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14号玉華斎・再修理(1)

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斗酒庵に ( ゚Д゚)ゴルァ!帰る の巻2012 5月~ 月琴14号 玉華斎再修理(1)

STEP1 表面板の乱


  異空間 唄うたい・吹雪涼子さんのとこから,玉ちゃんこと14号が,表面板の修理のため帰ってまいりました。
  お飾りに3匹もの龍----それも貴族や高級お役人でないと使えない「四爪の龍」をあしらったこの唐物月琴,主材は最強かつ最凶の唐木・タガヤサン,面板は表裏ともに桐の一枚板でできております。

  ふつうの月琴は絵文字で書くと(´∀`)(´▽`)ってとこなんですが。この玉ちゃん,半月が特殊な形をしているせいで,壁に吊るしとくと ( ゚Д゚)ゴルァ! と常に威嚇されてるような気分になり,修理者の日常にかなりのプレッシャーがかかります。
  うむ,さっさと修理しよう……

  この楽器の表面板には,当初からヒビがありまいた。
  左肩から木目にやや沿って断続的,不定形にのびるヒビは「割れた」というより「裂けた」といった風なものです。
  前回修理以降にも何度か書いたのですが,一枚板のこうした裂けヒビは,ある意味,板が 「なりたがっている」 状態になるために発生するものなので,何度修理しても再発することが多く,とても厄介です。

  これまでにも何度か回収・修理の機会があったのですが,この楽器,とにかく工房に戻ってくるのがイヤらしく,そういう時になると自力でヒビをピッタリと閉じたりしやがるのですね。(まあ,冗談ですが)
  しかし,嫁ってから一年以上,日本の多様な自然気候風土の中で,ヒビは閉じたり開いたりをくりかえし,少しづつのびてとうとう板面を貫通!自力では閉じない状態となってしまいました。

  ( v゚Д゚)ゴルァ! ( V;゚Д゚)ゴルァ! (|>Д<)ゴルァ!

  ----となったわけですね。

  じつは庵主,この時を待っておりました。

  上に書いた「板がなりたがっている状態」というのを,この楽器の場合でもうちょっと補足解説しますと。胴体の微妙な歪み等などが原因で一定の負荷がかかり,板が割れるべきところから割れた状態,ということになります。
  国産月琴の場合,面板は幅の細い小板を何枚も横に継接ぎした「矧ぎ板」で出来ていることが多いので,同じような状況になっても板の継ぎ目かた割れるわけですが,一枚板の場合は,板のいちばん弱いところから裂け,弱いところをつなぎながら広がってゆくわけです。
  板自体が不安定なので何度修理してもひび割れは再発します。
  修理の回数が多くなると,そことは無関係なほかの弱いところにも影響が出かねません。
  最善の策は,多少の不便には目をつぶり,板が「安定する」のを待つこと,だったわけですね。

  そして今回----裂け目が板を貫通したということは,裂けるべきところが裂けきった----つまり,板が「安定した状態」になったということでもあるわけです。やたーっ!

  さてでは修理。



  くだんのヒビは,ちょうど左の龍の尻尾の下をかすめてますんで,まずはこのお飾りをはずします。
  そして刃を折ったばかりの,切れ味のいいカッターでばっさりと……
  そこに板をはめこみます。
  板は例によって,過去の修理ででた古い面板を使います。
  ヒビの原因となった面板の力を拡散するために,板の目に合わせて,まっすぐではなくこういうふうにクサビ型にして,なるべく深くまではめこみます。



  余分を切り落とし,表面を均したら古色付け。
  うむ,これならそうはカンタンにバレますまい。



  もののついでに,気になったあたりをいくつか補修・改修しておきましょう。
  まず一つ目は「絃停」,ピックガードですね。
  この絃停というもの,初期の楽器や中国の古式月琴にはついてませんし,この楽器はそもそもその奏法上,ここにピックガードのある必要が,実はそれほどない---ほぼ装飾的な意味合いで付けられるものです。
  前回の修理ではオリジナルと同じ蛇皮を貼ったんですが,この皮ちょっと丈夫過ぎたらしく,面板をひっぱって横にすこし裂けヒビを作ってしまいました。唐木屋の18号なんかもそうだったんですが,この故障,けっこうあるんですよね。
  ですんで庵主はほとんどの場合,これを錦布にはりかえてしまっています。
  コレの場合ははじめての純正唐物でしたので,なるべくオリジナルの状態に近づけようとガンばったのですが…ちッ,がんばらなきゃ良かったなあ---ハガしてしまいましょ!

  も一つは龍のお飾り。
  片方の龍のシッポが少しだけ欠けてますので足してあげましょう。



  絃停の布は以前狸さんからいただいたもの。
  いい模様だなあ---なんかN○Kが「シルクロード」の記念だかでこさえた復元錦だそうですよ。

  龍のシッポは黒檀の端材を削って接着。
  庵主じつは「木のカケラが捨てられない症候群」に羅ってしまっているので,こういうのにちょうどいい大きさのゴミのようなカケラが山のようにあったりします。
  ---んでたまさか,こういうふうに役に立ったりするもので,病膏肓に入っちゃうわけですね。

  ああもったいない,今日も木っ端が捨てられない!


(つづく)


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