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月琴33号(1)

G033_01.txt
斗酒庵 松の音色に酔う の巻2013.8~ 月琴33号 (1)

STEP1 きたの国からきた



  る~る~るるるるる~るる~

  おいちゃんはなァ,いまァ,夏休みなんだよォ…
  月琴のォ,ことなンざァ忘れてェ……ノンビリぃ…すごしたいンだなァ………

  とか思ってたんですが----月琴が,追いかけて----というかまあ,買っちゃったんですが。(w)

  月琴33号,出品者さんの画像で裏にラベルが残っておりましたのもあり,落札。

  やや長めの糸倉,くびれの浅い短めの棹。明治の国産月琴としては,寸法的にもデザイン的にも,実用本位でトラディッショナルなスタイルの楽器です。
  唐木屋かな?----でも棹茎が細いし,ラベルは小さめで3文字みたいだ。

  さてさて。

  帰省中なもンですから,曲尺もカリパスもありませんが。
  まずは出来うる限りの精度で測って調べてまいりたいと思いますぅ。




1.各部採寸
  • 全長:635mm   
  • 胴径:縦横ともに 352mm 厚:38mm(うち表裏面板ともに厚 4mm)   
  • 棹 全長:278mm(蓮頭欠落) 最大幅:31.5mm(胴接合部) 最小幅:28mm 最大厚:30mm 最小厚:25mm(指板なし)   
  • 糸倉 長:165mm(基部から先端まで) 幅:30mm(うち左右側部厚 8mm/弦池 15×125mm)指板面からの最大深度: 62mm   
  • 推定される有功弦長:415mm


2.各部所見

■ 蓮頭:欠損。  ■ 軸:4本完備。
  • 長:115mm,最大太:30mm,先端で8mm。   
  • 六角一溝。寸法的には普通の長さでやや太め,軸尻への立ち上がりも浅めだが,加工のバランス良く,やや細めに見える。

■ 糸倉~棹: 先端の間木欠損。
  • 向かって右側の第2孔の縁に小カケ。   
  • 糸倉の左右に虎杢が浮く。   
  • うなじはやや短め。ふくらのくびれはきわめて浅いが,太くは見えない。   
  • 棹背,ごく浅くアールつく。   
  • 材質はおそらくホオ(未確定)。
  棹は蓮頭と間木,フレットなどがなくなってますが,ヒビ割れなどの深刻な損傷はなく,見かけからすると状態はきわめて良いほうですね。
  材は軽軟で,基部に見られる元来の木理や色合いから,おそらくはホオと思われますが,ホオにしては珍しい虎杢が糸倉の左右にかなり美し~くあらわれてますねえ----こりゃ油磨きしたらスゴくなりそうですわ~。全体はスオウかカテキュウで軽く染められてるみたいですね。色の残りはかなり良いほう。とくに棹オモテ(指板に相当する部分)のフレット間には,当初色がかなり濃い目に残ってます。

■ 棹茎: 延長材剥離脱落。
  • 長:180mm,最大幅:21,茎最小幅(先端削ぎ落とし手前)12。   
  • 棹基部の長:39mm。   
  • 厚:14-6mm。   
  • 延長材表板側に「五」の墨書。


  茎はやや短く細身。延長材が脱落しているが,棹基部に割レなどは見られない。
  延長材に残ったニカワが健全な状態であること,また延長材の一部が基部の裏面がわに残っている(上,右画像参照)ことから,接着の劣化による自然の剥離脱落ではなく,圧力事故による故障と考えられる。

  まあ,簡単な話----こりゃ床に置いた状態で,棹か胴体を踏んだのじゃないかと思うなあ。ただし完全に体重がかかるとこまではゆかず,一瞬踏んで,「やべっ!」と足を離した,ってとこか?


■ 山口: 存。
  • 8×29×h.9,おそらくオリジナル。象牙製。   
  • 半月側から見て,左右がわずかにすぼまった台形型となっている。   
  • 糸溝はきわめて浅く,短い。   
  • 糸溝の幅:外弦間 17mm,内弦間 12mm。

■ フレット: 4本存。

  • 第1~4フレット欠損。接着痕のみ残る。   
  • 第4フレット接着痕表面板上に小カケ。   
  • 第5~8フレット存,材質は象牙,おそらくオリジナル。   
  • 柱間に装飾の痕跡は見られない。
  山口の下端を起点とした,各フレット(およびその接着痕)下端までの距離は----

   46 77 104 133 165 203 225 256 

 ■ 胴体: 表裏面板に割レ。

  面板の割レは,オモテの左右に2,ウラの右に1。いづれも上下ほぼ貫通しているが,さほど広がってはいない。
  割レの上下端を中心に,その左右に再接着痕が見られる。接着剤はいまのところ不明だが,ウラの天の板がわの木口付近に白っぽいヨゴレがあり,もしかすると木工用の瞬間接着剤の類かもしれない。

  そのほかは下縁部に打痕,打圧痕が多少見られる程度,胴材の歪みもなく,四方の接合部も比較的健全なようである。


 表面板: 7枚矧ぎ(?)
  • 木理の間隔は広めだが,ほぼ柾目の板を継いでいる。   
  • 左右に割レ,向かって左は完全に貫通,右は下端が少し残っている。いづれも板の矧ぎ目から。   
  • ピックガード痕に虫食い,直径1ミリほどの孔2つ,溝状の食害痕7~8本。   
  • 同所上のほうに線状の撥擦痕多数。胴中央に撥先による突き傷多数。



 目摂: 左右ともに存。
  • 材はおそらくホオ。   
  • ツユクサ?もしくはハナミズキ?   
  • 右目摂に一部欠け。
 そのほかの装飾: 中央飾り。
  • 材同前。   
  • 獣頭唐草。   
  • 柱間の寸法に合わせて,上下を少し削ってハメこんである。


 半月: 健全。
  • ピックガードの接着痕は80×104。   
  • 半月 40×94×h.10mm。   
  • よくある板状半円タイプの半月。   
  • 糸の断片残る,結び方には疑問。   
  • 糸孔の外弦間:28,内弦間:23。

  多少,ナゾあり。

  一つには,本来,胴の中央に貼られる円型飾りが扇飾りの位置に,上下を加工してはめこまれていること----
  あきらかに後での工作ですが,ほんらいへッついてたハズの中央付近には,この飾りによる日焼け痕やお飾りの接着痕がまるで見当たらないので,もしかすると,最初の所有者による古い改造なのかもしれません。
  二つめに,ピックガードの日焼け痕の上にバチ傷がたくさんあること。
  ピックガードのヘビ皮なり布なりがハガれた「後に」ついたキズだってのなら,はあまァ,楽器が壊れてから誰かイタズラしたのかなあ?くらいなものなんですが。キズの状態から見て,これらはハガれる「前に」つけられたキズのようです。
  つまり,最初はピックガードが貼ってない状態で弾かれてて,後から誰かが貼り付けた,ということになります。
  日焼け痕が比較的くっきりしていることからしても,ピックガードが貼られたのは作られてから,そんなに経ってないころだとは思います。
  もしかすると「飾りなンざァ要らねェ!!」と,カッコつけてハズしてみたのはいいけど,やっぱりカッコ悪いので,しばらくしてから元に戻したのかもしれませんねえ。

 裏面板: 12枚矧ぎ

  32号と同じく,木理もバラバラな小板(幅3センチていど)を多く継いである。節目のあるものが多い。
  • 左から8・9枚目の矧ぎ目,割レ,上下貫通,下端でやや広がる。   
  • 割レ上端の左右と,下端から左がわ地の側板の中央部あたりに再接着痕。   
  • 割レ下端の面板下縁部周辺に多少木地の荒れた痕,再接着時の加工痕か?   
  • 下縁部中央付近の木口に虫食い孔。


 側板: 4枚組み
  • 材はホオと思われるが,表面が多少傷んでいるので,棹同様の虎杢があらわれているかどうかは不明。   
  • 棹孔の表板がわに「五」の墨書。


  さて,問題の。作者をしめすラベルは裏板の中央部上端。 かなり傷んでますが,推測される元のサイズは 25×32mm ほどです。

  「松音斎」さんですね。

  自出し月琴ではハジメテですが,何年か前に頼まれて修理したことがあります。
  わたしはこの「松音斎」は24号と30号の作者「松琴斎」(伊杉堂)の師匠か同系統の作家さんではないかと考えています。
  この二人の楽器は外見上,たいへんよく似ていますし,ラベルの形式もそっくりです。
  構造も似通ってますが,工作の丁寧さと緻密さは「松音斎」のほうがかなり上だと思いますね。

  前に修理した一本と比べますと目摂など装飾の手が劣ることから,「松音斎」の中級品だと考えますが,棹の材質などはかなり凝ってますよねえ(虎杢のホオなんて見たことないぞ!)。

(つづく)


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