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カメ琴2号(1)

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斗酒庵 ふたたびサイレント月琴を作る の巻2013.4~ カメ琴2号 (1)

STEP1 カメの出てきた日


  さて,胡琴やら明笛やらはべつとして。
  庵主,この1年ばかりは月琴系楽器の製作をやっておりません。
  もともとウサ琴の製作は,自作楽器を作る楽しみや趣味とか言うものではなく,月琴の構造やその失われた工程を復元するための実験でしたので,だいたいの実験の終わった現在,作る意味があんまりないんですね。

  とはいえ,たまに何かやっておかないと,イザという時のウデが落ちますので。
  14号玉ちゃんのオーナー,歌うたいの Ryo さんから依頼により,突如としてはじめました今回の製作。
  さてさて,どうなることやら。

  初代「カメ琴」の製作は,記録によれば2007年…うーむ,もう6年も前のことか。
  ウサ1号やゴッタン阮咸とほぼ同時,ちょい後といったころ。
  そもそもが,ウサ琴を作るときにちょいと失敗したエコウッドの輪っか(ウサ琴の胴体側部に使った丸い加工材)と,当時たまたま大量に買い込んだチークの角材で,何か作ろうと思い立ったのがそもそものハジマリ。


  角材と輪っかで,そう---YAM○HAの「サイレント・なんちゃら」 みたいなのが作れないかなー?

  という軽い思い付きで作った,棒に輪を噛ませただけの本体に,ピックアップを貼り付けるためだけの申しわけ程度の表板を貼ったこの楽器はしかし,その後いくつものライブで,思いのほかの活躍をしてくれました。

  なにせ月琴というのは生音の小さな楽器なもので。ステージでほかの楽器と共演するとなるとレベルの設定が難しく,実にPAさん泣かせのシロモノなんですね。その点このカメ琴,バカみたいな構造ではありますが,いちおうエレキ楽器ですんで,ラインつないであとお任せで問題がありません。そのうえ持ち運びにも便利な超軽量コンパクト,共鳴部がほとんどないので深夜の練習にも最適----と,現在も到って重宝しております。


  んではさっそく製作に入りましょう。
  初代カメ琴はたしか3週間くらいで出来上がりましたがさて,今回はどうでしょうねえ。


  まずは本体を作ります。
  前回のカメ琴では,角材の先端に別板から切り出した糸倉をハメこみました。
  これは当時のウサ琴で,ネック部分を作るときの方法を敷衍させたものですが,今回はこのところ修理でやっていた復元棹の工法でイキましょう----3Pネックですね。
  糸倉からお尻のところまで切り出した細長い板が2枚,これで心材をはさんで,本体構造をイッキに作ってしまいます。
  左右板はカツラ(厚8mm),心材にはサクラ(厚15mm)を使いました。心材は二枚に分けて,真ん中にあいた空間に響き線を入れ込みます。


  つぎに棹の付け根部分の左右にブロックを接着。ここにエコウッドの両端を固定します。
  エコウッドの端っこのほうは,ちょっと平らになってしまっていますので,この左右ブロックに密着しやすいよう,あらかじめじっくり濡らしたうえで,ウサ琴の外枠を使って曲がりを矯正しておきましょう。


  んで接着。
  お尻のほうは凸に刻んでおいて,輪っかに切れ目を入れ,ハメこみです。


  つぎに棹の表がわを斜めに削ります。

  前々から書いているように,月琴の棹は胴体の水平面と面一ではなく,山口(トップナット)のところで,背面側に3ミリくらい傾いているのが理想的なカタチ----しかしながらカメ公,ギターで言うところのスルーネック構造なため,棹だけ傾けるということができません。
  そこで指板をへっつける前のこの部分を斜めに削って,ネックの傾きの代わりにするわけですジョリジョリジョリ。


  カメ1号の主材はチーク,強度的にもあんまり心配はなかったので,指板はごくうすーい黒檀板をへっつけただけでした。今回は3P構造でもありますので,補強のためにもちょっと厚めの指板(約3ミリ)を貼り付けました。
  材はタガヤサン。ま,材質的には最強ですな。

  指板が張り付いたところで,まずは上部左右のブロックを整形。
  よぶんを切取り,かッちょヨくします。

  ここまではほんとに,たんなる角棒と輪っかの組合わせただけの物体----さあて,これを少しづつ楽器に近づけてゆきましょう。


  おつぎは棹背削り。今回の棹は,唐物月琴の真似っ子です。


  唐物月琴に多いこの絶壁型の「うなじ」。
  デザインとしては,国産月琴に多いなだらかな「うなじ」より,素朴で単純そうに見えますが,いざ削ってみますと,これが意外と難しい。
  うなじ部分のこの曲面を均等に平らに均しつつ,棹と糸倉の境目をきれいに出す--とくにそのあたりが微妙でなかなか--むしろ工作としては,いっそなだらかに削るほうが,材の無駄も労力も少なくて済むかもしれません。

  こういうことも,実際にやってみないと分からないものですねえ。

  棹背にはすこしアールをつけてあります。
  指板の幅は広めですが,厚みというか太さは国産月琴より薄い感じ。
  こういうタイプ,ウサ琴シリーズでは作りませんでしたからねえ。
  なんか新鮮です。

(つづく)

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