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月琴36号(3)

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斗酒庵 赤い月琴にハラショー! の巻2014.5~ 月琴36号 (3)

STEP3 ろしあのはらわた


  月琴の内部構造というものは,棹や糸倉の形やお飾りと同じくらい,作者によって個性があるので,場合によってはラベルや署名が見つからなくても,これだけで作者を同定できるようなことがあります----というわけで,この月琴36号……

  分かりませんね。(w)

  最初に目についたのはこの響き線。
  なんちゅう曲がり方でやんしょう----こういうカタチは今のところほかに類を見たことがありません。

  そのほかの部分,たとえば桁の材質とか工作,側板の裏面や接合部の処理などは,ごくごく平凡なものでさして特異な点はありませんが,

  やはりわたしの知らない,未知の作家さんの手によるものと思われます。

  工作は丁寧だし技術も高い,楽器としておかしなところはなく,専門の楽器屋さんの作であることは間違いないと思いますが,棹の姿など細かなディテールに少し違和感があるので,清楽器を専門に作っていたような人ではないかもしれません。

  とりあえず,観察結果をまとめときましょう。


3.内部構造

■ 内桁

  上下二枚。いづれも表面処理のされていない粗板状態の薄板(厚約7ミリ)で,材はおそらくマツと思われる。棹孔の口辺からそれぞれ118,272 の位置にあり,弦音のもっとも共鳴する上下の桁間がかなり広くとられている。
  上桁は中央棹茎のウケ穴のほか,左右にやや端の丸まった木の葉型の小さめの音孔が2つ。下桁には大きめの丸い孔が左右に2つ。彫りぬきの工作は比較的丁寧で,切り残しや刃物のオーバーランしたような痕はない。下桁の孔は直径が1.5センチもある,孔の壁に残る加工痕はツボギリによるものと同じだが,大きさからすると丸ノミの類をツボギリ的に用いたものかもしれない。
  上桁の上面左右端は少し斜めに削がれており,側板に彫られた溝にはめ込み接合。下桁は左右端の木口を側板内面に接着してあるだけだが,工作は精確でかなりぴったりしっかりと取付けられている。


■ 響き線

  この形態をコトバで表わすのはちょいと難しいですね。(W)
  基本的には直線なんですが,根元を二返することで,バネ的な性質を強めたもの,と考えられます。
  ただ直線を挿したものに比べると,はるかに振幅が大きいですね。前回修理した35号も,直線の根元を曲げることで,同様の効果を得ていましたが,曲げの方向の関係から,楽器の前後方向への振幅が少し大きくなってしまい,胴鳴りの原因を作ってしまっていました。それにたいしてこの曲げ方だと,上下動のほうが大きく,ある意味理想的なのかもしれません。


  テキトウに曲げてるように見えますが,もしかすると細かな微調整の結果なのかも…(本人に聞いたら 「ん?テキトウ!」 とか言われるかもしれませんが w)

  鋼線,太さ0.8ミリほど。先端は胴幅の4/5ほど,下桁より1センチほど上にまで達することから,直線に類するものとしては長い。
  基部は木片で,線基部を固定するために小さな丸クギが打たれている。楽器を正面から見て左がわ,上桁接合部の下面に位置し,表板から3ミリ,裏板から約1ミリほど離した状態で接着されている。
  響き線表面は軽くサビに覆われているが,問題はなく,健全である。





  ざんねんながら,内部からも楽器の作者につながる墨書や署名の類は何も見つかりませんでした。それどころかこの楽器,指示線なんかの書き込みが異常に少ないんですね。
  たいていは孔のとことか,桁の接着位置なんかに,墨とかエンピツの線があるものなんですが。
  この楽器では茎のウケ孔周縁に数箇所,そのほかほとんど唯一見つかったのは,表面板の中心線を表わすと思われる小さな孔が二つ。たぶんケガキのお尻でつけたものだと思います。


  あと,こりゃなぜでしょう?

  けっこう大き目のカンナ屑か削りカスが,けっこうな量出てきました……ふつうはこういうゴミ,胴体を箱にする前に出しちゃうし,そうでなくても作業中に自然にこぼれるから,こんなには残らないと思うけどなあ。

  わざと入れた?----ナゼ?


  さて,内外からの観察も完了いたしましたので,今回のフィールドノートをどうぞ。(クリックで拡大)



(つづく)


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