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明笛の吹き方(1)

MINTEKI01.txt
ちゃんと吹けてない奴がなんなのですが の巻明笛の吹き方 その1

STEP1 ただの筒がなぜ鳴るのか,わたしにはまだよくわからないけど

  さて,明笛を吹いてみましょう。

  まず楽器の説明からまいりましょうか。(画像,クリックで拡大)


  月琴と同じようなもので,庵主には 「アタマについてる飾りはなンて言うの?」「おシリのラッパはなンて名前?」 とゆーような余計なギモンがイロイロと沸いてきたりするんですが,そのあたり,笛の専門家に尋ねるとナゼかキレやがるんで,もう聞きません。(w)

  ふつうの竹笛,横笛と違うところは,まず孔の数。篠笛だと指孔は7つ,古典笛だと6つですが,この明笛,一般にはぜんぶで12コもの穴ポコがあいております。人間の指の数を越えてますねえ----まあもっとも,ぜんぶを指で押えるわけではありませんが。


  画像いちばん左にあいてるのが 「歌口(うたくち),ここから息を吹き込みます。
  つぎにあいてるのが 「響孔」,一般的にこの孔はほかの穴より小さめで,まン丸くあけられていることが多い----この穴については,あとでまた書きますね。
  つぎの六つが 「指孔」,ここを指でふさいだりあけたりして音程を変えます。

  あと4つ,お尻のほうに孔があいてます。明治の末から大正期に作られた明笛や,携帯用の短い明笛では,これらの孔は省略されていることも多い。
  指孔とならんで縦に二つ。これは 「飾り孔」 とも 「露切り孔」 とも。また,ここを塞いで笛の調子を変える孔だとも解説されてますが,ちゃんと気合入れて調べた人もいないようで,良く分かりません。(注)



  その良くわからない孔の,ちょっと歌口がわの裏側に,横に二つ並んであいてるのは,お飾りの紐を通す孔です。
  この孔は一部の本では 「裏孔」 とも書かれてますが,オモテがわの二つといっしょくたに 「飾り孔」 とされることもあります。
  「飾り」を通すんだから,こッちのが「飾り孔」デショ,とも思うのですが,ある資料ではこッちこそ本当の 「露切り孔」 である,とされてました。ふつうはここに飾りのついた紐を通してブラさげるのですが,この紐のもともとの意味合いは,管の内がわを流れてきた 「お露」 (吹いてるうちに息が凝固したもの,まあふつう「おつゆ」とか「ヨダレ」とか言ってますなァ)が,ここに溜まって,紐を伝って落ちるようにするためだ----なンてハナシなんですが,周囲に多少メイワクでも,笛ぶんぶん振ったほうがよッぽど早いんでアヤしいもンです。
  ただ表にあいてる 自称「調子孔」 より手前にあるってことは,むしろこの孔の位置でその笛の調子が決まってるハズ(ピタゴラスさんの定理とやらを思い出してくださいな)なので,むしろこッちが 「調子孔」 なンじゃないかなあ,という気もします。

  まあそのへんは,笛吹く上ではあんまり関係がないので,とりあえずは忘れてください。

  明笛は基本的に6コの指孔を使って吹く笛で,その意味では日本で「古典調」を吹く横笛とあまり違いがありません。
  違うのが,この歌口と指孔の間にある「響孔」というものですね。
  この笛は,ここをふさがないと音が出ませんので,まずはここをふさいでしまいましょう。


  本式には「笛膜」というものを貼ります。
  「膜」を貼る孔ですので,中国の笛子では 「膜孔」 と呼ばれています。
  日本の明笛では 「響孔」 ですが,これだって 「キョウコウ」 と読むのやら 「ヒビキアナ」 やら,実のところハッキリしません。(w 庵主は「響き孔」派です)
  「紙孔」「竹紙孔」 と書いてる資料もあります。これは笛膜に使うのが,若い竹の茎の内側にできる,薄い膜みたいな内皮,「竹紙」だったからですね。

  竹の内皮は自分で獲りにでも行かないとちょっと手に入りませんが,中国笛子では蘆の茎の内皮 「蘆紙」 が使われてまして,こちらは中国屋楽器店さんあたりの通販で買えますので,それでもけっこう。そんな高いものじゃありません。
  日本の笛屋さんでも 「竹鳴紙」「竹紙」 などの名称で,ここに貼る紙を売ってるところがあります。
  「竹紙」とは書いてますがホンモノの竹の内皮とかじゃなく,まあブーブー紙の類ですね。

  そうしたごく薄い膜をここに,ツバや薄めたニカワを塗って貼り付け,共鳴,振動させて倍音(甲高い音)を出す,というのがこの楽器本来の音なのですが----これがホレ,あの,京劇でヒロインが突然,おツムのてッぺんから出てるみたいな声あげたりするでしょ?
  あンな感じでして。

  日本人好みではなかったせいか,倍音の効果は日本製の紙のほうが「竹紙」「蘆紙」よりも小さくなってます。

  笛屋さんは 「新聞紙がイチバン」 と言いますし,庵主はマスキングテープ(15mm幅)を愛用しております。
  こういうもンでふさいだ場合,明笛本来の響きはかなり失われますが,なにより耳障りじゃないので,それでヨシとします。

  あ,ここに使うのにセロハンテープは禁止ですよ。

  あれだと,粘着力が強すぎて笛が傷みますからね。
  どうしても本式にやりたい方は,いッぺんモノは試し,「蘆紙」とか貼り付ける接着剤「阿膠(アージャオ,ロバの皮から作ったニカワ,なンでロバなのかは知らん)」なぞそろえ,笛子の吹き方など書いてあるページを読みながら,貼っつけて,思いッきり吹いてみてください。 ブブゼラがなぜ禁止になったのか,庵主には分かる気がしています………

  ハイ,篠笛とか横笛とかフルートをやったことのある方には,こッから先の説明は不要ですね----

   勝手に吹きやがれ,この管楽器セレブども!

  リコーダーが吹けなくて,小学校の数年間,音楽の時間は笛を口に当てて,吹くマネだけをして過ごしたような薄暗い音楽……いえ,管楽器人生を送ってきたヒトのみ,この先に進んでください。つか---

   吹ける奴は見るな。(泣)


(つづく)

(注) 明笛や笛子の仲間の朝鮮の笛「テグム」では,この管尻のところの裏側に「七星孔(チルソンゴン)」という孔があけられています。(「明笛について」9参照)明笛の飾り孔同様,演奏には使われませんが「音程を微調節するためにあけられる」と書かれている資料もあります。中国笛子ではオモテがわにある二つを「前出音孔」ウラのを「後出音孔」とし,裏側のを「筒音」を決める孔,すなわち「調子孔」だとしています。考古学資料から,古代の笛は筒の両端が閉じたカタチになっている「閉鎖管」であったと言われています。現在の笛子や明笛は,日本の篠笛や西洋のフルートなどと同じく,管頭側をふさぎ,管尻側の筒の口を開けたままにした「開管」楽器です。こうした笛の場合,基本的には筒の長さがそのままその笛の調子になりますが,完全な「閉鎖管」の場合,その調子は歌口から管尻がわにあけられる「音孔」までの長さで決まります(考古学資料や古文献によれば調子を決めるこの孔は,指孔から見て裏側にあけられていることが多い)。笛が「閉鎖管」だったときの名残,すなわちこうした孔によってその笛の調子が決められていた,その名残と工作が,本来はそんなことをする必要もない開管楽器なった今も,そのまま残されているのが,笛子や明笛にあるこの「飾り孔」なのではないでしょうか。 こら笛吹きども!このくらいのこと調べてどっかにちゃんと書いておけ!(怒)

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