合面を少しだけ,ナナメに削ります。
  ちょうどいい角度になったら,茎もちゃんとはまるように削りなおして再接着。



  画像左は元の状態。よーく御覧ください。接合部のところを中心として,茎と棹があさーいVの字になってたんですね。修整後は右。棹と胴体の接合面に対して,茎の上面が直角。茎上面のラインが面板とほぼ平行になっているのが一般的な設定です。

  はじめのイチから組み立てる場合と違って,すでに完成した楽器ではこの作業,どうしても盲作業になってしまいますので,わずかに誤差が出ますが,そのへんははツキ板を貼って調整しました。

  さしこんで,棹と胴体が完全に密着するよう,接合面をさらに微調整します。
  精密な作業なんで,けっこう時間かかるんですよ,コレ。

  今回も,だいたい足かけ三日ぐらいは費やしてます。(汗)

  さて,棹の調整も終わりましたし,いよいよ仕上げですネ。

  ----と言ったところで,次回へ。

(つづく)


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