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カメ琴2号(5)

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斗酒庵 ふたたびサイレント月琴を作る の巻2013.4~ カメ琴2号 (5)

STEP5 カメ,あがる


  しとしとぴっちゃん。

  一日雨の降り続く,梅雨の先触れみたいな5月のとある日,カメ2号のカシュー塗り作業ははじまりました----

  ううう,シンナーくさいぃ。(泣)

  みなさん,カシューの溶剤は揮発性なんで,塗装は風通しのいいところでしましょうねえ。

  今回はこってり呂色塗りとまではいきませんが,全体にうっすらと塗膜がある程度の薄塗りでまいります。
  25号の修理の時にも書きましたが,カシュー塗装は下地が勝負です。
  表面の磨きや目止めを念入りにやっておくのは別だんカシューでなくても同じですが,最初の下地塗りのとき,薄めに溶いたカシューをたっぷり吸わせ,少なくとも2日は置いて,しっかり乾燥させとくのがコツです。目止めが甘かったり塗料が薄かったり,乾燥が不十分だと,何回塗っても木地が塗料を吸い込むばかりで,いい感じに塗膜を張ってくれません。


  下地塗りがしっかり乾いたら全体を軽く磨いて,あとは2日おきぐらいに2度ほど重ね,一週間乾燥させます。

  満願日の前日あたりになりますと,ちョしたい(北海道弁「触りたい」)のをガマンするのがタイヘンです。

  とにかく 「一週間」 と決めたら 「一週間」 待つのです----

  前より気温が高かっただの,天気が良かっただの,今日は茶柱が立っただの,脳内の悪魔はいろいろな理由をつけて誘惑してきますが,負けてはイケませんよ!イケません………らめらったらあっ!!


  うむ,この待ち時間は精神衛生に良くないなあ。
  -----なんとか気を紛らさんと。(汗)

  というわけで,ここらで小物作りに入ります。

  今回も蓮頭はコウモリさん。
  月琴の蓮頭は,雲形板のものが多いのですが,カメはまあ新楽器ですからね。
  そのへんは比較的自由にやらせていただきます。



  中のコウモリさんは伝統的な意匠を踏まえたものですが,全体をちょっとハートに近いようなカタチにデザインしてみました。
  棹の端材のカツラ板を,刻んで彫ってスオウ染め……うむぅ,ここまでで半日もたなんだか!
  乾いたところでオハグロ媒染,黒染めにします。
  一晩干してラックニスをかけ,木灰をつけた布で擦って磨き上げ,ツヤとサビを同時に出しますね。

  いっしょに写っているのは山口(トップナット)
  今回の棹は山口の手前で指板が切れるタイプ----ウサ琴シリーズはこのタイプにしたのが多かったかな,あとホンモノの月琴だと名古屋の鶴寿堂さんなんかの月琴がこの工作をしてますね。
  カメ琴は絹弦よりテンションの高い,ナイロンとかテトロンの弦を使うので,山口は棹にガッチリ食い込んでてくれたほうがいいんです。指板も厚いぶん背も高いので,より強固に接着されるよう,底面の中央に溝を切ってあります。
  ふだんはしない工作ですが,これもまあ試し,ってことで。

  そうやってなんにゃら,あとはブログのほかの記事書いたりなんにゃらで数日間過ごし,すんでのところで誘惑の悪魔に打ち勝って。


  さあ,仕上げましょう!

  まだ塗りっぱなしの状態なんで,かなりギラギラしてますねえ。

  糸巻きは少しスオウを混ぜたヤシャ液で染め,亜麻仁油でオイル仕上げしてあります。
  ちょっとさびた感じの黄金色が,なかなかイイでしョ?


  まずは全体の磨き。

  今回の塗膜は薄いのであんまり力いっぱいゴシゴシするわけにはいきません。Shinex の#2000相当のに石鹸水をつけて,全体をまんべんなく,やさしく撫で回し,柔らかな布で水気をよく拭い去ったら,おなじものに今度は亜麻仁油をしませてふたたびナデナデ----ギラついてた表面が,しっとりツヤツヤになりました。

  この状態で1日~2日乾燥させ,表面の塗膜を落ち着かせます----もうここまできましたら1日2日くらい,その前の一週間のガマンにくらべりゃ,たいしたもンじゃないですね。


  蓮頭と山口を接着したら,アコースティック楽器としては完成。もういつでも演奏可能な状態ですが。

  さて……回路を組みましょう。(汗)

  ジマンじゃありませんが庵主,実のところ電工の知識や腕前はからッきしです。
  プラスとかマイナスとかだけでも考えたら頭イタくなるのに,抵抗やダイオードのことなんか構ってられない(笑),ましてやザクの目を光らせるために麦球仕込んだ以上の回路となりますと,ナニがナニやらてんで分かりませぬ。(ああ,年齢が知れるなあ…第一次ガンプラ世代…)


  アキバで買ったアンプの回路(¥700)は,部品挿してハンダづけするだけなんで,まあなんとか。それぞれの部品が,どこのどなたさんでご職業が何なのかは知る必要がないもんね。
  とりゃいずはそれを中心に説明書を読みながら,まず楽器として肝腎な音の入出力関係を,指でたどりたどり,あれこれ悩みながら配線(2度ほど間違いた),つづいて外に露出させた電池からハジマる電源まわりを配線……ここまでですでに三時間以上もかかっております。(泣)
  さてさてさて,これで通電しましたらおなぐさみ,と,電池を取付けて電源スイッチを入れましたところ。


  「クキ---イィィィィン!」

  ---と,いきなりスピーカーが絶叫!
  うわう,ハウハウしよった!

  うむ,何はともあれよく分からんが。いちおう電気は通ってるみたいですなあ,めでたいめでたい。

  最後にエレキだとピックアップにあたる圧電素子を両面テープで表板に貼り付け,内部構造は完成!


  表板をタップするなどして出力検査したところ,スピーカーからは音が出るけど,ジャックのほうから音が出ない----切り替えスイッチの配線,間違っちゃってたんですねえ。真ん中の端子をバイパスしたら音がちゃんと出るようになりましたが……はうあ,原因がなかなか分からず青くなりましたよ。

  こげなもん,電工得意な人にとってはまあ玩具以下の構造なんでしょうが……どッと疲れましたわ,どッとはらい。

  さてラストスパート!
  弦を張って,フレットを削ります!


  フレットははじめ竹で一そろい作ってみたのですが,どうもしっくりこないので,やっぱりローズウッドで黒フレットを再製作。こないだ修理した30号なんかもそうだったんですが,こういう「実用本位」みたいな楽器にはこの黒フレット,似合うんですよねえ。
  ただまあ,竹にくらべると材料の工作がタイヘンなんで,実はあんまりやりたくない(泣)。
  フレットはウサ琴準拠で,古い清楽月琴より2本多い10本,完全2オクターブの音が出せます。

  ----ううむ,渋い感じに仕上がりました。

  2013年5月23日。
   斗酒庵工房としては通算3本目のエレキ月琴,「カメ琴2号」完成です!




  マホガニー色のボディ,黒いフレット…漆器みたいな全体ツルツルには塗り籠まなかったので,表裏の桐板は木目の浮き出たシボ塗り風,そのほかの木部のツヤ加減と対照になっていい味が出ましたねえ。

  うすっぺらな胴体(つか輪っか)ですが,側面の真ん中あたりがストラトみたいにエグれているので,横抱きにしたとき(ウサ/カメ琴は清楽月琴より小さめなので少し横に構えたほうが弾きやすい)にフィット感があります。


  現在,庵主の初代カメ琴では低音に絹弦,高音にナイロン弦を張ってます。2号は14号玉ちゃんに操作感を似せるため,棹の寸法を若干縮めたりしたため,弦長がちょっと足りなくて,絹弦だと弦圧ユルユル,音が安定しなくなってしまいました。
  ので,今回は低音弦をテトロンの14-2に張り替えてみました----こんどはバッチリ安定,ただしふだん絹弦で慣れてると,テトロンとかナイロンは少々グアイが違うので,なんにゃら勘が狂うかもしれませんね。

  あと響き線が多少騒ぎやすいかな?
  あんまりうるさいようなら後で止めることもできますから,その時には言うてください。


  低音弦もテトロンになったので,1号より若干生音が「大きい(?)」かもしれませんが,「サイレント楽器」と言い張るには問題ない範囲の音量だと思います。
  内臓のスピーカーは最大出力が2.4Wですので,ボリュームをMAXにしたところで音量はたかしれですが,それでも生の月琴と同じくらいには響きます。

  まあ,Line-out からアンプにつなげばいくらでも大音量で鳴らせますし,そこにヘッドフォンをつなげば,結構な音量が出力されますから,まさしくサイレントなんちゃらみたいに,深夜の練習にも最適かと。

  では Ryo さん,あとはよしなに。

(おわり)

工尺譜の読み方(13)

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工尺譜を読んでみよう の巻工尺譜を読んでみよう! その13

STEP9 ご忍耐と薄情


  さて,今回の記事は……まあ読んでくれればいいです。(w)
  「弾き合わせ」もこの領域になると,もー「趣味」の範囲ですもんねえ。(^_^;)

  前回も紹介した「茉莉花(もぉりぃふはぁ)/秋風香(しうふうこう)」の弾き合わせですが,楽譜の載ってる『清楽曲譜』には,ちょっと気になる解説がついております。

   秋風香ハ茉莉花ト秋籬香ト両曲ヨリ組織シタル曲ナル故ニ,三曲伴奏スル,尤妙ナリ。


  「三曲伴奏スル,尤(モットモ)妙ナリ。」

  ----とはいうものの,三曲を二曲づつ組み合わせて演奏するのが「尤妙」なのか,三曲一度きに合奏するのが「尤妙」なのか,解釈として多少微妙なところではありますが。(笑)

  『清楽曲譜』に「秋籬香」の楽譜は載っていませんが,同じ編者の『洋峨楽譜』(明31)に幸いあることですし,まあ一丁やってみようかァ…と,試してはみたんですが,この楽譜,前の二曲とどうにもうまく合いません。


  「秋籬香」の音長の分かる資料がほかに見あたらなかったこともあり,手がかりもないのでしばらくほおっておいたんですが,最近,『音楽雑誌』の記事のなかに,梅園派の「茉莉花/秋籬香」の合奏対照譜を見つけまして。これで「茉莉花」のどこに,「秋籬香」のどの音が対応するのかのあらましが分かるようになりました。

  この『音楽雑誌』の対照譜を参考に,『清楽曲譜』の「茉莉花/秋風香」に『洋峨楽譜』の「秋籬香」を組み込んでゆくと----


  茉莉花 MIDI秋風香 MIDI秋籬香 MIDI  弾き合わせ MIDI

  こうなります。
  うむ…「三曲伴奏スル,尤妙ナリ」 かどうかは,微妙?
  あ,そうかこの「尤妙」は微妙の妙なわけね。(笑)

  なんせ3曲対照,近世譜と数字譜はご覧のとおり縦向きになりました(クリックで拡大)。
  弾き合わせの再現MIDIですが…なんか楽器の音が多すぎて,わけわからん感じですねえ----これでもかなり Panpot とかいぢってるんですがねえ(汗)。

  まあこれが(もしかすると)明治における「茉莉花」の最終進化形態,なのかもしれません。



  おつぎは「四節調(すぅきいでゃお)」「四節如意(すぅきぃるぅいぃ)」「芳月調(ほうげつちょう)」の3曲弾き合わせ。

  なんで「秋風香」とか「芳月調」は日本式読み,かと言いますと,これらは(たぶん)日本で作られた曲だからなんですねえ。
  「四節調」はまえに紹介した「四季曲」とか,「四季」と呼ばれている曲の一種。ほかにも「四節串」とか「四季相思」「到春来」など,この類の曲はヴァリエーションがとても数多くあります。


  四季如意 MIDI花月調 MIDI  弾き合わせ MIDI

  『音楽雑誌』の43/44号に「四季如意」と「花月調」の弾き合わせ対照譜が載っています。
  「四季如意」と「四節如意」は同じ曲,また「花月調」の別名が「芳月調」---『清楽曲譜』では「芳月調」ですが,同じ曲譜が『洋峨楽譜』では「花月調」として載っているんですね。
  そしてさらなる一曲「四節調」の解説に,これまたこんなことが書かれているのです----

   四節調モ秋風香ト同ジク四季如意・花月・四節ト三曲伴奏妙ナリ。

  また「妙」ですか。
  コレ,「たえ」じゃなくて,「ヘン」の意味の「みょう」なんじゃないでしょうねえ。(笑)

  今回は『音楽雑誌』の対照譜をもとに「四節如意」と「芳月調」の擦り合わせを改めて行い,そのうえで「四節調」を合わせてみました。これも以前にやった復元では「四節如意」と「芳月調」までは合ったものの,「四節調」を合わせると途中で破綻してしまっていたんですね,新資料のおかげです。


  四節如意 MIDI芳月調 MIDI四節調 MIDI  弾き合わせ MIDI

  当初,タイトルの短さから「四節調(黒文字)」を「本曲」と考えたんですが,こうして対照譜を組んで見ると,2段目の「四節如意(青文字)」のほうが譜がずっとシンプル。「四節調」は言っちゃえば「四節如意」の手数を少し増やしただけのバージョンです。
  『音楽雑誌』の記事でも「花月調」のオモテとされているのは「四季如意」----おそらく,この3曲のなかでは,「四節如意」が「本曲」なのでしょうね。


  しかしこういうことも,実際に譜を組んでみないと…それぞれの譜を平面的にながめてるだけだと,まったく分からないものですねえ。

  なお「芳月調(ピンク色)」4行目と10行目にある「合(数字譜だと5)」の連弾は,『音楽雑誌』では「掛撥で」と付言されています。律儀に符の数だけ弾くのではなく,フレーズの長さのぶん,トレモロでルルルラァ……と弾いちゃってください。

(つづく)


カメ琴2号(4)

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斗酒庵 ふたたびサイレント月琴を作る の巻2013.4~ カメ琴2号 (4)

STEP4 教官,わたしカメ色に染まります!

  ははは,じつはこの段階になると,あんまり面白い画像もないので,
   なんか文章にし難いのですがね。



  まずは春の晴れた一日。
  完成した本体を持って外に出ました----
  仕上げの磨きをするためですね。
  染めにしろ塗りにしろ,木地の仕上げがしっかりとしてないとなかなかうまくいきません。

  まずは#240の空砥ぎペーパーでヤスリ目などの工作痕を丁寧に取去ります。
  ついで#400相等のShinexで表面を均し,#1000相等ので,とぅるっとぅるに。

  この作業,地味ですが,時間もかかるしけっこう大変です。



  表板のウラ右側に三箇所,色の濃いとこがありますが,これは圧電素子をのっける黒檀板と,電池ボックスをとめるビス穴の補強で貼ったブビンガのツキ板。

  お外でやるのは,第一に細かなホコリが大量に発生するせいもありますが,自然光のなかでのほうが木地表面のアラとかキズが分かりやすいということもあります。自称「工房」は四畳半一間の住居兼ですから,庵主,ふだんからお外での作業は慣れてますしね。

  時間がかかるので,お弁当と燃料を買って,ホウキ持参で公園をめぐります。
  小さくてもいいからテーブルがあって,子供らが遊んでるほうとかに風が向いてないような場所,作業後にはもちろん掃除して帰りますよ~。

  まんべんなく磨き上げた本体……いよいよ染めにかかります。


  今回の楽器では,表裏の板が胴体側部になだらかに落ちて一体になってくようなデザインにしたもので,面板とほかの木部を同じ色にしなきゃなりません。輪っか真っ黒でサンバースト風に,表裏板の中央だけ白っぽい,てのも考えたんですが,うーむ,大変そうですしねえ。

  まずは下染め,ヤシャブシ汁に砥粉を溶いたのを二度ほどかけます。
  この時点ではまだ,どんな色に染めるか決定してないんですが,とりあえず木地の目止めをかねての染めです。

  この段階で磨いてニスをかければ,1号と同じような黄金色の楽器になります。

  一日,オーナー予定者の Ryo さんと,練習がてら談合。

  1.黄金色/2.真っ黒/3.赤茶色の三択でしたが,今回の楽器は木地の色にあんまりインパクトがないんで,1.がまずハブ,つぎに「白」とか「黒」ってのは服の着こなし同様意外とムスかしいということで2.ハブ----結局ある意味無難な「赤茶色」に落ち着きました。まあエレキ楽器だし,ラッカーかペンキみたいので塗ってしまうなら,アオだろうがキミドリ色だろうが自由なんですが,いちおう「清楽月琴」や「ウサ琴」と同系列の楽器,ということもありますし,工房にある自然染料で何とかできる色にとどめたいとこです。(庵主としては,全体スチールブラックで,シルバーの鋲のいっぱいついたエレキ月琴が一本欲しいとこなんですが)


  ということで----赤染め開始。
  ヤシャブシで染めた下地を磨いて,スオウ汁に砥粉を溶いたので2度下染め。
  重曹を熱湯で溶いたものを,ハケで手早く,全体が均一に濡れたように塗布して発色させます。

  余計な砥粉を落さなきゃなりませんので,これをまたお外で磨いたんですが,まだちょっとあちこち黄色っぽいですよね。本体に使ったカツラやサクラはそこそこなんですが,表裏の桐という材,染みこみはいいものの,スオウの「染まり」がそんなに良くありません。このあとも全体がなるべく均一の色になるよう,色の薄いところに部分的な染め作業をくりかえしました。

  この時点でニスをかけると,やや淡い赤味の色になりますので,少し乾燥させたところで,2次媒染に入ります。


  2次媒染剤はオハグロ液(鉄漿)。
  我が家のおハグロ液はかれこれ5年目くらい。
  ベンガラと五倍子粉を,ヤシャブシ液と酢で煮詰めて作りました。

  江戸文学なんか読んでると,この「オハグロ」,よく「クサイもの」の代表みたいに書かれてるんですが,最初に炊いた時は確かに,そりゃもースサまじいニオイでしたねえ。キゼツしちゃいたいくらい強烈な刺激臭で…現実には何年か置いたり,継足し継足しで「熟れた」ものを使うようですが,むかしの女の人はよくこんなものを口の中に入れたなあ,とエラい感心したものです。

  うちではおもに糸巻きなんかを真っ黒に染めるときに用いますが,今回はこれをお湯で薄めて使います。
  一度全体に塗布したあと,小さめの刷毛であちこちを少しづつ……はじめといてなんですが,全体おんなじ色,ってのはけっこう大変なものですねえ。

  数日作業して,染め完了!


  指板と半月は,少し濃い目のオハグロ液をつけて,ほかよりはだいぶん黒っぽく染め上げました。

  塗りの作業に入る前に,半月は接着しちゃいましょう。
  本体はこのうえからカシューを塗るんですが,カシュー塗っちゃうと,ニカワじゃくっつきにくくなっちゃいますからね。

(つづく)

カメ琴2号(3)

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斗酒庵 ふたたびサイレント月琴を作る の巻2013.4~ カメ琴2号 (3)

STEP3 カメの小細工


  ここで小さな部品をいくつか。

  まずは半月。
  今回の素材はツゲ。一風変った見慣れないカタチですが,これは西南少数民族の月琴なんかでよくある半月(テールピース)を真似したもの。

  板も狭いので通常の月琴のと違い,琵琶の覆手と同じ,片持ち型のテールピース--接着部が小さくて済む--となっております。

  次に電池ボックスを端材で作りました。
  「電池ボックス」といってもまあ,「箱」にすらなっていないシロモノで。
  9V電池をこう,マジックテープで固定するための「台」みたいなものですが。


  今回用意したアンプの回路は,以前作ったカメ琴用ミニ・アンプ「マスヲさん」のと同じですから,つけっぱなしでも4時間ぐらいはもつと思います。カメ琴もマスヲさんも,小さくて軽いし持ち運ぶのにはベンリなんですが,時折カバンの中でもみくちゃにされてるうちに,マスヲさんの電源スイッチが入ってしまっており,イザ演奏!というときになって電池切れで「はにゃ?」ということが何度かありました。

  そういう経験から言って,電池交換は容易なほうが絶対によろしい。

  当初,電源はほかの回路といっしょに胴体内部に仕込もうと思ってたんですが,交換の手間を考えるとこうして露出していたほうがいいですね。
  ----ちょっと実験してみました。


  9V電池をつなぐスナップがキツいので,一瞬,というのはまあムリですが,ポケットに予備電池を入れてたとして,だいたい1~2分もあれば交換できるかと。

  電池ボックスの上に接着中の黒檀の板は,2枚つく圧電素子の片方を貼り付ける場所。下地が硬いと高音域をよく拾ってくれます。もう1枚は桐板に直貼り。
  2枚をつないでなるべく広い領域の振動を拾ってもらう工夫です。

  胴体に響き線を仕込みます。
  カメ1号や庵主自作の胡琴「金鈴子」シリーズに仕込んだのと同じ,省スペース型の響き線ですね。
  こんな胴体で,こんなちいさな響き線ですが,それなりに効くんですよ。


  胡琴に仕込んだのと違うのは,真ん中の直線がハガネ線なとこですね。
  真鍮線だけだと反応が良すぎて,少し余韻にず太さが足りないですんで。
  表面板に触れる部分をこんな風に削ったのはちょっとした実験。
  まあこれもただの思いつきで----庵主とてべつだんそれほどの効果をキタイしてはおりませんが(笑)。


  つぎに裏板と回路部の蓋を切り出しましょう----まあ「裏板」とは言っても,表板よりさらに面積がすくないですから,もうこうなると「板」とも言えないくらいだとは思いますが。
  本体の真ん中,響き線の下の空間には,圧電素子や電池からのコードが通ります。

  左のかしげてある板,いちばん面積の広いところが,アンプやスピーカーの入る回路部をふさぐ「裏ブタ」になります。

  電池を外部に露出してしまったので,この回路部は,そうしょっちゅう開け閉めすることはないでしょう。ですので,裏ブタは木ネジ止めにしますが,裏ブタと本体がわの裏板の触れ合うところは,ブビンガの端材やツキ板を貼って保護しておきます。


  回路部の基板のおさえになるスペーサーと,電池ボックスの裏にM3のナットをエポキつけて埋め込みます。
  ここまできてようやく電源スイッチの位置が決まりました。


  まあけっきょく最初に予定していた位置(いちばん右側,アンプ回路のすぐ横)になっちゃいましたが,ここと電池ボックスの横のどちらがいいか,ちょと悩みましてん。


  裏板に補強板(ホオ,厚2mm)を貼り付けて,本体工作だいたい終了!

  さあ,続きは「染め」と「塗装」ですね。

(つづく)

カメ琴2号(2)

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斗酒庵 ふたたびサイレント月琴を作る の巻2013.4~ カメ琴2号 (2)

STEP2 鳴くカメ


  さて,カメ琴の1号はエレキとは言っても,アキバで¥100くらいで売ってる「圧電素子」というものをピックアップとして,それにボリューム抵抗とピンジャックを線で結んだだけのシロモノです。エレキ楽器として使うには,これをアンプなりにつながないともちろんマトモな音は出ません。
  まあもともとコンセプトが 「サイレント月琴」 なわけですから,普段は音出なくても一向にけっこうなのですが,ふだんちょいと使う時の用のアンプとして,木のマスにアンプ回路とスピーカーを仕込んだ 「マスヲさん」 というものも何個か作りました。

  今回はこの二つを合体させて,アンプ&スピーカー内蔵の楽器といたします。
  うむ,1号もハナからこうしておけば,わざわざアンプ,別に持ち運ぶこともなかったんだなあ。

  まずその前に胴体構造の補強を済ませてしまいましょう。


  お尻のところの左右にブロックを接着します。
  ホンモノの月琴と比べると,この楽器の胴体は直径で5センチほど小さいので,半月はこのあたり,楽器のお尻ギリギリのところにのっかります。力のかかるところなので,土台をすこし広げて安定させてあげようと思います。


  骨組みばっかりじゃイメージがまとまらないので,表板を切り出して仮にへっつけてみます。

  黒いのは指板に使ったのと同じタガヤの薄板。
  アンプとかスピーカーはこの上に仕込むこととします。
  スイッチやボリュームはナットで固定しますが,桐に直接だと,柔らかい木ですから,すぐ穴が広がってユルユルになっちゃいます。
  そこで桐板の下にもう一枚板を仕込んで,回路はおもにこの丈夫な板のほうに固定するわけです。


  この回路の板の外がわに壁を作り,アンプの部分を小さな箱におさめてしまいます。
  棹の余り材で作りました。カツラの板を3枚重ねたものですね。


  さて,そのほかの部分もどんどん進行させてゆきましょう。
  糸倉に軸孔をあけます。
  今回は古式ということで,あまり角度のついてない,糸倉からほぼまっすぐ真横に出てる感じにします。
  軸はうちの定番,スダジイ。
  丸まっちい古式の糸巻きにしようかとも考えましたが,エレキ月琴では,テンションのキツいナイロン弦を張ったりするので,操作性のいい六角軸にしておきました。


  表板を切り出します。
  じつはこれ2枚目で……1枚目はいまいちイメージと合わなくなって,けっきょく破棄しました。(汗)
  指板がほんの数ミリ,胴体がわに食い込んでいるデザインにしてあるので,まずは上端に切れ込みを入れます。
  左右両端,寸法が足りてませんが,スケスケが売り物の楽器ですので,板は全面覆ってなくていいわけですね。


  板が貼りついたら,周縁と内側,だいたいのところで切り抜きます。
  まだちょっとおデブさんっぽいですね。(w)

  これをシェイプしながら,イメージに近づけてゆきます。


  厚みを指板と面一に落としながら,全体の形を整えます。
  板の左右端はこう,なだらかに胴体の輪っかにかぶさってゆく感じで----
  かなりスマートな感じになりました。


  回路部に孔をあけます。

  いちばん大きいのは,スピーカーの穴。
  今回使うスピーカーは前にミニ・アンプ,マスヲさんシリーズで使ったのと同じ,¥100均屋で売ってるテレビにつなぐミニ・スピーカー----ほら,「テレビの音が近くで聞こえる」 ってやつですよ。
  出力は最大で2.4Wですから玩具みたいなものですが,練習の音出しならこれで十分。
  Line-outの出力端子も別につけるので,ライブの時なんかはそっちをつなげばいいわけですね。

  つづいてそのLine-outのピン・ジャックの穴,ボリューム抵抗に,スピーカー/ジャックの切替えスイッチ。

  あと,このほかに電源スイッチがあるのですが,この時点ではどこにつけようかまだちょっと悩んでて,穴あけを保留しております。

(つづく)

カメ琴2号(1)

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斗酒庵 ふたたびサイレント月琴を作る の巻2013.4~ カメ琴2号 (1)

STEP1 カメの出てきた日


  さて,胡琴やら明笛やらはべつとして。
  庵主,この1年ばかりは月琴系楽器の製作をやっておりません。
  もともとウサ琴の製作は,自作楽器を作る楽しみや趣味とか言うものではなく,月琴の構造やその失われた工程を復元するための実験でしたので,だいたいの実験の終わった現在,作る意味があんまりないんですね。

  とはいえ,たまに何かやっておかないと,イザという時のウデが落ちますので。
  14号玉ちゃんのオーナー,歌うたいの Ryo さんから依頼により,突如としてはじめました今回の製作。
  さてさて,どうなることやら。

  初代「カメ琴」の製作は,記録によれば2007年…うーむ,もう6年も前のことか。
  ウサ1号やゴッタン阮咸とほぼ同時,ちょい後といったころ。
  そもそもが,ウサ琴を作るときにちょいと失敗したエコウッドの輪っか(ウサ琴の胴体側部に使った丸い加工材)と,当時たまたま大量に買い込んだチークの角材で,何か作ろうと思い立ったのがそもそものハジマリ。


  角材と輪っかで,そう---YAM○HAの「サイレント・なんちゃら」 みたいなのが作れないかなー?

  という軽い思い付きで作った,棒に輪を噛ませただけの本体に,ピックアップを貼り付けるためだけの申しわけ程度の表板を貼ったこの楽器はしかし,その後いくつものライブで,思いのほかの活躍をしてくれました。

  なにせ月琴というのは生音の小さな楽器なもので。ステージでほかの楽器と共演するとなるとレベルの設定が難しく,実にPAさん泣かせのシロモノなんですね。その点このカメ琴,バカみたいな構造ではありますが,いちおうエレキ楽器ですんで,ラインつないであとお任せで問題がありません。そのうえ持ち運びにも便利な超軽量コンパクト,共鳴部がほとんどないので深夜の練習にも最適----と,現在も到って重宝しております。


  んではさっそく製作に入りましょう。
  初代カメ琴はたしか3週間くらいで出来上がりましたがさて,今回はどうでしょうねえ。


  まずは本体を作ります。
  前回のカメ琴では,角材の先端に別板から切り出した糸倉をハメこみました。
  これは当時のウサ琴で,ネック部分を作るときの方法を敷衍させたものですが,今回はこのところ修理でやっていた復元棹の工法でイキましょう----3Pネックですね。
  糸倉からお尻のところまで切り出した細長い板が2枚,これで心材をはさんで,本体構造をイッキに作ってしまいます。
  左右板はカツラ(厚8mm),心材にはサクラ(厚15mm)を使いました。心材は二枚に分けて,真ん中にあいた空間に響き線を入れ込みます。


  つぎに棹の付け根部分の左右にブロックを接着。ここにエコウッドの両端を固定します。
  エコウッドの端っこのほうは,ちょっと平らになってしまっていますので,この左右ブロックに密着しやすいよう,あらかじめじっくり濡らしたうえで,ウサ琴の外枠を使って曲がりを矯正しておきましょう。


  んで接着。
  お尻のほうは凸に刻んでおいて,輪っかに切れ目を入れ,ハメこみです。


  つぎに棹の表がわを斜めに削ります。

  前々から書いているように,月琴の棹は胴体の水平面と面一ではなく,山口(トップナット)のところで,背面側に3ミリくらい傾いているのが理想的なカタチ----しかしながらカメ公,ギターで言うところのスルーネック構造なため,棹だけ傾けるということができません。
  そこで指板をへっつける前のこの部分を斜めに削って,ネックの傾きの代わりにするわけですジョリジョリジョリ。


  カメ1号の主材はチーク,強度的にもあんまり心配はなかったので,指板はごくうすーい黒檀板をへっつけただけでした。今回は3P構造でもありますので,補強のためにもちょっと厚めの指板(約3ミリ)を貼り付けました。
  材はタガヤサン。ま,材質的には最強ですな。

  指板が張り付いたところで,まずは上部左右のブロックを整形。
  よぶんを切取り,かッちょヨくします。

  ここまではほんとに,たんなる角棒と輪っかの組合わせただけの物体----さあて,これを少しづつ楽器に近づけてゆきましょう。


  おつぎは棹背削り。今回の棹は,唐物月琴の真似っ子です。


  唐物月琴に多いこの絶壁型の「うなじ」。
  デザインとしては,国産月琴に多いなだらかな「うなじ」より,素朴で単純そうに見えますが,いざ削ってみますと,これが意外と難しい。
  うなじ部分のこの曲面を均等に平らに均しつつ,棹と糸倉の境目をきれいに出す--とくにそのあたりが微妙でなかなか--むしろ工作としては,いっそなだらかに削るほうが,材の無駄も労力も少なくて済むかもしれません。

  こういうことも,実際にやってみないと分からないものですねえ。

  棹背にはすこしアールをつけてあります。
  指板の幅は広めですが,厚みというか太さは国産月琴より薄い感じ。
  こういうタイプ,ウサ琴シリーズでは作りませんでしたからねえ。
  なんか新鮮です。

(つづく)

工尺譜の読み方(12)

koseki_12.txt
工尺譜を読んでみよう の巻工尺譜を読んでみよう! その12

STEP8 苦因茉莉号襲撃!


  さて,このへんから突然読まれた方などは,前の記事読んでないから分からないかもしれないので,ここらにうpされてる楽譜の,数字譜のお約束事をもう一度。

1) 月琴・胡琴・二胡の方は,数字譜の 「1」 より低い,数字の下に点のついた 「5・6・7」 は,点のない 「5・6・7」 として弾くこと。

2) 明笛・阮咸・弦子などの方は下に点のついた 「5・6・7」 はそのまま,逆に,下に点のついた 「5・6・7」 にはさまれている,上に点のついた高音は,すべて1オクターブ下げて演奏してください。





  茉莉花 MIDI茉莉花裏 MIDI  弾き合わせ MIDI

  「弾き合わせ(伴奏)」という合奏行為は,連山派・梅園派(大坂派)の記録にはよく出てくるのですが,渓派や長崎派など,ほかの流派でも同じようなことをやっていたかどうかについては,確たる証拠がありません。しかし,すでに紹介したように,渓派(東京派)の基本楽譜『清風雅譜』にある「厦門流水」と「如意串」は,そのまま無加工でオモテ/ウラとして合奏できますし,同じ派に属する山本有所の『清風雅調』(明24 上画像)などに「茉莉花裏」という譜も見えますから,当初はあまりやっていなかったととしても,他流の影響でやるようにはなっていたかもしれませんね。
  渓派に関しては写本や楽譜の書き入れなどから見て,明笛や二胡や唐琵琶,それぞれの楽器に合わせたアレンジがあったようですが,そのアレンジ自体にはあまり統一性はなく,梅園派の「伴奏曲」のように,固定された別個の曲として派生・成立する,ということはあまりなかったようです。

  というわけで,本日も合奏譜をいくつかうpりましょう。
  まずはSOS団内でも人気の高い「紗窓(さぁつぉん)」と「露月(ろげつ)」の合奏。


  紗窓 MIDI露月 MIDI  弾き合わせ MIDI


  「露月」が美しいです。
  これは梅園派の 「弄月(ろうげつ) というのを洗練した曲だと思われますが,単独で弾いても趣きのあるいい曲だと思いますよ。もちろん「紗窓」とうまくからんだ時には,えもいわれぬ快感があります。

  「弾き合わせ」ではたいていの場合,「伴奏曲」のほうが手数が多い分むずかしいのですが,この2曲の場合は「紗窓」の前半部で極端に音数が少ないため,かなり間に気をつけてないと,つい先に進んじゃって,本曲のほうが崩れてしまうことがママあります。

  月琴はそんなにサスティンが効く楽器じゃないので,長音で間を保つのがあんがい大変なのですが(汗),長く伸ばすところは 「イチ・ニ・サン・シ」 と拍を数えながら,ちゃんと間をとって演奏しましょう。



  おつぎは「平板調(ぴんぱんでゃお)」と「平板串(ぴんぱんかん)」。


  平板調 MIDI平板串 MIDI  弾き合わせ MIDI


  『音楽雑誌』に載った梅園派の対照譜では 「寒松吟(かんしょうぎん) という曲が合わされていますが,この『清楽曲譜』では「平板串」がウラとなっています。「寒松吟」と「平板串」は,出だしの部分は似てはいるものの,全体にフレーズがかなり異なるので,同じ曲,もしくはどちらからか派生した曲,というようなわけではないようです。

  「寒松吟」のほうは類例譜が少ないんですが,「平板串」は渓派中興の師・渓蓮斎富田寛の『清風柱礎』にも曲目として見えますので,この弾き合わせは渓派でもやっていたかもしれません。

  「平板調」は軽快に弾くと陽気な感じのする曲なので,庵主,よく弾いてますが,正直言いまして,この弾き合わせあんまりやったことがないですねえ。(w)



  さて,最後です。
  清楽曲中もっとも有名な「九連環(きうれんかん)」,合わせるのは「九子連環(きうしれんかん)」です。


  九連環 MIDI九子連環 MIDI  弾き合わせ MIDI

  ちょっと弾いていただければ分かるとは思うのですが。
  この「九子連環」という曲は,言っちゃえば「九連環」の高音バージョンです。
  「九連環」よりも8小節ばかり長いのですが,この部分を間奏と考えて合奏譜を組むと,本体部分はほとんど「オモテ/ウラ」のように合致します。

  じつはこの2曲には「オモテ/ウラ」である,というような解説や証拠はなく,庵主もはじめは曲名や曲調の類似から,なかば悪戯で組み合わせてみたのですが,ここまで合っちゃうというのは,やはり「九子連環」というのは単なる高音バージョンではなく,「九連環」の伴奏曲として作られたものなのじゃないかと考えます。

  まあ,面白いですのでいちど試してみてください。
  というあたりで,今回はここまで---

(つづく)


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