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月琴35号首無し2(5)

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斗酒庵 胴にどうする2 の巻2014.3~ 月琴35・首無し2号(5)

STEP5 ああ首なしの納屋のにほい


  表面板の再接着はまずまず成功!

  真ん中に噛ませたスペーサーのぶん,板の左右端がハミ出てるのを整形したら,おつぎは裏板のヒビ埋めを。
  こちらは幅が1ミリあるかないかぐらいですので,桐板を薄く切って削って埋め込みます。
  前も書きましたが,桐板ってのはもともと柔らかいので,水を含むとさらに弱くなるし,ふくらんできっちりスキマに入らなくなります。ですのでこうした場合は,ヒビの深さよりもやや大きめに切った埋め木を,まずはきっちりとヒビの底まで到達するよう整形し,ハメこんでから,埋め木の両横に薄めたニカワを何度も塗布して接着したほうが確実です。


  表板の木口がスペーサーによる整形のため削られて,板地の色になっちゃったんですが,裏板のほうは貼ったまんま。真っ黒に汚れて側板部分と区別がつかない状態でしたので,こちらもついでに軽く削って,側面をお菓子のシベリア状態にもどしときましょう。

  うむ----わたしはこの 「薄皮あんこサンド」 な感じがスキです。


  だいたいの補修が終わったところで,面板の清掃に入ります。

  この楽器,かなり長い間放置されてきたらしく,ヨゴレやら水濡れの痕やら,けっこうきちゃないですからねえ。
  洗剤はいつものようにぬるま湯に重曹溶いた重曹水,Shinex の #400 をスポンジにしてこすると----うう,やっぱり。納屋の棚にでもほかしてあったんでしょうねえ……濡らすと独特の「物置き臭」というか「ネコのションション的臭い」がします。(汗)
  重曹には消臭効果もあるんで,しばらくすると消えるとは思いますが……一年くらいは時折ニオったりするんだよなあ。


  さて,そうこうしているうちに。
  棹と糸巻き,そして補作した半月の塗装が終わりました。

  棹は胴体の色合いにだいたい合わせましたが,胴体側部は染めて油拭き・ロウ磨き仕上げなので,どっちかというとフラットなのに対し,こっちはテカテカに塗っちゃいましたから,表面の感じは若干異なります。
  まあ,まだ磨き前なのでいささかギラギラしてますが,仕上げでしっとりさせますんでそれほど違和感はなくまとまるかと。
  ツゲで作った山口も取付けておきましょう。今回の材は色も白っぽく青筋が入ってたりするあまり良くないものでしたが,スオウをちょっと混ぜたヤシャ液で染めたらこのとおり----キレイなもんでしょ?


  前々回もちょっと書きましたが,今回は棹の取付け調整にかなり手間取りました。
  とくに当初,背面への傾きの角度を少々深く取りすぎ,組みつけてみたら,山口のところで胴体水平面から1センチ近くも沈み込んでしまっていました----そのままだと,山口の背を2センチくらいにしないと,弦が胴体との接合部のところにひっかかっちゃうくらいですね。(w)
  茎をはずしては棹基部を削って,角度や楽器の中心線に対する左右の傾きを何度も調整したので,棹が最初より5ミリくらい短くなっちゃいましたよトホホ。

  半月の接着はそのあたりも考慮しての作業となりました。


  月琴の製作工程で,半月の取付け作業は,全工程のかなり最後のほうで行われたものと推測されます。
  月琴は,ほかの楽器に比べると単体での利益率が低いので,あるていどの数をこなさなければ儲けが出ません。現在のような工作機械によるオートメーション加工ならともかく,手工中心の当時の体制だと,部品の精度のバラ付きをどこかであるていど解消できなければ,製品としての歩留まりばかりが多く生じてしまいます----まあ,そんなこと気遣いもせず作られたスサマじい造りの楽器もけっこうありますがね。
  組み合わせてみたら棹と胴体の中心線が合わない,楽器の中心線がズレてた,胴体に対する棹の角度や取付け位置がヘンだった,なんてのは日常ちゃ飯で。それでもそれらが楽器として一応成立しているのは,最後に取付けるこの半月の位置でツジツマを合わせているからなんですね。

  正直,この半月による「ツジツマ合せ」にはかなり無理矢理なものもあって,半月が奇妙に左右に寄ってたり,片方の端が上がってチンピラの笑い顔みたいになっちゃってたりしてる例もあります。そのあたり,ギターやバイオリンの作家さんだとちょっと考えられない世界(w)かもしれませんが,もともと辻楽士の俗っぽい楽器ですんで,そんくらいワイルドでも全然構わなかったのかもしれません。

  さて今回,半月は,オリジナルより上辺の位置を約5ミリ下げて取り付けます。
  予定していた有効弦長からすると,ほんとはもうちょい下げたいとこだったのですが。これ以上下げると,かなりカッコ悪くなっちゃいますんで(泣)。かなりしつこくやった棹基部調整の甲斐あって,楽器の中心線はだいたいバッチリ通ってますので,半月にも糸孔をあけます。オリジナルの半月の糸孔は外弦間 34,内弦間 26 ってとこですね,これに合わせましょう。

  棹を挿し,山口に糸を貼り付けて半月までひっぱり,これを弦の代わりに見ながら,半月の左右位置を探ります。
  山口での外弦間は指板部分の幅にもよりますが,だいたい15~17ミリですね。今回の棹はやや細めなので15ミリとします。

  いつもながらこの作業,けっこう微妙なんで時間がかかりますね。でもここで失敗じると,楽器の性能に大きくかかわっちゃいますんで,慎重に,精確にやっていきましょう。


  左右の糸のコースがもっとも均等で,棹左右のテーバーとのバランスも良さげなところを見つけたら,ケガキやマスキングテープでシルシを付け,上端位置にに当て木を噛ませて,さあ接着です。
  半月の主材,ダオはすこしロウ分を含んだところがあるんで,接着面はペーパーで軽く荒し,筆で水を刷いては指でこすりこんで,なじませておきます。薄めに溶いたニカワを,何度も塗っては擦りこみ,余分を拭き取って,表面がベタついてきたところで,面板に置いてLクランプで軽くしめます。

  首なしで胴体だけだった楽器に,新しく首がつき,半月も戻りました。
  これで弦を張れば,弦楽器としての本体の修理はほぼ完了なわけですね。

  さて,しかし-----
  お楽しみはこれからだッ!!

(つづく)


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