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月琴25号しまうー(2)

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斗酒庵 変な楽器に出会う の巻月琴25号 しまうー(2)

STEP2 しましましまの逆讐


  年末にかけての3面同時修理のあと,ここ数ヶ月というもの。
  庵主,ずっと実作業からは遠ざかり,これまでの研究のまとめや楽譜の復元などやっていたのですが,14号玉ちゃんが思わぬ故障で帰ってきたのをきっかけに,いきなり庵主の修理エンジンに,火がついてしまいました。(笑)
  玉ちゃんの修理が響き線の脱落,というけっこう重篤で緊張感のある作業だったのもあって,精神的に昂揚してしまい修理が終わってからも「な…なんか修理!修理するものはないか!」という実作業中毒状態。部屋を見渡すとそこには,せっかく買い入れたものの,いまいち気乗りがせず,1年あまりほっぽっといた「25号しまうー」がございました。

  表裏面板に,これでもか!というくらいもっくもくな玉杢の板を使い,アールのきつい糸倉,軸は虎杢のトチ,胴体はヒノキかサワラの曲げワッパに,軸と同じ虎杢のトチのツキ板を貼りまわしたもの,裏に賛と「玩音堂」の刻字……
  いちおう唐物の月琴を模そうとしていますが,素材から見ても工作から見ても日本人の手によるものと考えて間違いありません。以前扱った狸さんの「天華斎」と同じいわゆる「倣製月琴」ってやつですね。
  木材の工作や加工から見ても時代的には古そうであり,見た目もそう悪くはない。フェイクであることも問題ではないのですが,この楽器,あちこちに,どうも多少庵主の感性と合わないとこがあります----なんか「うーすーいー」なヤツなんですね。

  でももうなんでもいいや!俺に壊れた楽器を!
  と,修理に入ります----もちろん,手ヌキはしませんぜ。

  まずはフレットやらお飾りの除去。
  うむ…思ったよりちゃんと,しかもかなり強固に接着されております。
  接着はニカワですが,かなり上質なものが使われているようです。


  虫に食われてボロボロになっていた半月もはずしてしまいましょ。
  ふむ,それにしてもまあ,よく食われたもんです。(汗)
  水を含ませたらそりゃもー「クシャッ!」て感じで完全にバラバラ……というかグチャグチャになってしまいましたよ。

  ----この過程で気づいたんですが,この半月,なんと「竹」で出来てます!竹のテールピースってのは,台湾の長棹月琴や中国琵琶ではよく見かけますが,清楽月琴ではハジメテ見ましたよ。


  半月の右下に木釘が3本,挿してありました。
  表裏面板ともに下縁部にハガレがありますから,板を止めようとしたものでしょうね。
  木釘の状態から見て,最近のものではなく,比較的古い加工のようです。この修理の時点では,このへんくらいしかハガレてなかったのかもしれませんが----何度も書いてるように,柔らかい桐板をクギで止めようってのは無駄,まさしく糠に釘ですからね。

  とりやいず,面板の再接着のときジャマなんで,この木釘は抜いておきます。

  前修理者の所業のなかでも最大のナゾが,このヒビ割れや面板のハガレた箇所に盛られた「白い物質」ですね。


  これやっぱり「胡粉」のようです----貝がらを微細に挽いた白い粉ですね。
  日本画とか張子の表面加工なんかで使われます。
  「接着剤」のつもりだったんでしょうか?
  まあ固まればくっつくかもしれませんが,もちろん「止まる」程度で「接着」というのには程遠い強度にしかなりませんねえ。
  また,日本画にしろ張子細工にしろ,「胡粉」があってそれを使ってるということは,基本的には同じ場所に,それを溶くための「ニカワ」もあったハズなんで……何のつもりでどんなヒトがやらかしたことなのか。

  みなさんもちょっと推理,お願いします。

  これによる前修理者の「修理箇所」は,糸倉先端の蓮頭のついていたところ,裏板中央のヒビ割れ,面板左右と下縁部のハガレ部数箇所。


  胡粉自体は水で濡らしてしばらくほおっておけば,ドロドロになってカンタンに拭えちゃうんですが,面板が複雑な杢板なこともあって,木目の微細なところにまで入りこんじゃってるぶんは,とても完全に除去しきれません。
  とりあえずは次の作業の支障にならないていど,だいたいのところで。

  ではまずは,面板の再接着,からいきましょう。


  表が3箇所,裏が2箇所。いづれも円周の1/4以上,けっこう広い範囲で剥離しています。
  これを一箇所づつやっていますと,器体への負担も大きいしメンドもくさいので,一度で済ませてしまいましょう。
  接着にとりかかるまえに,側板にゴムをかけておきます。
  月琴の胴体は,基本的には側板を面板でサンドイッチすることによってカタチ作られております。断続的ながらその面板の,かなりの部分がハガれてしまってますので,このまま表裏から圧をかけたら胴体の形に影響が出るかもしれません。この楽器は,胴体の構造自体に良く分からないところもありますから,まあ保険です。

  それぞれの剥離箇所に筆で水をたらし,何度も揉みこむようにして,水分をよくよく含ませておきます。
  まだスキマに残ってた胡粉が,白くしみだしたりもしてきますので,接着面の清掃も兼ねて,この作業をいつもより丁寧にやりました。

  次にやや薄めに溶いたニカワをたらして,再びもみもみ。
  すべての接着部がややべとついてきたなー,というあたりでクランピングに入ります。
  複数箇所の圧着を一度で済ませるため,今回はこれを使うことにします。


  ----27号でも使ったウサ琴の外枠,ですね。
  前回の修理の時,ネジ止めの孔を増やして,大型のクランプとしても使えるように改造してあります。
  これにはさみこんでネジでしめあげるっと----足りない部分はFクランプも動員。
  Cクランプをぐるりとかけ回して赤いワラジ虫作るのより,ずっとお手軽でかつ正確です。

  一日たって,面板はばっちり再接着されました。
  さて,おつぎがこの楽器の修理のメインかもしれません。

  裏板のヒビ割れにとりかかります!

(つづく)


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