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31号唐木屋3(3)

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斗酒庵 唐木屋の本気に出会う の巻2012.11~ 月琴31号 唐木屋3(3)

STEP3 装飾的なる異世界


  30号に引き続き,今回の楽器でも,目摂,扇飾りをはじめほとんどの装飾的部品が失われているわけですが----

  まあ30号のは,鳳凰・万帯唐草・蓮に波唐草の蓮頭で,24号のデータのほかにも類例資料は若干あったし,なんとか再現しようと思えば再現できたかもしれません。しかしこちらの楽器の場合は,すべての装飾がやや定型からはずれているうえに,意匠の参考となるような資料も少ないため,残っている接着痕や日焼け痕といった手がかりからだけでは,元のお飾りを再現することはさすがに困難です。

  とはいえこの楽器,30号などに比べると,やや大型でのっぺりしているうえ,側板がムダにド派手ですので「お飾りナシ」でイけるほどのシブ味もありません。


  何か付けねばしまりませんが,ほぼ同時にやってた30号の工作で風雅なネタを使い切ってしまったため,どうも良い案が浮かびませんな……そういえばこの夏,佳菜ちゃんが(この女の子については27号の修理記参照)こんな月琴を弾いてましたっけ。(クリックで拡大)

  ----うん,いっちょうコレを再現してみましょうか?
  まあお飾りなんかは,後でいくらでも貼りかえられますからね。

  ”このくらいしてもイイと思っている。”



  まずは目摂からまいりましょう。
  あひゃあっ!(変なかけ声)


  mixi でこの画像公開したら,5人のヒトが 「なんかクリオネみたいに見えます」 ----クリオネですってば。

  元の目摂の日焼け痕に合わせてフォルムをデザインしたんで,カタチ的には意外と違和感がありません。


  次は扇飾り。
  ザクザクっと!


  ウミウシですね----このあたりでもう庵主を止められる者は誰もいなくなてしまいました。(w)


  蓮頭はこれです。
  カニ……それもスベスベマンジュウガニですね。
  ハサミのところを,よく蓮頭の上のほうにある渦巻き紋にしてあります。


  そして最後,中央飾り。
  ここには虫食いの痕も残ってますから,なおさら隠しとかなきゃなりませんしね。
  伝統模様の海松丸(みるまる)に,エビを配置してみました。
  今回の3面修理中,もっとも時間のかかった部品ですね。
  直径は3.8センチ。ピンバイスで穴をあけてはアートナイフでホジくること,およそ4時間----終わったあともしばらくは,目と指がピクピクピクとケイレンし続けましたよ。


  出来上がったお飾りはすべて黒染め,絃停もこれまた「荒磯」に,
  ----讃えよ海産物!いあ,いあ!


  というわけで,2012年12月18日。
  唐木屋の本気,清楽月琴31号。
  ちょっとポップなお飾りをつけて,修理完了!


 1) 開放弦
 2) 音階
 3) 各弦音階
 4) 九連環

  ----庵主がへっつけたお飾りのほかは,紛うことなく明治の高級月琴ですからね!
  工作から言っても材料から言っても,かなりの上モノです。



  前回にも書いたとおり,最初にフレットを立てた時には,運指にも障害があるし音もややくぐもった感じで,あまり響かない楽器だったんですが----半月にゲタを噛ませて絃高を下げ,さらに山口も削ってフレット高を再調整した後では, 「これが同じ楽器かあっ!」 というほど好いほうに 「化け」 ました。3・4フレット間の落差が解消されたのも大きいのですが,絃高が下がったぶん,音がぐッと身体のほうに近づいてきた,そんな感じがあります。

  削ったのはほんの1ミリ程度のことなんですが……やっぱり楽器ってのは奥が深いですねえ。

  音色的なクセとか個性と言った面からすると,石田不識の作のようにピーキーな楽器が好みの庵主には,若干物足りなさが感じられますが,明るくすっきりとした音はこれまた「江戸ッ子月琴」の典型と言えましょう。
  響き線の効きも悪くはないし,工作から言って面板が乾けば,きっともっと音量も出るようになると思います。



  さて,この楽器は,お飾りの洒落が分かるくらいの人に弾いてもらいたいなあ。

  深海のうたかたのような玉杢の側板をながめながら,クリオネみたいにふよふよと,人生を楽しめる弾き手さん----募集中。

(おわり)


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