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月琴25号しまうー(3)

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斗酒庵 変な楽器に出会う の巻月琴25号 しまうー(3)

STEP3 しましましまオーバーラン

  さて,でははじめましょうか。
  用意するものは----あ…またこれかよ。
  庵主の「木っ端が捨てられない病」によって蓄えられてきた,古い面板のカケラというかオガクズというか……ま,ゴミですね。

  まずはやや厚めのカケラを刻み,ニカワを塗って幅のあるところに押し込みます。つぎに細いスキマにカンナ屑やオガクズを,アートナイフの刃で繊維方向に刻むようにしながら押し込んでゆきます。

  直前にやった14号と同様この楽器の面板も一枚板で,こうした板に生じるこのような不定形でかつ断続的な板の割レは,この板が「なりたいようになろう」としたことによって,板のいちばん弱いところから裂けたもので,本来ですと,直しても直して再発するような厄介なシロモノなのですが,14号の場合と違って,この楽器のひび割レはすでに面板の上下をほぼ貫通しており,さらには割れて面板のハガれた状態で,長年放置されていたらしいので,板はすでにある程度解放され,安定した状態になっていると考えられます。


  庵主も以前ウサ琴で,こういう複雑な杢の板を使って一本作ったことがありますが,こういう板は収縮の度合いがすごくて,作ってから何年かはこの手の故障が必ず起こるものなのです。まあ素材としては見た目的な要素のほうが大きくて,べつだん音色に関係するものではありませんが,職人てのはこういうのが手元にあると,やっぱり作りたくなっちゃうものなんでしょうね。(^_^;)

  下からはじめて,少しづつ順繰りに埋め込んでいきます。目安はオガクズが入らなくなるまで。薄く溶いたニカワをヒビに垂らしてはおしこみ,お湯をつけた布で拭っては押し込み。
  てっぺんまで行ったら,傷口にパテをまぶしておきます。
  いつものとおり,パテは木粉粘土と砥粉をヤシャ液で練ったものですね。



  一晩置いて,乾いたところで表面を整形,飛び出したオガクズの端っこや余分な木粉粘土を除去して均します。
  とりあえずは埋め込み完了!
  あとは古色付けですね。

  はがれていた下縁部と側板の間には,ほんのわずかですが段差が出来てしまっています。
  つまりはこのぶん,面板が縮んだ,というわけなんでしょうねえ。
  「わずか」ではありますがけっこう目立ちますので,ここにもパテを盛っておきましょう。



  面板修理,特に裏板のはけっこう大がかりなものでしたので,少し様子を見ながらやらねばなりません。
  では,その間に,なくなってしまった部品の補作をしときましょうか。

  まずは蓮頭ですね。
  以前,ある骨董屋さんがHPで紹介していた楽器に,これと良く似た楽器があり,こんな蓮頭がついていました。
  その深いアールの糸倉や目摂の形状などから,庵主はたぶん25号もそれと同じ作者のものだと考えてますが,まずはこれを参考にしましょう。

  もっとも,これをそのまんま写しただけじゃつまりません。
  ちょっと透かし彫りにしてみましょうか。


  材料はカツラの板,ふだん作ってる蓮頭と横幅は同じくらいなんですが,縦方向に大きいんですね。
  デザインはおなじみコウモリさん。オリジナルは蛾か蝶みたいなものを口に咥えてますね。
  「蝙蝠吃蛾」で「遍福致俄(たちまちハッピー!)」かな?
  庵主のはいつもの「蝙蝠眼銭=遍福眼前」であります。


  彫りあがったら刻線を軽くリューターでさらって,#400のShinexで磨きこみます。
  こういう半立体物のときは,やっぱりShinexが使いやすいですね!
  糸倉にのせてみました。ふつうの国産月琴と違い,この楽器では蓮頭が真正面を向きます。
  磨きあがった蓮頭にスオウ汁を2度ほど塗布,乾いたところで重曹を溶かし込んだ熱湯をくぐらせ,放置します。


  一晩たったら,こういう色に……
  ううむ,カガクハンノウってやっぱりスゲぇな。
  何でこうなるのかは知らないけど。

  この状態でカシューやニスをかけると,紅木やハカランダのような紫檀色になるわけですね。


  今回はこれに,温めたオハグロ液をかけて,二次媒染----「黒染め」にします。

  棹のフレットをはがしたところや背にも,色がはげたり薄くなったりしたところがあったので,蓮頭と同じ方法で染め直しました。

(つづく)


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