工尺譜の読み方(9)
![]() STEP5 清楽畑の春を愛す では基本曲をあといくつか紹介していきましょう。 まずは「四季曲(すぅきぃきょ)」。 同じメロディで「四季」「四季歌」「四節曲」などと題しているものもあります。各書各流派ともにちょっと混乱しているようなのですが,ある本ではこの「四季曲」と「四節曲」が並んでまして,歌詞は「四節曲」のほうについております。 もともとは「四節曲」の前弾(前奏曲)を「四季曲」と言っていたのでしょう。「四節曲」と題される曲のほうが,同じようなメロディながら長かったり,1オクターブ高いフレーズで構成されているところから見ても,歌詞があるのが「四節曲」で,ないのが「四季曲」なのだと思いますよ。 歌に入るところで前奏よりピッチを上げるのは,どこの国の音楽でも常套手段ですからね。 近世譜/数字譜・2行2小節めの最後あたりに,音が伸びて小節をまたぐところがあり,そこから拍子がズレてゆく----そこらのタイミングを計るのがちょいと難しいのですが,MIDIを再生しながら,気長に合わせてやってください。 メロディ自体は単純で,可愛らしい感じのする曲なんですが,歌詞を見ますと--- まあこれも,帰ってこないオトコを待つ歌ですね。(泣) 「春は花咲き,蝶ですら,夫婦でひらひら飛ぶものを…」 と,四季のめぐりにかこつけて,男の浮気をなじるのですねえ。 時の流れに不安をつのらせながらも,表面上はあくまで,四季の景色を楽しんでるふうに(ちょっとツンデレ風味?)弾いてください。 [*クリックで拡大。] ![]() つぎに「月花集(ゆふわぁじぃ)」。 「月下集」とも書きます。月に花,キレイな名前。曲もゆっくりめでおキレイそうな感じですよね--- しかしながらこの歌,別名を 「紅綉鞋(ほんしゅうあい)」 とも言いまして,清朝時代には 発禁ソング,というか上演禁止歌になったこともあります。日本人が歌詞を見る限りにおきましては,「あや靴一双,梅が咲く…」 ではじまる数え歌みたいな感じなんですが,まあいろいろありまして…あんまりくわしくは書けない。 とりあえずまあそのへんは,あちゃらの方々のご都合。 まずはおキレイに,ゆ~ったりと弾いてください。 慣れてきたら音の長さを考えながら,少しテンポを早めて----もとは数え歌ですからね。 ![]() つぎは「久聞歌(きうえんこぉ)」。 「このごろ良く聞くあの娘のウワサ,キレイになったと言うじゃないか…」 という感じの曲です。 ある資料では「古い曲」だということになってますが,あくまでも日本人がその曲調から類推した感想のようで,中国側の資料には今のところ,それを裏付けられるような記述や曲目は見えないようです。 メロディは単純なんですが,西洋の楽曲に慣れてると,ちょっとフシギ,というかナットクのいかないところがあるかもしれません----うん,でもこれが「清楽」なんだな---とまあ,そのへんは無理矢理ナトクしてください。(笑) ![]() いづれもリズムを大切に,はじめはゆっくりで。 人差し指の一本指奏法でも良いですから,とにかくリズムをはずさないように。 一拍はちゃんと一拍ぶん,伸ばすところはちゃんと伸ばす。 慣れてきたら,指をかえてみましょう。 月琴の演奏は,中指 が基本です。 うちの流儀では,右手でピックを動かすのは,手首でも人差し指でもなくて 中指 です。 ピックはつままず,握らず,中指の腹の上にピックの先端部分を「のせ」て,中指を動かして弦を弾きます。 残りの指は,ピックが飛ばないように,軽くささえている,というか添えてるだけです。 そして左手の中指。 中指を最初におろせば,上がるときには人差し指が,下がるときには薬指,それで届かなきゃ小指が使えますよね。 中指を動きの中心に考えると,理想的な運指(弦をおさえる指づかい)が,比較的ラクに分かってきます。 もとが「中」国の楽器なだけに「中」が大事なんですね~。(…笑えよ……オイ,笑えってば!(泣)) 以上,お師匠さまの安い 「秘伝」(ガンモドキ…いやチクワブくらいかな?)のコーナーでした。 弾いてみるときのヒントにでもなればサイワイ。 (つづく)
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