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14号玉華斎・再修理(2)

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斗酒庵に ( ゚Д゚)ゴルァ!帰る の巻2013 3月~ 月琴14号 玉華斎再修理(2)

STEP2 裏板の別れ


  ---とまあ,前回の記事,じつはこれ1年ほど前のもので。(書いといてうpするの忘れてたみたいです:笑)

  それから約1年ばかり,いい子にしてた玉ちゃんでしたが,この3月,練習の時,なんかRyoさんが「様子がおかしい」とゆーので見てみましたら。
  ----響き線が,モゲてました。

  当初修理の調査では,玉ちゃんの響き線は少しサビが浮いてはいたものの,比較的太く丈夫そうだったので,この故障はちょっと意外でしたね。

  さっそく裏板の一部を切り取り,ハガして見てみることにしました---ああ,せっかくの一枚板だったのにぃ……でもまあ,何度も書いているように,響き線は月琴の音色のイノチともいえる大事な部品です,しょうがないですね。


  この楽器の響き線は,天の側板のうちがわ,棹孔のすぐ横にささっています。
  響き線はそこに1ミリ程度の基部を残して,落ちてしまっていました。
  胴体に残っていた基部に触れると,真っ赤に錆びてくちはてた線のカケラがモロモロと崩れて砕けます。
  線の芯のとこまで完全に錆びてますね。
  Ryoさんは「うちの部屋の湿気が…」とか言ってましたが,こりゃこの一年二年の腐食じゃありません。

  さらに,錆び果てていたのは,この,胴体にささってた基部のあたりわずかだけで,胴内に落ちていた線の大部分は,ほぼ健全と言って良いくらいな状態で,錆びもごく薄く,少し磨いただけでキレイな銀色になりました。
  これはおそらく,線の止めに使われていたニカワが原因だと思われます。
  原作者さん,胴体の材が接着の悪いタガヤサンなので,板から2ミリくらいのところまで,こんもりニカワを盛ったようなのですが,どうやらそれが長い年月の間に湿気を吸い,線を少しづつ腐食させていったみたいですね。
  この楽器のニカワづけはとても上手で,他の接合部のニカワは黄金色,濡らせばまだ活きているような状態のところが多かったんですが,この部分だけは,ニカワが真っ黒に変色していました。


  さて,最初棹孔から覗いて,響き線が落こっちてるのを見たときには,サイアク,響き線の交換(音色が大きく変ってしまいます)まで考えたのですが,上にも書いたように,腐食していたのは胴内に埋め込まれているところから上2~3ミリくらいまで,線のほかの部分はほぼ健全ですので,この響き線はそのまま使うことにします。

  元の基部のすぐ横に,ピンバイスで新しい孔をあけておきます。
  線は腐ってるとこを切り取り,表面を磨いてサビを落とします。胴体に埋め込む部分が短くなっちゃってますんで,端っこを曲げなおして調整,最後に全体にラックニスを軽く刷いて防錆。

  後はこの線をオリジナルどおり,ニカワを塗って戻すのが常道というものですが---まあ原作者の二の舞を踏むこともありますまい。
  またコレでいきましょう。
  もうタガヤサンを相手にするときの,庵主の常套となってしまいましたね---エポキです。
  これなら元と同じよう,基部のところにこんもり盛っても,同じ結果にはなりません。使う箇所もごくわずかなので,まあ修理の神様にもお目こぼししてもらいましょう。


  接着の前に,線の下に当て木を置いて,響き線の位置がベストの状態に近くなるよう,さらに基部を調整します----楽器を立ると,響き線が胴体内部で完全に片持ちフローティング状態になり,あるていど振れても面板などに接触て線鳴りしたりしない,というのが理想的なポジションなんですね。
  二日ほどおいて,エポキが完全に固まったところでまた再調整です----唐物の月琴などに多いこの長い弧線は,弦音に対していかにも月琴らしい清らかで深みのある響きを返してくれますが工作時の調整が難しいのが欠点です。
  直線と違ってほんのわずかな曲がりの変化が全体に及ぼす影響が大きく,しかもその動きが3Dなわけで。
  しかし,そうそう何度も何度も同じ箇所をいぢくっていると,ちょっと前の29号のように,せっかく手入れした線がまたぞろ折れちゃったりしかねません。どの方向にどういう風に調整すれば先っちょがどうなるのか。もともとスウガクに適応していないこのノウミソ,毎度のことながら見極めるのが辛悩でありますが,全体をじっくり観察し,あーでもないこーでもないと何枚もメモを書きながら,なんとか数回で終わらせることに成功!----はああぁ…どんな作業より疲れるわ,こりゃ。(汗)

  裏板を戻します。
  一枚目は切り取ったオリジナル。木端口をうまく調整して再接着です。


  いちばん端の部分は,はがすときに少々傷めてしまいましたので板を足します。
  しかしながら,玉ちゃんの板は国産月琴のものと比べると幾分厚めなため,手持ちの古板では合うものがありません----しょうがない,新しい板をつかいましょう。


  この作業,ふだんだと大きめに切った板を貼り付けてから周縁を整形するんですが,玉ちゃんのバヤイ,側面に付けられてる竹製の飾り板がジャマでそれができないので,きっちりハマるよう,小板はあらかじめ整形しておきます。


  継ぎ目に出来たわずかなスキマに木っ端をおしこんでゆきます。
  「木っ端が捨てられない症候群」---ここまでくるともう重篤でしょうか?
  この木屑,修理の時に出た古い面板のカケラ…というかオガクズ…というか……もう完全にゴミなんですけどねえ。(汗)

  去年の表面板の修理以降,今度は裏板に同じような裂け割れが出来かけていたんですが,これも埋めてしまいます。
  この割れの原因である面板への負担の力は,今回の修理で一部とはいえ板を剥がしたため,かなり開放されています。さらにムク一枚板だったものを切り取って継いだり,ほかの板を足したりしてますから,今後その力はそうした板の矧ぎ目や継ぎ目にかかっていきます---ですのでおそらくこのヒビは,これ以上広がることはないでしょう。


  さて,あとは修理箇所を古色付けして完成です。うむ~,さすがに少しBJ先生になってしまいましたね。

  この玉ちゃん,一年の間に二回も帰ってきましたが,自分の関わった楽器が使われて壊れて帰ってくるのは,じつは修理者としてはカナシイことではありません----むしろ誇らしい感じですね。
  せっかく修理したのにぜんぜん使ってもらえず,「いつのまにかコワれてた」とか,「知らないうちに部品がなくなってた」とか,「ネコを殴ったらニャアと言って壊れた」とか,ツラっと言われて帰ってきたり,演奏とはまったく関係のない事故のようなもので「壊されて」帰ってきたりするほうがよっぽどツラいのです。


  14号は正直かなり「お飾り楽器」に近い面もあって,最初の所有者もほとんど弾いてなかったみたいなんですが,こうやってちゃんと使われて,何度も修理されてるうちに,なんかカンロクというか,「生命力」みたいなものが感じられるようになってきましたね。
  これも何度も書いてますが,指物屋の親方から習った通り,「壊れるべくして壊れる」のが本当のいい物です。「壊れない」ものは「直せない」ので,壊れたらただのゴミにしかなりません。壊れたら直す,直したらまた使うのがあたりまえのこと,使う者は壊れることで物の大切さを知り,作る者は直すことで技術を磨きます。
  「丈夫さ」を追求する,というのも技術としては本筋ですが実は「壊れないものの追求」てのは,ニンゲンとしては進歩ではなく退歩でしかないんですよ。

  さて14号玉ちゃん,次はクビがモゲるか,四角い半月がトぶか……それもまあ,楽しみっちゃあ楽しみなんですが。とりあえずはまたがんばって,いい音楽を奏で続けて欲しいものです。


(とりやいず・おわり)


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