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明笛について(12)

MIN_12.txt
斗酒庵 明笛を調べる の巻明笛・清笛-清楽の基本音階についての研究-(12)

STEP3(つづき) 明笛31号

  もうもう,この数になると呆れてしまいますね。
  今年も後半に入ってから,なぜか明笛の落札ラッシュが続いております。
  (何かタタリのようなものかもしれません ヒィー(((゚Д゚)))ヒィー!)

  その先頭を切って工房にやってきたのが,この笛。
  (画像はぜんぶクリックで別窓拡大します)


 口 ●●●●●● 合/六 4Bb+10
 口 ●●●●●○ 四/五 5C-30
 口 ●●●●○○  5C#+14
 口 ●●●○●○  5Eb-20
 口 ●●○○●○  5F-20
 口 ●○○○●○  5G-10
 口 ○●●○●○  5G#-5A
 (口は歌口,●閉鎖,○開放)

  全長なんと646ミリ。
  中継ぎ式の現代中国笛子ではともかく,日本の明笛としてはかなり長大な一本です。

  このサイズになるとさすがに,コミケとかワンフェス,持ち込み禁止だな~(w)


  ホント,長いんですよね~。(汗)

  上画像,31号の下2本は全閉鎖BもしくはBbの,比較的古いタイプの清楽用明笛。次の1本は明治末から大正期にかけて作られた,典型的なデザインと寸法の明笛,全閉鎖はC。いちばん下の短いのは,同じころによく作られた,携帯用の短い明笛です。


  中国笛子と同じに管頭と歌口の間が長いですよね。韓国のテグムなんかだと,この部分を肩口に乗せるようにして吹いたりもします。清楽の古い譜本の「楽器図」なんかでは,「明笛(もしくは清笛)」として,この手のデザインのやたらと長そうな笛がよく描かれますが,日本において作られた明笛はこのあたりが比較的短いもののほうが圧倒的に多くて,古物のこうしたタイプの笛にお目にかかれることは,実際には滅多にありません。

  音階はほぼ正確に,文献どおりの「清楽音階」ですね。
  「凡」 の音(5A)は 口 ○●○○●○ の運指のときのほうが安定して出ました。
  上の基本運指表とは違いますが,『月琴胡琴明笛独稽古』(M.34)や『明笛流行俗曲』などでは,こちらのほうが 「凡」 の運指になってますから,まあこれでも辻褄は合うわけで。
  呂音での最高音は 口 ○●●●●● で5Bb。甲音だとさて…庵主では6Eb+15が限界でしたね。


  管頭の飾りから歌口にかけてと,管尻がわの左右中央に刻字が施されています。
  正直よく読めないんですが…

管頭がわ       管尻がわ
   江天一巻喜層云愁知東水
   玉月順江土沙人和見月年
   子和无人  乾隆乙卯
   年々三月有三日
         子才
   人有看着花白

  てとこかなあ…このほか管尻のほうの刻字「人有看着花白」の「着」の横に,竹カンムリに「丨」みたいな字があるんですが,ここだけ墨が入っていません。これは「タケなんとか」というような笛師の署名かあるいは誤刻だと思いますね。いちおうこの文を読みやすく切ると----

   江天一圏 (こうてんいっけん) 層雲を喜ぶ/愁いて知る東水玉月 江に順がうを/
     土沙人和して月を見る/年は子(ね) 和するに人なし/乾隆乙卯

   年々三月有三日 (ねんねんさんがつゆうみっか)
   人に花の白きを看着 (二文字で「み」) るあり/
    子の才 (ネズミ年)

  とか。 かなり強引な解読(?)であります。(汗)
  年号とか数字以外は,たぶんぜってー間違ってるからね。 誰か読める人タスケテ!!(w)


  「乾隆乙卯」は「乾隆45年」,日本だと「安永9年」で,干支は「庚子」。 文中「年子」「子才」とあるのはその「かのえネズミ年」のことですね。

  西暦だとなんと1780年!

  ではありますが…(^_^;)
  ----庵主,以前にも書いたとおり,骨董屋の小僧やってたことがある関係から,こういういかにもな 歴史浪漫満載のブツ が出てくると,逆にかなり冷めた眼になっちゃいます。(w)

  この笛,明楽などで使われる古い古い笛の形を模してはおりますが,各部の状態などからはそれほど古いものという感じがいたしません。 新素材の使用など明確な証拠はないので,あくまで古物屋門前の小僧としてのカンみたいなものですが……18世紀どころか,おそらくは明治以降に,古い笛をお手本に,日本で作られたものではないか,と考えます。


  第一に,なんとなく唐物のふりをさせてはいますが,刻字はかなり雑。中国の年号を使っておきながら,日本の干支を併記するなんてのも,なんとなくチグハグです。 まあここまでの長大な一節になると,日本ではあまり手に入らないでしょうから,竹材自体は中国のものかもしれませんね。
  歌口の底のところに孔を開けたときの錐の痕が見えます。その痕跡から三ツ目錐だと思いますが,このへんも古いものにしてはちょっと工作が雑ですね。 庵主が「南京笛」と呼んでいる,中国笛子をそのまま真似た,総巻タイプの笛ではこのサイズのものも珍しくはありませんが,そちらのタイプだと,日本で作られたものでも管内に塗りを施さないのがふつう(現代中国笛子も管内は塗っていません)。対してこの笛の管内は,かなり丁寧に塗られてますね。これは日本笛師の技巧です。

  ではなぜ「1780年」なのか?

  ウソにしても,なんでこの年にしたのか?
  人間というものは,意外と根拠のないことが出来ないものです。
  ウソをつくにしても,そこには必ず,なんらかの理由や根拠,きっかけがあります。
  そこでこの年を徹底的に調べてみたんですが----まず,中国において。音楽関係で何か際立ったことが----特に,ありませんね。(汗)
  じゃ日本だ----なんせ中国の年号で「乙卯(ウサギどし)」と書いてるくせに,「子才(ネズミどし)」とわざわざ二箇所も彫ってあるくらいです。

  刻字者は日本人に違いない。


  うむ,大したモノは----ありました。

  この年,『魏氏楽器図』 という本が出版されています。「清」楽じゃなく「明楽」の本ですが。

  この笛,上にも書いてあるように,音階はまた別として,その外見や寸法は「清楽の明笛」(ややこしいなあ)より,「明楽の明笛」に合わせてあります。
  もしこれが 『魏氏楽器図』 を見ながら作った,とかいう笛だとするなら……年号を本の出版年からとっちゃった,なんてこともじゅうぶん考えられますでしょ?
  ----ふだん修理で贋作者まがいのことしてますと,こんなプロファイルもしちゃうようになっちゃうんですねえ。

  あーやだやだ,純粋だったあのころに……(泣)


  庵主がふだん吹いてる携帯用明笛の4号なんかからすると,全長は2倍の長さ。
  管頭の部分も一般的な明笛よりずっと長いので,持ったときのバランスなんかも違いますが,管尻にお飾りを紐でぶら下げたところ,ちょうどよく釣り合いがとれるようになりました----ナルホド,このお飾りって文献とか資料写真ではよく見るけど,ちゃんと意味あったんだ。

  上にも書いたように管内部の塗りはかなり丁寧ですが,いちばん大事な歌口あたりの塗りに,塗りアラの凸凹がそのままになってたりするところからしても,ほとんど吹かれた形跡がありません
  でもまあ,そのへんを軽く削って均したり磨いたり---原作の故工人に代わって仕上げの微調整をしてやったようなもんです(少怒)---したらかなり音の出しやすい笛になりました。 そのほかの修理は----


  管頭と管尻の飾りに,ネズちゅーの齧り痕が少々ありました。
  管尻のほうは墨汁か何かを塗ってごまかしてありますね。


  修理は胡粉をよく擦って,エポキで練ったものをパテにして盛り,整形した後アクリル塗料で部分的な補彩を施しました。


  まあ音には関係ない部分だし,もとより服にひっかからないとか,まあ目立たないといった程度の補修です。

  この色のついている部分----ネオクの写真で見たときには,鼈甲か何かを巻いているのかと思ってたんですが(そういう例があった),コレほんと,ただ塗ってあるだけなんですね。ウルシ的な塗料だとは思いますが----緑色してますねえ,何でしょう?

  たぶんまがい物ではありますが,なんせ長くてカッコはいいし。(^_^;)
  音階はかなり正確に清楽音階のようなので,このところWSなんかでもよく使っています。
  いずれこの笛を参考に自作明笛を…とかも考えてますよぉ。

(つづく)

明笛の吹き方(2)

MINTEKI02.txt
ちゃんと吹けてない奴がなんなのですが の巻明笛の吹き方 その2

STEP2 吹けよ風!倒れよ酸欠!

  響き孔さえふさいでしまえば,明笛なンぞはただの笛,つか筒----つか,筒に孔をあけただけのシロモノですよね。

  「ほら,瓶の口に息を吹き込んでぶーぶー鳴らす,
アレといっしょだよ!カンタン,カンタン!」        

  などと,管楽器リア充どもはのたまいます。(怒)
  (瓶は瓶じゃ----笛とは違うし,こちとら瓶すら上手く鳴らせんものを……バクハツしろ)
  糸物専門ン十年,リコーダーすらマトモに吹けない庵主にとって,「明笛を吹く」なんぞという行為は,ゼロからの出発どころかマイナス地点,日本海溝あるいはルルイエからの脱出にほかなりませんでした。(弩泣)

  およそ一年あまり,筒ッぽの穴めがけて息を吹きかけ続け,酸欠で倒れること数十度。
  はじめて 「ぺひょ~」 と音らしいモノが鳴ったとき,ナミダで青空が見えなくなったことのある庵主では,コトバでうまく説明できませんが----




  だいたいこんな感じでやると,もしかして出るんじゃないかと。(w)
  (画像はクリックで拡大)


  指孔はぜんぶふさいじゃうのより,右手がわの1・2孔くらい開いておいたほうが,最初は音が出しやすいですね。

  まあ庵主みたいに,どれほど不得手なニンゲンでも,一年も息を吹き込み続ければ 「ぷひょ~」 とか 「ぺひゃ~」 みたいな感じには鳴ると思うので,あとは気長に試してくんな。とにかく音が出るようになれば,この楽器,そんなに難しくはありません。(まだ大して吹けもんクセに…)


  音が出るようになったら,つぎは音階ですね。

  明笛は指孔をぜんぶふさいだ音,「全閉鎖」の音が工尺譜でいう「合(ホー)」の音となります。
  古い明笛は,この音がだいたい 「Bb~B」,大正期あたりに作られたものは 「C」 のものが多いようですね。

歌口響孔左手右手工尺譜西洋音階
(C)
西洋音階
(B)
●●●●●●b
●●●●●○
●●●●○○#
●●●○●○b
●●○○●○
●○○○●○
○●○○●○b
○:ひらく孔 / ●:指でふさぐ孔


  くらいの感じです。
  明笛のレポートにも書いたとおり,庵主が明笛はじめたのは,この「音階」を調べるため。まだ調査中ですんで,対応してる西洋音階はまあ大体のところ。笛によってはもっとハズれてたりもしますので,あまり信用しないでね。

  とにかく大事なのは,「明笛」ってのは月琴では出せない工尺譜の「合・四・乙(低い)」の音が出せる楽器だ,ってとこですね。


  笛と合奏する場合,音合せで,月琴はまずこれの 「上」 の音に,低音弦を合わせます。つづいて高音弦----本ではコレ 「○ ■ ●●● ●●●(合)」 の 「甲音(カンオン)」 を使う,ということになってます。
  しかしながらこの 「甲音」,初心者にはなかなかうまく出せません。(^_^;)
  音が出た,ドレミも吹けたとなって次に待ち構えてる難関が,この 「甲音」 ですねえ。

(注)ふつうに吹いて出る音を 「呂音」(リョオン-乙音「オツオン」ともいう),指遣いは同じで「息を強く吹き込んで」出すオクターブ上の高音を 「甲音」 と言います。ホレ,きーきー声を 「甲高い(かんだかい)」 なんて言うでしょうが? あの「カン」ですよん。


  本には 「高音を出す時は息を強く」 とかって書いてあるので,庵主,顔を真っ赤にして,レンガの家を吹き飛ばさんとするオオカミさながら,ぶーぶーやってはぶッ倒れてた時期もありましたが,ちッとも出やしねえ。
  篠笛やってる御仁が 「これこれ,そうじゃない。ちょと唇をすぼめるようにしてみな。」 と教えてくれたんで,今はようやく少し出るようになりましたね。


  単に 「強く吹き込む」 んじゃなくて,息を 「集束して(歌口に)強く当てる」 って言うのが正しい!

  こりゃ笛吹きども,日本語は正しく使え!


  ま,それはともかく。
  音合せにおいて 「○ ■ ●●● ●●●」 の「甲音」だと音が安定しないときは,呂音---ふつうの息遣いのままで

   ○ ■ ○●● ●●●

という運指を試してみてください。多くの笛ではこれで筒音のオクターブ上が出るようになってます。工尺譜でいうと 「六」 の音,月琴の高音弦の音になるはずです。
  あと「尺」まではだいたいふつうに出るけど,「工」「凡」が安定しない時は,これと同様に右手の孔をぜんぶふさいで,

  ○ ■ ●○○ ●●● 工
  ○ ■ ○●○ ●●● 凡

  としたほうがいい場合もあります。
  (注) ただし笛によっては,音が半音ぐらい高くなっちゃうこともあります。

  笛のドレミ(工尺譜だと上尺工ですが)が出せるようになったら,いよいよ曲に挑戦ですよね!



  清楽の合奏における明笛の役割は主に 「低音パートの演奏」です。
  「月琴の弾き方」とか「工尺譜の読み方」の記事のなかで,「月琴では(工尺譜の)合・四は,1オクターブ上の六・五で弾く」 って何度か書きましたよね。
  月琴の最低音は「上」ですから,そこより低い「合・四」の音はナイ,ので代わりに,オクターブ上の「六・五」の音で弾くしかナイわけですね。これに対して明笛の最低音は「合」ですから,とうぜん「合・四」は 工尺譜のとおり低い音 で 「六・五」はその1オクターブ上 の音で吹くことになります,が。

  明笛にも月琴と同じような符号読み替えのキマリがあります。
  まずは工尺譜を,まあ「九連環」ですね。(画像はクリックで拡大)


  2・3行目に,合・四にはさまれて 「仩」(上の1オクターブ高い音)がありますよね。
  この部分を,例えばそのままMIDIで組んでみると,イキナリどえりゃあアがッたりサがッたり,すンごい気持ちの悪いメロディになります。また実際に笛で吹いてみると分かるんですが,呂音の息遣いで合・四の低音を出した直後に 「仩」 とか 「伬」 の音を出す,ってのはなかなか難しいものです。
  逆に「仩」や「伬」が「六・五」に隣り合わせてある場合は,「六・五」がすでに甲音なので,息遣いはそのまま,運指だけ変えればいいので,さほど難しくはありません。

  呂音からいきなり甲音ってのは,練習すればもちろん出ないわけではありませんが,その場合もチューナーで測ってみると,1オクターブきちんと高くはなってないことのほうが多いですね。演奏もきわめて大変で,不自然なものとなりやすいです。
  どッかの国の古代の呪術音楽や,日本の雅楽なんやらならこれでもいいんでしょうが,中国の民間音楽や伝承音楽が,そんなに気持ち悪いシロモノでないことは,十二楽坊あたりのCDでも聞けば容易に気がつくはずですね。

  前にも書いたように「工尺譜」ってのは,きわめて合理的な「総譜(オールスコア)」です。

  複数の異なる楽器の奏者が,同じ一枚の紙,同じ一行の文字列を見ながら,それぞれのパートをふつうに弾けるようになってます。
  なので月琴の奏者が「合・四」を「六・五」に置き換えて弾くのと同じように,明笛の奏者は「合・四」にはさまれた,もしくは隣り合わせた高音を,甲音ではなく呂音----オクターブ低い音で演奏しましょう。

  上の譜で言うと,2行目の 「合合四仩仩合四。」 を,月琴は 六六五仩仩六五。」 で弾きますが,明笛は 「合合四上上合四。」 で吹く,というわけですね。

  月琴の場合と違ってこれは本には書いてないことなんですが,楽器の性能から考えても(カンタンに言うと,そッちのほうが吹くのがラク),またそうしたほうがより「ちゃんとした」アンサンブルとして聞こえること,また同じ曲の楽譜で流派によって「合・四」が「六・五」になっていたりする,その違いの説明にもなります。(注) たぶん,昔のヒトにとっては言わずもがな,なことだったンじゃないのかな----まあ,庵主の間違いだったとしても,そのほうがずッとマシに聞こえますから,とりあえずはそうしといてください。

  吹くのに慣れて,いちど工尺譜の音階どおりに吹いてみれば,イヤでも分かるとも思いますし。
  ではでは。

(つづく)

(注) 「合・四/六・五の書き分け」については,明治時代の『音楽雑誌』などでも「質問コーナー」みたいなところで取り沙汰されてますが,当時の識者の答えは「合・四/六・五の書き分けに,それほどの理由はない」ってとこでした。現在の研究者さんたちも同じように考えている人が多く,「記譜者の個人的な嗜好」みたいなのが定説になってます。これは「明清楽の演奏はすべての楽器がユニゾン」という,音楽辞典などにある誤った決め付けがあることも一因ですが,実際にはまあ,誰もちゃんと考えたことがない,というのが正直なところでしょうか。
  庵主はこれを,基本的には流派や伝系の違いによるアレンジの差だと考えています。たとえば明笛が専門の先生なら「合・四」が多くなるでしょうし,月琴が得意な先生なら「合・四」の代わりに「六・五」で記譜することが多くなるでしょう。また多くさまざまな楽器が扱えた人なら「ここは明笛の低音で」とか「ここは高音そのままで」と,合奏時の効果を考えて書き分けたはず,そういう相違からくるものだと考えています。
  実際この「合・四/六・五」のアレンジの違いによって,譜本の伝系,すなわちは編者の流派が分かるような場合も多くあります。「たんなる嗜好」なんてものじゃなく,清楽の研究においては,けっこう大切な手がかりの一つだと,思うんですがね。


明笛の吹き方(1)

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ちゃんと吹けてない奴がなんなのですが の巻明笛の吹き方 その1

STEP1 ただの筒がなぜ鳴るのか,わたしにはまだよくわからないけど

  さて,明笛を吹いてみましょう。

  まず楽器の説明からまいりましょうか。(画像,クリックで拡大)


  月琴と同じようなもので,庵主には 「アタマについてる飾りはなンて言うの?」「おシリのラッパはなンて名前?」 とゆーような余計なギモンがイロイロと沸いてきたりするんですが,そのあたり,笛の専門家に尋ねるとナゼかキレやがるんで,もう聞きません。(w)

  ふつうの竹笛,横笛と違うところは,まず孔の数。篠笛だと指孔は7つ,古典笛だと6つですが,この明笛,一般にはぜんぶで12コもの穴ポコがあいております。人間の指の数を越えてますねえ----まあもっとも,ぜんぶを指で押えるわけではありませんが。


  画像いちばん左にあいてるのが 「歌口(うたくち),ここから息を吹き込みます。
  つぎにあいてるのが 「響孔」,一般的にこの孔はほかの穴より小さめで,まン丸くあけられていることが多い----この穴については,あとでまた書きますね。
  つぎの六つが 「指孔」,ここを指でふさいだりあけたりして音程を変えます。

  あと4つ,お尻のほうに孔があいてます。明治の末から大正期に作られた明笛や,携帯用の短い明笛では,これらの孔は省略されていることも多い。
  指孔とならんで縦に二つ。これは 「飾り孔」 とも 「露切り孔」 とも。また,ここを塞いで笛の調子を変える孔だとも解説されてますが,ちゃんと気合入れて調べた人もいないようで,良く分かりません。(注)



  その良くわからない孔の,ちょっと歌口がわの裏側に,横に二つ並んであいてるのは,お飾りの紐を通す孔です。
  この孔は一部の本では 「裏孔」 とも書かれてますが,オモテがわの二つといっしょくたに 「飾り孔」 とされることもあります。
  「飾り」を通すんだから,こッちのが「飾り孔」デショ,とも思うのですが,ある資料ではこッちこそ本当の 「露切り孔」 である,とされてました。ふつうはここに飾りのついた紐を通してブラさげるのですが,この紐のもともとの意味合いは,管の内がわを流れてきた 「お露」 (吹いてるうちに息が凝固したもの,まあふつう「おつゆ」とか「ヨダレ」とか言ってますなァ)が,ここに溜まって,紐を伝って落ちるようにするためだ----なンてハナシなんですが,周囲に多少メイワクでも,笛ぶんぶん振ったほうがよッぽど早いんでアヤしいもンです。
  ただ表にあいてる 自称「調子孔」 より手前にあるってことは,むしろこの孔の位置でその笛の調子が決まってるハズ(ピタゴラスさんの定理とやらを思い出してくださいな)なので,むしろこッちが 「調子孔」 なンじゃないかなあ,という気もします。

  まあそのへんは,笛吹く上ではあんまり関係がないので,とりあえずは忘れてください。

  明笛は基本的に6コの指孔を使って吹く笛で,その意味では日本で「古典調」を吹く横笛とあまり違いがありません。
  違うのが,この歌口と指孔の間にある「響孔」というものですね。
  この笛は,ここをふさがないと音が出ませんので,まずはここをふさいでしまいましょう。


  本式には「笛膜」というものを貼ります。
  「膜」を貼る孔ですので,中国の笛子では 「膜孔」 と呼ばれています。
  日本の明笛では 「響孔」 ですが,これだって 「キョウコウ」 と読むのやら 「ヒビキアナ」 やら,実のところハッキリしません。(w 庵主は「響き孔」派です)
  「紙孔」「竹紙孔」 と書いてる資料もあります。これは笛膜に使うのが,若い竹の茎の内側にできる,薄い膜みたいな内皮,「竹紙」だったからですね。

  竹の内皮は自分で獲りにでも行かないとちょっと手に入りませんが,中国笛子では蘆の茎の内皮 「蘆紙」 が使われてまして,こちらは中国屋楽器店さんあたりの通販で買えますので,それでもけっこう。そんな高いものじゃありません。
  日本の笛屋さんでも 「竹鳴紙」「竹紙」 などの名称で,ここに貼る紙を売ってるところがあります。
  「竹紙」とは書いてますがホンモノの竹の内皮とかじゃなく,まあブーブー紙の類ですね。

  そうしたごく薄い膜をここに,ツバや薄めたニカワを塗って貼り付け,共鳴,振動させて倍音(甲高い音)を出す,というのがこの楽器本来の音なのですが----これがホレ,あの,京劇でヒロインが突然,おツムのてッぺんから出てるみたいな声あげたりするでしょ?
  あンな感じでして。

  日本人好みではなかったせいか,倍音の効果は日本製の紙のほうが「竹紙」「蘆紙」よりも小さくなってます。

  笛屋さんは 「新聞紙がイチバン」 と言いますし,庵主はマスキングテープ(15mm幅)を愛用しております。
  こういうもンでふさいだ場合,明笛本来の響きはかなり失われますが,なにより耳障りじゃないので,それでヨシとします。

  あ,ここに使うのにセロハンテープは禁止ですよ。

  あれだと,粘着力が強すぎて笛が傷みますからね。
  どうしても本式にやりたい方は,いッぺんモノは試し,「蘆紙」とか貼り付ける接着剤「阿膠(アージャオ,ロバの皮から作ったニカワ,なンでロバなのかは知らん)」なぞそろえ,笛子の吹き方など書いてあるページを読みながら,貼っつけて,思いッきり吹いてみてください。 ブブゼラがなぜ禁止になったのか,庵主には分かる気がしています………

  ハイ,篠笛とか横笛とかフルートをやったことのある方には,こッから先の説明は不要ですね----

   勝手に吹きやがれ,この管楽器セレブども!

  リコーダーが吹けなくて,小学校の数年間,音楽の時間は笛を口に当てて,吹くマネだけをして過ごしたような薄暗い音楽……いえ,管楽器人生を送ってきたヒトのみ,この先に進んでください。つか---

   吹ける奴は見るな。(泣)


(つづく)

(注) 明笛や笛子の仲間の朝鮮の笛「テグム」では,この管尻のところの裏側に「七星孔(チルソンゴン)」という孔があけられています。(「明笛について」9参照)明笛の飾り孔同様,演奏には使われませんが「音程を微調節するためにあけられる」と書かれている資料もあります。中国笛子ではオモテがわにある二つを「前出音孔」ウラのを「後出音孔」とし,裏側のを「筒音」を決める孔,すなわち「調子孔」だとしています。考古学資料から,古代の笛は筒の両端が閉じたカタチになっている「閉鎖管」であったと言われています。現在の笛子や明笛は,日本の篠笛や西洋のフルートなどと同じく,管頭側をふさぎ,管尻側の筒の口を開けたままにした「開管」楽器です。こうした笛の場合,基本的には筒の長さがそのままその笛の調子になりますが,完全な「閉鎖管」の場合,その調子は歌口から管尻がわにあけられる「音孔」までの長さで決まります(考古学資料や古文献によれば調子を決めるこの孔は,指孔から見て裏側にあけられていることが多い)。笛が「閉鎖管」だったときの名残,すなわちこうした孔によってその笛の調子が決められていた,その名残と工作が,本来はそんなことをする必要もない開管楽器なった今も,そのまま残されているのが,笛子や明笛にあるこの「飾り孔」なのではないでしょうか。 こら笛吹きども!このくらいのこと調べてどっかにちゃんと書いておけ!(怒)

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