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月琴35号首無し2(1)

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斗酒庵 胴にどうする2 の巻2014.3~ 月琴35・首無し2号(1)

STEP1 首無し月琴の逆襲


  さて類は友を呼び,モノは引き合う万有引力と申します。
  今年2面めの修理報告はなんと!----また 「首無し月琴」 でございます~!
  ねえ,コレってタタリ? タタリなのッ!?

  正直なところ,入れてたら落ちちゃったんですね。(^_^;)
  まあ修理の手間考えたら,あんまり手を出すヒトもいませんわな。


  こーゆー袋づめで我が家に来た月琴は,さすがにハジメテかな~。(汗)


  国産月琴,明治中期~末ごろってとこでしょうか。
  かなり汚れてて,水ムレ様の大きなシミも見えますねえ。


  半月がナニヤラ面白いことになってます。
  キモチは分かりますよ……ギターにしたかったんだね。(w)

  裏表の板の中央に大きなヒビ割れがありますが,板の矧ぎ目からのふつうの割れなんで,これはさほどのケガではありません。 虫食い孔もかなりありますが,早苗ちゃんとか19号とかに比べりゃこんなもん,屁の河童ですわ。


  あと,棹孔の表板がわ左右に少しヒビが入ってます。
  なるほど----棹のない原因はこれかな? おそらく酔っ払って糸倉のあたりでも踏んづけちゃったんでしょうねえ。

  胴体はやや厚めで,寸法も標準的ですが,タテヨコがほぼ同じ寸法ということは,かなり正確に円形となっているようです。
  お飾りは平凡な菊,彫りは稚拙ですがかなり手慣れています。
  内部構造は2枚桁で,上桁左右には木の葉型の音孔,下桁には音孔がないようです。
  あと響き線のサビが見た感じ少しキツいようで,これも状態確認して補修しておく必要があり…全面ではないものの,オープン修理カクテイですねえ。



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  裏表に内部と精査しましたが,いまのところ作者に結びつく手がかりや墨書のようなものは見つかっていません。
  ラベルも早い時期に剥落したらしく,日焼け痕もほとんど残ってません。せめて棹茎でも残ってれば何か書いてあったかもしれませんが……墨書も目印とか目安線くらいですね。棹孔のすぐ上,表面板の木口に,なにやら書き込んであるようなのですが,字が細か過ぎて読めないし。

  庵主のケーケンは,この月琴は「清琴斎・山田縫三郎」の楽器だと言うております----
  すなわち,「十六夜月琴」「赤城山1号」「月琴19号」と同じ作者の楽器というわけです。

  山田縫三郎,こと清琴斎二記。

  「二記」ってのは「二代目」って意味です。初代は頼母木源七。
  月琴から明笛尺八,ヴァイオリンまで作ってた,当時としては大手の楽器屋です。
  検証可能な合致する特徴はいまのところ三つ 1)胴体がほぼ真円であること,石田不識の月琴なんかは特に際立ってますが,明治の月琴の胴体は,ほんのわずかに縦横幅が異なってるもののほうが多いのです。 2)胴がやや厚め,3)内桁および響き線取付け部の構造,響き線の基部は,胴に向って中央右端の側板のところにありますが,直挿しでも木片に挿してあるわけでもなく,側板と面板の接着部にはさみこまれています。これは山田楽器店作の19号と同様。
  あとあえて足すなら 4)工作は凡庸だが,加工と部品の精度がやたらと精確----ということがあげられましょうか。


  山田楽器店の月琴は,その加工から見て,おそらく何らかの工作機械を用いてかなり大量に製造したものらしく,ここの楽器は今でもあちこちでちょくちょく見かけます。「機械で加工製造」とは言ってもまあ明治のころの話ですから,オートメ工場で自動生産とかいうわけではありません。工作機械,とは言っても,簡単なボール盤,旋盤とか糸鋸の類だとは思いますが,上にも書いたよう,円形胴がほぼ真円に近いことからも分かるように,部品の出来は均一で精確ですが,ときどき木の目なんかを無視した加工があります。
  機械の力を借りて大量に造られた数打ち月琴ではありますが,「月琴」という楽器のことをちゃんと「分かって」作っているので,音はけして悪くはありませんし(とびぬけてイイ!ということもモチロンありませんが.w),工作精度が高いので楽器は堅牢---生存率の高さもこのおかげです---,操作性も悪くはありません。

  同じ「首なし月琴」ではありますが,前号の修理では,同じ作者の楽器の資料が少なかったため,修理がはんぶん創作みたいになっちゃいましたが,今回の場合,よく見かける大手メーカーの数打ち品なので,欠損部分のカタチや寸法などは,過去修理楽器のものが使えそうです----さてさて,どうなりますことやら。

(つづく)


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