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胡琴をつくらう!2 (1)

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斗酒庵 清楽胡琴作りに再度挑戦す の巻2014.6~ 胡琴を作ろう!2 (1)

STEP1 出会いはいつでも


  ちょっと前の明笛の製作実験でお世話になりました四竈訥治の『清楽独習之友』。

  この本,楽譜だけじゃなく,楽器の自作方法や寸法まで載ってたりします。 むかし怪獣図鑑見て,カネゴンやペスターを作ってみようと思ったような方々(年齢が知れるなあ…)には,なんとも嬉しい資料じゃあーりませんか。

  ま,カネゴンはともかく。(w)

  明笛の製作実験を通して,この本における楽器の寸法は,実際に使われていた楽器と比較して,かなり精確なものであることが分かりました。つまりこの本の寸法に従って作れば,当時の一般的なサイズの清楽器が,あるていどは再現出来るということですね。

  清楽の楽器中,月琴や明笛はやってたものも多く,流行辞における生産数も膨大なものだったので,現在でもけっこうな数が残っており,ネオクなどでも見かけることがありますが,胡琴・提琴・阮咸・唐琵琶といったあたりは,まずそうそうお目にかかれるもンじゃあありません。

  そこでまあ,作っちゃえ----と,明笛に続いての文献による楽器再現,第二弾は「胡琴」となりました。
  資料により流派により,多少違ったりすることもあるのですが,清楽で「胡琴」というと,たいていは竹で作った小さな二胡。現代中国楽器でいうところの「京胡(ジンフー)」の類の楽器となります。
  ではまず,今回の基礎資料となる『清楽独習之友』の「胡琴」の記事からどうぞ(画像はクリックで拡大)----

  さてこの本の記述によれば,清楽の胡琴の基本的な寸法は----

  棹の長さ:一尺四寸(=424.242mm 以下単位同じ)
  胴の長さ:三寸二分(=96.9696) 径:最大一寸八分(=54.5454)

  そのほか

  1) 棹を挿す孔の位置は「胴の中央より二分ほど皮の方に寄りて」とありますから,皮の貼ってないほうから 57mm のあたり。
  2) 「胴と棹との合口より第一着なる糸巻きまでの距離」一尺五六分 ,すなわち 318~321 mm。

  そうすると,胡琴の駒はだいたい皮の中央あたりに置かれますから,有効弦長は 350 くらいってとこになりますね。
  清楽の胡琴には玩具の楽器みたいに小さいのがけっこうあるんですが,これだとまあ現行の中国京胡あたりとあまり変わらないんじゃないかな?あとは----

  3) 「糸巻きと糸巻きの間は凡そ二寸位」だいたい 6センチ。

  「棹の長さ」というのに「胴体にささってる部分」を含めると,寸法が足りなくなっちゃいますから,四竈さんの書く「棹の長さ」とは,棹と胴体の接合部から上端までの長さということになります。そうしますと部品としての棹の全長はおよそ 480mm というあたりとなりましょう。

  ハイハイ,文章だけだと分かりにくいですよネ~。(汗)
  図にまとめますと次のようになります。(画像はクリックで拡大)


  ちょうど中国京胡の古いものである胡琴1号が,皮の張替えで帰ってきておりました。
  おそらく戦前に作られたもので,現在の中国京胡とは構造とか寸法が微妙に異なっております。
  これが唐物楽器として実際に清楽に使われたかどうかのあたりは微妙なんですが,古いには古いものなので,前回の製作ではこの楽器を参考にしておりました。今回,あらためて寸法を測ってみますと……おや,こりゃあ。
  多少の差はありますが,主要なところは清楽の胡琴とほとんど変わりませんね。
  面白いものです。(画像はクリックで拡大)

  前々から何度か書いてるように,庵主は「はじく」系の楽器は,まあ なんでもばちこーい,なのですが「ふく」のと「こする」系統の楽器は大のニガテとしております。作るのがカンタンとはいえ,自身ちゃんと弾けるわけでもない楽器ですので,実験としては数年前の製作でだいたいのところは分かっており,何度もくりかえす必要はさほどなかったのですが,
  今回はまず『清楽独習之友』によって明治時代の胡琴の寸法が分かったことと,もうひとつ,コレ。

  この画像真ん中の黒っぽい竹が手に入った,というのがきっかけとなっております。
  ----きったねー竹!
  なんて言ってはいけません。(w)これは煤竹。本物の煤竹ちゅうのは,古民家の天井などで百年なり燻された竹で,現在ではけっこうな貴重品であります。
  このところ,月琴のピックをこれで削ってたんですが,今回たまたま手に入れた材料が,胡琴の胴にぴったりなサイズと質でして----これで胡琴作ったら,どんな音で鳴るやろ?---なんて,思いましてん。(w)

  さあて,資料と材料がそろっての製作実験。
  どうなることやら続きはお楽しみ!

(つづく)


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