工尺譜の読み方(8)
![]() STEP4 ふりだしにもどる 「工尺譜なんて,読むのは難しくないよ~。(笑)」 とゆーのがこの連載の趣旨だったのですが,なんか途中から「難曲」方向にシフトしてしまいましたねえ。 「はやぶさ」なみに軌道を修正いたしましょう。(一年くらい帰ってこない) とはいえ庵主もさすがに,「"ドレミ"って何だ?」 というようなレベルの方々までは救ってさしあげられませんから,せめてそのへんまでは自力でなんとかしていただきたい。(笑) より読み解きやすいよう,いろんな形式の楽譜を並べてみましょう。 ではかんたんに,それぞれの楽譜の説明から(何度目だ?)---
工尺譜:は 「合 四 上 尺 工 凡 六 五 乙」 という文字の並びで音階を表したもの。「上」を「ド」とした場合,「ソ ラ ド レ ミ ファ ソ ラ シ」 に対応します。 「乙」 より先の高音は文字の横に「イ」をつけて表します。「仩」 が高い「ド」,「伬」 が高い「レ」ですね。 中国の工尺譜では 「四」 と 「上」 の間に低音の「シ」にあたる 「一」 という符字があるのですが,日本の工尺譜にはなぜかそれがありません。ですので明笛では 「乙」 の音が甲音(高音)なのか呂音(低音)なのかは,前後の関係から判断します。 近世譜:は 工尺譜を小節ごとに切って音の長さをつけ,分かりやすくしたもので,庵主の近世譜では入力の便から,高いほうの「乙」より先の高音は「C」とか「D」といった全角のアルファベット表記になっています。「C D E F G A B」 が高いほうの 「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」 になってます。 この二つを対照させるとこまでは,これまでの連載でもやってきたところですが,今回からはここに 「数字譜」 とゆーものを加えます。 一般の方々は「数字譜」といってもなんにゃら分からんかもしれませんので,これもかんたんに説明しますと,要は 「ド レ ミ ファ ソ ラ シ」 を 「1 2 3 4 5 6 7」 という数字に置き換えた楽譜です。 もちろん「1」が「ド」で,「7」が「シ」ですよ。(笑) 「1」より下の低い音は数字の下に,「7」より高い音には数字の上に「・」がつきます。 ・ 近世譜・数字譜ともに基本1文字が1拍(4分音符)となります。 ・ 音が伸びる場合は文字のあとに「・(半拍)」「ー(1拍)」をつけて表します。 ・ 逆に短いほうは,8分音符を文字の下に1下線,16分音符は2重下線をつけて表します。 ・ 休符(1拍やすみ)は「○」,くりかえすフレーズは [ ] で囲んで表します。 工尺譜の漢字の楽譜に「うげっ!」となるような方々でも,まあ数字ならさほど拒否反応もござりますまい。 数字でもまだ読み解く自信のない方は,もーいっそ,123…の上か下にドレミ…とか書き込めばよろしい。 ここで紹介する数字譜は,工尺譜の音階符字を,テキストエディタで単純に全角数字に変換しただけのシロモノなので,現在,二胡や中国琵琶のお教室で使われている中国の数字譜とはちょっと形式が異なるかもしれませんが,余計な指示が一切ないだけで,それほど違っているわけでもないですから,たぶんそのままで読めましょう。
あと注意点はふたつだけ。 この二つはオリジナルの工尺譜でのお約束事をそのまま引きずってます。 1) 月琴・二胡は工尺譜の「合・四・乙」にあたる低音の「5・6・7」の数字の下の「・」は無視,いずれもふつうの「5・6・7」で弾く(つか月琴の場合,低音の「5・6・7」の音はもともと出せません)。 2) 明笛・笛子・阮咸は,低音「5・6・7」は基本そのまま。「5・6・7」の低音にはさまれたフレーズにある高音は逆に,数字の上についた「・」を無視して演奏。 それでは第1曲目は「九連環(きうれんくゎん)」,清楽でいちばん有名な曲。 邦楽の「法界節」とか「カンカンノウ」といった曲のもとになってる,とされています。 「九連環」は知恵の輪の一種ですねー。 さいきん寄ってこない旦那を待つお姐さんの愚痴り唄です。 ----いッそほどけぬものならば,切ってしまおかこの縁(えにし),って感じ。 タイハイ的に愚痴っぽく,のんびりと弾きましょう。 楽譜はいづれもクリックで別窓が開いて拡大します。 JPEG形式で640×480,1枚は50~80KB。 楽譜ですが,百年以上前のものですのでJASR○Cに文句つけられる筋合いはありません。(笑) DL自由ですので,USBに落としてコンビニのコピー機などでA4サイズに拡大,プリントアウトして使ってください。 ![]() さて「九連環」が弾けるようになりましたら,こちらも基本曲ですのでおぼえておいてください。 「算命曲(すゎんみんきょ)」といいます。 街を流して歩く盲目の占い師のおっちゃんに,若い娘さんからお声がかかります。 「なにかわたしにお目出度いこと起きないかしら?」とのお尋ね。 「しめしめこれでもうかるぞ」とはりきったおっちゃん, 「お嬢様には近々良い縁談(お目出度)が舞い込みまする!」と思いっきりヨイショしたところ。 「お嬢様」と思ってたのは実は「奥様」で,「赤ちゃんはいつできる(お目出度)?」とのお尋ねだったわけで----占いおじさん,「このインチキ!」と家からたたき出されてしまいます。というコミックソング。 短くて明るいメロディですね。 慣れてきたら少し早いテンポで演奏してみましょう。 ![]() 3曲目は「茉莉花(もぉりぃふぁ)」,ジャスミンの花,という曲。 長生きな曲で,17世紀から現代もなお,中国各地でちょっとづつカタチを変えながら歌い継がれています。 中国の人ならだれでも知っている曲。出だしの部分がおんなじなので,これ弾いてると中国人に 「え?」 って顔されます。 繰り返しの部分が2箇所あるのと,拍子のとりにくい箇所が何箇所かありますので,メトロノームとか足で1・2・3・4...と拍子をとりながら練習してみてください。 ![]()
数字譜で弾くのに慣れてきたらこんどは近世譜を見ながら。
近世譜に慣れたらつぎは工尺譜の原譜を…と言いたいところですが,まあ良いです。(w) なんにゃるとにかくこれを見て,清楽の曲を弾けるようになってくれればサイワイ。
では本日はここまで!
いづれも基本中の基本の曲ゆえ,各人ちゃんと弾けるように奮励ドリキせよ! お酒も飲んだので,お師匠さまはちょいとおねむです,むにゃむにゃ… (つづく)
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