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明笛について(13)

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斗酒庵 明笛を調べる の巻明笛・清笛-清楽の基本音階についての研究-(13)

STEP3(つづき) 明笛32~35号

  去年後半,とつぜんにおとづれた庵主の「明笛モテ期」。
  数ヶ月の間に7本もの明笛が,庵主のもとへ次から次へと届けられました。

  いやあ,ほんとになんだったのでしょうねえ。(汗)
  これで庵主の明笛吹奏のワザが一気に上達!----とかなったんだったら,そりゃもう "神様に愛されてるぅ" の世界なんですが。(w) 腕前のほうはまあ相変わらず。 あ,でも最近,「九連環」はけっこう上手く吹けるようになりましたよ。

  31号でいきなりの古形長物がやってまいりましたが,32号から先はいつもの,明治後半以降の普及版明笛です。
  筒音Cの管が多かったんですが,清楽音階で筒音Bのも1本……いちばん音の低い笛が,いちばん短かったってあたり,相変わらずピタゴラスさんに喧嘩売ってますよね。


明笛32号


 口 ●●●●●● 合/六 5C+10
 口 ●●●●●○ 四/五 5D+30
 口 ●●●●○○  5E
 口 ●●●○●○  5F-5F#-45
 口 ●●○○●○  5G-5G#-45
 口 ●○○○●○  5A+30
 口 ○●●○●○  5B+25
 (口は歌口,●閉鎖,○開放)


  やや太めの管体。修理直後は高音がやや安定せず,吹き出すのに多少苦労しました。

  歌口の微調整でやや改善。管内は塗り直したし,竹の部分が油切れでカサカサでしたので,割れ防止に亜麻仁油も滲ませました。あと1~2ヶ月もするとあちこち固まって,もう少し吹きやすい楽器になると思いますね。


  呂音での最高音は 口 ○●●●●● で6C-6C#-45。筒音の倍音(6C)は 口 ○○●○○○ のほうが安定しました。測定した実際よりも,少し落ち着いた低めの感じに聞こえます。


  管尻がわの飾り紐を通す孔の下あたりにヒビ割れの補修痕。背管頭の飾りに鼠害少々。
  管頭の凸凹は,31号同様にエポキ&胡粉のパテで補修。さらに到着当初は管内がまあ,恐怖の灰色状態で(汗)。塗装もかなり劣化しており,露切りを通すと,粉のようになってこぼれてくるくらいでしたので,残っている塗料をあるていどこそいで,カシューで塗りなおしました。


明笛33号


 口 ●●●●●● 合/六 5C#-30
 口 ●●●●●○ 四/五 5E+13
 口 ●●●●○○  5F+15
 口 ●●●○●○  5G-35
 口 ●●○○●○  5A-40
 口 ●○○○●○  5B-10
 口 ○●●○●○  6C#-30
 (口は歌口,●閉鎖,○開放)


  こんどは細身の笛。管端の飾りに一部損傷のあったほかは,保存状態も良く,外面はかなりキレイな状態でした。
  寸法的にも前に修理した KOKKO社製の「春雨」(20号)によく似てますが,指孔が清楽式に近く,小さくてナツメ型なことと,飾りのデザインがわずかに違っています。

  全閉鎖がC#,呂音での最高音は 口 ○○●●●● で6D-35。
  かなり高音ですねえ。
  尺以上の高音はよく安定し,かなりキレイに出るんですが,呂音の合四上あたりは気ィぬいてると甲音になっちゃう----逆にぜんぶ甲音で吹いちゃったほうがラクかもしれませんねえ。

  明治末から大正期の量産明笛だと思いますが,歌口や指孔も棗核型で小さめで,篠笛やドレミ笛の影響はまださほど強く出ていない時期の製品のようです。


  こういう細い笛は,吹きにくいには吹きにくいんですが,うまく吹けると,かなりキレイな音で響きますね。
  管端の飾りを補修したほか,管内の塗りに安い笛によくある顔料系の塗料が使われていたため,塗りがはがれないように軽く保護塗りを施しました。
  修理清掃後,油が乾くまではかなり吹きにくい状態でしたが,一ヶ月ほどして少しづつ吹きやすくなってきています。


明笛34号


 口 ●●●●●● 合/六 4B+48-5C-42
 口 ●●●●●○ 四/五 5D-38
 口 ●●●●○○  5Eb+40
 口 ●●●○●○  5F+25
 口 ●●○○●○  5G+25
 口 ●○○○●○  5Bb-30
 口 ○●●○●○  6C-40
 (口は歌口,●閉鎖,○開放)

  管頭の飾りの先端部分がなくなっていましたが,それで 475mm あるというのは,この類の明笛としては長いほうです。おそらく材料は女竹で,長いこともあって尾部のほうがかなりすぼまって見えますね。
  歌口,指孔ともにやや丸みをおびていることから,おそらく大正期になってから作られたものと思われます。明笛の歌口・指孔はもともとはかなり細めの楕円形かナツメ型で,指孔が丸くなっているのは,篠笛の影響です。



  呂音では全閉鎖がやや中途半端で安定しませんが,甲音だとCの低いところで安定するので,筒音はC-40程度と思われます。
  呂音での最高音は 口 ○○●●●● で6C#-45,甲音では 口 ●●○●●● でG#ほどまでは出すことが出来ました。
  1-2孔,2-3孔間に割レ,響孔の縁に小ヒビ。いづれもカシューを充填してふさぎ,あと管頭の飾りをいつものブナ材パイプで作ったほか,かなり内部の汚れがひどく,塗膜も劣化していたので,カシューで保護塗りを施しました。


  管頭の飾りや,全体のフォルムはときどき見かける「胡山」銘の笛に良く似ていますが,「胡山」の焼印とかは見つかりませんね。
  べつだんどこといって悪いところはないんですが,少し吹きにくい笛ですね。
  まだ多少調整が必要なようです。


明笛35号


 口 ●●●●●● 合/六 4Bb+37-4B-35
 口 ●●●●●○ 四/五 5C#-20
 口 ●●●●○○  5D+36
 口 ●●●○●○  5E
 口 ●●○○●○  5F#
 口 ●○○○●○  5G#+10
 口 ○●●○●○  5Bb-17
 (口は歌口,●閉鎖,○開放)


  薄い色の斑の入った,携帯用の明笛。
  33号なんかモロですが,こうした明笛の斑竹は,ほとんどは普通の竹に薄めた硫酸ふりまいて,焦がして作った人工斑竹なんですが,もしかするとこれは本当に斑竹使ってるのかもしれません。


  前笛と同じく計測上は全閉鎖が中途半端なところで安定しませんが,おそらく筒音はBb
  呂音での最高は 口 ○○●●●● で出した5B+25。

  頭尾のお飾りの形状は4号とほとんど同じなんですが,4号にはない裏の紐孔のぶんだけ,こちらのほうが少しだけ長い。
  短い笛ですが音階はほぼ正確な清楽音階。歌口も指孔もナツメ型の正調明笛仕様で,穴も小さめですが,非常に吹きやすい笛でした。


  1-2孔,2-3孔の間にヒビ割れがあり,内外かなり汚れてはいましたが,管内の塗りの状態はよく,ほぼ割れをふさいだだけで演奏可能な状態になりました。


(つづく)

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